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FX Forum | 2017年 04月 13日 18:45 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:
朝鮮半島有事の「日本売り」シナリオ
斉藤洋二ネクスト経済研究所代表
[東京 13日] - 「大統領不在」が長引く韓国で、青瓦台(大統領府)の安全保障対応力を不安視する声が強まる中、核保有と弾道ミサイルの高度化を誇示する北朝鮮と、「力の外交」に回帰するトランプ米政権の対立が激化。朝鮮半島情勢は緊迫の度を高めている。
朝鮮半島情勢の緊迫化はもちろん過去何度も繰り返されてきたが、日本にとってはこれまで近くて遠い話題でもあった。しかし今や、秋田沖に再三ミサイルが落下するなど経済・金融面のみならず物理的被害の可能性も排除できなくなっており、警戒レベルを一段と引き上げる必要がある。
ついては朝鮮半島リスクの本質を整理し、「有事の円買い」という長年使い古されたアクションプログラムの有効性を点検したい。
――関連コラム:北朝鮮有事の円相場シミュレーション
<常に「有事の円買い」だったわけではない>
「愚者は己の経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」とはプロイセンの宰相ビスマルクの名言だが、その教えるところは固定観念そして感情にとらわれることなく事実を歴史に学びつつ理性的に考えることの重要性であり、地政学リスクもその例外ではない。
1973年の変動為替相場制移行以来の44年間を振り返っても、地政学リスクはたびたび顕現化し、金融市場を揺さぶってきた。この間、特に円相場に大きな影響を与えた3種類の事案と言えば、次のようなものとなるだろうか。
●第4次中東戦争(1973年)、イラン革命(1979年)、イラン・イラク戦争(1980―88年)、イラクのクウェート侵攻(1990年)とその後行われた湾岸戦争(1991年)など日本のエネルギー事情への不安を呼び起こした事案
●世界貿易センター爆破事件(1993年)や米同時多発攻撃(2001年)など世界のマネーが集中する米国経済を揺るがした事案
●阪神・淡路大震災(1995年)や東日本大震災(2011年)など日本経済を直撃した自然災害
このうち最初に挙げた中東発の事案では、相場は初期反応としては原油枯渇への恐怖でパニック的に円安に振れた。ただ、それは一過性の「感性による円売り」とでも言うべきものだった。その後、冷静さを取り戻した投資家による「理性の円買い」が勝り、円相場は元の水準へと回帰した。
実際、湾岸戦争の引き金となった1990年8月のイラク軍によるクウェート侵攻の第一報で瞬間2―3円程度の円安に振れたが、その後の事態の長期化とともに相場の自律調整機能が働いた。為替需給や金利といった要因に支配されるところになり、秋には円は大きく上伸したのだ(8月の1ドル150円水準から120円台前半水準まで円高ドル安が進行した)。
2番目の米国発の事象では、2001年9月の米同時多発攻撃発生後にはニューヨーク株式市場が4営業日にわたって閉鎖され、再開すると暴落、さらにドル売りがもたらされた。この時期を境にそれまでの「有事のドル買い」から「有事のドル売り」へと投資家のアクションプログラムが更新されたように見受けられる。実際、2003年3月のイラク戦争勃発時においては、ドルは開戦前に上昇したが、開戦の報を受けて下落に転じた。
3番目の日本国内の自然災害による相場変動については、多くの投資家は国内資産の海外逃避を進めるというアクションプログラムを用意していると思われていた。よって円安へ動くと見られていたが、実際は2011年3月の東日本大震災の時、国内の資金需要を受けた機関投資家の海外資産売りを機に円買いが奔流となり、秋に1ドル75円まで上昇したことは記憶に新しい。
この点、行動経済学者のダニエル・カーネマン氏が著書「ファスト&スロー」で指摘している人間の思考プロセスが参考になる。同氏によれば、人間の思考には、直感的な「速い思考(システム1)」と、熟考型の「遅い思考(システム2)」がある。
つまり、実際の為替市場においても、地政学リスクへの反応は短期的にこそ「システム1」である心理的要因に支配されて、避難行動としてポジション手じまいの方向へと傾くが、心理面で平静を取り戻すと「システム2」に基づく行動に移り、需給や金利など本来の相場決定要因に視線が戻る(自律調整機能が働く)と想定できるのではないだろうか。
<システム1もシステム2も円売り示唆>
