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不透明な移民政策、米国のハイテク優位性揺るがす
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移民規制が米のハイテク優位性に与える影響について筆者のクリストファー・ミムズが解説(英語音声のみ) Photo: Shutterstock
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CHRISTOPHER MIMS
2017 年 2 月 3 日 17:33 JST
――筆者のクリストファー・ミムズはWSJハイテク担当コラムニスト ***
1月27日に移民に関する米大統領令が発令される以前から、シリコンバレーの新興企業幹部ティム・ウィルソン氏は弁護士からナノ構造材料の専門家であるベトナム人の採用は見送った方がいいと助言を受けていた。
トランプ大統領の移民政策には不確実な部分があるので、待つべきだというのがその理由である。
ベンチャーキャピタル(VC)アーティマン・ベンチャーズのパートナーであるウィルソン氏は「われわれは今週、弁護士たちが予想していた混乱を目の当たりにすることになった」と述べた。
米国でのテロを防止するめにイスラム圏7カ国の市民の入国禁止に焦点を当てたその大統領令。従業員がこの措置で影響を受けるという理由で訴訟を起こしたハイテク企業もあった。
ハイテク企業の経営幹部の間では、大統領令で高度な技術を持つ移民の採用が難しくなることを懸念する声が出ている。トランプ氏は、これまでも外国人を雇っている米国企業を繰り返し批判してきた。実際に、ある大統領令の原案では、ハイテク企業 がよく利用しているシステム、高度な専門職向けの米国ビザ「H-1B」の発給方法の見直しが提案されている(最終的にトランプ大統領がその原案を修正したり、完全に破棄したりする可能性もある)。
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筆者が話を聞いたベンチャー投資家、経営トップ、エンジニアたちの主張は一貫して同じだった。2017年にハイテク技術者たちの自由な移動を過度に妨げようとする政治家たちは、米国から収入や雇用ばかりか、そうした高額な賃金を得ている労働者の それぞれがコミュニティーに生み出しているすべての追加的な支援、サービス、行政職なども奪うことになるというのだ。
そうした企業は外国人を雇っているので、こうした主張には自己利益も絡んでいる。しかし、論理的でもある。遠隔作業を可能にする技術には新興企業を多国籍企業に変える可能性がある。また、支店、従業員、売上高などを世界中に拡散させている大手企業は、資源、知的財産、優秀な人材を事実上どこへでも移動させることができる。
行き過ぎた衝動的な移民規制による最大の損失は、シリコンバレーのようなハイテクハブで共生している世界で最も優秀な人材たちのコミュニティーが失われることだろう。そうした文化は米国の人材だけで置き換えたり、再生したりすることができない(例えば米国が最初の原子爆弾を開発していたときに外国人の科学者や技術者の採用を拒否していたらどうなっていただろうか)。
そうした優秀な人材は、米国の移民政策がより明確になるのを待ってくれないかもしれない。今や世界には米国やシリコンバレー以外の新興企業のエコシステムやハイテクハブがたくさんある、とウィルソン氏は指摘する。
カナダ新興企業へのVC投資総額(左)と平均投資額
https://si.wsj.net/public/resources/images/BF-AN957_KEYWOR_16U_20170201181505.jpg
