http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/168.html
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願望と妄想が入り交じった危険極まりない日経新聞の記事である。
まず、北朝鮮のミサイル発射を受けて、11日(現地時間)パームビーチで行われたのは、安倍首相の記者会見であり、「共同声明」の発出ではない。
大げさに言っても、“安倍首相とトランプ大統領の共同記者会見”が精一杯の表現で、安倍首相の記者会見(声明発出)にトランプ大統領が同席したというのが妥当な表現である。
日経新聞は、「安倍晋三首相とトランプ氏は11日夜、パームビーチで北朝鮮の弾道ミサイル発射を非難する共同声明を発表した。声明を共同とするよう提案したのは、トランプ氏だった」と書いているが、「声明を共同とするよう提案したのは、トランプ氏」という経緯はウソ=“フェイクニュース”と言われても仕方がないものだ。
「共同声明」という話を持ちかけたのは、安倍首相であってトランプ大統領ではない。
昨日夜放送されたBSフジの「プライムニュース」に出演した安倍首相自らがこの経緯を説明している。
「私(安倍首相)から大統領(トランプ氏)に対し、私と大統領の共同の声明のようなものを出そうと申し上げた。そのうえで、大統領が「安倍さん、このあと、記者会見か何か行うのか?」と言われたので、ぶら下がりのようなものを予定しているけど会見をしたいと思うと言ったら、「私がその場に行こう。その場でメッセージを発することにしよう」ということになった」
安倍首相の記者会見にトランプ氏が参加するようになったという流れである。
しかも、記者会見でトランプ大統領が発したメッセージは、その直前に安倍首相が発したメッセージの一部をただ繰り返した寂しいものである。
[北朝鮮のミサイル発射確認後の記者会見内容:外務省]
「(安倍総理大臣)
今般の北朝鮮のミサイル発射は断じて容認できません。北朝鮮は国連決議を完全に遵守すべきです。先程トランプ大統領との首脳会談の中において,米国は常に100%日本とともにあるということを明言されました。そして,その意思を示すために,今,私の隣に立っておられます。私とトランプ大統領は日米同盟を更に緊密化し,強化していくことで完全に一致をいたしました。私からは以上です。
(トランプ大統領)
安倍総理,どうもありがとうございます。米国は,偉大なる同盟国である日本を100%支えるということを皆さんに理解し,十分に知ってもらいたい。」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/na/na1/us/page4_002779.html
少し考えれば、二人が発したメッセージにアンバランスさを感じるはずだ。
UN決議に反してミサイルを発射した北朝鮮に対して非難の言葉さえ発しなかったトランプ大統領は、日本が北朝鮮に感じている脅威に同盟国として対応するというレベルで、直接の当事者という対応を見せていない。
北朝鮮(金正恩委員長)は、常々、ミサイルは日本を標的にしているわけではなく、米国の攻撃を抑止するため、万が一米国が攻撃に及んだとき反撃するため、軍備を増強していると説明している。
この論理に照らせば、日本が標的になるとしても、それは米軍の基地が日本領土に存在するからであり、日本そのものが直接的な標的になっているわけではないとわかる。
このような背景ならば、北朝鮮のミサイル発射に脅威を感じ、UN決議を盾に強く非難すべきは米国であって日本ではない。
それなのに、トランプ大統領は、日本の立場を支持するという他人事のような内容だけで発言を終えている。
日経新聞の記事見出しは、「米、北朝鮮へ強硬策に転換 「力による平和」検討」となっているが、記事を読んでも、「北朝鮮へ強硬策に転換 「力による平和」検討」を見出しにできる内容や根拠はどこにもない。
「トランプ米政権は「戦略的忍耐」と称した前政権の方針を失敗と判断し、強硬路線に転じる構えだ」というのも、「北朝鮮が非核化への具体的な行動がない限り、無視する「戦略的忍耐」は北朝鮮の核・ミサイル開発の時間稼ぎに使われただけだった。トランプ氏が唱える「力による平和」の具体策が問われる」と続いているように、日経新聞記者の推測ないし願望でしかない。
(「戦略的忍耐」と称したオバマ政権の対北朝鮮方針をトランプ氏が失敗と判断していることは、金正恩委員長とハンバーガーを食べながら話をしてもいいということと一緒に、大統領選挙戦を通じて表明されている)
