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ポール・ウッド、BBCニュース(ワシントン)
ドナルド・トランプ次期米大統領は、自分の選挙対策チームがロシア当局と連携していたという一部報道の内容を「偽ニュース」と一蹴した。自分の私生活についてロシア当局が問題情報をつかんでいるという一部報道についても同様だ。選挙前に両方の情報を目にしていたBBCのポール・ウッド記者が、いずれも明るみに出た今の状況について報告する。
報道内容が本当なら、次期米国大統領はロシア政府の恐喝対象になり得る。今回取り沙汰されているのは、それくらい重大な内容だ。
クレムリンが次の米最高司令官についてそうした「コンプロマート」(失墜させられる情報)を持っている可能性はあり得ると、米中央情報局(CIA)は考えているようだ。
これに加えてCIAと米連邦捜査局(FBI)を含む共同タスクフォースは、ロシアがトランプ氏の会社や選挙チームに資金を送った疑いについて捜査している。
ロシアが恐喝材料にできる録音や録画の存在は、英情報機関の元職員が書いた複数の報告書のひとつに含まれていた。
MI6職員としてモスクワの英国大使館に派遣されたこの人物は現在、ロシアとの取引について助言するコンサルタント会社を開いている。ソ連国家保安委員会(KGB)の後継組織、ロシア連邦保安庁(FSB)に複数いる旧知の情報源と話をして情報を得た。一部には報酬も払った。
FSB関係者たちは元MI6職員に対して、トランプ氏はモスクワにあるリッツカールトン・ホテルの大統領スイートで複数の売春婦と一緒にいるところを撮影されたと伝えた。私がこれを知っているのは、トランプ氏攻撃の材料を調べるよう元MI6職員に依頼した、ワシントンの政治調査企業から報告書を見せられたからだ。大統領選の最終週に。
BBCは当時、内容を伝えないことにした。当然だ。ビデオを見ないことには(本当に存在するとして)、内容が本当かどうか知りようがないからだ。指摘内容は確かに、どぎついものだった。報告書は今ではすべて、バズフィードがオンラインに掲載した。
トランプ氏の支持者たちは、これは政治的な動機による攻撃だと言う。
次期大統領本人も「ここはナチス・ドイツか?」と激怒してツイートしたほか、待望の記者会見でもとことん反撃した。
「決して書かれるべきではなかったし、紛れもなく決して公表されるべきではなかった」とトランプ氏は述べ、「あのでたらめ」は「病んでる連中」がまとめたものだと強調した。
報告書を委託した反トランプ勢力の調査会社は、当初は共和党予備選の最中に、反トランプ政治資金管理団体(スーパーPAC)の依頼で動いていた。本選が始まると、匿名の民主党支持者がこの調査会社に資金を出した。しかしこの調査会社は本来、政治活動を目的としていない。国情分析や商業リスクの分析が通常業務で、元MI6職員のコンサルタント会社の業務内容とも似ている。調査会社の助言を押し切って、この資金提供者が文書をFBIに渡したらしい
ロシアが次期大統領について「コンプロマート」を握っているという情報源は、元MI6だけではない。私は昨年8月に元スパイから、問題情報の存在を「東欧情報機関のトップ」から聞いたと教えられた。
私は後に、この事案を扱う現役のCIA係官に、仲介者を通じていくつか質問した。直接は取材を受けてくれないので。返ってきた答えは、次の内容だった。
「1カ所以上の場所で」(モスクワのリッツカールトンと、サンクトぺテルブルクで)、「録音と録画」が、「複数の日にち」にわたり存在し、「性的な内容」だという。
「くれぐれも気を付けるように」
CIA担当者は、トランプ氏に関するロシアの「コンプロマート」の内容は「あり得る」ものだと判断した。だからこそ、米紙ニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストによると、報告の内容は先週、オバマ大統領のもとにまで届けられたのだ。事情説明のブリーフィング書類は連邦議会幹部やトランプ氏自身にも渡された。
