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北朝鮮の弾道ミサイル発射を受け、緊急の日米共同記者会見が開かれた (c)朝日新聞社
「世界の警察官」ではないと語ったトランプ でも実際には…〈dot.〉
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170705-00000065-sasahi-int
AERA dot. 7/8(土) 11:30配信
「私たちはもはや世界の警察官ではない」大統領選挙ではそう語っていたトランプ氏。しかし、シリアへの攻撃や北朝鮮への圧力など、外交政策で大きな動きを見せている。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、朝日新聞GLOBE副編集長・大島隆さんの解説を紹介しよう。
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アメリカのトランプ大統領が就任してから150日が過ぎようとしている。大統領選挙の間、「アメリカ・ファースト(米国第一)」を掲げていたトランプ氏だが、実際に大統領になってから、アメリカの外交政策はどう変わったのだろうか。
1月に発足したトランプ政権が、対外政策で取った最初の大きな行動が、シリアへのミサイル攻撃だ。
内戦が続くシリアでは4月、サリンとみられる化学兵器が反体制派の拠点で使われ、多数の市民が死傷した。
これに対してトランプ氏は、アサド政権が化学兵器を使用したと非難。制裁のための攻撃を指示して、米軍が巡航ミサイル「トマホーク」を、地中海に展開していた駆逐艦からシリアの空軍基地に向けて発射した。
外国のことよりも自国の利益や国内問題への取り組みを優先する「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ氏は、大統領選挙のときには「私たちはもはや世界の警察官ではない」と発言したこともあった。このため、「世界の秩序を守るという、これまでアメリカが果たしてきた役割を軽視するのではないか」と心配する声もあった。
トランプ氏は攻撃を発表したとき、「罪のない市民を化学兵器で殺害した」と人道的な観点から問題にしただけでなく、「破壊的な化学兵器の拡散と使用を防ぐことは、アメリカの安全保障にとって不可欠な利益だ」と話して、「アメリカ・ファースト」とも矛盾しないという考え方を示した。
このトランプ政権の決断を、日本の安倍晋三首相は「化学兵器の拡散と使用は絶対に許さないとのアメリカ政府の決意を、日本政府は支持する」と語った。
ただ、米国がシリアへ攻撃をしたのは一回だけで、その後も内戦が続く状況に変わりはない。かといって本格的にシリアの内戦に軍事介入をすれば、トランプ氏の「アメリカ・ファースト」を支持する国民は、反発する可能性がある。
もう一つ、トランプ政権が対外政策で動いたのが、北朝鮮への圧力だ。
弾道ミサイルの発射実験を繰り返し、再び核実験をしようとしている北朝鮮の金正恩政権に対して、トランプ政権は、空爆などの軍事行動も辞さない構えを見せた。米軍の原子力空母を日本海に派遣するなど圧力を強め、朝鮮半島の緊張は一気に高まった。
■「力による平和」はありうるのか?
シリアを攻撃し、北朝鮮での軍事行動もありうるというトランプ政権の姿勢を読み解くキーワードが、「力による平和」という考え方だ。これは「平和は力によってのみ初めて達成される」(ペンス米副大統領)といった、軍事力で問題を解決することをためらわない政権の姿勢を意味する。トランプ政権は国の予算づくりでも、国防予算を増やす方針を決めた。
ただ、もし米軍が北朝鮮の核やミサイル施設を空爆しても、米軍基地がある韓国への反撃に北朝鮮が踏み切れば、多くの韓国人だけでなく、韓国に住むアメリカ人や日本人も犠牲になる恐れがある。
実際に1994年にアメリカが北朝鮮の核施設への空爆を検討したときも、反撃されたときの被害が大きすぎるという理由で断念した。今回も専門家からは「空爆は現実的な選択肢ではない」という指摘もある。
トランプ政権は、軍事的な圧力と並行して、経済制裁の強化を中国に求めている。また、北朝鮮が核開発をやめるのであれば、北朝鮮との話し合いも排除しないというメッセージも送っている。
当面は、中国がどこまでアメリカに同調して経済的な圧力をかけるかが焦点だ。
シリアでも北朝鮮でも、軍事力だけに頼った解決策には、限界もリスクもある。トランプ政権が世界の課題にどれだけ本気で取り組むのか、次の出方が注目される。(解説/朝日新聞GLOBE副編集長・大島隆)
【キーワード:原子力空母】
艦内に原子炉があり、原子力で動く航空母艦。重油燃料の補給をする必要がなく、戦闘機やヘリコプターを載せて長距離を航行できる。5月現在、日本海で活動中のカール・ビンソンは全長約333メートル、幅約77メートル、乗組員は約6千人。一隻で中小国の空軍力をしのぐ攻撃能力を持ち、洋上の「要塞(ようさい)都市」といえる。
※月刊ジュニアエラ 2017年7月号より
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