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宋文洲氏「トランプ政権で世界は平和になる」  トランプ台風直撃の台湾海峡、波高し 「一つの中国」という“虚構”を越え
http://www.asyura2.com/17/kokusai17/msg/218.html
投稿者 軽毛 日時 2017 年 1 月 11 日 01:00:20: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

宋文洲氏「トランプ政権で世界は平和になる」

異色企業家だけに聞いた2017年大胆予測

ソフトブレーン創業者が語る2017年における世界と日本の外交
2017年1月11日(水)
宇賀神 宰司
 不透明感が高まる未来をどう見通すか。日経ビジネスの1月9日号の特集は「2017年紅白予測合戦」と題し、各界を代表する32人が「紅白歌合戦」方式で、2017年の日本から100年後の地球に至るまで大胆な予測をぶつけ合った。日経ビジネスオンラインでの連動記事では、そんな第一人者たちの中でも特に印象に残る「異色企業家」に、独自の視点から日本を取り巻く環境の変化や新たな産業の可能性などを読み解いてもらう。第2回はソフトブレーン創業者の宋文洲氏。2017年における世界と日本の外交について聞いた。

そう・ぶんしゅう 1963年中国山東省生まれ。84年に中国東北大学工学部卒業、国費留学生として来日。90年、北海道大学大学院工学研究科博士課程修了。92年にソフトブレーンを創業。成人後に来日した外国人として初めて日本の証券市場(東証マザーズ)に上場を果たす。2006年にソフトブレーン会長を退任。現在は経営コンサルタント、経済評論家として活躍。(撮影:的野 弘路)
宋さんは自身のメールマガジンなどを通じてトランプ氏が米大統領選で勝つことを事前に予想していました。

宋:米大手新聞のニューヨーク・タイムズは、米大統領選挙の約1カ月前、ヒラリー・クリントンが勝つ可能性を93%と予測しました。マスコミと一括りにしてしまうのは、私も含めた中国人を一括りで語ってしまうほど乱暴かもしれないけど、本当に昨年のマスコミの予測はあまりにひどかったよ。もちろん予測が外れることもある。でも、今回の予測はあまりにひどかった。

 トランプは確かにしゃべり過ぎて過激な発言もあったけど、それは10話したうちの1つ。それを取り上げて「トランプはあてにならない」「詐欺師だ」という論調の報道姿勢はどうかと思いましたよ。

 実際の演説を聞けば、かなりまともな話をしていましたよ。それに共感してトランプに票を入れた米国人も実はまともなんです。トランプが当選して「米国人はおかしくなったのではないか」という具合に報道するメディアもありましたけれどね。

 一方、クリントンの主張は万年政治家そのもので、相変わらずの原理主義。仮に大統領になっていたら、経済は放置され、何かのタイミングで株価が暴落して景気が悪化するような事態になったことでしょう。

 事前に2人の演説を聞き、聴衆の反応を見たりして私はトランプが勝つことは60%くらいあり得ると考えていました。

 だからといってそれを自慢しているわけじゃありませんよ。私は予測屋ではありませんから。それでお金を稼ぐわけでもないしね。1人の投資家として確率を突き詰めて考えた結果に過ぎません。投資家は事実関係をしっかり把握して確率を割り出します。自分の好き嫌い、「こうなったらいいな」というような主観を入れてはいけない。思い込みを捨て事実を重視しないと必ず予測は外れてしまいます。

 ですから2017年の見立てについても、あくまで私個人としての分析に基づいた確率を勘案してお話しします。

2017年における世界と日本の外交はやはりトランプ次期大統領に大きく左右されると思います。トランプ外交について宋さんはどのように見ていますか。

宋:トランプが大統領に就任後、外交、特に世界経済はよくなりますよ。なぜか。トランプは米国の経済、利益を第一に考え、余計なことをしなくなるからです。

 トランプはビジネスマンで、米国第一主義を掲げています。利己的と言われますが、経済は本来、利己的なものです。各国が自国の利益を追求することは健全な姿なんだよ。

 これは企業に例えれば分かりやすいでしょう。それぞれの企業は競合関係にありますが、普段から相手をつぶそうと動いているわけではありません。それぞれの企業が自分の商売に集中し、お客さんを見て、地道に取引を広げていくから成長するのです。これは非常にシンプルな原則ですよ。

 もちろん、自分の利益を追求すれば、他人の利益を阻害することも起きます。そのときは交渉して、お互い落とし所を探る。これが、貿易であり外交なんだから。

 結果として経済を中心とした世界の外交は今よりもいい方向に展開していくと思います。

 日本にとってもいい影響が出ると見ています。トランプは強いドルを目指し、リーマンショック以降の米金融機関に対する規制も外すでしょう。金利も上がる。これは日本にとってプラスです。