では、朝鮮半島有事に対し、投資家がとるべき対応について検討してみたい。朝鮮半島リスクの特徴は、前述した中東発や米国発の事案とは違い、有事の際は、地理的に近い日本(平壌―東京間はわずか1300キロ程度)も直接的・物理的な被害を受ける当事者となる可能性が高いことだ。
これまでの北朝鮮による核実験やミサイル発射はおおむね市場を株売り・円買いへと突き動かした。しかし、上述したように、かつての有事においては、必ずしも円買いではなく円売りの反応が散見されたことには注意が必要だ。
日本の近接したところで発生し、また物理的な被害まで想定される以上、恐怖感など直感が判断を左右することは明らかである。よって、円売りへの反応が正解なのではないだろうか。少なくとも「有事の円買い」「有事のドル売り」に固執するのは危険だ。
基本的に有事に直面した投資家がとる共通行動は、自己の安全そして自らの資産の保全を図ることであり、必然的に「ポジションクローズ」が行われるだろう。前述のカーネマン氏が指摘するように、人間は何よりも損を嫌うとの特性を有している以上、当然の行動だ。
目下の市場のポジションは過去2―3年の相場つきからほぼ中立的から若干の円買いと言えるだろう。したがって、少なくとも海外勢が行う有事のポジション調整の多くは外貨買い・円売りによる手じまいとなるのではないか(ただ、不安感から足元の円キャッシュを増やそうとする日本勢の外貨売り・円買いの動き、あるいは「有事の円買いドル売り」ストーリーに賭けた投機も、「システム1」的な行動として、ある程度起こる可能性はある)。
また、東京株式市場の外人投資家の行動を予測すれば、「日本買い」のポジションをひとまず縮小させるだろう。つまり、日本へのエクスポージャー圧縮を目指すヘッジの動きが主流となり、短期的なアクションは株売り・円売り、つまり「日本売り」ではないだろうか。
もちろん、その後の長期的な相場の動きについては、為替需給と金利などを眺めて均衡点を模索することになるだろう。ただ、熟考を経た「システム2」の行動が、円買いにシフトする保証はない。
特に朝鮮半島リスクが、1)米朝間で「軍事行動」の脅しが前面に押し出される現段階から、2)北朝鮮との関係が深い中国を巻き込み、米中対立の恐れが高まる次の段階、そして3)北朝鮮と友好関係にあるシリア、イランさらにその後ろ盾であるロシアをも巻き込んだ国々と西側諸国との軍事対決懸念が高まる最終段階へと進展していくようなことになれば、発火点に近い日本からの資金流出はいずれ段階的に加速することになろう。
このように考えると、システム1でもシステム2でも朝鮮半島有事は日本売りを示唆しており、為替ディーラーや投資家の長期行動はドル買い・ユーロ買い・円売りではないだろうか。つまり、「有事の円買い」のアクションプログラムは、こと朝鮮半島の事案絡みでは「有事の日本売り」へと上書き訂正する必要があるように思えてならない。
*斉藤洋二氏は、ネクスト経済研究所代表。1974年、一橋大学経済学部卒業後、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。為替業務に従事。88年、日本生命保険に入社し、為替・債券・株式など国内・国際投資を担当、フランス現地法人社長に。対外的には、公益財団法人国際金融情報センターで経済調査・ODA業務に従事し、財務省関税・外国為替等審議会委員を歴任。2011年10月より現職。近著に「日本経済の非合理な予測 学者の予想はなぜ外れるのか」(ATパブリケーション刊)。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。
コラム:朝鮮半島有事の「日本売り」シナリオ=斉藤洋二氏
コラム:北朝鮮有事の円相場シミュレーション=佐々木融氏
コラム:英国EU残留でもドル安円高基調は不変=内田稔氏
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http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-yoji-saito-idJPKBN17F0DO
FX Forum | 2017年 04月 13日 18:46 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:
トランプ砲でドル100円割れの扉は開くか
村田雅志ブラウン・ブラザーズ・ハリマン 通貨ストラテジスト
[東京 13日] - 地政学リスクの高まりやトランプ米大統領のインタビューでの発言を機に、ドル円は下落基調を強めている。このままドル安・円高が続くとの見方も一部にあるようだが、米債利回りは昨秋の米大統領選後の下値を割り込んでいない。日米金利差を考えれば、ドル円の一段安リスクは、さほど大きくないと思われる。