例えばカナダ。過去の米国の移民法をめぐる問題を受け、マイクロソフトは2007年、米国での採用が難しかったエンジニアたちに職場を提供するためにバンクーバーにサテライトオフィスを開設した。マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツ氏は2009年、同社のカナダオフィスを例に挙げ、H-1Bビザの発給枠がハイテク分野での米国の優位性をいかに脅かしている点を強調した。
マイクロソフトの広報担当者は、同社のカナダへの投資に関して、移民法がいちばんの理由というわけではないが、確実に要因の1つにはなってきたと述べた。
マイクロソフトだけではない。アップル、グーグル、フェイスブック、シスコシステムズやその他の米大手ハイテク企業数十社は同じ理由でカナダと世界中にオフィスを開設してきた。ハイテク業界の優秀な人材の価値は非常に高く、米国に呼び寄せることができないときには企業の方から出向いていくほどである。
カナダは昔から大勢の優秀なエンジニアを輩出してきた。たとえばウォータールー大学は、シリコンバレーの「IT企業育成機関」とも言うべきベンチャーキャピタル、Yコンビネーターの出資を受けている企業の創業者輩出人数でマサチューセッツ工科大 学(MIT)、スタンフォード大学、カリフォルニア大学バークレー校に次ぐ4位であり、ハーバード大学、カーネギーメロン大学、コーネル大学らを上回っている。カナダのベンチャー投資家、ジョン・ラッフォロ氏によると、過去には、そうした人材が常に米国に流出するという問題があったという。
カナダがリスクキャピタル、さまざまな支援・促進センターなどが集まる新興企業のエコシステムを構築してきたことで、そうした流出は減ってきている。カナダは資金と成功した国内企業――現在の企業価値が45億ドルと評価されている電子商取引のショッピファイなど――による指導の両面で莫大な再投資も経験している。カナダ最大のVCであるOMERSベンチャーズを率いるラッフォロ氏は、同国の高度な専門職に優しい移民法、寛容で多文化主義だという評判なども、米国に向かっていたかもしれない人々を誘致するのに役立っていると話す。
2015年の米国のVC投資の総額はカナダのそれの20倍以上だった。シリコンバレーには起業文化、優秀な経営陣と専門的な技能を持つエンジニアの強固なネットワークという他にはない組み合わせがある。それでも、企業の移動性がさらに高まると、その圧倒的な優位性も脅かされる可能性がある。
現在の従業員数は21人だが、高賃金の従業員が月4人のペースで増えている新興企業ヒューマナイズのベン・ウェイバー最高経営責任者(CEO)は「わが社の従業員の3分の1がH-1Bビザかグリーンカード(永住ビザ)で米国に滞在している」と話す。同社は世界的な大手企業がソフトウエアとハードウエアの両面を通じて従業員の働き方、大量の知的財産権の生み出し方などを最適化する過程を手助けしている。
ウェイバーCEOの最大の懸念は、トランプ政権がH-1Bビザの制度を変更するなどして、従業員の1人に直接的な影響を与えることである。高度な専門職向けのH-1Bビザはくじ引きを通じて年間6万5000人に発行される。この制度は以前から政治家とハイテク業界の自称改革者の両方から攻撃の的となってきた。
筆者が話を聞いた人々のなかで激しい不安や怒りをはっきりと口にしたのはウェイバーCEOだけだったが、そうした思いはハイテク業界の経営幹部や一般従業員のあいだで例外的ではないと言える。
1月27日の大統領令の結果、「われわれが米国での採用を減らし、外国での採用を増やすことになるのは間違いない」とウェイバー氏は話した。
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【社説】トランプ氏とターンブル氏の滑稽な戦い
外交的儀礼を欠く電話会談は世界の耳に届いた
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トランプ氏とターンブル氏の電話会談について、ハドソン研究所のルイス・リビー氏が解説(英語音声のみ)Photo credit: Bloomberg.