「声明を共同とするよう提案したのは、トランプ氏だった。強固な日米連携を訴えるとともに、世界に向けて北朝鮮に厳しく臨む立場を示すのが狙いだ」というのも、上述の安倍首相自身が説明した経緯や記者会見でトランプ大統領が発した内容を考えれば、「世界に向けて北朝鮮に厳しく臨む立場を示すのが狙い」という部分は、記事を書いた記者の期待や願望を表出したものでしかない。
記事は、「トランプ氏の「力による平和」の検討課題として浮かび上がるのは、中東でのテロとの戦いで使用する無人機の投入や、北朝鮮の核施設への先制攻撃だ」と、トランプ政権が対北朝鮮戦争も遡上に乗せているかのように書いているが、そのように言えるような“根拠”はまったく見当たらない。
記者の願望や期待でしかないことは、その後に続けて、「トランプ氏は入国制限などで政権の体力をいたずらに消耗している場合ではない。通商や為替などで同盟国を揺さぶっている時期でもない。北朝鮮の弾道ミサイルは米国本土も射程に収めており、優先課題を間違えることは、米国も脅威にさらす。北朝鮮問題は超大国、米国の指導者としてトランプ氏の真価も試す」と書いていることから推測できる。
当該日経新聞の記事は、その気がないトランプ米国に北朝鮮攻撃を唆す愚劣極まりないものである。
トランプ大統領が、金正恩委員長のトモダチである元NBAデニス・ロッドマン氏とトモダチだからとは思わないが、日米首脳会談後に発表された共同声明で、「両首脳は、拉致問題の早期解決の重要性を確認した。両首脳はまた、日米韓の3カ国協力の重要性を確認した。さらに、日米両国は、北朝鮮に関する国連安全保障理事会決議の厳格な履行にコミットしている」と書かれていることから、米国の対北朝鮮政策は、日朝国交正常化→米朝国交正常化という従来のものと変っていないと判断できる。
北朝鮮問題を考えるコツは、「拉致問題の早期解決」=「日朝国交正常化」という理解である。
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米、北朝鮮へ強硬策に転換 「力による平和」検討[日経新聞]
2017/2/13 12:58
【パームビーチ=吉野直也】北朝鮮の弾道ミサイル発射を受け、トランプ米政権は「戦略的忍耐」と称した前政権の方針を失敗と判断し、強硬路線に転じる構えだ。北朝鮮が非核化への具体的な行動がない限り、無視する「戦略的忍耐」は北朝鮮の核・ミサイル開発の時間稼ぎに使われただけだった。トランプ氏が唱える「力による平和」の具体策が問われる。
11日、北朝鮮の弾道ミサイル発射を受けた日米共同記者発表で、トランプ大統領(右)は「米国は100%日本とともにある」と述べた=ロイター
安倍晋三首相とトランプ氏は11日夜、パームビーチで北朝鮮の弾道ミサイル発射を非難する共同声明を発表した。声明を共同とするよう提案したのは、トランプ氏だった。強固な日米連携を訴えるとともに、世界に向けて北朝鮮に厳しく臨む立場を示すのが狙いだ。
北朝鮮問題は核・ミサイルの実験があるたびに国連を中心に制裁議論を繰り返してきたものの、ほとんど抑止効果はなかった。外交努力の継続は必要だが、北朝鮮はミサイルの弾頭に核を搭載し、実用化するのも時間の問題だ。対話や北朝鮮の後ろ盾である中国への過度な期待だけでは北東アジアの脅威に対処するのはもはや難しい。
トランプ氏は大統領選の選挙期間中、金正恩(キム・ジョンウン)委員長との会談に意欲を示す半面、「消滅」にも言及した。ここ20年で北朝鮮問題を巡る論点は出尽くしており、時間の経過は北朝鮮の核・ミサイル開発に有利に働く。トランプ氏の「力による平和」の検討課題として浮かび上がるのは、中東でのテロとの戦いで使用する無人機の投入や、北朝鮮の核施設への先制攻撃だ。
トランプ氏は入国制限などで政権の体力をいたずらに消耗している場合ではない。通商や為替などで同盟国を揺さぶっている時期でもない。北朝鮮の弾道ミサイルは米国本土も射程に収めており、優先課題を間違えることは、米国も脅威にさらす。北朝鮮問題は超大国、米国の指導者としてトランプ氏の真価も試す。
「戦略的忍耐」を掲げたオバマ前政権は中国に北朝鮮の説得を求めていたが、北朝鮮を対米けん制カードに使う中国の動きは鈍かった。米国が在韓米軍に年内に整える地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)は中国の核・弾道ミサイルの無力化も見据えているとされている。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM13H09_T10C17A2EAF000/
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