http://www.asyura2.com/17/kokusai17/msg/596.html
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トランプ関連の話になるとウンザリするほど悪意的にねじ曲げた報道がなされるので、これからの世界と日本を考える人なら、報道で使われる形容句や表面的な説明に押し流されることなく、トランプ政権の意図や政策の内実をきちんと把握する必要がある。
今のところメキシコをダシに使った説明になっているが、トランプ米国が打ち出した「20%国境(調整)税」が物議を醸している。
「20%国境税」という話が出る前から、トランプ氏は、米国からメキシコに生産拠点を移した企業が製品を米国に輸出する際には35%、為替操作を行っている中国の製品には45%を課税するなどと主張してきた。
今回の「20%国境税」は、メキシコ“など”の貿易赤字国と説明しているように、特定個別の国を対象とした政策ではない。
今のところは国民向けにわかりやすく、トランプ氏が公約を実行しているという印象を与えるためにも、赤字国(米国から利益や仕事を奪っている国という認定)向けという限定性のある説明を行っているが、「国境調整税」の対象が貿易赤字国というWTO的に実施できないような話は徐々に消えていくだろう。
まず、タイトルに書いたように、トランプ米国連邦政府が「20%国境税」を主張することは、正当であり、国際的公平性に適っている。
国境調整税が20%という値になっていることは、意味深というかわかりやすい。というのは、20%という値は、EU諸国の平均的付加価値税率に相当するからである。
(米国で州税として代表的な小売売上税は、国境措置がない物品税で付加価値税(消費税)とは別もの)
国民は、消費税(付加価値税)の仕組みや目的について、長期にわたって政府や学者そしてメディアからウソやゴマカシの説明を受けてきたが、付加価値税(消費税)が「名称を変えた関税」でもあることを知れば、トランプ政権が打ち出した「国境調整税」の正当性も理解できる。
たとえば、日本と米国の乗用車向け輸入関税については、日本ゼロ%・米国2.5%で、米国のほうが“優位”といった説明もされているが、消費税を含む関税的要素をすべて考えれば、「日本8%、米国2.5%」となり、日本の関税障壁のほうがずっと高いことになる。
オモテの自動車関税が10%であるEU諸国を含めて比較すると、「EU約30%、日本8%、米国2.5%」という関税障壁の違いになる。
(EUは自動車関税10%+加盟各国付加価値税税率。メキシコの付加価値税税率は16%、米国からメキシコへの輸出は関税ゼロ)
この比較を考えれば、トランプ政権が「20%の国境調整税」を持ち出すのも理解できるだろう。20%を足せば、「EU約30%、日本8%、米国22.5%」で、日本よりずっと優位になるが、EUに対してはなお低い関税障壁である。
(これは、日本が、「国境調整税」について堂々と交渉できることを意味する)
さらに言えば、付加価値税(消費税)として輸入段階で課された税金は、輸出も行っているグローバル企業であれば、その負担をクリアすることができる。
日本でも一部の車が逆輸入されているが、自動車メーカーは輸出を行っているので、輸入段階で支払った“関税”(消費税)は、「輸出免税」(輸出0%課税)制度のなかで還付される。
(たとえば日産がメキシコから完成車を輸入する際に支払う税金は、古典的な関税なら戻ってこない。また、付加価値税制度がない国から付加価値税施行国に輸出する企業にとって、国境で課される付加価値税は関税とまったく同じ負荷となる)
これまで消費税増税問題に関する投稿で何度も説明してきたが、消費税は、財政健全化や社会保障原資とはまったく無関係(消費税はそのような目的を実現するものとしては非効率で不合理な税制)であり、グローバル企業(世界各地に生産・販売拠点を持ち輸出・輸入の両方を大規模に行っている企業)の国際競争力や財務基盤を強化するためのものである。
このような背景から、グローバル企業は、より自己に有利な税制を求めて、関税よりも付加価値税(消費税)、法人税よりも付加価値税(消費税)を追求するようになる。
トランプ自身もそれを狙っているというかキャラ的にそうなるのかもしれないが、「国境調整税」は、トランプという変なオッサンがまたまた身勝手で異様な政策を打ち出したといって済むものではないことは押さえておく必要がある。
このような話は、日本を含む統治機構の官僚やグローバル企業の経営者たちそして付加価値税や消費税に関する嘘やごまかしの説明に荷担してきた主要メディアの幹部や記者はわかっている。(わかっているからこそ、「国境調整税」が付加価値税制度に影響を与えるのではないかと内心怯えている)
欧州や日本などの付加価値税制度から米国の投資家も利益を得ている(参照A)ので、今回の「20%国境税」もそのまま実施されるかどうかは未定だが、反付加価値税(反消費税)の立場としては、トランプ政権に頑張ってもらい、“悪魔の税制”である付加価値税(消費税)が廃絶されるきっかけをつくって欲しいと願っている。
「トランプ米国の「20%国境税」 2」以降で、この問題をもう少し掘り下げて説明したいと考えている。
※参照投稿
(参照A)
「米国支配層が輸出企業向け“リベート”税制と知りながら付加価値税(消費税)を放置するワケ」
http://www.asyura2.com/14/hasan86/msg/682.html
(その他参照)
「E:消費税増税の目的は、「社会保障」や「財政再建」ではなく、「国際競争力の回復」である:付加価値税と“国際関係”」
http://www.asyura2.com/12/senkyo129/msg/400.html
「安倍首相(財務省)が消費税増税を延期するワケ(その1)」
http://www.asyura2.com/13/hasan82/msg/757.html
「安倍首相(財務省)が消費税増税を延期するワケ(その2)5兆円規模の「経済対策」や2兆円規模の「法人減税」の有効性」
http://www.asyura2.com/13/hasan82/msg/770.html
「消費税増税政策(その3):消費税増税後の日本の姿」
http://www.asyura2.com/13/hasan82/msg/780.html
「[その4]消費税論議で駆使される嘘やマヤカシは“消費税特権者”を守護する粉飾:経団連が消費税増税を求める真の理由」
http://www.asyura2.com/12/hasan75/msg/300.html
「[その5の補足]米国型「売上税」と「消費税」:米国で考えられている「法人付加価値税」(BAT)とは何?」
http://www.asyura2.com/12/hasan75/msg/316.html
「「軽減税率制度」は、低所得者向け対策ではなく、「輸出戻し税」制度と同じ特定企業に利益を供与する仕組み」
http://www.asyura2.com/14/senkyo161/msg/684.html
「経済連携協定、TPPと同待遇を EU、日本に要求へ:それがベースになるのなら、消費税税率は20%に向けまっしぐら」
http://www.asyura2.com/13/senkyo155/msg/296.html
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