2017 年 2 月 3 日 16:42 JST
バラク・オバマ政権下で8年にわたって放置され続けた米国の同盟国は、ドナルド・トランプ新大統領が変化をもたらすのではないかと期待を寄せている。しかしトランプ氏の首脳外交は波乱のスタートとなっている。
トランプ大統領とメキシコ政府との不和は先週、各メディアが大きく取り上げた。それに続いて今度は、1月28日に行われたマルコム・ターンブル豪首相との電話会談でも衝突があったと一部で報道されている。両国の間では、パプアニューギニアとナウルにある難民収容施設から米国が1250人を受け入れるという合意があった。しかし米紙ワシントン・ポストと豪メディアなどが報じたところによれば、トランプ氏とターンブル氏はこの件で激しくやり合ったという。
これら難民は主に中東や南アジアの出身者であり、豪政府が2013年に密航者政策を強化するまでは豪州内で受け入れられていた。パプアニューギニアとナウルの収容所で難民が置かれた状況に国際社会から批判の声が高まる一方、ターンブル氏も難民を受け入れれば有権者の信任を失う状況に置かれた。その中でバラク・オバマ前大統領が米国側の身元調査を受けることを条件に、昨年11月に1250人の難民を受け入れることで合意したのだ。
各報道によれば、電話会談でターンブル氏は、この合意がまだ有効であることをトランプ氏に確認しようとした。それに対してトランプ氏は「史上最悪の合意だ」と一蹴し、豪政府が「次のボストンマラソン爆弾テロ犯」を米国に輸出しようとしていると非難した。そして1時間の予定だった電話会議を25分で切り上げたという。
多くの難民はイランやイラクなど、トランプ氏が先日署名した大統領令によって現在は一時入国を禁止されている国の出身者だ。しかし大統領令には豪政府との約束を守るため、すでに結ばれている他国との合意は禁止対象から除外すると書かれている。それゆえにトランプ氏はおそらく、電話口で怒鳴り散らしながらも、合意内容は守る意図があるとターンブル氏に伝えていたのだろう。
しかし電話会談でのやりとりがメディアを通じて広まると、トランプ氏はツイッターにこう投稿した。「オバマ政権はオーストラリアから数千人もの不法移民を受け入れることに合意した。なぜだ? 私はこのばかげた取引を精査する」
一連の展開は、聞けば聞くほどばからしくなる。ターンブル氏も謙虚さで知られる人物ではないが、今回は互いに初めての電話会談だ。わざわざ難民のことを自ら取り上げず、部下などに扱いを任せることもできただろう。一方のトランプ氏は、あらゆることを個人攻撃として受け止める癖がある。しかし今回のように相手国を非難し、米国の立ち位置に疑問符を残すような行為は国益につながらない。
トランプ氏の大統領令も毎年5万人の難民受け入れは認めている。ならば1250人の受け入れは対応可能な範囲であり、人道的でもあろう。
米国と豪州の関係は堅固であり、今回の1件も乗り切れるだろう。しかし第一印象がどのような影響を持つのかトランプ氏も考えるべきだ。今は世界各国の首脳に自己紹介をする段階だ。相手は横柄なやり方に順応すると同時に、トランプ氏が信頼するに足る人物かどうかを計っているのだ。
トランプ氏は太平洋における中国の挑発的行動に対抗する姿勢を示している。そのためには米海軍は同盟国の力を必要とする。11月の米大統領選前、ターンブル豪政権は南シナ海で航行の自由を維持するためのパトロールは行わないとしていた。両者の気の短いやりとりが世間に広まったことで、ターンブル氏がその考えを改めるのは余計難しくなっただろう。世界中の他の同盟国も安心しにくくなったはずだ。
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英国とEUの間の深い溝−期限内の離脱合意は至難
先月辞任した英国のロジャーズ元駐EU大使(1日)
By VALENTINA POP AND STEPHEN FIDLER
2017 年 2 月 3 日 17:24 JST
英国の欧州連合(EU)離脱交渉の開始が待たれる中、双方の主張の間に横たわる大きな溝が一段とはっきりしてきた。
1月に辞任した英国のアイバン・ロジャーズ元駐EU大使は1日、議会の委員会で、離脱交渉は「われわれが恐らく経験したことのない規模、第2次世界大戦以降では間違いなく最大規模の」ものになるとの認識を示した。
離脱通告から2年間というEUが定める期限内に交渉を完了させるのはかなり骨の折れる仕事だ。
この2年間で合意しなければならない項目は三つある。離脱条件、離脱後の長期的な貿易・経済協定、そして正式な離脱までの暫定措置だ。
