地震の頻発自体は、どうでも良い話だが浅い地震(鉛直直下型)のリスクを評価すること自体は意味はあるし 十分な資産がない場合、免震構造への信仰者は、コストとベネフィットを、良く考えた方が良いだろう >都市直下地震での鉛直方向の免震構造に関する調査研究委員会 URLはコピーが できませんでした。 これのことか?
>現在の耐震設計で全く考慮されていない地震波 というわけでもない 例えば、適切な免震構造であれば、急激な崩壊リスクなどは十分抑制できる https://www.jsce-kansai.net/wp-content/uploads/2019/06/chosa_chokka_2017-2018.pdf (公益法人)土木学会関西支部 調査研究委員会 都市直下地震での鉛直方向の免震構造に関する調査研究委員会 −成果報告書− 平成 31 年 3 月 平成 29,30 年度土木学会関西支部調査研究委員会 まえがき 平成 27,28 年度土木学会関西支部共同研究グループ「都市直下地震における耐震問題に関す る研究」の 2 年間の活動成果を踏まえて,平成 29,30 年度土木学会関西支部「都市直下地震で の鉛直方向の免震構造に関する調査研究委員会」を立ち上げ,2 年間の活動を続けて参りました. これらの一連の研究の動機は、1995 年の兵庫県南部地震での土木・建築構造物の未曾有の大被害 にあります. 兵庫県南部地震では,地震直後には阪神間の多くの住民はもとより耐震構造の専門家も激しい 衝撃的上下動を受けたことを認識していましたが,2,3 ケ月後に地震計の記録が発表されてから は専門家の認識は薄らぎ,上下動が構造物に与える影響は少ないと結論づけられ,その後に改正 された耐震設計法には上下動の影響は全く反映されなくなりました.また,兵庫県南部地震以降に も新潟県中越地震や熊本地震など直下大地震が発生し,衝撃的上下動によると思われる損傷が土 木・建築構造物に見られましたが,今日の耐震設計法においても上下動の影響は考慮されないま まになっています.
“比較的震源の浅い直下地震においても上下地震動が構造物の損傷に与える影響は全く無いの だろうか?” 地震時に構造物が受けた損傷・破壊が地震計の記録に基づいて説明できなければ, 欠陥材料か施工不良が原因であるのではないか,との見方が一般的になっているように思われま す.確かに,今日,日本列島の津々浦々まで張り巡らされた地震計の記録に基づき,発生した地 震特性が即時に発表されているのは周知のことであります.しかしながら,地震計の記録は設置 場所(固定点)での地盤変位の時間的変化(一般に“振動”と呼ばれている)を観測したもので あり,一方,地盤の深部から上方に伝播する地震動は“波動”であり,地盤変位の時間的かつ空 間的な変化を意味しており,連続体である地盤内の剛性の不連続面では反射や屈折などの影響を 考慮する必要があります。 ところで,震源の浅い直下地震での地盤内を伝播する波動には縦波と横波に分けられますが, 地表面近傍に位置する構造物への突き上げ力は縦波(疎密波)に起因するところが大きいものと 思われます.疎密波は進行方向に圧力を伴う波動であり,海上を航行する船舶が地震時に受ける 衝撃圧は海震現象として古くから知られています.したがって、震源から地盤内を上方に伝播し て地表面近傍の構造物に与える地震力は横波の影響だけではなく縦波の影響も受けることは十分 に考えられ,特に大規模な鉄筋コンクリート構造物は自重が大きく,構造物の基礎底面での鉛直 方向の圧力は疎密波の反射率の影響も大きく受けるものと考えられます. 以上のような認識の下で,本調査研究委員会は主として兵庫県南部地震で大きな損傷・破壊が 見られた高架橋鉄筋コンクリート柱に着目して,直下地震での基礎地盤からの衝撃的突き上げ力 に対して柱部を守るための免震・緩衝工法を提案することを目的として活動して参りました. 