しかし、イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長が、トランプ大統領の意向をくむ形で利上げを先送りする姿勢に転じれば話は変わる。トランプ大統領と米議会との協議が不調に終わり、財政刺激の早期実施も期待しにくくなれば、ドル円が100円ちょうどを目指す展開も視野に入る。
トランプ大統領は12日、米紙とのインタビューで、ドルはあまりに強くなりつつあり、最終的には買いがあると発言。中国の為替操作国認定は見送られるとの見通しを示した。大統領はFRBの金融政策にも触れ、自身は低金利政策が好ましいと述べ、来年2月に任期を迎えるイエレン議長が再任される可能性があると発言した。
トランプ大統領のインタビュー記事が伝わると、ドル円は109円台後半から109円台前半に急落。その後もじり安の動きを続け、翌13日の朝方には108円台後半と、200日移動平均水準まで下落した。仮に200日移動平均水準を大きく割り込めば、ドル円の下値余地は、米大統領選から昨年12月半ばにかけての上昇(いわゆるトランプラリー)の61.8%戻し水準である107円台後半まで広がることになる。
ただ、トランプ大統領がドル高をけん制する発言をしたことで、米国政府がドル安姿勢を鮮明にしたとの見方もあるようだが、それは違うだろう。トランプ氏は大統領就任前後にもSNSなどを通じドル高をけん制する発言をしており、今回の発言も過去の内容と大差がない。
トランプ政権は、大統領令、報告書、声明といった公式文書でドル高是正に向けた動きをみせておらず、ムニューシン米財務長官が加わった独バーデンバーデン20カ国・地域(G20)会合声明では、通貨の競争的な切り下げを回避することや、競争力のために為替レートを目標としないというコミットメントが再確認されていることも忘れてはならない。
3月1日に公表された2017年通商政策課題をみてもわかるように、トランプ政権が目指すのは、米製造業の生産増と米国での雇用創出であり、そのための主な手段は二国間交渉である。ドル高是正は、通商政策課題でも触れられておらず、二国間交渉を有利に進めるための駆け引き材料にすぎないとみるのが自然と思われる。
<イエレン議長による忖度(そんたく)リスク>
むしろ、トランプ大統領のインタビューで注意すべきは、ドル高のけん制や、中国の為替操作国認定見送りではなく、イエレンFRB議長の再任について触れたことだろう。
大統領選の期間中、トランプ氏はイエレン議長がオバマ政権を支援するという政治的な配慮から作為的に低金利政策を続けており、「彼女は恥じるべきだ」と極めて強い口調で批判。仮に大統領に就任したら、イエレン議長の再任を認めない意向を示した。
しかし、今回のインタビューでは、低金利政策が好ましいと考えており、イエレン議長を「尊敬」していると述べ、来年2月の任期後も議長として再任される可能性を指摘した。選挙期間中とは正反対である。
トランプ大統領が、何かに対する見方や評価を180度変えることは珍しいことではない。例えば、選挙期間中には日米安保体制の見直しを示唆したが、安倍晋三首相との初の首脳会談では、日米安保体制を含めた日米同盟の強化が重要であるとの認識が共有された。中国の為替操作国認定についても、大統領就任直前の公約を今回のインタビューで撤回した。
こうした過去の言動から推察すると、取引相手と見なされる対象に対し、さまざまな投げかけをすることで相手を揺さぶり、有利な状況に引き込もうとするのがトランプ大統領の基本スタンスであると言えそうだ。この考えが正しいとすれば、今回のインタビューで明らかになったことは、イエレン議長もトランプ大統領の取引相手に見なされたということである。
取引相手と見なされたイエレン議長がとり得る選択肢は大きく2つある。1つは、米国中央銀行のトップとして、政府から独立した考えのもと、金融政策を遂行するという選択だ。
イエレン議長は10日、米ミシガン大での講演で米経済はかなり良い状態であると指摘。利上げを長く待ちすぎたくはないと述べ、早期の金融引き締めに意欲をみせた。また、金融政策のスタンスは正常化に近づいているとも述べ、現在の金融政策はリーマン・ショック後から続いた緊急避難的なものではなく、正常化に向けたものであるとの認識を示した。
こうした発言から考えれば、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での追加利上げは十分にあり得ることになる。日米金利差の大幅な縮小は回避されることになり、ドル円は底堅さを増す展開が予想される。
