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2017年02月23日
昨年(2016年)の政治イベントでの「大番狂わせ」とは、もちろんEU離脱となった6月の英国民投票と、トランプが当選した11月の米大統領選となりますが、そのどちらにも英国データ分析会社のケンブリッジ・アナリティカ(Cambrigde Analytica、以下CA)が深く関わっていたようです。
CAとは選挙に特化したビッグデータ分析を請け負う会社とされていますが、実際はそのビッグデータ(有権者)の行動様式を把握して特殊な方法で各グループに分類し、それぞれのグループに最適な方法で働きかけ、「大番狂わせ」を演出するコンサルタント会社といった方が正確です。
実際に昨年6月の英国民投票ではEU離脱の急先鋒だったファラージ・独立党党首(当時)のキャンペーンを請け負い、確信犯的なウソを含む放言と毒舌で想定外のEU離脱を演出し、直後に(ウソの責任を追及されないように)さっさと辞任させてしまいました。
11月の米大統領選ではヒラリーを当選させないためのキャンペーンを請け負い、当初は無名のテッド・クルーズを支援していましたが、(そうでなかったらもっと早かったはずの)撤退を受けて共和党大会直前の2016年6月にトランプに「乗り換えた」ようです。
また本選では実際にトランプを当選させるため、例えばテレビ討論でヒラリーを嫌な女と思わせるように、それぞれのグループに分類した有権者ごとに、違った細工を中継映像に刷り込むようなこともやっていたようです。
CAの生命線は、この有権者の行動様式を正確に把握してグループに分類するところですが、それではこの分析のためのデータをどこから入手しているのでしょう?
実は極めて簡単で、ソーシャルメディア(SNS)各社からユーザーの同意なしに「購入」しています。
そして数あるSNSの中で最も「価値のある」情報はフェイスブックの「いいね」だそうで、ある人が10個の「いいね」をどこにつけたかがわかるとその人の行動様式がその平均的な同僚以上に把握でき、70個で親しい友人以上に、150個でパートナー(奥さんとか)以上に、300個で本人以上(?)に把握できてしまうそうです。
つまり気軽にフェイスブックで「いいね」を押すと、それが貴重な情報となってCAに限らず行動様式分析に使われ、その先で膨大な収益を生み出していることになります。その最大の恩恵はもちろん供給元のフェイスブックにもたらされているはずで、もし最初からそういう目的でフェイスブックを創業し「いいね」を考案していたなら、マーク・ザッカーバーグは「悪魔級の天才」となります。
話を戻しますが、このようなSNSの情報を使った分析手法は、ケンブリッジ大学心理統計センターにいたポーランド人のミハエル・コジンスキー博士が2013年に開発したOCEANという心理統計モデルであるはずです。
「はず」というのは、その頃コジンスキーに英国の選挙マネジメント会社・SCL(Strategic Communication Laboratories)が接近したのですが、コジンスキーは胡散臭いので断っています。断られたSCLは同じケンブリッジ大学のアレキサンダー・コーガン教授と共同で開発したと公表していますが、中身はどう見てもコジンスキー博士のOCEANです。
つまり完全にパクられたわけです。そしてCAはこのSCLから派生しています。
そしてこのCAの最大のスポンサーは、クォンツ型ヘッジファンドの雄・ルネッサンス・テクノロジーズCEOのロバート・マーサーであるといわれています。
天才数学博士のジェイムス・シモンズが1982年に創業したルネッサンス・テクノロジーズは、運用開始以来の年平均リターンが38%と「すさまじい」ヘッジファンドです。あのウォーレン・バフェットでも年平均リターンが20%と言われています。また東京市場でも暗躍しており、2015年8月4日付け「東京市場で存在感を増すルネッサンス・テクノロジーズ」で取り上げてあります。
さてそのルネッサンス・テクノロジーズを率いるマーサーは超保守派として知られています。最初からトランプを支援していたわけではありませんが、実際にトランプ政権でも同じ超保守派のスティーブ・バノン(CAの役員でもあります)をホワイトハウス首席戦略官に押し込み、トランプの基本政策に大きな影響を与えています。
そしてCAは、来るべきオランダ総選挙、フランス大統領選挙、ドイツ総選挙に向けて密かに活動を開始しているようです。スポンサーがマーサーである以上、CAは必ず超保守的政党あるいは候補者を支援することになります。
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