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米入国禁止令、中東のキリスト教徒に逆風
「イスラム教徒との緊張を生む」懸念も
ISから奪還されたイラク・バルテラのキリスト教会で行われたミサ(2016年12月24日)
ISから奪還されたイラク・バルテラのキリスト教会で行われたミサ(2016年12月24日) PHOTO: CHRIS MCGRATH/GETTY IMAGES
By YAROSLAV TROFIMOV
2017 年 2 月 6 日 06:36 JST
――筆者のヤロスラフ・トロフィモフはWSJ中東担当コラムニスト
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ドナルド・トランプ米大統領が中東・アフリカ7カ国の市民の米国入国を一時禁止したことを受け、この地域で誰よりも動揺しているのはトランプ氏がまさに助けようとしているキリスト教徒たちの指導者だ。
1月27日に出されたこの大統領令の狙いは米国でのテロ攻撃を防ぐことで、イスラム教徒が多数を占める7カ国からの入国を少なくとも90日停止した。トランプ氏は、難民認定プロセスを改めて宗教のせいで迫害されている人を優先することも命じたが、対象は自国で「少数派の宗教」を信仰している申請者に限定している。
だが中東では、衝突の大半はスンニ派とシーア派というイスラム教同士のものだ(スンニ派はイラクでは少数派、シリアでは多数派)。トランプ氏は先週、米クリスチャン・ブロードキャスティング・ネットワークのテレビ番組で、キリスト教徒を優先する方針を示した。キリスト教は中東で最大の少数派宗教だ。
トランプ氏は「彼らはひどい扱いを受けている」との認識を示し、「われわれが助ける」と述べた。
キリスト教徒への偏見を助長か
米国移住を目指している中東のキリスト教徒数千人にとっては朗報かもしれない。だが、そうでない約1300万人にとっては迷惑なメッセージだ。ホワイトハウスの当局者たちは大統領令がイスラム教徒禁止だとする見方を否定しているが、イスラム教徒の米国入国についてトランプ氏が選挙中に発していた言葉と一致しているとの見方が現地では一般的だ。
レバノン国会で唯一のプロテスタントの議員バセム・シャブ氏は大統領令について、「誰も治安面だけが理由だとは思っていない。みなイスラム教徒の移民が主な標的だとみている」と述べ、「トランプ氏が差し出している救いは毒杯のようなものだ。イスラム教徒からキリスト教徒を遠ざけるという犠牲が伴う」と説明した。
ISに破壊されたカルデア・カトリック教会を調べるイラク兵(1月、モスル郊外) PHOTO: AHMAD AL-RUBAYE/ AGENCE FRANCE PRESSE/GETTY IMAGES
中東におけるキリスト教徒の立場は国によって大きく異なる。レバノンでは、大統領と軍の司令官がキリスト教徒であり、人口に占める割合も高く、比較的安全に暮らしている。一帯で最大のキリスト教徒人口を抱えるエジプトでは、キリスト教徒はテロ攻撃の標的になっているが、相変わらずアブデルファタハ・シシ大統領を支える防塁の1つだ。両国とも大統領令の対象になっていない。
大統領令にある7カ国の人は、イスラム教徒でもキリスト教徒でも米国に入国できない。このうちシリアとイラクには多くのキリスト教徒がいる。両国のキリスト教徒は「イスラム国(IS)」などのスンニ派過激派組織に迫害され、家を追われている。だが通常は、シーア派イスラム教徒に対するよりもわずかながらましな扱いを受けている。シーア派は改宗か死かの選択に直面している。
中東ではどこでも昔から、イスラム教徒の世論の相当部分が、歴史的に西欧との関係があるキリスト教徒の市民を疑いの目で見てきた。トランプ氏の大統領令はそうした感情をあおる公算が大きいと、米シンクタンクのセンチュリー財団の上級研究員マイケル・ワヒド・ハンナ氏は警鐘を鳴らす。
7カ国のキリスト教徒指導者がトランプ氏の動きを非難するのはそうした理由からだ。
ヨルダンのカトリック系研究施設の幹部は「キリスト教徒は中東の一部であり、同じ市民であるイスラム教徒と別の扱いを受けることは受け入れられない」と述べた。
「キリスト教徒に対するわな」
キリスト教指導者たちの怒りはイラクで特に激しい。新たに組織されたキリスト教徒の民兵と米国の助けを借りたイラク軍がここ数カ月で、モスルを州都とするニナワ州にあるキリスト教の中心地の大半をISから奪還したのだ。イラクのテレビは、古い教会の最上部に十字架を復活させる部隊の映像を誇らしげに流した。