イエレン議長のもう1つの選択肢は、トランプ大統領の意向を「忖度」し、これまでの主張や発言を翻す形で利上げを休止することだ。この場合、6月FOMCでの利上げはあり得ず、12月FOMCまで利上げを休止することも考えられる。米経済が軟調になれば、来年まで利上げを見送ることも可能になるだろう。
これによりFRBに対する市場からの信任は低下するかもしれないが、イエレン議長が再任される可能性は高まる。イエレン議長が議長職に固執すれば、こうした動きを選択することも考えられなくはない。
市場では利上げ先送り観測が強まることで日米金利差の拡大が期待しにくくなる。トランプ大統領と議会との調整が不調に終われば、トランプ政権による財政刺激の早期実施も難しくなり、日米金利差は縮小に向かうだろう。ドル円は、トランプラリーの全値戻しの展開となり、昨年8月下旬以来の100円割れが現実味を帯びる。
*村田雅志氏は、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨ストラテジスト。三和総合研究所、GCIキャピタルを経て2010年より現職。近著に「人民元切り下げ:次のバブルが迫る」(東洋経済新報社)
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。
(編集:麻生祐司)
*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。
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World | 2017年 04月 13日 18:13 JST 関連トピックス: トップニュース
焦点:トランプ外交が急転換、中国に接近 対ロ関係は悪化
[ワシントン 12日 ロイター] - 米国のトランプ大統領が就任から3カ月足らずで、対外政策を急転換している。トランプ氏は、就任前から繰り返し中国を批判、同国を為替操作の「グランドチャンピオン」などとこき下ろしていた。
北大西洋条約機構(NATO)についても「時代遅れ」と述べ、ロシアとの関係改善を目指していた。
ところが12日の一連の会見やインタビューでは、対ロ関係の悪化と対中関係の改善に言及。NATOについても、世界の脅威の変化にうまく対応していると持ち上げるなど、態度を一変させた。
ストルテンベルグNATO事務総長との共同会見に臨んだトランプ氏は「私はNATOは時代遅れだと語った。もはや時代遅れではない」と発言。米ロの接近に神経を尖らせていた欧州諸国の懸念が後退する可能性がある。
対中関係については、習近平・中国国家主席との「絆」に言及。中国の台頭を警戒するアジア諸国の間に困惑が広がるとの見方も出ている。
政権内部では、黒幕と呼ばれたバノン首席戦略官が、大統領の娘婿クシュナー上級顧問と対立。バノン氏の影響力低下が指摘されている。
<「史上最悪の冷え込み」>
トランプ氏は、選挙戦の最中の昨年9月、「(ロシアのプーチン大統領が)私を称えれば、私も(プーチン氏を)称える」と発言。プーチン氏との関係強化に意欲を示していた。
ところが、この日は、シリアのアサド大統領を支持するプーチン氏に懸念を表明。「ロシアとの関係は、もしかしたら史上最悪に冷え込んでいるかもしれない」と述べた。
一方、フロリダの別荘で会談した中国の習主席については、「絆」で結ばれていると発言。会談前は「厳しい」通商交渉を予想していた。
また、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙とのインタビューでは、中国を為替操作国には認定しない意向も表明。選挙期間中は、就任初日に同国を為替操作国に認定すると主張しており、見解を180度転換した格好だ。
オバマ前政権で国防次官を務めたクリスティーン・ワーマス氏は、トランプ氏について、就任直後は「(外交政策の)習得に困難を来たしていた」が、その後「多くの問題について、以前よりも繊細な、深い理解を示し始めている」と分析している。
この日の一連の発言は、選挙期間中の側近の影響力が低下し、マティス国防長官、ティラーソン国務長官、マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)の影響力が増していることを浮き彫りにしたといえそうだ。3氏はいずれも、ロシアを強く警戒している。
トランプ政権では今年2月、大統領補佐官に起用されたマイケル・フリン氏が、政権発足前にロシア大使と会談していたことが発覚し、辞任を余儀なくされた。バノン首席戦略官も、クシュナー上級顧問と対立しており、トランプ氏が事態の打開を目指す中での、一連の発言となった。
