2017年1月30日 中東・アフリカ7か国からの入国を制限する米国大統領令の撤回を求める(談話)社会民主党幹事長 又市征治 1.大統領選挙戦の中で、テロとの戦いを口実に、イスラム教徒のアメリカ入国を禁じるべきだと発言したドナルド・トランプ米国大統領は、27日、難民やイスラム教徒の多い中東・アフリカの7か国からの市民の入国と総ての国からの難民の受け入れの停止を命ずる大統領令に署名し、発令した。発令後に米国に戻った永住資格所有者、グリーンカード保持者、正統な入国ビザを有する関係国出身者でさえも空港の入管で上陸拒否とされ、拘束状態に置かれる事態に至った。しかし、指定された7か国出身者による米国でのテロによる殺害事件は起こっていない。米国と密接な貿易関係等にあるテロ事件犯人輩出国は、まったく含まれていない。まさに恣意的なものであり、排外主義的といわざるをえない。トランプ大統領の今回の決定は、「人種」や「宗教」に対する偏見・差別であり、人類普遍の原則を踏みにじる行為として、断じて見過ごすわけにはいかない。 2.今回のトランプ大統領の決定に対し、抗議するデモが全米各地で拡大している。また、国際機関や団体、各国の要人らが、人道に反する人種差別だとして非難している。国連のグテーレス事務総長も、ホロコーストを思い起こす日に合わせて開かれた式典で、移民や難民、マイノリティーが差別に直面していることに強い懸念を表している。幸いにして、29日までに少なくとも5州の連邦地裁が大統領令の一部執行停止を言い渡し、足止めされた多くの人々が入国できたが、いまだに、拘禁状態に置かれたり、送還された人々もいる。 3.かつて南アフリカで、アパルトヘイトと闘ったデズモンド・ツツ元大主教は、「不当な仕打ちが行われているのに中立であろうとすることは、加害者に加担するのを選んだということです」という言葉を残している。とりわけ排日移民法と言われる1924年移民法により、日本人は、人種を理由に米国への移民を阻まれた過去がある。そして、第二次大戦中には、フランクリン・ルーズベルト大統領による大統領令9066号により、日系人は出生による国籍取得者も強制収容された歴史を持っている。トランプ大統領を「信頼できる人物」だと評価した安倍首相が、28日の電話による日米首脳会談でこの問題に触れず、今なお積極的に行動しようとしないのは、極めて遺憾である。 4.社民党は、家族を引き裂き、テロ被害から逃れるために国を出た人々を排斥するにすぎない今回の大統領令を、直ちに撤回することを求める。そして日本政府は、トランプ大統領に対して、強く善処を求めるとともに、日本自体が「難民鎖国」状態であることを思い起こし、一層の難民受け入れを進めるべきである。 以上 http://www5.sdp.or.jp/comment/2017/01/30/%e4%b8%ad%e6%9d%b1%e3%83%bb%e3%82%a2%e3%83%95%e3%83%aa%e3%82%ab%ef%bc%97%e3%81%8b%e5%9b%bd%e3%81%8b%e3%82%89%e3%81%ae%e5%85%a5%e5%9b%bd%e3%82%92%e5%88%b6%e9%99%90%e3%81%99%e3%82%8b%e7%b1%b3%e5%9b%bd/ 米国トランプ大統領による入国制限措置の撤回を求める 2017年1月30日 日本共産党幹部会委員長 志位和夫 一、米国のトランプ大統領は、就任式で「過激イスラムテロ」を打倒すると演説したのに続き、テロ対策として、全ての国からの難民受け入れの120日間の凍結、シリア難民入国の無期限停止、中東・アフリカ7カ国の一般市民の入国の90日間禁止を命じる大統領令を出した。この措置に対して、世界各地で大きな混乱と批判がおこっており、重大な国際問題となっている。 難民の入国制限、特定の宗教や国籍者に対する入国制限は、難民条約をはじめ国際的な人権・人道法に反するとともに、テロ根絶の国際的な取り組みに対しても、きわめて深刻で否定的な影響を与えるものであり、すみやかな撤回を求める。 一、2006年に、国際社会の対テロ基本戦略として、米国を含め国連総会で全会一致で採択された、国連「グローバル対テロ戦略」は、「すべての人の人権と法の支配の促進・擁護がこの戦略に不可欠」であると明記し、「テロをいかなる宗教、文明、民族グループとも結びつけてはならない」とのべている。 トランプ大統領による今回の措置は、この総会決議に明記された国際的なテロ根絶の大原則に真っ向から反するものである。それは重大な国際的人権侵害を引き起こしているだけでなく、テロ根絶にとっても深刻で重大な逆流をつくりだし、テロリストを喜ばせることになりかねない。 一、トランプ大統領による今回の措置に対しては、米国国内で激しい批判の声が起こり、15の州と首都ワシントンの司法長官が共同声明を発表し、「憲法に違反し、違法でもあるこの大統領令は遺憾だ」と非難している。 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、最も弱い立場である難民は、「宗教、国籍、人種を問わず、平等に扱われ、保護と支援、再定住のチャンスを受けることができるべきだ」との声明を発表した。アラブ連盟は、「正当な手続きではない」「アラブとアメリカの関係に悪い影響を及ぼしかねない」との声明を発表した。 ドイツ、フランス、イギリス、カナダなど、米国の同盟国の首脳からも批判・不同意が表明されている。 こうしたなかで、安倍政権が、自身の見解を明らかにせず、「アメリカ政府の話であり、政府としてコメントすることは控えたい。関心を持って見守っていきたい」(30日、菅官房長官)との表明にとどめていることは重大である。 日本政府は、この重大な国際問題について、トランプ政権に対して、国際的道理にたって言うべきことを言うという姿勢にたつべきである。 http://www.jcp.or.jp/web_policy/2017/01/post-734.html
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