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トランプタワー入口(筆者撮影@ニューヨークトランプタワー)
潜入!トランプタワー、信者たちの正体
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8682
2017年1月17日 海野素央 (明治大学教授、心理学博士) WEDGE Infinity
今回のテーマは「トランプタワー詣でをする信者たち」です。2017年1月20日に行われるドナルド・トランプ氏の大統領就任式を前に、熱狂的なトランプ支持者がニューヨーク五番街にあるトランプタワーを訪問しています。本稿では、タワーでヒアリング調査を行いましたので彼らの声を紹介しましょう。
■護衛官(シークレットサービス)との会話
現在、トランプタワーは厳重な警備体制が敷かれています。タワーがある56丁目と57丁目の区間には2カ所検問所が設けられ、そこで警察が訪問者に対して訪問目的を尋ねています。タワーに入るとこができると、次にメタル探知機による手荷物検査を受けます。タワーには護衛官や警察が至る所におり、不信な行動をとる訪問者に目を光らせています。
例えば、1カ所に立ち止まっていると、護衛官から即座に移動するように注意を受けます。トランプタワー1階エレベーター前ではトランプ次期大統領や起用する閣僚を撮影しようとゲッティイメージズ及び米ニューヨーク・タイムズ紙などのフォトグラファーたちが待機していました。筆者も彼らと一緒に待ち構えていると、突然身長190センチぐらいで体格のいい短髪の白人護衛官が接近してきたのです。彼は筆者に不信感を抱いていました。それもそのはずです。黒色のキャリーバックを持ってニューヨーク・タイムズ紙を読みながら、エレベーターに乗り降りする人物に視線を向けていたからです。
「何かお手伝いすることがありますか」
声のトーンは柔らかいのですが、疑いの眼差しを向けしかも威圧的でした。そこでスーツにつけている日米の国旗のバッジを見せて、自分は不審者ではないという非言語メッセージを発信したうえで、次のように語りました。
「大学教授です。日本の大学で異文化コミュニケーションを担当しています。大統領選挙の研究のためにトランプタワーに来ました」
目を細めて傾聴していたこの白人護衛官は、続けて質問をしてきました。
「ここにいるフォトグラファーを知っているのですか」
「ええ、ゲッティイメージズとニューヨーク・タイムズ紙のフォトグラファーを知っています」
即座に筆者は返事をしました。その一言が護衛官を安心させたのです。
トランプタワー1階(筆者撮影@ニューヨークトランプタワー)
ゲッティイメージズとニューヨーク・タイムズのフォトグラファーとどのようにして関係構築ができたのかについて簡単に説明をしましょう。2012年米大統領選挙における第1回大統領候補テレビ討論会(西部コロラド州デンバー)のプレスセンターで、ニューヨーク・タイムズ紙のフォトグラファーと遭遇しました。彼はダグ・ミラーと名乗っていました。日本から大統領選挙の研究でデンバーを訪問していると告げると、ミラー氏はカメラを取り出して筆者を撮影してくれたのです。トランプタワーにいるニューヨーク・タイムズ紙とゲッティイメージズのフォトグラファーにこのストーリーを語ると、彼らはミラー氏が業界の間で「伝説の人」と呼ばれていると教えてくれました。偶然ですが、その日(2017年1月5日)の米ニューヨーク・タイムズ紙一面に同氏が撮影した写真が掲載されています。4年前の出来事が彼らと関係を作ってくれたのです。
上のような厳しい警備体制の中で、トランプタワー詣でをする信者を対象にヒアリングを実施しました。
■トランプタワー詣でをする信者の声
観光客とみられる3人組みの中高年の白人女性がトランプタワーの1階を歩いていました。クリントン陣営に入り3300軒以上の戸別訪問をこなした経験と直観でトランプ支持者と判断し彼女たちに声をかけたのです。
トランプタワー詣でをする3人組の白人女性(筆者撮影@ニューヨークトランプタワー)
「トランプ支持者ですか」
「そうです」
黒色のダウンを着て十字架のペンダントをぶら下げた白人女性が返事をしてくれました。
「どちらの州からいらしたのですか」
筆者の質問に同じ女性が答えてくれました。
「アーカンソー州です」
「どうしてトランプに投票をしたのですか」
彼女はその理由について明確に語ってくれました。
「私たちはアーカンソー州に住んでいますから、ヒラリーのことはよく知っています。彼女は犯罪者です。スキャンダルだらけです」
友人とみられる紫色の服を着た女性は頷いていました。もう一人の女性も同意している様子でした。周知の通り、ビル・クリントン知事(当時)の妻であるヒラリー・クリントン前国務長官はアーカンソー州のファーストレディーでした。
「トランプは女性蔑視の発言をしましたが、それでも彼に投票をしたのですか」
