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トランプ大統領の“ロシアゲート”(AERA 2017年6月12日号より)
トランプのロシアゲート コミー証言で瀬戸際〈AERA〉
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170605-00000062-sasahi-n_ame
AERA 2017年6月12日号
トランプ米政権がロシア疑惑で崩壊の危機にある。トランプ氏の運命を握るのは、捜査を担当する特別検察官ではない。与党共和党がどう判断するかだ。
トランプ氏の米大統領選当選の背景には、ロシアとの共謀関係があったのではないか──。大統領選以降ずっとトランプ氏につきまとっている疑惑だ。ロシアとトランプ政権の癒着が事実なら前代未聞の一大政治スキャンダル。米国憲政史上唯一、在職中の大統領が辞任に追い込まれたニクソン大統領のウォーターゲート事件になぞらえて、ロシアゲートと呼ばれる。
米連邦捜査局(FBI)が水面下で疑惑捜査の対象としていたフリン大統領補佐官の辞任があったにせよ、これまでトランプ氏は得意の「フェイクニュース批判」を連発し、のらりくらりと真相解明を回避してきた。そのトランプ氏自身が皮肉にも疑惑追及の機運を一気に高めてしまったのが、コミーFBI長官の突然の解任だ。疑惑捜査の指揮官を解任するという極めて分かりやすい構図が、かえって世間の不信を強めた。
●特別検察官にびくびく
米連邦公務員として10年間、米議会で国家予算の編成を担った経歴を持つ中林美恵子・早稲田大学教授(米国政治)が説明する。
「米国議会が、一番厳しい対応になるのは、事実の隠蔽(いんぺい)をしようとすること。その結果、大統領が偽証罪や司法妨害に問われてくると、弾劾(だんがい)裁判に発展する可能性も出てくる」
コミー氏の解任を機に、ロシアゲートをめぐるトランプ政権の包囲網が急速に形成された。司法省は、独立の立場で疑惑を捜査する特別検察官に、コミー氏の前任者で、米議会の信頼も厚いマラー元FBI長官を任命した。大統領選挙中にキスリャク駐米ロシア大使と2度面会したとして疑惑の渦中にあるセッションズ司法長官に相談せずに決めたため、「政権への反旗」と報じられた。
「特別検察官は期間を切らずに捜査できる。長期の捜査になると、政権側は常にびくびくしていないといけない。捜査範囲も無制限なので、いつ何が出てくるかも分からない。これは非常につらい。もちろん、司法妨害になるので圧力は絶対にかけられない」(中林教授)
メディアへの激しいリークも続いている。ロシアのラブロフ外相との会談中にトランプ氏が過激派組織「イスラム国」(IS)に関する機密情報を開示したことや、解任される前のコミー氏にトランプ氏がフリン氏の捜査を打ち切るよう求めたとされることなど、政権内部でしか知り得ない情報が続々と出てくる。トランプ氏の娘婿、クシュナー大統領上級顧問にまで疑惑は及び、極秘通信網の構築をロシア側に提案していたという報道まで飛び出した。
●学級崩壊の情報漏洩
「政権内の規律が崩れている。これをどうにかしないと、メディアへのリークは止まらない。ここまで情報が漏れる政権は今までなかった。前代未聞の素人大統領であることの象徴的な帰結だと思う」(同)
穴の開いたバケツの底から水がほとばしるように情報が漏れ続ける危機的な状況は、5月22日に英国のコンサート会場で起きた爆弾テロに関する捜査情報が米メディアに流れたことにも表れている。米治安筋のリークだったとしてメイ英首相はトランプ氏に強く抗議。責任の追及を約束したトランプ氏は、逆にこの機会を利用して、ロシアゲート関連の情報漏洩(ろうえい)防止に向けた政権内部の徹底的な引き締めをしてくるとみられる。
