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トランプはユーロを破壊するだろうか?
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2017年2月15日 マスコミに載らない海外記事
2017年2月9日
F. William Engdahl
New Eastern Outlook
大統領就任後、わずか数日で‘ドナルド’は実に多くの大統領令や、攻撃的なツイートを発したおかげで、世界はくらくらしている。移民禁止の取り組みや、XLキーストン・パイプライン承認や好戦的なイラン威嚇の煙の中から、はっきりと出現しつつある政策は、大統領上級顧問、首席戦略官スティーブン・バノンが主張する、トランプ・チームの経済的狙い“愛国的経済”だ。これまでのところ、主要標的は、アメリカ合州国との最大貿易黒字二カ国、中国とドイツだ。とはいえ子細に見ると、時折資本市場について、アメリカ諜報社会に助言しているジェームズ・リカーズが“通貨戦争”と呼んでいるものを、ワシントンが開始する準備をしていることが伺える。中国という明らかな標的は別として、二番目で、おそらくより重要な標的は、ユーロとヨーロッパ通貨体制の破壊だ。そこでは、ドイツが中核で、おそらく、トランプの名前がでる度に、メルケル首相が酷い胃痛に襲われるらしい理由の一つだ。
1月31日、アメリカ通商の新権力者ピーター・ナヴァロは、アメリカや、他のドイツのEU貿易相手を“搾取するのに、多いに過小評価されたユーロ”を利用していると、ドイツを非難した。ナヴァロは更に、ドイツを、ユーロ圏経済の核、事実上の“通貨操作国”呼ばわりした。今後頻繁にこの単語に出会うはずなので、単語に慣れて頂きたい。ただし、ナヴァロが言っている「操作」とは、1999年-2002年のユーロ単一通貨創設なのだ。ドイツを最大の加盟国とするユーロは“暗黙のドイツ・マルク”のように機能している。ナヴァロは、アメリカ・ドルに対するユーロ安値のおかげで、ドイツは主要貿易相手国に対して大いに恩恵を受けていると非難した。
ドイツが精力的に反論しているのも驚くべきことではない。アンゲラ・メルケルは即座に欧州中央銀行の通貨政策は、条約上、ユーロ圏全体のインフレをコントロールするよう負託されていると断言し、更に、ECBは、条約上“独立している”ので、ドイツがたとえそうしようと思っても、ユーロを操作できないと主張した。これは事実の一部に過ぎす、現時点で、欧州連合の28加盟国中、19カ国がユーロ圏で、日常的業務でではなく、1990年代に極めて出来損ないのユーロ構造を作り上げる上で、ユーロ圏の経済的巨人ドイツは、不釣り合いな影響力を行使したのだ。ほとんど知られていないこういう話がある。
‘次の世紀に、ドイツの立場を確保’
これは、通貨操作に関する干からびた経済学のように聞こえるかも知れないが、貿易上の優位云々は、事実上の究極的な中期的目標としてのユーロ圏破壊を呼びかけるワシントンの狙いを隠蔽しているのだ。
皮肉なのは、フランス、イタリアとイギリスの元首連中が、1991年12月に、1999年末までに完全な通貨同盟を約束する欧州連合条約に調印したオランダのマーストリヒトでのヨーロッパ経済共同体加盟国元首サミットで、唖然とするコールにぶつけた際、ユーロ圏に、当時のドイツ首相ヘルムート・コールは大反対したことだ。そこで、コールは、ブリュッセルでは“民主主義の欠如”と優雅に呼ばれる、民主的に選ばれたヨーロッパの政治国家の一つとしてない、単一ヨーロッパ通貨、現在のユーロを確立する条約という彼らの提案に直面した。
統一ドイツと呼ばれる経済大国の新たな力を恐れた懐疑的なフランス、イギリスとイタリアは、強力なドイツ・マルクと、当時世界で最も尊敬されていた中央銀行、ドイツ連邦銀行の権限を、後に欧州中央銀行として知られるようになる新たな自立した超国家的構造にゆだねるよう要求した。何ヶ月もの厳しい抜け目のない駆け引きの後、新たなユーロ圏加盟国は、公的債務の制限をGDPの60%とし、年間公的債務を制限GDPのl3%に制限するという、ハンス・ティートマイヤーのドイツ連邦銀行が決めた恣意的な厳しい条件、厳格ないわゆるマーストリヒト基準に従うという条件で、最終的に、ドイツは同意した。
経済ジャーナリストとして、当時こうした進展を追うのに私は積極的に関わっていた。1990年早々、デンマーク人の欧州委員会委員ヘニング・クリストファーセンの厳格ないわゆるマーストリヒト基準に関する個人的な考えを知る思いがけない機会を得た。最近亡くなったクリストファーセンは、ジャック・ドロール欧州委員会委員長の下、EEC (EUの前身)で、当時のマーストリヒト条約交渉で、経済と通貨関係の担当だった。彼は実質的に、いくつもの点をとりまとめて、ユーロとなるものにする責任を負っていた主要委員で、ユーロ誕生時、加盟諸国間の非公開論議や戦いを非常に良く知っていると言うべき人物となった。
