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事件のあったモスク付近で「全てのテロに反対する」というメッセージを掲げる人々(Photo by Dan Kitwood/Getty Images)
ロンドン・テロで高笑いのIS、懸念される報復の連鎖
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9932
2017年6月21日 佐々木伸 (星槎大学客員教授) WEDGE Infinity
ロンドン北部のモスク付近で白人の運転する車がイスラム教徒に突っ込んだテロ事件は典型的なヘイトクライム(憎悪犯罪)と見られているが、最大の勝利者は欧米でイスラム教徒とキリスト教徒との対立を煽ってきた過激派組織「イスラム国」(IS)だ。IS側にはキリスト教徒攻撃を正当化できる理由ができたことになり、報復の連鎖が懸念されている。
■高笑いのIS
19日真夜中に起きた今回のテロの容疑者はロンドンから200キロ離れたウェールズに住む47歳のダレン・オズボーン。オズボーンは4人の子供がおり、これまでイスラム嫌いの過激な言動を示したことはなかったという。治安当局の監視リストにも入っていなかった。
しかし、犯行2日前には「イスラム教徒に危害を加える」といった発言をしていたといわれ、治安当局はロンドンなどで相次ぐイスラム過激派によるテロ事件に触発されて反イスラム感情を高めていった可能性があるとみて調べている。
英国では、3月のロンドンの国会議事堂付近の車暴走テロ、5月のマンチェスターの爆弾テロ、6月初めのロンドン繁華街での車両テロなどが立て続きに起き、イスラム教徒への嫌がらせや迫害事件が多発していた。
ロンドン市当局によると、6月初めのテロ以降の1週間で約120回に上る反イスラム事件が発生、前の1週間が36件だったのに比べ急増していた。今回の事件直後には、ロンドンの別のモスク(イスラム礼拝所)に脅迫電話がかかるなどイスラム教徒への嫌がらせや迫害が一段と増加しそうな状況だ。
ロンドンにはカーン市長も含め100万人以上のイスラム教徒が居住しているが、「どこにいても安全ではない気がする」といった不安感がイスラム教徒コミュニティーに流れている。
だが、こうしたイスラム教徒を追い詰める社会の分断に高笑いしているのがISだ。ISは機関誌やネット上で、欧米でのテロの目的を「イスラム教徒とキリスト教徒の分断を図ること」とし、イスラム教徒がキリスト教徒に迫害されれば、イスラム教徒には「2つの選択肢しかなくなる」と指摘。
2つの選択肢について「イスラム教を捨てるか、あるいはISに加入するか」とし、テロによって欧米のキリスト教徒社会にイスラム教徒に対する忌避感情を人工的に作り上げ、社会から除外され、行き場を失ったイスラム教徒が過激派に依存せざるを得なくなる状況が生まれるのを目標にしてきた。
パリのシャンゼリゼ通りでは19日、憲兵隊の車列に車を衝突させ、爆破しようとしたイスラム過激派によるテロ事件が起こっており、フランスでも反イスラム感情が高まっている。
欧州でこうした感情が高まれば、社会の分断が進み、反イスラムのヘイトクライムも続発、テロの連鎖でさらに両教徒の対立が深まるという悪循環に陥りかねない。ISの狙い通りの展開になる懸念があるのだ。
英国のメイ首相はイスラム教徒の過激化や極右のヘイトクライムの大きな原因の1つがネットでの過激なメッセージや、やり取りにあるとして、過激派の不審なメールなどを密かに読み、監視するためアップルやフェースブックなどに対し、治安機関がネット上で自由にアクセスできるよう協力を要請。この問題が過激派対策の大きな問題として浮上してきそう。
■泥沼に引き込まれるトランプ政権
ISのテロはシリアやイラクでの戦況が悪化すれば、欧米で激化するという連関性が指摘されているが、その戦場ではISがいよいよ組織壊滅の瀬戸際に立たされている。2大拠点のうち、イラクのモスルでは、最後まで抵抗している数百人の戦闘員が、組織の指導者バグダディがISの創設を宣言した大モスクにまで追い詰められた。「あと2週間で一掃できる」(イラク軍)という状況だ。
シリアの拠点である首都ラッカでも、クルド人を主体とするアラブ民主軍(SDF)が米軍の空爆支援を受けて市内に突入、激戦となっている。ISはラッカの戦力を東南部のデイル・アルゾウル県に分散。将来的にはゲリラ戦を展開、生き残りを図る作戦だが、米国はラッカをまず制圧することを優先している。
トランプ政権のシリア政策は内戦に介入せず、ISの壊滅に集中するというのが骨格だが、その思惑とは裏腹に否応なくIS以後の主要国の覇権争いの泥沼に引きずり込まれようとしている。
その良い例が6月18日に起きた米軍機によるシリア軍機撃墜だ。シリアをめぐる紛争で米軍機がシリア軍機を撃墜したのは初めて。米軍はイラン支援の親シリア政府勢力が、米国の友好勢力、シリア民主軍(SDF)に肉薄したとして親シリア政府勢力を空爆していたが、撃墜事件はその延長線上にある。
しかしシリアのアサド政権を支援するロシアは19日、この撃墜を「国際法のあからさまな侵犯」と非難。シリア上空でのロシア軍機と米主導の有志連合軍機の衝突回避に使われていた取り決めを停止するとともに、米軍機が今後、ユーフラテス川西側のシリア領空で作戦を展開するなら、撃墜すると警告、米ロ衝突のリスクすら浮上する事態になった。
米ロの緊張とは別に、イランはこのほど東部シリアのIS支配地にイラン西部から数発のミサイルを撃ち込んだ。ISに対するイランのミサイル攻撃は初めてで、シリア内戦への軍事介入を本格化させている軍事力を見せつけた。米国はロシアとだけではなく、イランとも偶発的に衝突する危険性に直面している。
IS壊滅と主要国によるIS以後に向けた動きが激化する中、欧州ではイスラム過激派によるテロが多発し、それに対応して反イスラムのヘイトクライムが起きる懸念が高まってきた。混沌としたシリア情勢は欧州でのテロの連鎖を引き起こしながら、危機的な様相を見せている。
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