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「シェアハウス」に例えて理解するフランス大統領選とEU、本当のポイント=矢口新
2017年4月20日ニュース
フランス大統領選挙が4月23日に行われる。世論調査で支持率トップのル・ペン候補はEU離脱(フレグジット)を主張しているが、ではなぜEUはここまで嫌われたのだろうか?日本人がこの問題の本質を理解するには、EUを「28世帯が共同生活をしているシェアハウス」だと考えると分かりやすい。(『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』矢口新)
プロフィール:矢口新(やぐちあらた)
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。
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※
仏大統領選でどの候補が勝とうとも、EUは瓦解に向かっている
最新の世論調査
フランス大統領選挙の第1回投票は、次の日曜日4月23日に行われる。
世論調査における先週13日時点での各候補者の支持率は、極右国民戦線党首のル・ペン候補(Marine Le Pen:48歳)が23.5%で、中道系独立候補の前経済相マクロン候補(Emmanuel Macron:39歳)の22.5%と均衡。両氏に続く共産主義急進左派のメランション候補(Jean-Luc Melenchon:65歳)が19%、保守系共和党の元首相フィヨン候補(Francois Fillon:63歳)が18.5%だった。
有権者の40%がまだ誰に投票するか決めていないことは、4人の主要候補の誰もが決選投票の2人に選ばれる可能性があることを示している。仏ルモンド紙は「前代未聞の不確実性」と表現した。
ル・ペン候補とフィヨン候補は、政治資金の不正使用疑惑を抱えている。そうした対立候補の失策と、自身の討論のうまさから、メランション候補が3位に急浮上した。
先日行われた全候補揃ってのテレビ討論会後の「誰が最もアピールしたか」との調査では、メランション候補が25%、マクロン候補が21%、フィヨン候補が15%の支持を得、ル・ペン候補は11%に留まった。
メランション候補は、富裕層への大幅課税やNATO離脱、EUとの関係再交渉などを公約に掲げている。EUやグローバリゼーションに懐疑的なところはル・ペン候補と近いが、移民政策ではル・ペン候補を激しく批判している。
一方、直近の別の調査では、第1回投票の支持率は、ル・ペン候補23.5%、マクロン候補23.1%、フィヨン候補18.8%、メランション候補18%となっている。
前代未聞の不確実性とはいえ、大勢のコンセンサスとしては、4月23日の第1回投票こそル・ペン候補が優勢だが、5月7日の決選投票ではマクロン候補が優勢で、国民の大勢がEU離脱を望んでいないことから、最終的にはマクロン候補が圧勝する可能性があるとされる。
本当のポイント
最終的にフランス大統領になるのはやはりマクロン候補か?それともル・ペン勝利のサプライズがあるのか?それぞれのケースにおける短期的な市場の動きはもちろん気になるところだが、それは後述するとして、ここではまず、より根源的な問題である「EUはなぜ嫌われるのか?」について整理してみたい。
なぜなら、今回の大統領選挙でどの候補が勝ったとしても、フランスはもちろん、ドイツやイタリア、他のユーロ圏の国々の火種が消えるわけではないからだ。
どうして、EUは嫌われる?
英国はEUからの離脱を公式に通知した。イタリアや他のEU諸国でも、EU離脱を掲げる政党が勢力を伸ばしている。
フランスの世論調査では、国民の3分2以上がEU残留を望んでいるとされるが、大統領4候補の支持率で見ると、離脱派あるいは関係再交渉派が半分を占めている。
1950年のシューマン宣言(Robert Schuman:フランスの首相・外相)に始まり、戦争のない友愛に満ちた欧州、平等な発展を旗印に、長い年月をかけて拡大、深化させてきた欧州の共同体が、ここにきて、どうしてここまで嫌われるようになったのだろうか?
