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「英EU完全離脱の衝撃」2017年01月26日 (木)
百瀬 好道 解説委員
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/900/261620.html
Q1:ここからは百瀬好道解説委員とお伝えします。百瀬さんは、今後のイギリスのEU離脱のプロセスのどこに注目しますか?
A:3つの点に注目している。第1に、メイ首相がイギリスの新しい経済モデルとして提唱している「グローバル・ブリテン」が本当に実現できるのか。次にEUとの新協定が、イギリスの望むような内容の協定になるのか。3つ目はイギリスに進出している日本企業への影響。
Q2:最初の「グローバル・ブリテン」これはどんな考え方なのでしょう?
A:イギリス経済の軸足をヨーロッパから、広く世界に移すという考え方。具体的には、潜在的な成長力がある中国やインドの新興国、経済大国のアメリカと経済協定を結んで貿易や投資を活発にして成長を実現すること。立派な構想だが、実現は簡単ではない。こうした自由貿易協定は、EUから離脱した後でないと結べないし、交渉自体も数年かかるといわれる。しかも、イギリスにとって有利な自由度の高い協定が結べるかどうかも疑問だ。移民を制限するというイギリスに対して、新興国が自分たちの市場を簡単に開くとは思えない。「グローバル・ブリテン」への道は険しい。
Q3:足元のイギリス経済に心配はないのでしょうか?
A:離脱を決めた去年6月以降、イギリス経済はたいへん好調だ。その自信が、メイ首相の強気な完全離脱表明を後押ししたと思う。好調な経済の牽引役は個人消費だ。その意味で気掛かりなのが、値下がりが続くポンドの動向だ。ポンド安が進むと輸入物価が上がり、頼りの個人消費が冷え込む心配がある。イギリス経済は決して盤石ではない。
Q4:次にイギリスとEU離脱や新協定の交渉ですが、24日にイギリスの最高裁が、離脱を通知する際には、議会の承認が必要だという判断を示しました。まず、この影響をどう見ますか?
A:イギリス政府にとっては想定内の結果で、3月までに通知するという手続きに大きな影響はないと思う。理由は大半の議員は国民投票の結果を尊重するといっている。メイ首相は24日に新協定を発効させるかどうか議会にはかると表明。議会に最終的な決定権を認めたのは、残留派議員が求める修正案や国民投票の実施要求を封じ込める布石だと見る。
Q5:メイ首相は、EUから完全離脱するといいながら、できるだけ有利な新しい協定をめざすと言っています。それはなかなか難しいのではないですか?
A:イギリスの輸出の4割はEU向けで、銀行をはじめサービス業は大陸でビジネス展開。メイ首相はいまと大きく条件が変わらない協定にしたいけれど、それでは虫が良すぎると考えているはず。私は2つの重点目標、つまり、経済の生命線・シティーの利益を守るために銀行の自由な営業をできるかぎり維持すること。雇用を支える自動車産業やIT先端産業が流出するのを防ぐこと。これに的を絞ってEUから譲歩を引き出す作戦をとると見る。
Q6:EU側はどう対応するのでしょう?
A:政治的な事情から、相当厳しい態度で臨むのは間違いない。移民制限を理由に離脱を認めたうえ、輸出関税もゼロ、サービス業の営業も自由といった協定では、イギリスのように離脱しようという国が出かねないからだ。離脱は割に合わないことを示す必要がある。EUはじっくり交渉に臨むので長期は必至、イギリスの希望するように2年では終わらない。一部の関税は復活するだろうし、EU域内で銀行が支店を開ける銀行パスポートのような特権をイギリスに認めるのは難しい。仮に決着しても、すぐにルールを変えると、イギリスの方がショックは大きい。段階的に離脱を進める「移行期間」を設けると思うが、それを何年にするかも攻防のポイントになるだろう。
Q7: 最後に、イギリスに進出している日本企業はメイ首相の演説をどう受け止めたのでしょう?
A:日系企業はおよそ1000社。完全離脱となると、巨大なEU市場へのアクセスの権利を失う訳だから気が気ではないはず。例えば、トヨタや日産の生産する車の7割はEUに輸出。関税が復活したりルールが変わったりするとコストが膨らむ。日産のゴーン社長は離脱の条件がはっきりすれば投資計画を精査すると、計画の見直しもありうることを示唆。銀行や保険会社も、自由な営業ができなくなるとすると大陸への移転を考えざるを得ない。交渉の先行きは見極めにくいので、日系企業は不確実な環境の中での経営を余儀なくされそうだ。
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