あるEU高官は「2年間で三つの項目について合意できると考えるのは根本的に間違いだ。せいぜい一つ半だろう」と語った。
英国のテリーザ・メイ首相は2日、離脱に向けた戦略を示す「白書」を公表した。これによると、政府は「EUとの既存の関係から新たな相互関係に移行するにあたり、ビジネスが途絶えたり安定が脅かされたり」しないようにしたい考えで、離脱後のパートナーシップや「段階的な実行プロセス」についての合意を目指す構えだ。
英国、EU双方とも、合意に達する保証はないことを認めている。メイ首相は白書で、「英国にとっては、悪い合意よりも合意無しの方がましだ」として、途中で交渉をやめることもあり得るとあらためて強調している。EU側も交渉決裂の可能性を排除していない。だが合意が見送られた場合、共に痛手を被るにしても、EU経済より英国経済が受ける打撃の方が大きいというのが大方の見方だ。
最大の争点は、EUが英国に求める「離脱料」となりそうだ。EUの推計によると、英国が支払いを約束してまだ未払いとなっている拠出金の額として、離脱料は550億?600億英ポンド(最大650億ポンド=約8兆4900億円)に達する見通しだ。
英国はこの未払い金について公式な場では何も言っていない。白書では、2016年11月24日以降に署名されたEUプロジェクトについては、「資金を提供するだけの大きな価値があり、しかも英国の戦略的優先事項に合致するもの」でない限り、拠出金は出さないとしている。
EU関係者らはこの離脱料について、英国の支払額が少なければ少ないほど、その後も支払いを求めるEU加盟27カ国からの圧力はそれだけ強まるだろうと認めている。一方、英国内では、多額の離脱料の支払いには反対の声が多い。
交渉を頓挫させかねないもう一つの不安の種は交渉のタイミングだ。英国は早ければ3月9日にも正式に離脱を通告するとみられるが、本格的に交渉が始まるのは6月となる可能性がある。だが、5月のフランス大統領選や9月のドイツ総選挙など、欧州各国で予定されている選挙の影響で交渉に遅れが生じる公算が大きい。
交渉の優先事項を巡っても双方の意見は食い違う可能性が高い。EUの最優先事項は、英国の離脱を完了させることだ。EUからすれば、英国が重大と考える移行措置や将来の関係などは離脱完了後に決めれば良い問題だ。
一方、メイ首相がEUよりも有利に立てる問題の一つが、英国に住むEU市民とEUに住む英国人の市民権の問題だ。「(英国から離脱)通告がない限り交渉には応じない」姿勢のEUは、離脱交渉全体に影響が及ぶことを心配して市民権についても話し合いに応じていない。だが前出のEU高官は、EUにとって市民権は恐らく最も重要度の高い問題で、EUを合意成立に向け突き動かすインセンティブになるとみている。
EUは依然、自らが交渉の切り札を持っていると考えているが、離脱料や市民権の問題を持ち出せば、英国にも大いに分があるだろう。
英EU離脱特集
英国、EU離脱で財政悪化の公算
【社説】トランプ氏と米英の特別な関係
オレンジの価格下落、欧州の移民にほろ苦く
海外産の安いオレンジがイタリア農家を困窮させ、移民の職を奪う
イタリアの「オレンジ・ベルト」にあるロザルノで暖をとる移民 PHOTO: NADIA SHIRA COHEN FOR THE WALL STREET JOURNAL
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PIETRO LOMBARDI AND DREW HINSHAW
2017 年 2 月 3 日 14:43 JST
【ロザルノ(イタリア)】かんきつ類が多く収穫されるイタリアの「オレンジ・ベルト」地帯が、果実の価格下落と移民危機に同時に襲われている。イタリアで足止めされている数千人もの若い移民たちはオレンジ畑で働いて収入を得てきたが、価格低迷を受けて農家は収穫を見送る事態に見舞われている。
価格の下落は安い海外産のオレンジが大量に輸入されていることが原因だ。新たな労働力が流れ込む中で、働き手の賃金も下がりつつある。収穫すべき果実がなく職を失った人々は手持ちぶさたとなり、ストレスを抱えながらテント村で生活を続け、薬物に手を出すケースも増えているという。
「セネガルで暮らしていたのはこんな小屋ではなかった。もっと威厳を持って生活をしていた」と話すのは、イタリア南西部のロザルノに滞在するモハマド・シアムさん。以前はオレンジ畑で働いていたが、イタリアに到着して4度目の冬は無職のままスラム街で過ごす。
43万5000人の不法移民がイタリアに