ここで、問題をより身近に捉えるために、EUを28世帯が共同生活をしているシェアハウスに例えてみよう。
「シェアハウス」に例えて理解するEU問題の本質
<所得が違う者同士の共同生活>
今、EUというシェアハウスで共に暮らしている各世帯は、大所帯から核家族まで、それぞれサイズが大きく違い、所得や生活費もそれぞれ違う。
とはいえ、1つ屋根の下に住んでいるので、生活ではシェアハウスのルールが優先される。そして、そのルールの設定や監督を行う管理組合では、大所帯が大きな発言権を持っている。
特に2000年のユーロ導入以降、管理組合の会計(ECBの金融政策)を実質的に握った、ドイツ家の発言権が突出した。
英国を除く27世帯もの管理組合の会計を握ったドイツ家のメリットは、多くの経済指標に明白に表れている。
<財布を握るとこんなに有利>
ここでは最も生活に密着した、失業率の推移だけをご紹介する。2005年末の時点で、ドイツの失業率はグラフに挙げた英独仏PIIGS8カ国中トップの11.2%だが、2015年末には高失業率に苦しむ他のユーロ6カ国を尻目に、ユーロ圏平均の半分以下である4.6%に低下する。失業者数も半分以下となった。
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転機は2007年に起きた米国発の住宅バブルの崩壊と、続く2008年のリーマンショック後の大金融危機だった。この時の金融政策が各世帯の明暗を分けた。
1つのシェアハウスに、言葉も人種も違う人たちが集まって住むのだから、その暮らしにはメリットもあればデメリットもある。このうち、メリットは共同生活維持のために公に喧伝されているが、デメリットはあまり公言されない。なぜなら、デメリットは不公平や差別など、本来はあってはならない事柄だからだ。
これは、日本でも会社や学校など、人が集まるところでは普通に見られることだ。管理者は建前を強調し、不都合を訴えるものを異端として排斥する。
<賢かったイギリスと、働きたくても働けないギリシャ>
シェアハウスの中で、英国家は特殊で、ユーロに加わらないことで財布(経済政策)は共有しなかった。それが上記の失業率において、英国だけがドイツ並みの低水準となっている理由だ。
一方、財布をハウスの管理組合に預けたギリシャ家は、家族が病気の時の出費で、管理組合から大借金をした。所得増のために働こうとしたが、職探しや交通費の工面もできず、とにかく切り詰めて早く借金を返せと迫られた。
同じく病人を出したアイルランド家は、禁止されている副業で乗り切った。
<ホームレスの受け入れ義務が発生>
加えて、博愛を唱えるハウスの取り決めで、各世帯はホームレスの受け入れを義務付けられた。ホームレスには優秀な者も多く、概ねは各世帯に溶け込んだが、なかには問題を起こす者もいた。
また受け入れ世帯の中では、親の愛情を盗られたと、ひがむ子供も現れた。親の中には、博愛と自分の子供への愛情との葛藤に悩む者も出てきた。
本来であれば、人としての在り方、親としての在り方、労働や消費における性向、生活態度、それぞれがそれぞれの考え方であっていいはずだ。ところが、シェアハウス内では、個々の多様性が否定され、共同生活のメリットのために、同じように振る舞うことを要求されるようになった。そして、各家庭はドアに鍵をかけることを禁じられた。
<「理想の住処」から「居心地の悪い場所」へ>
一方で、共同生活のメリットとして縮小するはずだったシェアハウス内の貧富格差は、逆に拡大。ドイツ家が豊かになる反面、ギリシャ家などは持ち物を売り払い、食費を切り詰めても、いつまで生きられるか分からないまでに困窮した。
当然、ハウス内の人間関係はギクシャクし、シェアハウスは理想の住処どころか、居心地の悪い場所に成り下がった。そして、それぞれの家族内でポピュリズムという名の反抗も始まった。
<ドイツの身勝手な内輪揉め>
実は、ユーロによるメリットを享受してきたドイツ家でも反抗が起きている。移民問題に加え、これまでの経緯はともかく、現状ではドイツ家がギリシャ家を養っている形となるので、割に合わないと不満を持つ家族が増えているのだ。
英国家は、EUの拡大・深化と共に強権を振るうようになった管理組合の下にいてはもはや家族を守れないと、離脱を決めた。とはいえ、決めたのは家長ではなく、家族会議での多数決だった。家長はそれを事務的に実行に移すだけ。同じ釜の飯を食っていたシェアハウスの連中とは争わず、お互いの利益になるような形でと進めているが、ハウス側は多額の慰謝料を求めている。
英メイ首相は、6月8日に下院選挙を前倒しで行うと発表した。ブレグジットの話し合いに向けて、首相自身への委任と、議会の支援の強化を狙っている。メイ首相は、ブレグジットの国民投票まではEU残留派で、ブレグジットに関する信任を受けていない。また、2015年の下院選挙で保守党が僅差で多数派になったことで首相になったものの、議会の基盤が弱い。そんな中、最近の世論調査では保守党が労働党に21ポイントの大差をつけたため、2020年に予定されていた下院選挙の前倒しを決めた。
一方、ギリシャ家などは、もはやハウスを出れば路頭に迷うことは明白だ。フランス家を含む他の家族も財布を管理組合に預けた状態では、ハウスを離れるのに、どれだけのコストがかかるか分からない。
もし日本の財布を中国が握るとしたら?
