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悪夢のような集団が街を破壊…G20サミットの「地獄絵図」 〜日本メディアが報じなかった現実
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52280
2017.07.14 川口 マーン 惠美 作家 現代ビジネス
■「黒い塊」の恐怖
まずは、ドイツシュピーゲル誌のオンライン・ビデオをご覧いただきたい。7月7日、8日にハンブルクで開催されたG20サミットを巡って起きた暴動の映像だ。
先週のこのコラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52225)で、サミット前夜、極左の抗議デモが暴走しかかっている不穏な雰囲気を報告したが、その懸念がまさに現実となった。
http://www.spiegel.de/video/g20-gipfel-in-hamburg-chronologie-der-ereignisse-video-1780864.html
3分30秒あたりに、黒装束の活動家たちが堂々と車に火をつけていく様子が写っている。衝撃的なのはそれに続くシーン(3分45秒あたり)で、バスの乗客がスマホで撮影したもの。
前方からやってきたデモ隊を通すためにバスは停車しているのだが、デモ隊が近づくにつれて、それがブラック・ブロック(黒い塊)と呼ばれている、覆面をした人間たちであることに気づく。彼らはあらゆるものを破壊しながら、バスの横をのしのし歩いていく。悪夢のような光景だ。
ハンブルクの空には、あちこちから巨大な黒煙が立ち昇っていた。7日の夜、市内のシャンツェン地区で暴動はピークに至った。
http://www.spiegel.de/video/g20-krawalle-in-hamburg-eskalation-von-chaos-und-gewalt-video-1780951.html
そのうち、ブラック・ブロックが闇に乗じて建物の屋上に立てこもり、警官を狙って火炎瓶を投げ始めたため、重装備の警察隊も一時、手が出せなくなった。急遽、特殊部隊GSG9の出動が要請され、到着した彼らが建物内の暴徒を勾引した後、ようやく治安回復が試みられたという。
オーストリアの特殊部隊など90名も救援に駆けつけた。ちなみに、サミットの警備に投入された警官の数は2万人。ドイツ全土から集めた最大の動員数だった。
シャンツェン地区で死闘が繰り広げられていたその頃、すぐ近く、エルベ川のほとりの瀟洒なコンサートホールでは、各国の首脳たちがベートーヴェンの第九(有名な「歓喜の歌」付きの交響曲)を聴いたあと、ディナーパーティーをしていた。
■暴力デモのプロフェッショナル
悪夢のような夜が過ぎたとき、シャンツェン地区は内戦の後のようだった。
バリケードの燃えかすが山となり、道路の敷石は剥がされ、ショーウィンドウからATMまで、壊せるものは全て壊されていた。そして、荒れ狂う暴徒と、燃え盛る火を見ながら夜を明かした住民が報道陣に恐怖を語るその脇で、大勢の清掃員と清掃車が、騒乱の残骸を大急ぎで取り片付けていた。
しかし、その夜、前夜ほどではないが、再び暴力は繰り返されたのである。
サミットのたびに、緑の党などの政治団体、市民団体、あるいは自然保護団体など、左翼の抗議活動が活発化する。今回も、認可された集会やデモの数は30にも上った。彼らによれば、現在生じている不公平な富の分配は、サミット参加国が主導するグローバリズムや金融システムのせいだ。その主張は、おそらくそれほど間違ってはいない。
デモの多くは、行進したり、野外ダンスパーティーを開いたりという平和的なもののはずだが、しかし、その中に暴力的、戦闘的な分子が混じるだろうことも予想されていた。
ブラック・ブロックのメンバーは国際的だ。ヨーロッパのどこかで大掛かりなイベントがあると、北欧からも南欧からも遠征してくる。もはや政治とは関係がない。無政府主義者、あるいは、それを装った暴力集団だ。しかも、間違いなく誰かが召集をかけている。