米中関係についてはどうでしょうか。

 米国の利益を第一に考えるということは、裏を返せば利益につながらないことはしない。余計なことはしない。今までの政権のように、米国の利益につながらないような原理原則を他国に押し付けることもしなくなる。

 その意味で米中関係はよくなる。トランプは中国に対し「仕事を盗んでいる」と発言しているけど、それはビジネスではある意味当然なんだよ。こうしたことは徹底的に議論して戦争ではなく外交的に戦えばいい。

 トランプは孤立主義だとも言われるけど、現在の世界で完全な孤立主義を貫くのは無理。強気の発言をそのまま押し通すだけではなく、引き際も心得ていると思う。

 経済も人間も本質は利己的。ただ、1人で生きているわけではないから相手に損害を与えるようなことがあれば、相手は反発する。そこで交渉する。それだけですよ。

 中国に対してだけではなくトランプ政権は民主主義を他国に押しつけることもなくなるでしょうから、戦争も起きない。各国は自国の経済に集中でき、健全な姿になりますよ。

トランプの当選も英国のEU離脱も東西冷戦の帰結

英国の欧州連合(EU)離脱も予想していました。グローバル化の枠組みが大きく変わりつつありますね。

 トランプの当選も英国のEU離脱も、グローバル化の枠組みが自国を利することがなく、外交、経済の本質ではないことに市民が気が付いたからだと思います。グローバルか反グローバルかという議論が起こっていますが、そういう話ではないんですよ。

 かつて、旧ソ連を中心とした共産主義国家にはコミンテルンという国際組織がありました。これこそが史上、最大とも言うべきグローバル組織でした。ですが、最終的にコミンテルンもソ連は崩壊した。その理由はこの巨大グローバル組織を維持できなくなったからなんです。

 私は弁証法を信じているんですよ。「対立する巨大な2つの力がある場合、どちらかが失われればもう一方も失われる」という考え方です。冷戦によってソ連を中心とするグローバル組織が崩壊しました。だから、米国を中心とするグローバル化もいずれは失われることになる。

 冷戦終了から時間がかかりましたが、ようやくその時が来た。西側のグローバル化はやっと終結したのです。それが、トランプの勝利であり、英国の国民投票でのEU離脱なのです。

トランプ氏は環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱を表明しています。日本への影響をどのように見ていますか。

 私は元々、TPPには懐疑的でした。多くの国が集まってああだ、こうだ話しても全くまとまりませんよ。仮に形になっても大変な苦労が伴い、結局、機能しなかったでしょう。その意味で、トランプがもし本当にTPPから離脱してTPP自体が破棄されることになれば、日本にとってはよかったと感謝すべき話ですよ。

 商売の話に戻すけど、取り引きは結局、1対1ですよ。人間もそう。異性を愛するのは最終的には1対1。もし、複数と取り引きしている、複数の異性を愛しているというなら、それは1対1の関係が数多くあるということに過ぎない。

 TPPで市場が大きくなるといっても、それだけで儲かるわけではない。市場が大きくなれば自動的に利益が増えることはないのに、そうした幻想がある。結婚にしたって、独身の女性が増えたからといって独身の男性が結婚しやすくなるわけじゃない。結局、相手に気に入ってもらう努力をしないと。

 複数の企業が業界団体を作ったり、なんとか協会みたいなものを作っても、そんなことでは儲からない。それと同じですよ。結局、他力に頼ってばかりでは企業は倒産する。TPPはいずれにしろ、破綻する運命にあると私は思います。


このコラムについて

異色企業家だけに聞いた2017年大胆予測
日経ビジネス1月9日号の特集「紅白予測合戦〜あの著名人が占う不透明な未来」では、各界を代表する経営者と識者が2017年から100年後までの予測合戦を繰り広げた。本連載では、本誌で紹介しきれなかった「異色企業家」などによる、型破りのユニークな予測を一挙に公開する。
(日経ビジネス1月9日号の特集「紅白予測合戦〜あの著名人が占う不透明な未来」の連動企画)

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/16/010600013/011000002


 