1994年に、クリストファーセンは、ロンドン金融会議の際に、私が良く知っているデンマーク人エコノミストに、ドイツと、特にコール首相の単一通貨ユーロ導入に対する態度は“1991年から180度転換した”と語っていた。彼は三年の間に、フランスとイタリアの巨大銀行は深刻な危機に苦しみ、生存しようとあえぐようになっており(興味深いことに、連中は今もそういう状態で、更にひどくなっている-筆者)、イギリスの銀行は深刻な不動産債務危機にあり、ヨーロッパの金融・資本市場を支配する上で、堅固なドイツ銀行には到底かなわなかったと語ったのだ。“ドイツ銀行や他の大手ドイツ銀行は、上手にやれば、ユーロは、ヨーロッパのトップとしてのドイツの役割を、次の世紀、あるいはそれ以降も保証する可能性がある”とコールを説得した。
それから少し後のフランクフルトでの銀行業会議で、私自身、コール首相の見解の変化を、まざまざと見た。once-foot-dragging ユーロに懐疑的だったコールが、集まった銀行家たちに、ユーロは“将来、もう戦争が不可能になるようヨーロッパを結びつける鍵”だと述べた。彼は総立ちになっての拍手喝さいを受けた。彼はそうと決心すれば、巧みな雄弁家だった。要するに、現在のユーロ圏はドイツが作り出したものなのだ。
ユーロに対するナヴァロの狙い
大統領として、ドナルド・トランプは、最近ドイツ自動車のアメリカ輸入を攻撃し、アメリカ国外で製造されたドイツBMWに対する懲罰的な35%輸入関税で威嚇した。ドイツの対応は、そうしたいちかばちかの外交ゲームでは、むしろ愚かで、“アメリカ製”自動車の品質を攻撃した。ドイツにもっと多くのシボレーなどのアメリカ自動車を買わせるために、アメリカができることは何かと聞かれて、ドイツ経済相のシグマール・ガブリエルは“もっと良い自動車を作りなさい”とぶしつけに言い返した。シグマール経済相の対応は巧妙な手とは言えない。
しかしながら、ナヴァロ対ドイツ戦略の本当の狙いは、ドイツ内で、品質的に劣るアメリカ製シボレーの売り上げを伸ばすことではない。アメリカ車が劣っていることは、私が個人的に証言できる。最終的に wreck世界準備通貨としてのアメリカ・ドルの役割に対する潜在的ライバルで、大いに欠点があり、大いに脆弱なユーロ体制を。1944年以来andブレトン・ウッズ、アメリカの世界覇権は二つの大黒柱に依拠している。アメリカにはいかなるライバルもない確固たる軍隊と、要するに、ワシントンの赤字に諸外国が際限なく資金提供することを意味する確固たる世界準備通貨たるアメリカ・ドルだ。
ナヴァロ-ロス戦略論文
トランプ大統領選挙戦の支援部隊の一員として、カリフォルニア大学経済学教授で、当時の選挙戦経済顧問ピーター・ナヴァロと、未公開株式投資アドヴァイザーで、億万長者投資家のウィルバー・ロスが、トランプ候補のための経済戦略論文作成に協力した。トランプが、環太平洋連携協定、環大西洋貿易・投資連携協定を破棄し、NAFTA再交渉を要求している背後には、この論文があるのだ。これは、ドイツを“通貨操作国”として、トランプ大統領が攻撃している背後にもある。
現在、もちろん、ピーター・ナヴァロは、通商の権力者で、ホワイトハウスに新たに作られた国家通商会議のトップだ。ロスは新商務長官だ。二人は同じ脚本を演じて、固定されたユーロで、ドイツは不相応に恩恵を受けており、アメリカ合州国やイタリア、ポルトガル、ギリシャなどのユーロ圏の周辺的な国々や、フランスさえ、大損をしているという主張で、暗黙のうちに、ユーロ圏破壊を呼びかけているのだ。
ドナルド・トランプが、大統領に就任する四日前、ロンドン・タイムズで、長いインタビューをした。その中で彼はこう断言した“…欧州連合をご覧なさい、あれはドイツです。基本的にドイツのための道具です。”更に、シリア、アフガニスタン、リビアや他の圧倒的にイスラム教徒が多い国々からの百万人以上の戦争難民を無審査で受け入れたドイツや他のEU諸国の問題について、トランプはこう断言した。“もし彼らが、それに伴うあらゆる問題がある、これほど多数の難民全員の受け入れを強いられていなければ、Brexitはなかっただろうと私は思う。たぶん丸く収まっていただろう。だがこれはラクダの背中を折る最後の一本の藁だった。人々は、自分たちの独自性を望んだのだと私は思う。だから皆さんが私に辞めろと言われるなら、辞めるべきは他の連中だと思う。(強調は筆者による)