トランプ氏は11日付のニューヨーク・ポストとのインタビューで「スティーブ(・バノン氏)は好きだが、彼が私の陣営に参加したのは(選挙戦の)最終盤だ」と発言。バノン氏を強く支持する発言を避けている。
*見出しを修正しました。
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Column | 2017年 04月 13日 17:32 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:シリアと北朝鮮クライシス、米政権の「危険な綱渡り」
Peter Apps
[11日 ロイター] - トランプ米大統領が命じたシリアへのミサイル攻撃は、北朝鮮に対してメッセージを発信する意図を含んでいたのか──。そんな疑問があったとしても、米海軍の空母打撃群が週末に、朝鮮半島の近海に向かったことによって解消されたはずだ。
シリア内戦と北朝鮮の核兵器開発という、トランプ政権が直面している2つの重要な外交危機には、奇妙な対称性が見られる。どちらも、米国にとって地政学上の2大ライバルであるロシア・中国との関係に亀裂を起こし、どちらについても容易な解決策は見当たらない。
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長にせよ、シリアのアサド大統領にせよ、米国政府は彼らが消えることを望んでいる。北朝鮮が抱く核兵器開発の野望には地域紛争を引き起こすリスクがあり、長引くシリア内戦は中東を不安定化させ、過激派組織「イスラム国」のような武装集団の温床となっている、と米国政府は考えている。
北朝鮮については、軍事的な選択肢はどれも好ましくない。ほとんどの選択肢には、誰もが避けたいと願っている紛争勃発のリスクが伴う一方で、恐らく同国の核開発計画には影響が出ないだろう。
オバマ前政権は現地の反政府勢力に限定的な支援を行うことでアサド体制を覆そうとしたが、成功しなかった。トランプ政権内には、地上部隊による大規模な介入を公然と主張する声はない。たとえトランプ大統領がそうした作戦に対する議会承認を獲得できたとしてもだ。
トランプ政権は、せめてロシアや中国と本格的な交渉を行うことで、両国が事態の収拾に手を貸すよう説得できないかと考えている。
その一方で、米国の軍事行動が拡大すれば、核保有大国のあいだで対立が生じるリスクが増大する。6日の米シリア攻撃において重要な発言権を有していたH・R・マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)とジェームス・マティス国防長官などの政権上層部は特に、このことを理解している。
シリア攻撃の際、米軍はロシア軍関係者の犠牲を出さないことを最優先し、ロシア政府に事前通告を行い、標的となったシャイラート空軍基地に駐留していたとみられるロシア軍顧問の危険を最小限に抑えた。
今回の攻撃が、米軍事力によるアサド政権打倒という広汎な試みの幕開けになるとは考えにくい。マクマスター補佐官は、週末に行われたフォックスニュースのインタビューのなかで、攻撃の目的はこれ以上の化学兵器使用を抑止することに大きく限定されていた、と述べている。
ティラーソン米国務長官のモスクワ訪問の主目的は、アサド政権に対する立場を変えるようロシアのプーチン大統領を説得することになるだろう。だが今回の攻撃によって、トランプ大統領がプーチン大統領との関係を改善する機会は損なわれてしまった。プーチン氏はティラーソン国務長官には会わない予定だと伝えられている。
少なくとも、ロシア政府がシリアとイランに対する軍事援助を強化する可能性は高いようだ。この援助には恐らく、今後の米軍事行動を困難にするような対空兵器の供給が含まれると思われる。
地中海の米艦による巡航ミサイル発射を受けて、ロシアはこの海域の哨戒のために艦艇を1隻派遣した。中国が保有する唯一の航空母艦も、朝鮮半島沖で訓練航行中だ。この海域での米軍の軍事行動があった場合、対抗する可能性があることを示唆している。
また、今回の米軍による攻撃の後、ロシアがシリア上空での飛行制限に関する交渉から離脱したと報じられており、不慮の事件が発生するリスクが高まっている。その後「衝突予防ライン」の再設定が行われたかどうかについて、報道は分かれている。
米軍によれば、合意の現状や用いられている手法についてコメントしないが、ロシア側当局者とのコミュニケーションは維持しているという。
