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[真相深層]米国境調整は「究極の税」?
グローバル企業の税逃れ防ぐ 世界の税制論議に一石
輸入に課税、輸出は税を免除する――。米下院共和党が法人税改革の一環として示す「国境調整措置」が輸入業者らの強い反対にもかかわらず、消えずに残っている。
その理由は(1)輸入課税による税収増を法人税率引き下げの財源にあてこんでいる(2)トランプ政権は「輸入に高い税をかける」という選挙公約の実現と宣伝できる――ことにあるが、それだけではない。
米英で推進の声
国境調整を含む下院共和党案が、米国や英国の税制専門家や経済学者らから「経済活動をゆがめない究極の企業課税」と提唱されてきた改革案に沿った内容だからだ。
「改革が実現すれば、経済成長と生活水準の向上を促すだろう」。ブッシュ(子)政権で大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務めたマンキュー・ハーバード大教授は今年1月、自身のブログでこう指摘した。
その理由として「改革案は実質的には消費税の導入、法人税の撤廃、給与税の減税の3点セットに等しい」「所得よりも消費に課税する方が(経済に)望ましいのは多くの研究が示すところだ」と説く。
前者については説明が必要だろう。下院案は法人税改革と銘打たれてはいるものの、課税対象は限りなく消費税に近いものになる。輸入品が課税される一方、輸出を免税としている点は日本や欧州の消費税と同じだ。
共和党改革案の柱の一つは設備投資の即時償却を認めることだが、消費税なら投資分はもともとすべて控除される。
違いは、消費税では課税対象からはずせない賃金支払い分を引き続き控除できるようにしていることだ。マンキュー教授は、この点をとらえて、実質的な効果は消費税を導入するかわりに給与税を大幅減税するのと同じとしているわけだ。
経済の活力向上に加えて、経済のグローバル化で目立ってきた企業の税逃れを防ぐ効果も期待される。
共和党案の原型となる企業税制改革を唱えてきたアウエルバッハ・カリフォルニア大教授は「海外で利益が生まれたようにみせかける操作をしても税の支払額は減らせなくなる。利益でなく国内売上額が課税対象になるからだ」と強調する。
各国で導入されれば、企業情報の共有など、20カ国・地域(G20)が税逃れ防止のために進めている協調も不要になるとまで指摘している。
本社の海外移転などで税負担を減らす動きの抑制にもなる。英国の抜本的な税制改革指針をまとめた2010年のマーリーズ・レビューでも、グローバル化時代に即した企業課税改革の選択肢の一つとして、共和党案と同じような税制への転換が提唱されている。
輸入課税だけみれば保護主義的に見える共和党案だが、日本の専門家の間でも「経済のグローバル化に対応した法人課税のあり方を突き詰めると、消費税に近づくという考え方自体は決しておかしくない」(鈴木将覚・専修大教授)との見方が多い。
下院共和党の執行部が「国境調整」にこだわる背景には、これをはずせば改革の意義が半減するという意識があるのだ。
消費下押し懸念
国境調整の問題点は税制としての善しあしよりも、導入時の経済への影響が極めて大きい点や実務上の難しさにある。
米輸入業者の税負担が一気に膨らむほか、価格転嫁が進めば消費にも悪影響が及ぶ。もちろん、日本企業をはじめ米国への輸出が多い世界の企業にとっても打撃になる。
米国の有力経済学者の間では「国境調整の影響はドル高で帳消しにされるので、米国の貿易収支や競争条件、米国の輸出入企業の収益には影響を与えない」(フェルドシュタイン・ハーバード大教授)との声もある。
だが、実際に影響を打ち消すだけのドル高が進むのか、ドル高が進めば新興国経済などに大きな悪影響が及ぶのでは、といった不安は拭えない。
最大の難関は、世界貿易機関(WTO)が消費税以外での国境調整は協定違反とする公算が大きいことだ。「2国間の租税協定の面でも課題がある」(財務省幹部)
実現性に難ありだが、企業課税のあり方を一変させる案を米国が投げかけたことは、日本を含め世界の税制改革論議に刺激を与えそうだ。
(編集委員 実哲也)
[日経新聞3月24日朝刊P.2]
※トランプ米国関連参照投稿
「トランプ米国の「20%国境税」 1:ウソを吹き込まれそれを信じてきたアタマでは判断が難しいその正当性と公平性」
http://www.asyura2.com/17/kokusai17/msg/596.html
「自由貿易」は「保護貿易」の変形:南北戦争は保護貿易派による政治闘争:戦後日本は保護主義のもと経済発展
http://www.asyura2.com/17/senkyo220/msg/494.html
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