トランプの発言は立腹してのものではなく、むしろ朝のコーヒーの残り香だ。この源はピーター・ナヴァロによる2016年9月29日の白書だ。ナヴァロは、アメリカ財務省債券を購入することで、主要輸出相手国アメリカに対して、元を安定させていることで、中国を非難した後、次にドイツとユーロを攻撃した。
ナヴァロはこう続けている。
ナヴァロは、挑戦的な調子で、こう結論づけた。
昨年、あるいは他の年にも、ドルに対し、元を強化すべく、実際活発に介入したが、アメリカ財務省の範疇によれば現状ではアメリカ財務省の規則では通貨操作国ではない中国の事実を無視し、ドイツを公式に“通貨操作国”と宣言して、様々な経済制裁を課するには、一年間の誠実な交渉が必要だ。だから準備は整ったのだ。
統一反ユーロ戦線
アメリカEU新大使に指名されたテッド・マロックは、2月5日に、ブルームバーグとインタビューし、そこで彼は、ユーロ崩壊に賭けるし、“ユーロを空売り”したいと述べた。同じインタビューで、彼はギリシャのユーロ圏からの離脱Grexitには“強い動機”があると断言した。先にマロックは、欧州連合は“飼い慣らす”必要があると述べて、EUを消滅したソ連になぞらえた。
別のインタビューで、マロックはユーロは今後18カ月で崩壊しかねないと言い切った。彼はBBCで“通貨は終焉に向かっているのみならず、実際に問題があり、来年、一年半後には崩壊しかねないと思う。…2017年に私がするだろうことの一つは、ユーロの空売りだ”と述べた。マロックは、EU政治の素人ではないことに留意が必要だ。彼は、現在、イギリスのレディング大学ビジネス・スクールで教授として教えている。マロックは、グローバル化推進派のスイス、ダボス世界経済フォーラム理事もつとめており、シンクタンク、アスペン研究所の首席研究員でもあった。ユーロとEUそのものの将来に関する彼の発言は、計算しつくされたものだ
しかも、財務長官として、中国に通貨操作国というレッテルを貼るのに何の抵抗もないと述べた人物、ゴールドマン・サックス・バートナーとして17年勤めたスティーヴン・マヌーチンがおり、ユーロ破壊を目指す、全面的なアメリカ通貨戦争の準備は整ったように見える。
誤解なきよう。1990年中頃に、国民国家を超えるEUの超国家通貨としてのユーロが現実になることが明らかになって以来、当時考えられていたユーロという考えは、ヨーロッパと世界にとって災厄の卵だと、私が言い続けてきたことは記録にある。ジャック・ドロール、ジスカール・デスタンなどの周辺のヨーロッパ長老連中による、世界準備通貨として、ドルに対する巨大なEUライバルを作り出そうという構造物だった。
2002年から、ギリシャ政府が、ギリシャの赤字が、ユーロ圏で規定されている3%ではなく、12%以上になっている事実を隠蔽するのを可能にしたあやしげなデリバティブ通貨スワップ操作工作をしたのが、ムニューチンのゴールドマン・サックスだったことは注目に値する。好都合にも、ギリシャ債務危機は、まさにアメリカ財政赤字が、年間何兆以上の規模で爆発しつつあり、なによりも中国がアメリカ財務省ボイコットで脅していた2010年に公表された。当時、ドルに対して、ユーロを押し下げるために、ゴールドマンとアメリカ財務省が意図的にギリシャ危機を爆発させたのだと疑う十分な根拠があった。
今やトランプ新政権内のゴールドマン・サックスの金融天才連中と、トランプ経済チームが、Brexitのおかげで、ユーロ圏とEUが、かつてないほど脆弱になったので、ユーロ脅威の可能性に決定的に止めを刺し、捨て去ると決めた可能性が高い。そのような崩壊は、確実に、EUを1930年代のものより酷い大混乱、破壊、金融危機に陥れる。トランプや、ナヴァロやウィルバー・ロスにとっては、こうした社会的、人的問題は、連中の狂った計画に対する単なる“外部事項”に過ぎない。ユーロは、EU同様、早急な改革が必要な実にひどい構築物なのだ。
一体なぜユーロを破壊するのだろうか? イギリス人経済史家ハロルド・ジェームズがその理由を示唆している。“ユーロ崩壊の結果は一体何だろう? 競争相手として、ヨーロッパを弱体化させるのみならず、かつての国家間ライバル関係が再び解き放たれることで、一層不安定化させるのだ。”ドイツ首相やベルリンの他の連中が、トランプが連中に一体何をもたらすかについて、極端に神経過敏になるのも不思議ではない。
F. William Engdahlは戦略リスク・コンサルタント、講師で、プリンストン大学の政治学学位を持っており、石油と地政学に関するベストセラー本の著書で、これはオンライン誌“New Eastern Outlook”への独占寄稿。
記事原文のurl:http://journal-neo.org/2017/02/09/will-trump-destroy-the-euro/
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