これにより、2014年半ばから過激派の支配下にあったキリスト教徒の町々に数十万人が戻れるかもしれない。
キリスト教徒の国会議員ヨナダム・カンナ氏は、トランプ氏の大統領令がイラクのキリスト教コミュニティーに悪影響を及ぼすとの見方を示した。「新たな差別につながるだろう。少数派に非常に悪い影響を及ぼす」とし、「脆弱(ぜいじゃく)なコミュニティーを支援する気持ちはありがたいが、私たちが望んでいるのはとどまることであり、国外に出ることではない」と述べた。
国内にあるカルデア・カトリック教会のルイス・ラファエル1世サコ・バビロン総大司教も同じ考えだ。バチカンの通信社に出した声明で、同大統領令は「中東のキリスト教徒に対するわな」であり、「イスラム教徒の同胞との緊張を生み、助長する」と述べた。
さらに、宗教に基づいて迫害され苦しんでいる人々の中で分け隔てすれば、中東のキリスト教徒を害する結果になるとの見方を示し、同大統領令が「キリスト教社会を攻撃するすべてのプロパガンダと偏見に根拠を与えている」と話した。
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3日に連邦地裁がトランプ大統領の入国禁止令の一時差し止めを命じたのを受け、5日にバージニア州のダレス国際空港で温かく迎えられる入国者
3日に連邦地裁がトランプ大統領の入国禁止令の一時差し止めを命じたのを受け、5日にバージニア州のダレス国際空港で温かく迎えられる入国者 PHOTO: ASTRID RIECKEN/EUROPEAN PRESSPHOTO AGENCY
2017 年 2 月 6 日 12:38 JST
ドナルド・トランプ米大統領が出した入国禁止令をめぐる混乱は引き続き悪化し、米司法機関との対立という事態に発展している。不品行や非難すべき点は多々あるものの、トランプ氏はここまでの論争を引き起こす必要はなかった。
テロの頻発しているイスラム圏7カ国出身者の米国入国を一時禁止する大統領令に対し、ワシントン州シアトルにある連邦地方裁判所のジェームズ・ロバート判事は3日、全米でこれを一時差し止める命令(TRO)を出した。トランプ政権はTROの効力停止を求めて上訴したが、現在は差し止め命令に従って、大統領令の執行を停止している状態だ。新政権になってよく耳にするのはファシズムが始まったのかという論調だが、合衆国憲法の「抑制と均衡」のシステムが機能したおかげで、そうした状況は当面先送りされそうだ。
しかし、トランプ氏は侮辱をベースとする政治スタイルを司法にも持ち込み、こうツイートした。「わが国から実質的に法の執行を奪うのがいわゆる『判事』だが、この判事の意見はばかげており、覆されるだろう!」。行政が司法に敗北した場合のより適切な反応としては、控訴審では政権側が勝利すると確信していると述べればよい。特に今回は、ロバート判事の判断が著しく根拠が弱いのだからなおさらだ。
裁判所の判事は、原告が回復不能な損害を被っており、勝訴の見込みがある場合、一時差し止めを命じる権限がある。判事はこの異例の救済策を講じる理由を説明し、その必然性を明らかにする義務がある。
ロバート判事の7ページにわたる判決文には議論や分析が欠けており、ワシントン州はじめ各州の「公立大学や他の高等教育機関の運営や使命」に害悪を与えるほか、「各州の活動や課税基盤、公的資金に損害をもたらす」という通り一遍の説明をしただけだ。
合衆国憲法は移民に関して連邦政府の優位性を認めており、米大統領には1952年の移民国籍法で「米国の国益に有害と見なされる」「いかなる種類の外国人の入国も」一時的に停止できる独占的権限が与えられた。
判事がとるべき最初のステップは自らの司法管轄権の有無を判断すること、すなわち原告が提訴の根拠となる具体的な損害を被っているかどうかを判断することだ。州の予算や大学に関する推測に基づく主張だけでは条件を満たさない。それゆえロバート判事のTROは司法権の範囲を超えている。連邦第9巡回控訴裁は、TROの即時効力停止を求めたトランプ政権の上訴を却下したが、原告であるワシントン州は6日までにこれに関する回答を提示しなければならない。
