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浜矩子氏が見る仏大統領選 「どちらが勝っても懸念残る」
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/204813
2017年5月5日 日刊ゲンダイ
「諸悪の根源はグローバル化ではない」と語る(C)日刊ゲンダイ
フランス大統領選は7日に決選投票を迎える。どちらが勝っても懸念は払拭できません。中道のマクロン氏が優勢ということですが、そうなった場合は、6月にある議会選挙でアンチ・マクロンに票が集まる可能性がある。その票がルペン氏の極右に行かなくても、メランション氏の極左に行くこともある。
大統領選はひょうたんから駒もありえます。どう逆立ちしてもマクロン氏には投票したくないという若者が少なくないので、大量の棄権が出れば、ルペン氏が勝ってしまう恐れも決して否定できない。非常に緊迫した構図になっています。
「いまや右翼も左翼もない。あるのはグローバル対愛国」
ルペン氏が選挙戦の当初にこう言っていましたが、いみじくもそういう対立構造になっている。これは非常に危険で、グローバル化が気に食わないと思う人は、みな国家主義にどんどん引き寄せられてしまう。本来であれば一番遠いはずの極右と極左が同じことを言い、その中身は反グローバルです。
国境は閉ざせ、異分子は追い出せ、我が国さえ良ければ世界なんかどうでもいい、という主張です。これに対して、アホノミクスだけが「世界の中心で輝く国づくり」を目指すといって世界制覇願望をあらわにしているのが一番怖い。ですが、そこまで行かない単なる引きこもり的「我が国第一主義」も、国家主義への誘いとしては、やはり大いに要警戒です。
本来、グローバル化は「共生」につながるはずです。お互いに相手に頼っているので、おのずと、お互いに相手を大切にせざるを得ない。ここから、無理なく共生の力学が生まれ出てくるはずです。つまりは、「お互いさまのおかげさま」。ところが、この「お互いさまのおかげさま」を、とてつもなく嫌がる人々がいる。それが権力志向の国家主義者たちです。彼らが人々の不安感につけ込む材料として、グローバル化を諸悪の根源に仕立て上げようとしている。その意味で、今は共生と強権の綱引きの時代だと感じます。いみじくも、マクロン氏はルペン氏の言い方に対抗して、今は「愛国主義対国家主義の対決の時」と言っています。この識別の仕方は鋭いし、重要だと思います。
諸悪の根源はグローバル化ではないのです。問題はグローバル化という現象に人間がどう対応するか。政治も政策も経営も、まだ、グローバル時代とのまっとうな付き合い方をつかんでいないと思います。確かにグローバル化は激しい競争をもたらし、人もお金もおとなしく国境の中にとどまってはくれない。問題は、この状況をどう賢く制御し、どううまく生かすかです。政治も経営も英知と魂が問われている。グローバル化を生かすも殺すも、バケモノにするのも、救世主にするのも、人間の知恵と心がけ次第だと思う。
今の時代は、ニセ予言者にご用心です。ニセ予言者は犯人捜しがお好き。「悪いのはヤツラだ。ヤツラをやっつけろ」と、不安や不満を抱く人々をけしかける。そして、「やっつけるためには力が必要だ」というわけで、我々を強権的国家主義の方向に引っ張っていこうとする。ニセ予言者と化すことで、自らの権力欲を満たしたい。もてはやされたい、偉くなりたい、注目されたい、力を持ちたい。そういう人たちがボコボコ出てくる。それが今の危険な時代状況です。フランス大統領選は、その縮図のように思います。
▽はま・のりこ 1952年、東京生まれ。一橋大経済学部卒業後、三菱総研に入社し英国駐在員事務所長、主席研究員を経て、2002年から同志社大教授。「2015年日本経済景気大失速の年になる!」(東洋経済新報社、共著)、「国民なき経済成長」(角川新書)など著書多数。
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