ビデオを見ればわかるが、彼らはいかにも手馴れた様子で、停まっている車のガラスを割り、火を投げ込み、あるいは、タイヤのところに松明を差し込んで、あっという間に炎上させる。また、無人の商店は徹底的に壊すが、中に人のいる住宅には手をつけない。手際の良さと落ち着きはプロフェッショナルだ。
サミット後の発表では、負傷した警官が150名。たちまち、なぜここまでエスカレートしたのかという非難の声が上がった。市民はそうでなくても数週間にわたり、さまざまな不便を被っていたのだ。
その上、彼らが暴徒の脅威に晒されていたとき、政治家たちは音楽鑑賞をしていた。首脳たちの安全が最優先になることはある意味当然かもしれないが、では、市民の安全はどうなのかという後味の悪さが強く残った。
■民主主義の「さじ加減」
ハンブルク市民の怒りはたちまち全国に感染し、慌てたドイツ政府は責任逃れに走った。ハンブルク市長の状況認識が甘かったとか、警察の対応が悪かったとか、あるいは、これほどの暴力は想定外だったとか。
しかし、ハンブルク市長がSPDであったため、それはすぐにSPDとCDUの責任のなすりつけ合いに発展した。
実は、今回、ハンブルクでのサミット開催に熱心だったのはCDUのメルケル首相だった。理由の一つは、民主主義国のアピール。誰にアピールしたかったかというと、トルコとロシアだ。
ドイツ政府は昨今、この2国に対する批判を強めている。
トルコやロシアではデモどころか、反政府的な考えを持っているだけで拘束されることもある。それに比べて、ドイツでは、信条の違いで罰せられることはない。言論や集会の自由が認められている。警察は決して先に手を出さない。それをエルドアン大統領やプーチン大統領に見せかった。
ドイツでは、こういう暴動と紙一重のようなデモが結構しょっちゅうある。たとえば、5月1日のメーデーの騒乱はすでに年中行事で、暴力のメッカはハンブルク、ベルリン、フランクフルト、ケルンなど。だからドイツ政府は、今回も制御可能だと思っていたのかもしれない。
しかし、民主主義のさじ加減はまことに難しい。どこまでが集会の自由で、どこからが治安維持の対象なのかがわからない。全員の自由を認めれば、今回のように治安の破綻を招く可能性が高まる。そもそも、暴力を行使すると初めから分かっている人たちのデモを許可することが、本当に民主主義なのか。
興味深いのは、暴動の後、早くも警官を大幅増員すべきだという声が出てきたことだ。ドイツ政府は最近、インターネット規制の強化など、静かに官権を強め始めているようにも見えるので、何だかうまく行き過ぎのような気さえする。
■ドイツの真似は禁物
ちなみに日本の警官の数は、人口当たりではドイツよりずっと少ない。それもあって、先週の本コラムは東京オリンピックの警備が心配だということで締めたが、どうも危機はその前にやってくるようだ。
2019年のG20サミットの開催地が日本に決まったという。G20は人数が多いので、洞爺湖や伊勢志摩のようなこぢんまりした場所ではできない。日本の都市の規模はハンブルクとは桁が違うので、警備は至難の技だ。完璧を期すのは不可能ではないか。
日本は島国なので外国の危険分子が列車やバスで到達できないことが一縷の望みだが、だからこそ、空港での入国検査は今すぐにも強化する必要がある。日本を混乱させようとしている勢力がスリーパーとして都会に紛れ込んでしまってからでは、取り返しがつかない。外国人ジャーナリストも、身元をしっかり調べるべきだ。
いずれにしても、ドイツの真似をして、寛大に民主主義を証明しようなどということは考えないほうがよい。日本は、今のままでじゅうぶん過ぎるほどの民主主義国なのだから。
30万部を突破したベストセラー『住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち』と『住んでみたヨーロッパ 9勝1敗で日本の勝ち』に続く、待望のシリーズ第3弾!!
- G20は今後、海上の空母で開催を パイプライン 2017/7/15 00:02:21
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