こうした対立が、もっと広範囲での関係悪化を招く可能性もある。
米国のシリア攻撃に対して、ロシア政府がウクライナでの武力行使の拡大や東欧の不安定化といった形で報復してくる可能性がある。北朝鮮に対する攻撃によって中国との関係が崩壊することになれば、中国政府は南シナ海でいっそう攻撃的な姿勢を強めるだろう。
あるいは、ロシアや中国とも、サイバースペースでの報復を試みる可能性があり、そうなれば誰も収拾することができない新たな種類の戦争が始まることになる。
先週末のトランプ大統領と中国の習近平国家主席による米中首脳会談は、部分的にせよ、こうした食い違いのいくつかを解消すること、少なくとも、どちらの側もそれぞれの立ち位置を理解することを意図していた。トランプ政権は、米国が侮りがたい存在であること、それでも相互協力という選択肢を維持したいと考えていることを、シリアに対する攻撃を通じて、中国政府に伝えたいと願っている。
少なくとも今のところ、米国の狙いは成功しているかもしれない。
中国の国営メディア「環球時報」は、中国人アナリストの発言として、北朝鮮の核への野心は中国側の「我慢の限度」に近づいているとの見方を報じ、中国政府が北朝鮮に対してより強硬な姿勢を取る可能性を示唆した。
ただし、米軍事行動に反対する中国政府の立場も改めて報じられており、このアナリストを含めた専門家は、そうした軍事行動が「耐えがたい結果」をもたらす可能性がある、と警告している。
米国政府は、北朝鮮やシリアの指導部に対する心理的圧力を維持する姿勢だ。米当局者によれば、アサド大統領を直接狙う「暗殺作戦」という選択肢も検討こそされたが、この段階で却下されたという。また米軍部隊は、北朝鮮の金正恩氏への直接的な攻撃も訓練しているという。
今のところは、恐らくロシアや中国からの反発もあるため、こうした選択肢は外交上のポーズに過ぎない。米国がイラクで学んだように、体制交代は、さらに多くの問題を引き起こすだけの結果になるかもしれない。だがこのことは、2003年以来、激動する国際情勢が米国政府にとってどれほど変化したかを思い起こさせる。
マクマスター補佐官はフォックスニュースとのインタビューで、トランプ政権は今週、ロシアやシリアへの対応、さらには中国との首脳会談と、驚くほどの「同時並行作業」をこなしたが、誰も「汗一つかかなかった」と語っている。だが、いずれの問題も片付いていない。今後、汗だくの日々がやってくるとしても不思議はない。
*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。
*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)
コラム:シリアと北朝鮮クライシス、米政権の「危険な綱渡り」
コラム:米シリア攻撃、「トランプ・ドクトリン」の始まりか
トランプ氏、シリア大統領への強硬姿勢強める 軍事行動検討も
プーチン氏「トランプ政権下で関係悪化」、異例の厳しい態度表明
http://jp.reuters.com/article/column-syria-northkorea-crisis-idJPKBN17F0CJ
北朝鮮、核実験場の準備万端のもよう−「大きな」出来事は街路開通
Russell Ward、Kanga Kong
2017年4月13日 16:01 JST
豊渓里の核実験場を捉えた衛星画像(4月2日) Photographer: DigitalGlobe/38 North via Getty
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ウェブサイト「38ノース」でアナリストが指摘
韓国の合同参謀本部は差し迫った実験の可能性が高いとはみていない
北朝鮮の核実験場は実験実施に向けて「準備万端」の様子がうかがわれる。北朝鮮を監視している米国の調査機関が報告した。
12日の商業衛星画像で平壌の北東にある豊渓里の核実験場での活動が確認されたと米ジョンズ・ホプキンス大高等国際問題研究大学院の北朝鮮分析ウェブサイト「38ノース」でアナリストらが指摘した。画像では北側入り口で活動が続いているほか、主な管理エリアで動きがあり、指令センター近辺に人員がいることが示されている。
豊渓里の核実験場を捉えた衛星画像(4月2日)
豊渓里の核実験場を捉えた衛星画像(4月2日) Photographer: DigitalGlobe/38 North via Getty Images
韓国の合同参謀本部は差し迫った実験の可能性が高いとはみておらず、北朝鮮が挑発行為を準備している兆候を韓国軍は捉えていないと報道官がソウルで記者団に述べた。
