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米メディアも報じ始めた「朝鮮戦争」の不気味なリアリティ
http://www.mag2.com/p/news/241925
2017.03.08 北野幸伯『ロシア政治経済ジャーナル』 まぐまぐニュース
6日、北朝鮮は弾道ミサイルを4発発射し、そのうち3発が秋田県沖に落下しました。朝鮮中央通信は「有事の際に在日米軍基地を攻撃する訓練であり、訓練は成功した」と報じています。国際的な緊張が高まる中、トランプ大統領はどう動くのでしょうか。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんは、「すでにアメリカは朝鮮戦争の準備を始めており、安倍総理も把握している。戦争が始まれば日本もアメリカ、韓国支援のために動かなければならなくなる」と衝撃的な見解を示しています。
■アメリカは朝鮮戦争の準備を始めた
最近、あちこちで、「アメリカは朝鮮戦争の準備を開始した」という話を聞きます。著名な先生方も話されていますし、いろいろな国のメディアでも取り上げられています。ロシアでも、そのように報じられていました。今日は、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)3月2日付を見てみましょう。
■なぜアメリカは、戦争準備を始めたのか?
WSJ3月2日は、「アメリカが北朝鮮攻撃を検討していること」をはっきり報じています。
米政権、北朝鮮への武力行使も選択肢に
ウォール・ストリート・ジャーナル 3/2(木)8:42配信
北朝鮮による核兵器の脅威に対応するため、トランプ米政権が武力行使や政権転覆などの選択肢を検討していることが分かった。政権内部の対北朝鮮戦略の見直し作業に詳しい関係者が明らかにした。東アジアの同盟諸国を緊張させかねない動きだ。
「武力行使や政権転覆」だそうです。武力行使はわかりますが、「政権転覆」とはなんでしょうか? おそらく「クーデターを起こして親米傀儡政権を樹立する」ということでしょう。
ところで、なぜ武力行使の可能性を検討しているのでしょうか?
ドナルド・トランプ米大統領はこれまで同盟諸国に対し、米国の数十年来のアジア政策を維持し、同地域で結ばれている合意を破棄することはないと伝え続けてきた。一方で北朝鮮による大陸間弾道ミサイルの発射実験は阻止するとも明言しており、ここ2週間の戦略見直し作業を踏まえると、米国のアジア政策が大きく変わると見る向きもある。
(同上)
「大陸間弾道ミサイルの発射実験は阻止する」。これが原因ですね。皆さんご存知のように、北朝鮮は核兵器を保有している。しかし、だからといってアメリカを核攻撃できるわけではありません。まず、ミサイルに搭載できるほど小型化しなければならない。次に、アメリカ本土に届くミサイルがなければならない。
北朝鮮は、「大陸間弾道ミサイル」の実験をするという。要するに、「もうすぐアメリカを核攻撃できるようになりますよ!」ということなのです。これは、アメリカも対応しなければならないでしょう。
■安倍総理も「朝鮮戦争の可能性」を知っている
事情に詳しい関係者によれば、米政府は最近の同盟諸国との協議の中で、対北朝鮮戦略に軍事的側面が含まれる可能性を強調している。
2月に日本の安倍晋三首相とトランプ氏が2日間にわたって首脳会談をした際は、米側が北朝鮮に対して全ての選択肢が検討されていると複数回にわたり述べた。このとき日本側に伝えられた選択肢の中には、北朝鮮が大陸間弾道ミサイルの発射実験をする構えを見せた場合などに、米国が軍事攻撃をすることも含まれているという。日本側はこのシナリオを危惧していたと、この関係者は話す。
(同上)
北朝鮮が大陸間弾道ミサイルの発射実験をする構えを見せた場合などに、米国が軍事攻撃をすることも含まれている
「日本側はこのシナリオを危惧していた」。つまり、2月の訪米時、安倍総理に伝えられたと。日本側はこのシナリオを危惧していた。当然ですね。戦争になれば、日本は、アメリカ、韓国を支援せざるを得ません。国内で北朝鮮によるテロが起こる可能性も大きくなる。
