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「千島・日本海溝 巨大地震〜想定被害を小さくするために」(時論公論)/松本浩司・nhk
2021年12月23日 (木)
松本 浩司 解説委員
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/458992.html
北海道から岩手県沖にかけての「日本海溝」や「千島海溝」で巨大地震が起きたら津波によって最悪20万人近くが死亡するという被害想定を国がまとめました。ショッキングな内容ですが、一方で「避難などの対策を進めればそれを80パーセント減らすことができる」とも言っています。この想定と、では被害を小さくするためには何が必要なのかを考えます。
ポイントは、
▼想定の概要を見たうえで、
▼「避難が困難な地域」をどう解消するのか、
▼そして想定をどう受け止めるのか、の3点です。
【想定された甚大な被害】
国の中央防災会議の作業部会が検討したのは
▼「日本海溝」のうち北海道の南から岩手県沖にかけてで起こる地震と
▼千島列島から北海道の沖合にかけての「千島海溝」で起こる、別々の地震です。
発生間隔が300年から400年と見られるのに対してここ300年以上起きていないことから「発生が切迫している状況にある」とされています。
まず、日本海溝沿いでマグニチュード9.1の巨大地震が起きた場合、東北や北海道の各地で10メートルを超える津波が押し寄せ、最悪の場合、死者は北海道を中心に千葉県までの沿岸であわせて19万9000人に達し、22万棟が全壊すると推計しています。
また千島海溝沿いでマグニチュード9.3の巨大地震が起きた場合は、北海道東部を中心に20メートルを超える津波が押し寄せ、死者は北海道から千葉県までで10万人に上り、8万4000棟が全壊するとしています。
死者や建物被害はほとんどが津波によるものです。
【避難が困難な地域をどう解消するのか〜避難ビル・タワー】
一方で想定では「防災対策を進めた場合には死者数を80パーンセント減らすことができるとしています。
そのために何が必要なのでしょうか。
まず避難で、「浸水域にいるすべての人が地震から10分ほどで避難を始める必要がある」としています。
そのうえで、そうし
ポイントになるのが「避難が困難な地域」です。
津波の浸水が想定される水色の地域のなかで地震発生後、徒歩で避難を始めて津波が到達するまでに安全な場所まで逃げ切ることができない場所、斜線の部分を指します。
高台や津波避難ビルなどの緊急避難場所を中心に津波が到達するまでの時間で移動できる距離を半径にして円を描き、いずれの円にも含まれない部分が「避難が困難な地域」で、これをいかに減らしていくのかが大きな課題になります。
市街地のほとんどが津波の浸水域になっている北海道釧路市は「避難が困難な地域」の解消にいち早く取り組んできました。津波のときの緊急避難場所として公共施設だけでなく商業施設や企業のビルなどを含め113カ所を指定し、さらに増やそうと取り組んでいます。それでも困難地域解消のメドは立っておらず住民からは避難タワーなどの建設を求める声があがっています。
市は避難ビルが確保できない場合、タワーの建設も考えていますが、財源が大きな壁になっています。
北海道から福島県にかけての沿岸では津波避難ビルが660件、津波避難タワーは56基整備されていますが、南海トラフ巨大地震が想定される地域にくらべると遅れていて整備を急ぐ必要があります。
【避難が困難な地域をどう解消するのか〜自動車避難は】
「避難が困難な地域」の解消が急がれますが、ただ緊急避難場所になる高台やビルがないなどそれが容易ではない地域も少なくありません。
最大22メートルの津波が想定されている北海道・浜中町は緊急避難場所の整備を急ぐ一方、現実的な対応として自動車での避難を検討しています。
津波からの避難は徒歩が原則です。地震による道路被害で車が通れなくなったり、大渋滞が発生してかえって多くの人が津波に巻き込まれる恐れがあるためです。一方で避難場所が遠いなど車でないと逃げられない場合もあります。
そこで浜中町は車による避難のシミュレーションを行いました。
赤い点が車の動きです。避難してくる車が役場周辺の地区からだけだった場合は津波の到達までに全員避難することができました。しかし、ほかの地区からも避難をしてくると渋滞が激しくなり、間に合わない可能性があることがわかりました。このため町は渋滞する箇所での通行方法の規制など自動車避難のルールづくりを進めています。
検討の中で内閣府は「津波からの避難は原則徒歩だが、道路の障害や渋滞などの恐れがなく、かつ避難場所まで距離がある場合などはあらかじめルールを定めたうえで自動車による避難も検討しておく必要がある」としています。
【避難が困難な地域をどう解消するのか〜防寒対策】
被害を小さくするためのもうひとつのポイントが寒さ対策です。被害想定では冬に発生した場合、▼日本海溝の地震で4万2000人、▼千島海溝の地震では2万2000人が低体温症で命の危険にさらされる恐れがあるとしています。
津波から逃れ高台の
北海道広尾町は高台の緊急避難場所に住民が避難したあとに暖をとって寝泊りすることができる施設を今月、完成させました。自家発電装置に加え停電しても暖を取れるよう薪ストーブが設置され、毛布や段ボールベッドなどが備蓄されています。
緊急の避難場所で防寒対策が考慮されているところはまだ少なく、防寒用品を備えた倉庫や避難タワーの防寒などの重要性があらためて認識されました。住民が長期間滞在する避難所でも対策を進め、厳冬期を想定した訓練にも今後、力を入れる必要があるでしょう。
見てきた対策はいずれも多くの費用がかかるもので自治体だけではできません。国は財源を確保して自治体を支援する必要があり、その支出について国民に説明し理解を得ることが求められます。
【想定をどう受け止めるのか】
最後にこの甚大な被害想定を住民はどう受け止めたらよいのでしょうか。
被害の大きさに戸惑ったり、無力感を覚える人もいるかもしれません。
ただ今回の想定は、巨大地震を想定していなかった東日本大震災の反省から、科学的に考えられる最大クラスの津波を想定して、できるところから対策を見直していこうというものです。
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南海トラフ巨大地震で34.4メートルという最大の津波が想定された高知県黒潮町では、公表直後、住民の間にあきらめの声が広がったといいます。しかしワークショップなどでリスクを正しく理解し、お年寄りやこどもたちも参加して訓練を重ねるなどしたことで住民が「津波に負けない」と前向きに受け止めるようになったと報告されています。
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80代の女性は想定を知って「大津波、来たらば共に死んでやる 今日も息(子)が言う 足萎え吾に」という和歌を作りました。息子から「大津波が来たら一緒に死ぬからねと言われた」とあきらめの心境を語ったものですが、その2年後には「この命 落としはせぬと足萎えの 我は行きたり避難訓練」と詠んだそうです。
甚大な被害想定に絶望をしたり、また目を背けたりするのではなく、生活の中でできる対策をひとつずつ、確実に積み上げていく、そのきっかけにしてほしいと思います。
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