トランプ氏の司法に対する暴言は法の支配への侮辱であり、恐らく法廷での争いでも不利に働くだろう。ここ最近、トランプ氏に盾突く者は一夜明けると進歩的な民衆のヒーローとなる傾向があり――(入国禁止に反旗を翻した)サリー・イエーツ司法長官代理がそうだが――第9巡回区のリベラル派は、大統領の攻撃から司法を擁護する必要を感じれば、判決を守るために結集する可能性がある。
たとえ法律上はトランプ氏に分があるとしても、同氏と側近のスティーブン・バノン首席戦略官・上級顧問やスティーブン・ミラー大統領補佐官は、秘密裏に策定したずさんで範囲の広すぎる大統領令を、困惑する国民に突きつけたことでこの混乱を生み出した。(バノン氏が運営していた)保守派ニュースサイト「ブライトバート・ニュース」のやり方はネット上では有効だろうが、大統領執務室では政治の現実にぶち当たってしまう。トランプ氏が自身の最悪の衝動に身を任せている限り、潜在的な友人を敵に回し、勝てる戦で大敗を喫することになるだろう。
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ニューヨーク行きの搭乗券を見せるイラン出身の研究者(5日、イタリア・ミラノの空港) PHOTO: ANTONIO CALANNI/ASSOCIATED PRESS
By DEVLIN BARRETT AND BRENT KENDALL
2017 年 2 月 6 日 10:21 JST 更新
【ワシントン】イスラム圏7カ国出身者の米国入国を一時禁止する大統領令の差し止めを巡る裁判は、最高裁判事が1人欠員となっていることから、サンフランシスコにある連邦控訴裁の判断が最終的なものになる可能性がある。
入管当局は現時点で、イスラム圏7カ国の出身者の入国を最低90日間停止するドナルド・トランプ大統領の大統領令について執行を停止している。大統領令はテロリストの入国を阻止するために必要だとして1月27日に出された。大統領令は難民の受け入れプログラムを4カ月間全面停止することも命じている。
この大統領令に対し、直ちに異議申し立ての訴訟が起こされた。ワシントン州シアトルの連邦地裁は3日、大統領令の一時差し止めを命じた。司法省は大統領令の即時復活を求めて上訴したが、連邦第9巡回控訴裁は5日、この訴えを退けた。控訴裁は審理を継続することとし、最終審理が6日午後に行われることになった。最短では同日中に控訴裁の判断が下され、入国禁止措置が復活する可能性もある。
最高裁は現在1人欠員で、リベラル派と保守派が4対4と真っ二つに分かれている。そのため控訴裁で敗訴した側は、最高裁に上告しても、控訴裁判決を覆すのに必要な過半数の支持を得られない可能性がある。最高裁が手続き停止の判断を下すには5人の判事の賛成が必要となり、賛否同数の場合は控訴裁の判決が有効となる。
最高裁に1人欠員が生じているのは、死去したアントニン・スカリア最高裁判事の後任としてバラク・オバマ前大統領が2016年3月にメリック・ガーランド巡回控訴裁判事を指名したのに対し、議会共和党が承認手続きを拒否したためだ。有権者の意見を反映させるため次期大統領に指名を委ねるべきだというのがその理由だった。
トランプ氏は先週、空席の最高裁判事にニール・ゴーサッチ巡回控訴裁判事を指名した。
現在の最高裁判事8人が必ずしも賛否同数となるわけではない。信条・思想で二分された判断を出すとは限らず、幅広い意見の一致を見る可能性もある。ただこれまで移民・難民問題の判決では、各判事の立場がそのまま判決に表れている。オバマ前政権の一部不法移民の強制送還延期計画の是非をめぐる訴訟でも、判事の判断が賛否きっ抗し、同計画は暗礁に乗り上げた。
今後、最高裁の欠員が埋まり判事が9人になれば、入国できる人とできない人を決める権限を大統領がどこまで持つのかという法的な問題について、数カ月後で判断が下される可能性がある。
大統領令に対する異議申し立ての訴訟は全米各地で複数起こされている。サンフランシスコ控訴裁での訴訟が続く中で他の裁判がどう進められるのかは不明だ。
トランプ氏は4日、シアトル連邦地裁のジェームズ・ロバート判事が大統領令の差し止めを命じたことに激怒し、ツイッターで「いわゆる判事による」判決という表現を使って批判した。
大統領が判事を公に攻撃することには共和党議員の間からも懸念の声が上がった。共和党上院トップのミッチ・マコネル院内総務(ケンタッキー州)は5日、CNNテレビで「(判決には)時に失望することもあるが、個々の判事を批判することは避けるのが一番だと思う」と述べた。
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