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オバマ氏を「むかつくヤツ」と罵倒、根底にロシア疑惑拡散の恨み
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9043
2017年3月6日 佐々木伸 (星槎大学客員教授) WEDGE Infinity
オバマ前大統領に対するトランプ米大統領の非難が激烈なものになってきた。トランプ氏は週末の4日、フロリダ州の別荘からのツイートでオバマ氏が選挙直前、トランプタワーを盗聴していたとして、「悪いむかつくヤツ」と罵倒した。この怒りの根底にはオバマ政権がトランプ陣営のロシア疑惑を組織的に拡散したとの恨みがある。
■オバマ側近、隠蔽工作の阻止狙う
トランプ氏は日の出前の朝の6時26分からツイート。36分間で6本も連発した。オバマ非難と、選挙期間中の駐米ロシア大使との接触が問題視されたセッションズ司法長官擁護がその内容だったが、怒りにまかせて投稿したのは明らか。現職の大統領が前任者をこれだけあしざまに言うのは前代未聞だ。
トランプ氏は盗聴の証拠をまったく示していないが、オバマ氏をニクソン元大統領によるウオーターゲート事件(民主党本部盗聴侵入事件)の陰謀になぞらえて非難し、ホワイトハウスの法律顧問が真相を暴露すると大見得を切った。しかし「証拠もない無謀な言いがかり」(民主党議員)に終わった場合、相手が前大統領だけに単に「ありませんでした」では済まないだろう。
同氏がオバマ非難を強めている背景には、政治的打撃となりつつあるロシア関連疑惑を「オバマ一派が仕組んでいる」(米専門家)と思い込んでいるからだ。トランプ氏は自身がモスクワでのセックス・スキャンダルの疑いをもたれたうえ、「対ロシア制裁見直し」疑惑で国家安全保障問題担当のフリン大統領補佐官の更迭に追い込まれた。
さらには選挙期間中、トランプ陣営の幹部がロシアの情報当局者らと接触していたと報じられ、次いでトランプ氏を応援していたセッションズ氏が上院議員だった昨年、ロシア大使と2度会っていたのにもかかわらず、上院の承認公聴会では会ったことはないと証言していたことが問題となった。娘婿で上級顧問のクシュナー氏もフリン氏とともにロシア大使に会っていた事実も明るみに出た。
トランプ氏はこのところ機嫌が悪く、部下に当たり散らすことが多くなっている。特にセッションズ長官が連邦捜査局(FBI)のロシア関連疑惑の調査に関わらないと宣言したことに「やましいところがあると見られる」と激怒したといわれる。
ロシア関連疑惑の核心はロシアがハッキングなどで大統領選挙に介入、トランプ陣営も選挙に勝つため、クリントン候補の不利な情報をロシアの情報機関と共謀して流させたのではないか、トランプ氏本人もそのことを知っていたのではないか、というものだ。トランプ氏や側近らはオバマ政権が組織的に疑惑を広めたとの恨みを抱いているようだ。
確かにオバマ政権当局者らが政権末期、疑惑を故意に広めたのは事実だ。ニューヨークタイムズ紙によると、当局者らはトランプ政権が発足すれば、こうした疑惑が隠蔽され、もみ消されてしまうと懸念。これを阻止するため、トランプ氏の側近らとロシア人との接触に関する情報を政府内、議会などに広げるのに躍起になった、という。
情報拡散の目的は2つ。1つは米国や欧州諸国が将来、ロシアの選挙干渉を再び受けることのないようにすること、もう1つは後の捜査に役立つよう、情報の痕跡を明確に残すことだった。一部の当局者は関連情報を公文書に残す工作を行い、情報の提供先には欧州の幾つかの同盟国も含まれていた。
情報機関のアナリストらが共有している極秘のウエブ・プログラムにも多くの情報がアップロードされ、機密情報へのアクセス権のない人間も含め多数が情報に接することが可能になった。仮にもみ消そうにも、もみ消すことができない状況になっている。
オバマ大統領からの指示はなかったとされているが、トランプ氏やバノン首席戦略官らは信じていない。オバマ氏らとその影響下にある情報機関がトランプ政権の信頼を失墜させ、究極的にはトランプ氏を弾劾させるため、極秘情報をメディアにリークし続けていると疑っているのだ。トランプ氏が情報機関とメディア攻撃を強めているのはこうした背景がある。
■環境、国境税めぐり対立激化
トランプ氏の不機嫌な理由はこのロシア疑惑に加え、「パリ協定」からの離脱と輸入税をめぐる政権内部の対立が激化していることもある。
トランプ氏は温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を選挙公約に掲げてきたが、米紙などによると、ここにきてトランプ氏の長女イバンカさんやティラーソン国務長官が外交的な悪影響を理由に反対。公約順守を主張するバノン首席戦略官と激しく対立している、という。
イバンカさんはトランプ氏と毎日5回以上電話で話すというくらい信頼が厚いが、側近ナンバー・ワンのバノン氏と対立していることにトランプ氏は頭を悩ませているようだ。
また輸入品に関税を掛ける新税の導入についても、推進派のバノン氏、ナバロ通商会議議長らと、ムニューチン財務長官、コーン国家経済会議委員長が難色を示し、議会も巻き込んでの対立が深まっているという。
トランプ氏はこのところ、週末毎にフロリダの別荘で過ごし、ゴルフを楽しんでいるが、早朝からツイートを連発した今回はイライラのあまり、寝ていないのではないか、との声がもっぱらだ。
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