こう質問をすると、クリントン前国務長官を犯罪者と批判した女性が反論をしてきたのです。
トランプ次期大統領や起用される閣僚を待つフォトグラファー(筆者撮影@ニューヨークトランプタワー)
「トランプは多くの女性を雇用しています。コンウェイもその一人です」
トランプ氏は、元選対本部長ケリアン・コンウェイ氏を大統領顧問に起用しました。
「米国とメキシコに建設する国境の壁に賛成ですか」
この質問に関して3人の間に沈黙がありました。
「不法移民には法を行使する必要があります」
沈黙があった後、積極的に意見を述べる黒色のダウンを着た女性が回答しました。
「ではトランプが提案をしたイスラム教徒の全面的な米国入国禁止には賛成ですか」
この質問に対しては間髪を入れずに、彼女がこう主張したのです。
「それは支持していませんが、イスラム教徒のテロリストは罰せられるべきです」
アーカンソー州からのトランプタワー詣でをしていた3人組みの白人女性と筆者の会話はこれで終わりました。
次に標的としたのは、トランプ支持者の合言葉となった「アメリカを再び偉大な国に取り戻す」と印刷された野球帽を被っている白人男性の若者でした。ニューヨーク在住でユダヤ系の彼は母親と一緒にトランプタワーを訪問していました。
ヒスパニック系の抗議者を囲む護衛官(筆者撮影@ニューヨークトランプタワー)
「私は民主党支持者ですが、トランプに投票しました。トランプは親イスラエルだからです」
彼は明確にトランプ支持の理由を述べました。
筆者が彼の母親にトランプ氏の女性蔑視発言に関して意見を求めると、彼女は以下のように語ったのです。
「私にとって最も重要な争点は、イスラエルの土地を守ることです」
この母親は、明らかに一つの争点(シングルイシュー)に絞ってトランプ氏に投票していました。トランプ氏の性差別発言、人種差別発言及び保護主義的な通商政策など、選挙期間に米メディアが取り上げた争点をほとんど重視していませんでした。
■ノスタルジアをおぼえるトランプ信者
このユダヤ系の親子と会話をしていると、「第45代米大統領トランプ」と印刷された白い野球帽を被った中高年の白人男性が子供を連れてエスカレーターを上がっていくのが目に入ったのです。筆者は会話を切り上げて、この男性を追いかけました。彼はトランプタワー2階にあるカフェで子供とお茶をするところでした。
トランプ信者と筆者(@ニューヨークトランプタワー)
「あなたはトランプ支持者ですよね。どちらの州からいらしたのですか」
質問を投げかけると、笑顔を見せながら答えてくれました。
「マサチューセッツ州からです。ニューヨークでこの帽子を被るのは勇気が要ります」
そう語った後、彼は突然「自由」について語り始めたのです
「私は60歳です。今は規制が多く自由がありません。私の時代には自由がもっとありました。私はその頃に戻りたいのです」
トランプ氏に投票をしたこの白人男性にとって、同氏の「米国を再び偉大な国に取り戻す」は「米国を再び自由が存在していた時代に取り戻す」という意味でした。2010年米中間選挙において反オバマ色の強い市民団体「ティーパーティー」の活動家は、オバマ大統領の医療保険制度改革(通称オバマケア)によって個人の自由が奪われたと強い危機感を抱いていました。医療保険に加入するか否かは、個人の自由であると訴えていたのです。この白人男性も自由に価値を置き、それがあった時代にノスタルジアをおぼえているのです。選挙でトランプ氏は彼の心理を見事に突きました。
「私がトランプに投票をした理由は2つあります。一つは、彼は決して嘘をつきません」
彼はこう断言したのです。
「2つ目は、トランプは政治家ではありません。ワシントンの政治家は腐敗しています」
さらに、彼はトランプ氏の保護主義的な通商政策を全面的に支持していました。
「輸入品に関税をかける必要があります。私は反日、反中ではありません。米国の製品を守るためです」
筆者がトランプ氏の女性蔑視発言に関して意見を求めると、彼は息子の耳に入らないように声のトーンを下げて次のように語ったのです。
「男性は女性を追いかけるものです」
もう一人、南部バージニア州からトランプタワーを訪れていた中高年の白人男性を紹介しましょう。彼はトランプについてこう強調しました。
「彼は本当にすばらしい」
トランプタワー詣でをするトランプ信者には類似点が存在していました。第1に、彼らは「隠れトランプ」ではありませんでした。躊躇なくトランプ氏に投票したと語るのです。第2に、トランプ氏の女性蔑視発言に対する批判など意に介する様子もありませんでした。第3に、トランプ氏の性格に魅かれていました。
最新の米ギャラップ社の世論調査(2017年1月4−8日実施)では、51%がトランプ新政権を評価していません。しかし、トランプタワー詣でが続く限り、同氏を大統領にしたあの熱狂的な支持者は離れていないということを意味しているのです。
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