欧州の国々が受け入れを渋っていることもあり、イタリアには数十万人の移民が滞在している。多くは2014年から入国し始めた西アフリカやエリトリアの出身者だ。
イタリアにおける不法移民の推移
排外主義が台頭する中でフランスやオーストリアの政府は、こうした移民がイタリアから流入することを阻止する姿勢を取る。欧州連合(EU)は地域全体で移民を受け入れて域内諸国に配分するとしていたが、その計画は破綻。ミラノのISMU財団の推計によれば、イタリア国内には43万5000人の不法移民が住み着いているという。2013年からは50%も増えた計算だ。この問題を解決するため、パオロ・ジェンティローニ首相の新政権は不法移民の国外追放を厳格化する考えを表明している。また亡命要請を裁判所が却下する数も増えつつある。
その結果、多くの移民たちは就労許可を取得できず、不法移民同士で集まり生活を続けるようになる。多くが農家で働こうと試み、賃金が下がる中で職を奪い合う。
国内の出生数が減少する中で、イタリアは不法就労者を含む海外からの労働力に依存。労働者たちは畑を耕し、オレンジを収穫する役を担ってきた。しかしオレンジの価格が下落したことを受け、今は必要とされる働き手も減っている。
フォトエッセイ
イタリア南部カラブリア州のオレンジ畑で働く移民たち
VIEW PHOTOS
NADIA SHIRA COHEN FOR THE WALL STREET JOURNAL
農業組合のコルディレッティによれば、ブラジルやモロッコなどから価格の安い輸入品が増えたことにより、オレンジの価格は2015年4月から2016年4月にかけて50%も下落。イタリア南部のオレンジ生産者は、1キロあたり7ユーロ(約850円)で取引を強いられることもある。これは生産価格の半額だ。
オレンジ農家のニノ・クアランタさんは、この値段では小規模な農家の選択肢は二つしかないと話す。「アフリカ出身の労働者など立場の弱い人からさらに搾取するか、オレンジの収穫を諦めるかだ」
不当労働を強いられる難民たち
オレンジの価格下落を受けて多くの農家は収穫を諦め、果実を腐らせることを選んでいる。コルディレッティの会長を務めるピエトロ・モリナロ氏によれば、植え付けそのものを減らす動きも見られる。過去15年間で農家たちは3割ほどオレンジの木の植え付けを減らし、かんきつ類を育てる同国の畑の面積も3割ほど減っているという。
オレンジの収穫期は、11月から3月だ。しかしこの期間に職を見つけることができても移民たちが正当な賃金を受け取ることはなく、15ユーロ程度の日給を手にして終わる。法律に規定された労働時間の2倍働かされることもあり、勤務地までの交通費や食事についても支払わなければならない。
こうした扱いをする農家や農家から果実を購入する大企業は、時に批判を受けることもある。キャンティワイン、シチリアのレモン、イタリアのオリーブ、そして同国の巨大なトマト生産業は、移民を不当に扱っているとして批判を受け続けている。
イタリア最大のスーパーマーケット網を誇るCo-opは昨年、仕入れ先の見直しを行った。トマト、ブドウ、オレンジ、イチゴなど300以上の業者を調査し、不法就労が行われていないかを確認した。ここ数年では不当就労があったとして9カ所の仕入れ先と取引を停止している。
ロザルノにある移民キャンプ PHOTO: NADIA SHIRA COHEN FOR THE WALL STREET JOURNAL
「物乞いとして暮らすよりはいい」
オレンジ農家で働く不法移民に関する公式な統計はない。しかし政府や研究機関などによれば、農業部門で働く不法移民は10万人から40万人にも達するという。「スパゲティの一皿を例に取っても、製造のどこかの段階で搾取された移民労働者が関わっている」と国際移住機関のイタリア支部広報担当者、フラビオ・ディジアコモ氏は指摘する。
イタリアで最も高価な果実のひとつであるベルガモットの皮は、多くの香水の原材料として使われている。その収穫を担っているのも移民たちだ。ベルガモットの収穫は、近年はインドからの移住者が行ってきたが、証言によれば彼らは30ユーロ程度の日当を受け取って不法に就労していたという。しかし最近ではリビアを経由して入国した西アフリカからの移民が、さらに安い賃金で収穫を行う。
セネガル出身のボウバカル・マネさんも、その1人だ。「何もせず物乞いとして暮らすよりはいい」と話すマネさんの日当は、25ユーロだという。
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