とはいえ、アメリカの動きも理解できます。北朝鮮のように予測不能な国が、アメリカを核攻撃できる力をもつ。「これを止めなければ!」と考えるのは、独立国家として普通のことです。
■朝鮮戦争は、トランプの「国内問題」を解決する
「プーチンがっかり。トランプは本当に『反ロシア』に寝返ったのか?」で、「トランプは、敵に包囲されて動けない状態にある」と書きました。
敵とは、
1.野党民主党
大統領選で負けたので、当然反トランプ。
2.共和党の反ロシア派
共和党にも、「親ロシア」トランプを嫌う人が多い。
3.マスコミ(CNN、ABC、ニューヨーク・タイムズ)
トランプは、これらを「フェイクニュースだ!」と批判している。
4.国際金融資本
彼らは「グローバリスト」なので、ナショナリスト・トランプが嫌い。
5.アメリカ諜報機関
トランプ政権高官の電話を盗聴し、辞任に追いこむ(例、フリン大統領補佐官)。
「朝鮮戦争」を起こせば、これら国内の敵を一掃できる可能性が出てきます。
まず、「北朝鮮のようなクレイジーな国がアメリカを核攻撃できる能力を持つ」というのは、「本当の脅威」である。ですから、武力行使を決意すれば、民主党、共和党、マスコミ、諜報も反対できないでしょう。分裂しているアメリカが、一気にまとまる可能性が出てきます。
国際金融資本は、意見がわかれると思います。ソロスのような「金融系」は、戦争反対でしょう(ソロスは、イラク戦争にも一貫して反対していた)。軍産複合体系は、儲かるので賛成すると思います。
トランプとしては、戦争するにしても、犠牲者が大量に出る地上戦は避けたいことでしょう。核施設を空爆して破壊したいところですね。
■戦争を抑止するファクター
とはいえ、アメリカの北朝鮮攻撃を思いとどまらせるファクターもあります。最大のファクターは、中国です。中国と北朝鮮は1961年、「中朝友好協力相互援助条約」を結んでいる。この条約、二条にこうあります。
いずれか一方の締約国がいずれかの国又は同盟国家群から武力攻撃を受けて、それによって戦争状態に陥つたときは他方の締約国は、直ちに全力をあげて軍事上その他の援助を与える。
つまり、アメリカが北朝鮮を攻めたら、中国は全力をあげて北朝鮮を守らなければならない。
「中国と戦争になるかもしれないよな…」というのは、結構な抑止力ですね。「武力行使」するにしても、アメリカと中国は話し合うことになるでしょう。アメリカは、1950年からの朝鮮戦争でも、中国が支援する北朝鮮に勝てなかった。その時代よりはるかに強力になった中国と「戦いたい」とは思わないはずです。
もう一つ、朝鮮戦争になれば、北朝鮮は韓国を攻撃するでしょう。韓国は火の海になる。そして、北朝鮮軍が韓国に南進すれば、アメリカも地上軍を投入せざるを得なくなる。トランプは、これを望まないでしょう。
■実は、トランプ自身も決めていない
このように、東アジア情勢は複雑です。その点、中東にはイスラエル以外に核保有国がないので、単純ですね。アメリカは、それほど躊躇することなく、攻撃しています。アフガニスタン、イラク、リビア(=北アフリカ)、シリア(IS空爆)。
朝鮮戦争の件、トランプ自身も、まだ決めていないそうです。
K・T・マクファーランド大統領副補佐官(国家安全保障問題担当)は約2週間前、安全保障に関わる政府関係者を集めて北朝鮮への対策を提案するように指示した。従来の考え方からかけ離れた発想でも構わないと言われたと、ある関係者は明かす。北朝鮮を核保有国として認めることから軍事行動まであらゆる選択肢を検討するよう指示された。マクファーランド氏の狙いは、政権の対北朝鮮政策を根本的に考え直すことだったという。会議に出席した政府関係者らは2月28日、マクファーランド氏に提案を提出した。これらの選択肢は精査されてから大統領に届けられる。
(同上)
「北朝鮮を核保有国として認めることから軍事行動まで」だそうです。どうなるかわかりませんが、心の準備はしておいたほうがよさそうです。
image by: stock_photo_world / Shutterstock.com
『ロシア政治経済ジャーナル』
著者/北野幸伯(記事一覧/メルマガ)
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