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新たな世界構造と関係再編
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2017年3月 7日 マスコミに載らない海外記事
Wayne MADSEN
2017年3月3日
ハリウッド大作映画の一場面のような姿で、サウジアラビアのサルマン王が、四機のボーイング747と二機のボーイング777で外遊する側近召し使い、閣僚10人と25人のサウジアラビア王子を含む1000人の随行員とともに、世界で最も人口の多いイスラム教国家インドネシアを訪問した。インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は、この訪問は、サウジアラビアとインドネシア間“戦略的提携”の一環だと表現した。サルマン王は、ナジブ・ラザク首相が、10億ドルの“贈り物”を、サウジアラビア国有企業から受け取ったことから起きた大規模政治スキャンダルに巻き込まれたマレーシアも訪問した。ラザクの政敵たちは、この贈り物を賄賂と呼んだ。
1970年のサウジアラビア・ファイサル国王によるインドネシア訪問以降、サウジアラビア王のインドネシア訪問という、東南アジアへのサウジアラビア戦力投射は、アメリカのドナルド・トランプ大統領が、アメリカ合州国が、他の国々の権益より自国権益を優先することを表明して以来、サウジアラビア君主による初めての訪問となる。連邦議会合同会議演説で、トランプはアメリカ合州国が“諸国の主権を尊重する”のが彼の政策で、彼の政権は“あらゆる国々が自らの道を進む権利を尊重する”とも述べた。
トランプは、明らかに、全て彼が過去に批判した、北大西洋条約機構(NATO)、国連や欧州連合に言及し、“歴史的な機関を尊重する”と述べたが、彼は、NATOや中東や太平洋のアメリカ同盟諸国が“戦略的、軍事的作戦の双方において、直接的な意味ある役割を担い、応分の費用負担をする”ことを期待した。
トランプは、Brexit国民投票の結果と、EU離脱の決断で、イギリスを慶賀した。トランプは、更にフランス、オランダや他のEU加盟諸国も、ブリュッセルの“ユーロクラシー”支配層から独立した自らの道を進むよう望んでいる。
トランプは、ペンタゴンによる軍事支出の膨大な増加を要求しているが、多国間主義ではなく、二国間主義をとる、アメリカ新政策ゆえに、世界的再編が起きているのは明らかだ。ジョージ・W・ブッシュ大統領が採用し、バラク・オバマ大統領が継続した“有志連合”構造の終焉と見えるもの為に、サウジアラビアや他の国々は新たな戦略的関係を作り出そうとしている。
大多数がイスラム教徒のインドネシア、マレーシア、ブルネイとモルジブを訪問するサルマン王の喫緊かつ不穏な狙いは、ブルネイやモルジブの、既に厳格なイスラム社会の強化と、いずれも、かなりの人数の少数派、キリスト教徒、ヒンズー教徒、仏教徒や他の宗教信者がいるインドネシアとマレーシアにおけるイスラム教の先鋭化を奨励するものであるように見える。最近、サウジアラビアから資金提供されている聖職者たちが、マレーシアの公立学校に通っているイスラム教徒でない生徒のイスラム教への改宗を奨励した。インドネシアやマレーシアの教会への火炎瓶投げ込み。インドネシア、スマトラ島のアチェ州や、マレーシアのケランタン州やトレンガヌ州のような一部の原理主義派地域における厳格なシャリーア法の採用。仕上げは、むち打ちや四肢の切断、キリスト教宣教師に対する厳しい制限だ。
過激なワッハーブ主義の流布だけでなく、サウジアラビアは“ルック・イースト”戦略政策を採用している。サルマン王と随行員は日本と中国も訪問する。北京では、サルマン王は、独立イスラム“東トルキスタン”国家を目指して、中国西部の新疆ウイグル自治区(XUAR)で戦っているイスラム教ウイグル人へのサウジアラビア支援について、散々文句を言われるかもしれない。