日本人にとって、このたとえ話は、アジア諸国連合というシェアハウスができ、管理組合の実権を大所帯である中国が握ることを想定すると分かりやすいかもしれない。
その際、「中国はゴリ押しするが、でもドイツは常に公正のはずだ」と安易に考えない方がいい。もしそうならば、フランス人が国民戦線ル・ペン候補の主張にこれだけの支持を与えるはずがないからだ。
Next: EU離脱を掲げるル・ペン候補は「フランス国民の本音」を代弁している
マリーヌ・ル・ペン(Marine Le Pen)は怪物でも凶人でもない
同候補の経歴等はウィキペディアなどに譲り、ここでは国民戦線の主張を箇条書きでご紹介する。
1. ユーロはドイツのためにあるもので、フランスにとってはあばら骨に刺さったナイフのようなものだ。少しの動きでも痛みを伴い出血する。
2. ユーロ圏を離脱し、自国通貨を取り戻す。
3. フランスのEU離脱「フレグジット(Frexit)」の国民投票を行う。
4. フレグジットはフランス人の雇用を増やし、失業率を引き下げる。
5. 輸入税と、外国人雇用税を導入する。
6. 保護や国境検査のない、完全自由な貿易や人の移動は望まない。移民を制限し、不法滞在者を追放し、現在、すべての住民に与えられている無料教育を含むいくつかの権利を、フランス国民だけに制限する。
7. 商業銀行が小企業にも貸し出すように仕向け、金利の上限を引き下げる。
8. グローバリゼーションや自由貿易は、フランス経済の妨げとなる。
9. まずEUと話し合いたいのは、フランス政府に主権を返して貰うことだ。自国通貨、金融、財政政策、領土、国境検査、国民のための経済を取り戻す。
10. これらが認められ、EUが各国に自由と主権を認める、新しい「緩やかな結合」になるならば、フランスはEUに留まることができる。
11. でなければ、英国のようにEUを離れることをフランス国民に問いかける。国民戦線はフランス国民を守りたいだけで、別段、理不尽なことを主張しているのではない。
このように、ル・ペン候補が採り上げている問題は、深刻かつ本質的な問題だ。一部の報道にあるような、「極右の差別主義者が、ブレグジットやトランプ大統領に乗じて支持を伸ばしている」だけではないのだ。
フランスを苦しめるトリレンマ
フランス国旗の三色旗は、「自由、平等、友愛」を表している。
しかし、主権と、自由な資金移動と、通貨の固定相場制が同時には成り立たないとする「国際金融のトリレンマ」のように、自由、平等、友愛もまた、同時には成り立たないものなのだろうか?EUやユーロ圏の現況を見、ル・ペン候補の主張を聞いていると、どうもそのように思える。
日本人にとっても身近なのは、グローバリゼーションと自由貿易だろう。これらや国際機関がもたらす建前上のメリットを否定する人は少ない。しかし、実際の運営は強者のもとで行われ、弱者は次第に追い詰められていく。
国内グローバリゼーションと自由貿易を掲げる日本の都会と地方のように、現実に世界の格差は広がっている。
米国でも、2017年に入って3200を超える小売店舗が閉じられた。例えば、アマゾンは創業からの数年間、巨額の赤字を続けながらもシェア拡大を優先した。巨大企業のシェア拡大は、中小企業だけでなく、下図のような大企業でも店舗の閉鎖を迫られる。グローバリゼーションと自由貿易の実態は、こういったことを世界中に押し広げているのだ。
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誰が世界の経済成長率を押し下げているのか?