トランプ台風直撃の台湾海峡、波高し

中国新聞趣聞〜チャイナ・ゴシップス

「一つの中国」という“虚構”をいかに越えるか
2017年1月11日(水)
福島 香織

「一つの中国」という“国際的フィクション”に、いかに決着をつけるか。米中のせめぎ合いが台湾を揺らし続ける(写真:ロイター/アフロ)
 台湾総統の蔡英文が中米訪問の経由地・米ヒューストンでテキサス州知事のグレッグ・アボットや米上院議員のテッド・クルーズと面談した。クルーズは中国側から蔡英文に面会しないように要請する書簡を受け取ったことを明らかにし、「誰と会おうか決めるのは私たちだ」「この件に中国は関係ない」と不快感をあらわにしたとか。

 とにかく中国が今、トランプ政権に関して最も神経をとがらせているのは、台湾問題であろう。トランプが正式に大統領就任前とはいえ、「一つの中国になぜ縛られなければならないのか」と、米中関係の前提となっている「一つの中国」原則を、対中交渉カードに持ち出したことは、中国にとっては共産党体制の存続にすら影響を与えかねないからだ。

 トランプ政権がどこまで本気で言っているのか測りかねている中国では、とりあえず台湾武力統一論を盛り上げ、台湾と米国に揺さぶりをかけてきている。折しも、台湾では今年が2・28事件という国民党の白色テロ事件から70周年を迎え、台湾の民主と自由を勝ち取るまでの長い道のりを振り返る節目の年でもある。今年の中台関係の行方を少し考えてみたい。

揺らぐ国際的フィクション

 国共内戦の末、勝利した中国共産党が今の広大な中国の土地を支配し中華人民共和国を建国したわけだが、台湾に敗走した中華民国国民党政府も大陸反攻を今に至るまで建前上は放棄したわけではない。中台統一というのは、孫文をともに国父と掲げる国民党・共産党の悲願だ。

 実際には台湾にすでに国民党政府は存在せず、選挙で選ばれた台湾土着の民進党政権が台湾を統治している。そもそも新疆、チベット、モンゴルまで自国の領土だとする中華民国の主張がフィクションであることは、1971年の国連脱退と、その後の台湾の民主化の道程の中で誰の目にも明らかになっていた。

 だが「一つの中国」であったものが分裂したのが、中華民国と中華人民共和国であり、もともと一つだったものが元に戻るのが一番望ましいという考えを国民党、共産党とも持ち続けてきた。そして、国際社会もすでにフィクション、虚構とわかっていながら、その前提を受け入れてきた。

 それが、トランプという率直な男が、一つの中国の原則なんてものはとうの昔に破綻していたという事実を口にしてしまったわけだ。中国としては狼狽せざるをえない。

 というのも、選挙による人民の支持も取り付けずに中国共産党が執政党としての地位に居座り続けている根拠の一つに、侵略者・日本と戦い、中国を守った紅軍から生まれた政党であるという点がある。実際のところは、旧日本軍に中国正規軍として相対したのは国民党軍であり、カイロ宣言に署名したのも中華民国政府の蒋介石である。

 中華人民共和国と中華民国が別の国であったならば、国連の常任理事国に中華人民共和国がなることも、尖閣諸島(釣魚島)を自国の領土と主張することも実は無理がある。中国としては、何が何でも台湾は台湾省であり、釣魚島は台湾省の一部と主張しなければならないのだ。ちなみに中華民国からみれば、大陸は中華民国共産党区という建前だが、国民党員ですら、この主張に無理があることは承知している。

40年続いた戒厳令を越えて

 台湾の歴史を軽く振り返れば、中華民国国民党政府は連合国の委託を受けて、日本の植民地であった台湾の行政権を預かることになった。だが、日本統治下でハイレベルの教育文化水準にあった台湾の人々は、汚職や強奪を当然のように行う国民党の官僚や軍人を嫌悪し、その嫌悪と抵抗感が2・28事件の勃発を招く。それが台湾人の抵抗を武力で鎮圧する白色テロへと発展し、このとき発令された戒厳令は、実に40年、1987年まで続いたのだった。

 中国大陸での国共内戦で敗れた中華民国政府がまるごと台湾に敗走し蒋介石独裁時代が始まるなか、台湾エリートたちへの迫害はさらに苛烈なものになっていく。一方で、米ソ冷戦時代の対立のなかで、中華人民共和国を陣営に取り込もうとした米国の電撃的な米中国交回復によって、蒋介石は国際社会で立場を失う。

 やがて蒋介石の死をきっかけに、李登輝ら日本統治時代に教育を受けたエリート政治家たちが台頭、国民党独裁下での迫害に耐え抜いた民主化運動家、独立運動家たちの長きにわたる奮闘が実を結び、1996年に統治者を直接選挙で台湾人自身が選ぶ総統選の実施をもって台湾の民主を確立した。