情報の中心となるテープは、2013年11月に撮影されたものと言われ、確かにこの時期にトランプ氏はモスクワを訪れている。現地で開かれた「ミス・ユニバース」大会に出席したテレビ映像が存在する。モスクワの主要ホテルに泊まる人は、部屋にはミニバーだけでなく、隠しカメラやマイクも備えられているはずだと考えた方がいい。
11日の記者会見でトランプ氏は、海外移動中には気を付けるようスタッフには常々注意しているのだと強調した。
「くれぐれも気を付けるように。ホテルの部屋には、どこへ行っても、おそらくカメラがあるはずだから」とトランプはスタッフに言い含めてきたのだそうだ。
だとするならば、ロシア保安当局は「コンプロマート」入手の技を芸術の域にまで高めたに違いない。
とあるロシア専門家によると、ウラジーミル・プーチン大統領でさえ自分についての「コンプロマート」が存在すると時々言うらしい。おそらく冗談だろうが。FSB係官たちは著名人の録画・録音を持っていると自慢しがちなので、主張を真に受ける際には慎重にと、この専門家は私に注意した。
元CIA係官は私に、FSB係官と問題のテープについて電話でやりとりをした結果、「とんでもなく嘘くさい」と結論したと話した。
裏付けのとれていない疑惑だと、トランプ氏や支援者たちが言うのは正しい。
しかし、問題はセックスだけではない。金もからんでいる。元MI6職員の報告書には、クレムリンがトランプ氏にロシア国内の「うまい話」を提供して忠誠を買い取ろうとしたと、詳しく書かれている。
トランプ氏はそうした申し出を断ったし、確かにロシアではほとんど実質的な事業を行っていない。しかし、複数の情報機関と捜査機関が参加する米政府の合同タスクフォースは、クレムリンがトランプ氏の関係者を通じて選挙戦に資金提供したという疑惑を調べている。
法的対応
外国諜報活動偵察法(FISA)に基づく米政府の秘密裁判所は10月15日、2つのロシア銀行について捜査令状を出した。私はこれを複数の情報源から知らされ、米情報諸機関の幹部としか書けない人物から確認を得た。この人物は決して向こうから情報提供はしない。機密情報の提供は違法だ。しかし私が他の情報源から聞いた内容を、確認もしくは否定してくれる。
「これこれこういう記事を書くつもりだ」と私が言うと、内容が正しければこの人物は「僕はそれで構わないよ」と答える。そして彼は、以下の内容について、確かにその通りだと確認してくれた。
昨年4月、CIA長官は気になる機密情報を手にした。クレムリンから米大統領選に資金が流れているという内容の録音だった。
バルト諸国の情報機関から米国に渡されたものだった。CIAは米国内の米市民に対して捜査権限がないため、合同情報捜査タスクフォースが作られた。
タスクフォースには政府の6機関・省庁が含まれる。米国内を担当するのは、FBIと財務省と司法省。外国と機密関係を担当するのは、CIAと国家情報長官事務所と、電子諜報を担当する国家安全保障局(NSA)だ。
司法省の国家安全保障部門の弁護士たちが、FISA裁判所への令状申請を書き上げた。ロシアの2つの銀行の電子記録を傍受する権限が欲しかったのだ。
昨年6月の最初の申請は、ただちに却下された。次に要請内容を限定して7月に再請求したが、またしても却下された。裁判官の交代を経て、ついに令状が認められたのは10月15日。大統領選の3週間前のことだった。
トランプ氏もその関係者も、FISAの令状には名前が記載されていない。FISA令状は外国人や外国の機関・法人などしか対象にしないためだ。この場合は、ロシアの銀行が捜査対象だった。しかし究極的に、この捜査はロシアから米国への送金を調べているだけに、立証されれば重罪だ。
司法省関係者ではないがこの件に詳しい弁護士は私に、トランプ氏の関係者3人が捜査線上にあると話した。
「ただしもちろん、これはトランプに関することだ」
この情報源が特定した関係者3人全員に、私は話を聞いた。3人とも強硬に、何の不正もしていないと主張した。