トランプ米大統領が北朝鮮に対する軍事行動の可能性に言及する中、また北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の祖父で建国を果たした故金日成主席の生誕105年の祝賀を15日に控え、6回目の核実験実施の観測が強まった。
北朝鮮を訪れている外国人記者は13日の午前中に「大きく重要な出来事」に備えるよう伝えられたと、ロイター通信が報じていた。ロイターのジェームズ・ピアソン記者はその後ツイッターで、大きな出来事とは新しい街路の開通だったと報じた。
トランプ米大統領は12日、北朝鮮に圧力をかけるよう中国の習近平国家主席に働き掛けていると記者団に語った。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューでは、北朝鮮問題解決への協力の見返りに貿易問題での摩擦緩和を提案したことを明らかにした。両首脳は12日に電話会談した。
原題:North Korea’s Nuclear Test Site Seems Ready, U.S. Group Says (2)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-13/OOC4PU6S972901
World | 2017年 04月 13日 17:24 JST 関連トピックス: トップニュース
北朝鮮発表の「重大イベント」は街路の開設式、金委員長も出席
[ソウル/平壌 13日 ロイター] - 北朝鮮当局者が同国で取材中の外国人記者団に13日伝えた「大規模かつ重要なイベント」は、平壌に新たに整備された街路の開設であることが分かった。
街路の開設式には金正恩朝鮮労働党委員長も出席した。
北朝鮮の核開発プログラムを巡る緊張が高まるなか、同国の当局者は13日、国内で取材中の外国人ジャーナリストに対し、「大規模かつ重要なイベント」に備えるよう伝えていた。北朝鮮では、週末15日に故金日成主席の生誕105周年の記念日が控えており、首都の平壌には約200人の外国人ジャーナリストが集まっている。
過去には、比較的小規模な軍事行動に関連して、同様の通知がなされたことがあった。
<高まる緊張>
トランプ米大統領は今週、北朝鮮に対し特定の行動を許容しない考えを「明らかに通告」しており、中国が平和的解決を求めるなかで、朝鮮半島情勢を巡る緊張が高まっている。
トランプ大統領は北朝鮮が新たなミサイル試射を行うのを威嚇するため、米空母「カール・ビンソン」などの空母打撃群を、予定していたオーストラリアから朝鮮半島近海に移動させる命令を下した。米当局者によると、空母打撃群が朝鮮半島近海に到着するには最大9日間を要する見通し。
北朝鮮は11日、米国による先制攻撃の兆候があれば米国に核攻撃すると警告した。
トランプ大統領と中国の習近平国家主席は、米国で初めての首脳会談を開催したわずか数日後となる12日、再び電話会談を行った。このことは北朝鮮がもうすぐ核・ミサイル実験を行うのではないかとの懸念が高まるなか、両首脳が抱える緊迫感を示している。
トランプ大統領は、習主席との電話会談について、「北朝鮮の脅威」について「非常に良い」議論ができたとのコメントをツイッターに投稿。同大統領はその後、必要なら米国は中国の協力なしで北朝鮮を巡る危機に対応する用意があると述べた。
習主席は電話会談で「(中国は)朝鮮半島の非核化と、平和と安定の維持という目標に取り組んでおり、平和的な手段による問題解決を提唱している」と発言し、「今後も米国側との緊密に連絡を取り、協調していく」と述べた、と中国国営中央テレビ(CCTV)が報じた。
米国の北朝鮮情報サイト「38ノース」によると、12日撮影の衛星画像は北朝鮮北東部の豊渓里にある核実験場周辺で活動が継続しており、核実験ができる状態であることを示しているという。
韓国当局者は13日、核実験の可能性が高まっていることを示す新たな兆候は見られないが、いつでも実験が実施できる状態を維持していると語った。
*内容を追加しました。
スライドショー:緊迫する北朝鮮情勢、平壌はいま
米中首脳が電話会談、習主席「北朝鮮問題は平和的解決必要」
シリア攻撃は警告、対北朝鮮行動の必要性で中国と一致=米国務長官
習中国主席、THAAD配備にあらためて反対表明 中韓首脳会談
北朝鮮、核実験などの挑発行為に出る恐れ=韓国大統領代行
http://jp.reuters.com/article/northkorea-usa-idJPKBN17F0O6
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