一方、グローバリゼーションと自由貿易のもと、米トランプ大統領の保護主義がまだ出現していない2016年に、世界の貿易量の伸びが経済成長率を下回った。
2016年の世界貿易量は前年比1.3%増だった。世界の経済成長率は2.3%増で、15年ぶりに貿易の伸びが経済成長を下回った。モノの貿易総額は米国が3兆7060億ドルと、中国の3兆6850億ドルを上回り、4年ぶりに首位に復帰した。米国は輸出入とも前年比3%減だったが、中国は輸出が8%減、輸入5%減で下げ幅が米国よりも大きかった。
金融引き締め政策では、利上げや債券の売却により中央銀行が市中から資金を吸収することで、景気の加速を押さえ、インフレ率を引き下げる。現状の世界経済では、一部の大富豪が巨額資金を吸収することで、経済成長率を押し下げ、デフレ環境をつくっている可能性も否定できない。
Next: 中銀外貨準備担当者の70%がユーロ圏諸国の国債残高を減少させている
新たな波乱要因
世界各国80の中央銀行に対する調査では、中央銀行の外貨準備担当者のうち70%が、ユーロ圏諸国の国債残高を減少させていることが分かった。うち、3分の1はユーロ圏諸国の国債価格の急落が最大懸念と考えている。彼らの多くは英国債を買っているようだ。世界の中央銀行の多くは、ロンドンが国際金融の中心地としての地位を保てるかは不透明としながらも、ブレグジットの悪影響は大きくないと考えている。
ユーロ圏諸国の国債を売る最も大きな理由は、利回りの低さだ。例えば、ドイツ国債の利回りは以前より大きく上昇し、10年債は0.20%前後とプラスに転じているが、残存期間8年債までは未だマイナス利回りだ。フランス国債でも、残存期間4年債まではマイナス利回りとなっている。一方の英国債は短期から長期まで、すべてがプラスの利回りだ。
また、年金や保険などの長期投資運用では、マイナス利回りは投資対象とは成り得ないので、投資適格の社債を買うため、社債の価格が歴史的な割高となっている。ECBの金融政策に変更があれば、これらが急落するリスクは高い。
ちなみに、彼らの80%は、トランプ大統領の当選により、米国債への見方を変えたことはないと答えた。
※Even after Brexit, central banks choose pounds over euros: survey – Market Watch
資金の借り手が、貸し手から金利を受け取るマイナス金利は、市場経済ではあり得ない。マイナス金利政策は、市場経済を根底から揺るがす暴挙だ。それがまかり通っている諸国は、強権により市場経済を押え込んでいる。
強権が人々の日常生活を圧迫するのは珍しいことではない。歴史を見れば、移動や職業選択、婚姻、出産などの自由が保障されたのは、ごく最近になってのことだ。ポピュリズムなどと、大衆の意向を見下げた表現こそが、エリート官僚が社会を主導できるとの思い上がりを示している。そうしたエリート官僚が、「資金の借り手である国が、貸し手である民間銀行から金利を受け取るように」仕向けたのが、マイナス金利政策だ。
ブレグジットはそうしたEUの強権からの離脱を求めたものだ。EUによる強権の弊害は、ユーロ圏であるフランスやイタリア、スペインなどで大きいので、フランス大統領選挙が投げかける問題提起の意味は大きい。ル・ペン候補が勝とうが負けようが、EUやユーロが機能していない事実には変わりがなく、そのことをEU内約半数の人々が気付き始めているのだ。
ここにきて、新たな波乱要因として浮上してきたのが、トランプ大統領のシリア攻撃だ。トランプ大統領は選挙公約を次々と反故にしているが、ここでも自らが否定していた「世界の警察」としての役割を復活させた。しかも、自国で問題となっている警察官と同様、証拠もなしに印象だけでの、いきなりの発砲だ。
このことは、2つの点で波乱要因となりうる。1つは、ル・ペン候補を、トランプ大統領と重ね合わせる人は、ル・ペン候補もまた「嘘つき」だと見なしかねないことだ。
もう1つは、米軍の関与がなくなることにより、一時は政府軍の勝利で終わると思われ始めていた、シリア難民問題の出口が、また見えなくなったことだ。シリア難民は、アサド政権が(圧制により?)安定していた時ではなく、不安定な内戦状態になってから急増した。シリア難民問題が継続する、あるいは好戦的なトランプ米国がシリア以外の国々からも難民を増加させることは、ル・ペン候補の移民政策が支持されることにもつながるのだ。
Next: フランス大統領選挙でドル/円相場と日本株はどう動く?
フランス大統領選挙でドル/円相場と日本株はどう動く?
先の米国によるシリア攻撃の時に円が買われたが、ブレグジットでも、欧州債務危機でも、リーマンショックでも円が買われた。仮にル・ペン候補が当選し、フレグジットとなっても円が買われ、円高を嫌気して日本株が売られるのだろうか?
昔は、有事と言えばドル買い、あるいはスイス買いだったが、過去20年ほどは、有事になればドル円が売られるようになった。有事のドル売り・円買いだ。シリア攻撃の時は、円が上昇率のトップだった。どうして、有事に円が世界で一番買われるのだろうか?