不思議なのは、流出情報の中に、トランプ氏自身がロシアと関係したことを示す情報がほとんどないことだ。唯一あるのは、大統領就任前の今年1月初めに、米バズフィードが現物をネット上で公開した英国元工作員作成の35枚の調査報告書で、ロシアのハニートラップにかかり、恥ずかしい写真を撮影されたなどとする内容くらいだ。事実だとすればトランプ氏は大統領就任前からロシアに弱みを握られていたことになる。ただ、中林教授は懐疑的だ。
「ハニートラップがあったとしても、それがトランプ氏だったら誰も驚かない。仮に弱みを握られているとしたら、国家や自身のビジネスなどに関する極めて重要な情報であるはずだ」
トランプ氏の関与があったのか、それとも側近が勝手に動いただけなのか。事実関係は何も分かっていないロシアゲートだけに、捜査を一任されたマラー特別検察官の役割は重い。水面下の捜査でFBIがどこまで解明できていたのかも不明で、コミー氏が出席するという今後の議会証言にも注目が集まる。
その一方で、特別検察官は事実の解明はできるが、大統領を解任することはできない。それができるのは議会だけだ。上院での弾劾裁判で3分の2の賛成があれば弾劾が決定し、大統領は罷免(ひめん)される。その前に下院での過半数の賛成で訴追されて初めて、上院での弾劾裁判を起こすことができる。もちろん、訴追には具体的な罪の存在が必要だ。現時点では、疑惑への関与がはっきりしないトランプ氏の訴追は難しい。今後可能性が出てくるとすれば、フリン氏への捜査をコミー氏に打ち切るように要請したとされる捜査妨害や、その事実を隠したことなどによる偽証が考えられる。
●カギ握る共和党執行部
大統領弾劾の難しさは、90年代後半にあったクリントン大統領の弾劾裁判を見れば明らかだ。当時の議会は、共和党が上下両院で過半数を占め、民主党の大統領を弾劾するには優位な議会構成だった。それでも上院で3分の2の賛成は得られず、クリントン氏は弾劾を免れている。
トランプ氏の場合、上下両院で過半数を占めるのは、自身が属する共和党だ。自党の大統領を罷免するためのプロセスで、下院では過半数、上院では3分の2の賛成票を引き出すには、極めて高度な政治判断が必要になる。来年の中間選挙で上下両院の過半数を維持するだけの勝利を得るには、何が最善かという判断だ。
今のところ共和党主流派は、トランプ大統領では中間選挙に勝てないという結論を出していない。米ギャラップ社の世論調査では、5月30日のトランプ氏の支持率は41%となっており、就任以降ずっと40%前後の低い支持率で推移している同氏にとっては平均値の範囲内だ。5月13〜24日は30%台後半で推移していたことを考えると、徐々に回復傾向にあるとも言える。
ロシアゲート疑惑報道が過熱する中で投票された5月25日のモンタナ州下院議員補欠選挙では、記者への暴行という自身のスキャンダルを抱えた共和党の候補者が、民主党候補に勝利した。もともと共和党の地盤だけに、議席を失うことがあればトランプ氏への風当たりが党内で一気に強まる危険性があった。
副大統領で仕切り直し
ロシアゲートの捜査状況や世論の動向が中間選挙に与える影響を慎重に分析している共和党は、「しばらく様子を見る」というスタンスだ。ロシアゲートの展開次第では、トランプ氏を辞めさせて、副大統領のペンス氏の下で仕切り直すという選択肢もある。米国では大統領が罷免された場合、選挙の前倒しはなく、残された任期を副大統領が大統領になって全うする。
中林教授によると、まだ圧倒的ではないが、すでに多くの共和党員からペンス氏を支持する声が上がっている状況だという。犯罪の証拠露呈で大統領不支持が党全体でも決定的になった場合には、共和党主導の上下両院において、トランプ氏の弾劾が成立する可能性も出てくる。では、共和党はいつまでに決着したいのか。「タイムリミットは今年いっぱいだと思う」と中林教授。「中間選挙がある来年までロシアゲートを引きずることになれば、共和党も判断を迫られる」
(編集部・山本大輔)
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