南シナ海における島嶼や海域の支配を巡り、中国と様々な東南アジア諸国の間で、武力紛争が起こりかねない地域に、サウジアラビア王自らが関与している事実は、世界の様々な地政学的重要地域からのアメリカ離脱によって残された空白を、様々な国々が埋めようとし始めている一例にすぎない。オバマ大統領が、環太平洋連携協定(TPP)と アメリカ軍とオーストラリア、フィリピン、シンガポール、日本や韓国との関係強化に基づく、経済的、軍事的“アジア基軸”を先導していたのはさほど昔のことではない。トランプがTPPから撤退したので、オーストラリアは、より密接な経済的なつながりを求めて、中国に期待しており、フィリピンは国内のアメリカ軍駐留を終わらせることを望んでおり、サルマン王訪問で見られる通り、インドネシアとマレーシアは、中東において新たな戦略的提携を構築しつつある。
アラブ首長国連邦も影響力を湾岸の外へと拡大している。同国は最近分離して、国際的に承認されていないソマリランド共和国のアデン湾のバルベラに軍事基地を建設中であると発表した。1991年、ソマリランドは、内戦で疲弊したソマリアからの独立を宣言した。ソマリランド基地は、エリトリアのアッサブで既に稼働しているUAE基地と連携する。
オボック港の中国海軍基地と、ジブチのアンブリ国際空港に隣接するキャンプ・レモニエのアメリカ基地を受け入れている隣国ジブチが、UAEのベルベラ基地を非難した。アフリカの角に軍事基地を擁しているのは、アメリカ合州国とフランスだけという時期があった。世界的な戦略的再編のおかげで、もはやそうではなくなった。フランスは、ジブチにおける軍事駐留を継続しており、日本はキャンプ・レモニエ・アメリカ基地に隣接する12ヘクタールの敷地に、日本最初の海外軍事基地を開設した。更に、サウジアラビアは、イエメン内の反サウジアラビア勢力に対する虐殺作戦を支えるため、ジブチに軍事基地を計画している。トルコもソマリアの首都モガディシュに、アフリカ内では最初の軍事基地を開設した。
かつて、アメリカ合州国は、イギリスのインド洋領にあるディエゴ・ガルシア島に、インド洋最大の基地の一つを保有するという特権的地位を享受していた。しかし、アフリカの角に軍事基地が突然出現したのに加え、アメリカには仲間ができてしまった。インドはセーシェルのアソンプション島と、モーリシャスの北、1000キロにあるモーリシャス領アガレガ諸島に海軍基地を開設した。インドは、北マダガスカルのアンビルーベ付近に、レーダーと無線諜報施設を、オマーンのマスカットに海軍補給廠も保有している。
“トランプ・ドクトリン”とも呼べるものが効果をあらわすにつれ、各地で軍事的に活動していなかった国々による同様な“戦力投射”が当たり前のようになるだろう。フランスは、しばらくの間キャンプ・デ・ラ・パとして知られる軍事基地をアブダビに維持していた。
シンガポールは空軍用に、主にシンガポール空軍パイロット訓練の目的で、ニュージーランドのオハケア空軍基地と、アメリカ領グアムのアンダーソン空軍基地で、基地の権利を交渉している。シンガポールは、オーストラリアのタウンズビルと、クイーンズランドのショール・ウォーター湾にも訓練基地を維持している。最近、1975年以来行われてきた、台湾でのシンガポール-台湾共同軍事演習から海路戻る際、9輌のTerrex装甲車が、香港税関により押収されたことは、シンガポールは、唯一の中国政府として、中華人民共和国しか認めていないが、台湾での恒久的なシンガポール軍駐留の可能性を示唆している。
外国の海軍基地と空軍基地の奪い合いで、南太平洋が、アフリカの角やインド洋に加わるのも間近かも知れない。中国がフィジー、サモア、トンガやヴァヌアツを含む中国援助の主な受領国での同様な基地に関心を持っていることが知られている。アメリカ合州国は南太平洋を“アメリカの湖”と見なしているが、この地域のアメリカ代理人オーストラリアとニュージーランドも彼ら自身の新たな戦略的関係を追求しており、日本、インド、ロシア、ドイツやカナダを含む他の国々も、この地域に軍事駐留する可能性がある。
トランプ・ドクトリンは新たな世界構造をもたらしつつある。しかし、それはワシントンや、ブリュッセル、ロンドン、フランクフルトやニューヨークにいるグローバル主義執事連中が構想した“新世界秩序”ではない。
記事原文のurl:http://www.strategic-culture.org/news/2017/03/03/new-global-construct-and-realigned-relationships.html
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