日本は経済の規模こそ世界で有数だが、国民1人当たりの規模や成長率では、並みの国でしかない。政府債務のGDP比ではダントツで世界一。株式のパフォーマンスも目立って悪い。日本国債の市場はほぼ機能不全だ。
このうち、世界一は政府債務のGDP比だが、これはベストではなく、ワーストなので、有事の際に安全通貨となる理由とはなりえない。
実は、日本が世界一であるのは他にもある。世界で最も長く超低金利を続けている国であり、世界一対外純資産を持っている国なのだ。つまり、日本国内の運用先が乏しいために、外国資産での運用を大規模に行っている。
有事とは、それが深刻であればあるほど、リスク回避が起きる。つまり、持っているものを売り、現金に換える行動につながるのだ。円買いが起きるのは、外国人が持っている円資産より、日本人が持っている外貨資産の方が大きいからだ。日本人が有事により外貨資産を売らなくても、通貨ヘッジでも円が買われる。金利差を利用してのキャリートレードのアンワインドでも、円買いが起きる。
もっとも、日本そのものが有事となり、外国人が本格的に円資産を売る一方で、日本人も外貨に逃避すると、その際はドル高円安となる。その意味では、有事の円買いが起きている間は、まだ日本は平和だということだ。
リスク回避が円高に繋がりやすいという構図を勘案すれば、フランス大統領にル・ペン候補がなれば、一時的に円高に振れる可能性がある。マクロン候補なら、いわゆるノーイベントかもしれない。マクロン候補の勝利は現状維持を意味するので、じり貧状態が続くことを意味するからだ。
とはいえ、これはあくまで短期の話。どちらが勝っても、ドイツやイタリア、他のユーロ圏の国々の火種が消えるわけではない。
円は実需や日米金利差、他のリスク要因で、より大きく動く。従って、一時的な振れを除いては、フランス大統領選を神経質に捉える必要はないと見る。仮に円高が続くようなら、日本株はGPIFや当局の支え無しには厳しいと言えるだろう。
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仏大統領選 投票始まる 4氏大混戦、決選投票の公算
2017/4/23 19:35
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【パリ=白石透冴】フランス大統領選の1回目投票が23日、約7万の投票所で始まった。即日開票され、23日深夜(日本時間24日朝)にも大勢が判明する見通し。極右、急進左派を含む4候補が僅差で競り合う。過半数を得る候補者は出ず、上位2人による5月7日の決選投票に進む公算が大きい。欧州連合(EU)との関係、移民政策、景気対策などが争点だ。
23日、フランス・リヨン近郊で大統領選の投票所を警備する警官(右)=ロイター
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23日、フランス・リヨン近郊で大統領選の投票所を警備する警官(右)=ロイター
各種の世論調査では中道系独立候補のエマニュエル・マクロン元経済産業デジタル相(39)と極右国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首(48)が首位を争う。僅差で共和党(中道右派)のフランソワ・フィヨン元首相(63)、急進左派のジャンリュック・メランション氏(65)が追う。
ルペン氏とメランション氏はEU離脱を問う国民投票の実施も辞さないほか、保護主義的な貿易を主張する。マクロン氏とフィヨン氏は仏はEUの主要構成国として発展すべきだとの考えで、自由経済を志向する。
20日にパリ中心部で起きた銃撃テロが投票にどう影響するかが注目される。世論調査ではマクロン氏が決選投票に進んだ場合、どの候補に対しても勝つ見通し。ルペン氏は決選投票に残っても、どの候補にも勝てないとの予想になっている。
投票率は70%程度と、過去の約80%より低くなるとの予測がある。投票率が低くなると、熱心な支持層を持つルペン氏に有利に働くと言われる。
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「弱いフランス」リスク、身構えるEU 仏大統領選投票
2017/4/23 21:20日本経済新聞 電子版
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欧州統合の先行きを決めるフランス大統領選の第1回投票が23日行われた。極右・国民戦線のルペン党首ら「反欧州連合(EU)」を唱えるポピュリストの2人が首位争いに食い込む際どい展開。だが穏健派が選挙戦を制しても安泰ではない。各国の関係者は「弱いフランス」が欧州を揺さぶるのではと心配する。
イタリアとドイツが憂う悪夢のシナリオ。それは「ルペン大統領」の外交デビューだ。イタリアは5月に主要7カ国(G7)…
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM23H03_T20C17A4FF8000/
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