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「動き出した英EU離脱交渉」〜従来の手法が、難民移民問題、南北の経済格差、自国中心主義といった現実を前に限界を迎えている
http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/836.html
投稿者 仁王像 日時 2017 年 4 月 05 日 20:01:44: jdZgmZ21Prm8E kG2JpJGc
 

「動き出した英EU離脱交渉」〜従来の手法が、難民移民問題、南北の経済格差、自国中心主義といった現実を前に限界を迎えていることを示したものと/百瀬好道・nhk
2017年04月04日 (火)
百瀬 好道 解説委員
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/267080.html

イギリス政府がEU離脱を正式に通知したのを受けて、EU側は交渉の基本方針の策定に乗り出し、いよいよ離脱のプロセスが動き出しました。今夜の時論公論は、反グローバリズムや自国第1主義の火付け役となったこの問題を取り上げ、交渉の見通しと国際的な影響について考えます。

まず、イギリスとEUの離脱交渉や新しい経済関係を決める交渉は順調に進むのか。EUという後ろ盾を失うイギリスの自立戦略は成功するのか。一方のヨーロッパの統合は変わるのか。以上の3点です。

まず、EUとイギリスの交渉から見て参りましょう。
双方は、お金の貸し借りの清算や、それぞれの地域に住んでいる人々の権利をどこまで認めるのかといった「離脱協定」と、新しい貿易や投資のルールを定める「経済協定」を結んで、今後も良好な関係を続けたいといっています。しかし交渉の難航は必至だというのが大方の見方で、なんの合意もなく決裂する可能性を指摘する専門家もいます。

その理由は、交渉に対する考え方に大きな違いがあるからです。EUのルールでは、離脱の通告から2年、つまり19年の3月末でイギリスは加盟国の権利を失います。そこでイギリスは離脱交渉と新経済協定交渉を並行して進め、2年で終わらせたい。一刻も早くEUから離脱して、アメリカや中国、インドといった国々と独自の経済協定結びたいという立場です。EU側はまず離脱交渉から始め、着地点が見通せた段階で新協定の交渉に移る2段階論を主張しています。権利や義務をきちんと整理した上で、対等の立場で新しい協定の交渉をするという姿勢で、交渉の入り口で早くも対立しているのです。

離脱交渉の個別のテーマも難問山積です。その筆頭が、イギリスがEUに負っている債務です。EUに拠出を約束した予算の分担金、EU職員の年金保険料、EUの融資に対する保証や引当で、総額は600億ユーロ=7兆円を超える規模です。メイ首相は「義務は果す」とは言っていますが、EUの要求額をそのまま受け入れるかどうか明言はしていません。イギリス政府や議会の一部に巨額の支払いを拒否する声が強いからです。一方EUは、この問題が片付かない限り、新協定の協議には入らないと一歩も引かない構えです。このお金がないとEUは東欧諸国に支給している補助金を減らすか、加盟国の負担を増やして穴埋めする必要があるからで、初期の交渉の最大の焦点になりそうです。

世界各国の経済関係者やイギリスに進出している日系企業が、離脱交渉以上に注目しているのが新しい経済協定の内容です。イギリス政府は、今と同じ水準でEU市場にアクセスできる協定をめざすといっています。しかしEUは、安易な妥協をすると新たに離脱する国がでかねないこと、フランスやドイツで大統領選挙や総選挙を控えているため、イギリスに「いいとこ取りは許さない」方針で、離脱交渉以上に難しい交渉になりそうです。

例えば金融サービスです。今は「銀行パスポート」と呼ばれる免許が与えられ、イギリスに拠点を置く銀行はEU域内で自由に営業ができますが、離脱となるとこの権利を失います。フランスやドイツなどはロンドンのシティーの権益を奪う千載一遇のチャンスととらえ、法人税の引き下げや駐在員への優遇税制を梃子に金融機関の誘致に熱心で、いくつかの金融機関と水面下で接触しています。
関税についてみますと、新協定が結べばないまま離脱となりますと、イギリスからのEUに輸出され自動車の関税は、ゼロから10%に跳ね上がります。EU向けに7割を生産している日系自動車メーカーにとっては大打撃です。

企業の一番懸念材料は交渉の長期化です。EUの貿易協定交渉は、4年から8年もかかっています。長期間にわたって先行きが見通せないと、将来の事業計画や経営戦略を決められませんし、交渉が難航するとマーケットの格好の取引材料になり混乱につながりかねません。

交渉の失敗は、世界の混迷をさらに深める恐れがあります。イギリスとEUはそのリスクを回避するため、強い責任感をもって粘り強く交渉に臨んで欲しいと思います。

さて、EUを脱退するイギリス、その自立戦略は万全なのでしょうか。
メイ首相は、「グローバル・ブリテン」構想を提唱しています。イギリス経済の軸足をヨーロッパから、広く世界に移すという考え方で、具体的には、成長力のある中国やインドの新興国、超経済大国のアメリカと経済協定を結んで成長をめざします。

離脱後の新しい「国のかたち」としては合理的な決断だと思いますが、その道程は険しいと思います。先ほどEUの例を見たように、自由貿易協定の交渉には、数年かかるといわれます。それにイギリスが望む自由度の高い協定が結べるかどうかも疑問です。移民制限を掲げ移民を選別するイギリスに対して、できれば労働力を供給したい新興国が自らの市場を簡単に開くとは思えないからです。

内政にも不安材料があります。まずイギリス経済です。離脱を決めた去年6月の以降、イギリス経済は予想に反して好調で、メイ首相の強気の一因になっています。しかし通貨ポンドの値下がりと原油価格の値上がりが心配です。物価の上昇が経済の牽引役の個人消費を冷え込ませる恐れがあるからです。政治面では、離脱に反対が多いスコットランドで独立のための2度目の住民投票の動きが出ている点です。EUとの交渉が難航しますと、ポンド安や独立機運が高まるでしょう。内政面のリスクが表面化するかどうかは、EUとの交渉に掛っているのです。

イギリスの離脱は、ヨーロッパ統合のあり方を問い直す機会になっています。イギリスの離脱問題だけでなく、各国で勢いを増している反EU、反既成政治の動きに対して、EUも根本的な対応を迫られています。


EU首脳は先月末、ヨーロッパ統合の原則を転換させる宣言を採択し注目されました。重要な点は、全てのEU加盟国が足並みをそろえて政治や経済の統合をめざすのではなく、希望する国だけが先行して統合をする、「多様な統合のかたち」を打ち出したことです。反EUや反グローバリズムに対して、統合に不安や恐れをもつ市民の声が強い国には統合を強制はしないというのが宣言の趣旨です。

現実を見ると、ユーロの導入や自由な人の移動を認めた協定への加入にバラツキがあり、すでに統合の程度に差があります。今回の宣言は、野心的な目標を掲げてヨーロッパの統一と繁栄をめざしていくという従来の手法が、難民移民問題、南北の経済格差、自国中心主義といった現実を前にして、限界を迎えていることを示したものともいえます。ドイツやフランスは、多様な統合のかたちを支持する考えです。しかし東ヨーロッパ諸国は、統合から取り残されるのを恐れて反対論が大勢です。これから年末にかけて、イギリスとの交渉を睨みながら、EUの将来像やそれをどう具体化するといった議論が活発化する見込みです。

動き出したイギリスとEUの交渉は、世界経済や国際政治にとっては確かに波乱要因です。しかし、それは同時に、新しい秩序づくりに向けたヨーロッパの格闘でもあります。わたしたしたちは、その両面を注意深く見つめてゆく必要があると思います。
 

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