 話はそれるが、この2・28事件で台南の若者の命を守るために自らの命をなげうって非暴力で戦った、台南の弁護士・湯徳章(坂井徳章)の生涯をまとめたノンフィクション『汝、ふたつの故国に殉ず』(門田隆将著、角川書店刊)が最近、日台同時に出版された。これを読めば、2・28事件と日本の台湾統治の歴史の関係がよくわかる。台湾の民主確立までの苦闘の歴史に、日本は少なからぬ関わりがある。

 台湾の民主が確立した段階で、台湾人にとっての脅威は国民党ではなく、中台武力統一も辞さぬという中国共産党になった。1996年の台湾海峡ミサイル危機など、中国の露骨な武力恫喝に対し、国民党の白色テロを戦い抜いてきた台湾人はおびえるよりも抵抗姿勢をあらわにし、2000年には初の民進党政権である陳水扁政権が誕生する。

 江沢民政権の台湾に対する恫喝政策が失敗とみた胡錦濤政権は、2005年国家反分裂法を制定し、台湾が憲法や中華民国名を変えるなどの現状変更をすれば武力行使も辞さぬという条項を含みながらも基本的には平和統一を模索する姿勢を前面に打ち出し、ECFA(両岸経済協力枠組み協定)を推進、台湾経済の対中依存度を進めて、経済でからめとる戦略に転換する。中台統一のスローガンも封印し、経済を通じて台湾メディアをコントロールして台湾世論を誘導していく戦略を組んだ。馬英九政権という親中派政権の登場もあって、胡錦濤政権時代まではこれがうまくいき、中国が台湾を飲み込む形で平和統一されるのは時間の問題と、少なくとも中国人たちは見ていたことだろう。

露骨な独裁志向が若者たちを起こす

 この状況が大きく変わったのは習近平政権になってからで、習近平と馬英九が任期中の中台平和協定の実現を乱暴に急ぎすぎたこと、習近平政権の露骨なまでの独裁志向に、台湾の若者が危機感を取り戻したことで、ひまわり学生運動などが起きたわけだ。その学生運動への対応も相当まずかったので、台湾人の国民党政権や中国共産党への拒否感はますます高まり、蔡英文政権の登場につながった。

 蔡英文は慎重な人で、国民党の1992年コンセンサス、つまり中国側と「一つの中国」原則についての条件付き合意については、うまくはぐらかし、否定もしなかった。だが、彼女の政策の方向性が行き過ぎた対中経済依存からの脱却と、台湾アイデンティティの確立であることは比較的はっきりしていて、中国サイドには平和統一の機会は逸しつつあるという認識が広まっている。さらに、米国に登場したトランプ政権が、ひょっとすると「一つの中国」原則を放棄するかもしれないという懸念が出てきて、いま焦りまくっている。

 仮に米国が「一つの中国」に縛られない、として台湾との関係を正常化すれば、日本だっておそらくそれに続くだろう。中国にすれば台湾の統一機会も建前も完全に失われる。釣魚島の領有権主張の根拠も崩れる。胡錦濤政権まで中台統一は時間の問題だと思い込んでいたのに、習近平政権になって統一機会は完全に失われた、となっては習近平のメンツはまるつぶれだ。習近平政権どころか共産党体制の存続も危うい。台湾が中国とは違う国家だというならば、チベット独立派や東トルキスタン独立派も大人しくはしていられまい。それこそ、中国が五つか七つに分裂しかねない危機に見舞われる可能性もあるだろう。

 そう考えれば、習近平政権とて、決死の覚悟で台湾武力統一に動くというのは、単なる脅し以上の可能性がある。

上策は北平モデル、中策は武力統一

 中国台湾研究会の副会長で元国務院台湾事務弁公室副主任の王在希が環球時報のインタビューに答えた台湾統一の手法は、上策として「北平モデル」、つまり戦わずして勝利した1949年1月31日の北平解放のように、開戦の準備をしつつ台湾政権内部の矛盾を突いて解体を画策し、台湾サイドに戦わず降参を選択させる方法だという。

 そして中策が武力統一。最も短時間で両岸統一が実施できる。被害を最小限にとどめるには中国解放軍サイドが圧倒的に台湾軍よりも実力が大きいことが求められるが、この点については、軍部は自信を持っているようだ。ただ、王在希に言わせれば中国人同士が戦うことが後々に禍根を残す、としている。武力統一については2021年までの実行を元解放軍南京軍区副指令の王洪光が提案していた。「武力統一はもはや最悪の選択ではない。ずるずると分裂状態を維持することの方が下策」と王在希も語っている。