「くだらない」と1人は言い、「ばかげてる」ともう1人は言った。ロシアの銀行2行のうち1行は、不正行為などないと否定し、もう1行はコメントを求めても返答しなかった。
この捜査は大統領選の本選に向けても続いた。選挙直前にヒラリー・クリントン氏の私用メールサーバー問題で捜査を再開するとFBI長官が10月末に発表した際、民主党のハリー・リード上院院内総務は、トランプ氏とロシアの関係について「衝撃的な情報」を公表していないとコーミーFBI長官を書簡で批判した。
リード院内総務は、他の連邦議会幹部と共に情報機関のブリーフィング(情勢説明)を受けた後、この書簡を送った。このブリーフィングに出席したのはわずか8人。時に「8人組」とも呼ばれる、上下両院の情報委員会の委員長と野党筆頭委員、上下両院の両党院内総務だ。通常は、「8人組」の機密情報ブリーフィングには上級スタッフも同席するものだが、この時は除外された。議会幹部たちはメモをとることさえ許されなかった。
「操り人形」
コーミー長官への書簡でリード院内総務は、「あなたをはじめ国家安全保障担当の諸機関の幹部と会話を重ねたことで、ドナルド・トランプと上級顧問たちとロシア政府の間の密接な関係について、衝撃的な情報をあなたたちが入手していることが明らかになった。ロシアは米国にあからさまに敵対的な外国だが、トランプ氏はこのロシアをあらゆる機会に称賛している」と書いた。
「この情報について国民は知る権利がある。私は何カ月も前に、この情報を世間に公表するようあなたに手紙で呼びかけた。公表しても米国利益に危険はない。それにもかかわらず、この重大な情報を国民に知らせるよう求めても、あなたは抵抗し続けている」
FISA令状について知った時点で私がコメントを求めても、CIAとFBI、司法省と財務省はいずれも回答しなかった。
複数省庁タスクフォースがトランプ大統領の下でどうなるのかは、不明だ。タスクフォースが今でも機能しているのかどうかも、分からない。
ロシアは次期大統領を動かそうとしたことなどないと否定し続けている。金でも。恐喝テープでも。
もしテープが存在するなら、ロシアが手放すはずがない。ただし、大金を稼ぎたい不忠のFSB係官を説得できればと期待する者もいるが。選挙前には、ポルノ雑誌「ハスラー」の発行者ラリー・フリント氏が、トランプ氏の犯罪証拠となるテープの提供者には100万ドル払うと呼びかけた。ペントハウス誌はこのほど、リッツカールトンのテープに100万ドル払うと呼びかけている(もし存在するなら)。
異様な状況だ。トランプ氏が宣誓就任する10日前にして。しかし選挙戦の最中から予兆はあったのだ。
最後の大統領候補討論会で、ヒラリー・クリントン氏はトランプ氏を、プーチン大統領の「操り人形」と呼んだ。トランプ氏はクリントン氏を遮り、「操り人形じゃない。操り人形じゃない」と繰り返し、「あんたこそ操り人形だ」と畳み掛けた。
CIAのマイケル・モレル前長官は昨年8月にニューヨーク・タイムズへの寄稿で、「プーチン氏はトランプ氏を、本人が気づかないうちにロシア連邦のエージェントとして採用したのだと、われわれ情報関係者なら言うだろう」と書いた。
エージェント。操り人形。いずれも、モスクワから何らかの影響を受けているか、支配されていることを示唆する。
CIAとNSAの両方のトップだったマイケル・ヘイデン氏はあっさり、トランプ氏を「ポレズニ・ドゥラク」と呼んだ。ソ連時代からの用語で、「便利な馬鹿者」のことだ。
各氏の一連の発言の背景には、米政府の情報諸機関が当時、公表せずに抑えていた情報があったのだ。
それを今や、アメリカ人全員が耳にした。就任まで1週間余りの時点で。次期大統領が本当に、ロシア政府に恐喝されていたのか、国民は判断しなくてはならない。
http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-38593177
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