 ただこれは、中国サイドの考えであって、今の中国に蔡英文政権の内部矛盾やスキャンダルを暴き人心を離れさせ、武力の威嚇の前に降参を選択させるだけの工作能力が本当にあるのか、本当に短期決戦で台湾を武力統一できるだけの実力があるのか、という部分ははっきり言ってわからない。中国が奇襲作戦を行ったとしても、台湾関係法を結ぶ米国が何もアクションを起こさないということもないだろう。

 人民大学国際関係学院副院長の金燦栄は「トランプは商人だ。台湾は商品にすぎない。商品はいつでも売られる可能性がある。…台湾は気をつけなければならない。彼らの前途は大変まずい。状況はふたつあって、トランプに売られるか、大陸を激怒させるか。大陸はもう昔のお遊びは終わりだと思っている」(環球時報)と語っており、台湾がトランプに期待を寄せすぎると裏切られるのだと決めつけている。実際、共和党内でも「一つの中国」原則をカードに振りかざすことに対しては意見が割れていて、政権がスタートすればトランプの姿勢も変わるかもしれない。

 しかしながら、トランプの周辺には、「一つの中国」原則は旧冷戦時代の遺物であり放棄すべきだ、ニクソン・キッシンジャー時代の米中枠組みは終わらせるべきだと強く主張するアジアアドバイザーもいるようでもある。新設の国家通商会議代表に指名されているエコノミスト、ピーター・ナヴァロもそうだし、共和党系シンクタンクのアメリカンエンタープライズ公共政策研究所のランダル・シュライバーやダン・ブルメンタールといった名前も挙がっている。彼らは台湾が民主主義国家として存在し続けることが中国の太平洋進出を阻み、中国の米国に対する挑戦を封じ込める重要なカギだとしている。

「一つの中国」より「二つの政党」

 トランプが本気で、中国の覇権主義に脅威を感じ、かつての旧ソ連を解体に追い込んだやり方で中国共産党体制を解体に追い込むつもりならば、この「台湾カード」は、南シナカードやロシアカード、経済貿易カード以上に強烈な切り札になる。

 「一つの中国」原則がないがしろにされれば、共産党は執政党としての求心力を維持できず、これを阻止しようと武力恫喝を続けるために軍拡に走れば、レーガン政権時代のSDI(戦略防衛構想)に対抗する軍拡競争で旧ソ連の財政が疲弊したように中国経済にとどめを刺すかもしれない。万が一、台湾有事が発生しても、中国の台湾統一は成功しない確立の方が高いだろう。いずれにしても、中国共産党はひどくメンツを失う結果になるだろう。

 ただ、あの小さい台湾が米中間の荒波にもまれるのはあまりに気の毒なので、中国は早々に台湾統一などという夢想を諦めて、それよりも国民党を中国に迎えて、行き詰まりつつある共産党一党システムに見切りをつけ、国共二大政党制への政治改革を研究したほうが、共産党も国民党も中国人民もハッピーになるのではないかと意見したい。

【新刊】中国が抱えるアキレス腱に迫る
『赤い帝国・中国が滅びる日』

 「赤い帝国・中国」は今、南シナ海の軍事拠点化を着々と進め、人民元を国際通貨入りさせることに成功した。さらに文化面でも習近平政権の庇護を受けた万達集団の映画文化産業買収戦略はハリウッドを乗っ取る勢いだ。だが、一方で赤い帝国にもいくつものアキレス腱、リスクが存在する。党内部の権力闘争、暗殺、クーデターの可能性、経済崩壊、大衆の不満…。こうしたリスクは、日本を含む国際社会にも大いなるリスクである。そして、その現実を知ることは、日本の取るべき道を知ることにつながる。
KKベストセラーズ刊/2016年10月26日発行

このコラムについて

中国新聞趣聞〜チャイナ・ゴシップス
 新聞とは新しい話、ニュース。趣聞とは、中国語で興味深い話、噂話といった意味。
 中国において公式の新聞メディアが流す情報は「新聞」だが、中国の公式メディアとは宣伝機関であり、その第一の目的は党の宣伝だ。当局の都合の良いように編集されたり、美化されていたりしていることもある。そこで人々は口コミ情報、つまり知人から聞いた興味深い「趣聞」も重視する。
 特に北京のように古く歴史ある政治の街においては、その知人がしばしば中南海に出入りできるほどの人物であったり、軍関係者であったり、ということもあるので、根も葉もない話ばかりではない。時に公式メディアの流す新聞よりも早く正確であることも。特に昨今はインターネットのおかげでこの趣聞の伝播力はばかにできなくなった。新聞趣聞の両面から中国の事象を読み解いてゆくニュースコラム。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/218009/011000082  

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