土木学会関西支部 鉛直方向の免震構造 調査研究委員会 委員名簿 役 職 氏 名 所属(専門分野) 委員長 園田恵一郎 大阪市立大学 名誉教授(構造工学) 委 員 櫻井 春輔 神戸大学 名誉教授(岩盤工学) 〃 野中泰二郎 京都大学 名誉教授(建築工学) 宮本 文穂 山口大学 名誉教授(コンクリート構造学) 〃 酒造 敏廣 神戸市立高専 特任教授(構造工学) 〃 鬼頭 宏明 大阪市立大学大学院 教授(都市系専攻) 〃 山下 典彦 大阪産業大学 教授(都市創造工学科) 〃 石丸 和宏 明石高専 教授(都市システム工学科) 〃 西本 安志 シバタ工業(株) 技術部 副部長 〃 中岡 健一 (株)大林組 地盤技術研究部 主任研究員 〃 岡村 哲也 (株)ビービーエム 関西営業所 技術課長代理 〃 佐藤 知明 阪神高速技術(株) 〃 甲田 啓太 大阪産業大学 工学研究科(博士前期課程) 幹 事 前原 博 (一財)地球システム総合研究所 非常勤上席研究員 連絡先:h.maehara1@gaia.eonet.ne.jp 以上 目 次 1.衝撃的鉛直地震動によるとみられる事例について ・・・・・・・・・・・・1 1.1 海震の情報から得られる知見 ・・・・・・・・・・・・1 1.2 最近の主な地震での鉛直波動によるとみられる被災事例 ・・・・・・・・・・・・3 1.3 衝撃的鉛直波動による構造物被害の特徴のまとめと課題 ・・・・・・・・・・・26 2.突き上げ力による橋脚 RC 柱の損傷モードのモデル実験による検討 ・・・・・・・・・29 2.1 はじめに ・・・・・・・・・・・・29 2.2 衝撃力による RC 柱の損傷・破壊特性 ・・・・・・・・・・・・29 3. 兵庫県南部地震および熊本地震での鉛直地震動の考察 ・・・・・・・・・・・・41 3.1 直下地震での鉛直地震動の観測 ・・・・・・・・・・・・41 3.2 多層地盤での鉛直地震波動の特性 ・・・・・・・・・・・・45 4.多層弾性地盤上の単柱式(T 型)橋脚への突き上げ力特性の検討 ・・・・・・・・・54 5. パルス状の突き上げ力から高架橋橋脚柱部を守るための方策 ・・・・・・・・・59 5.1 緩衝盤の配置 ・・・・・・・・・・・・59 5.2 数値解析による緩衝効果の検討 ・・・・・・・・・・・・63 6.重錘落下高さを変えた場合の積層繊維補強ゴムの衝撃力緩和性能 ・・・・・・67 7.同一エネルギーを与えた場合の衝撃力緩和性能 ・・・・・・83 あとがき ・・・・・・・・・・・・95 付録 研究会の活動概要・議事録 1 (a)備品の落下 11) (b)配管の切断 12) ( ジブラルタル沖地震,M8.0, 1969.2 ) 図 1.2 海震による損壊例 [3.25 万トン・タンカー] 1.1 海震の情報から得られる知見 1.1.1 海震の震度階級表と伝承的な情報 「海震で船舶が損壊する時の地震波は粗密波である事は常識である.」と船舶工学の専門家から 指摘 1-6)された.このフレーズを陸の地震関係者はここ半世紀程すっかり忘れており,構造物を破 壊する衝撃的な鉛直地震動の波形は,まだ地震計で正確に観測できていない.それ故この問題の 波の特性はほとんど解明されてないので,その特性を表す海震の事象について振り返ってみる. 横棒長さ=1 秒 A 浅発型,B 中間深さ型,C 深発型の 3 分類 図 1.1 海震の観測波形(3分類の波形) 9,10) 表 1.1 はルドルフの海震の震度 階表(10 段階,1898 年)で,表 1.2 はシーベルグの震度階表(6 段階, 1923 年)である 7).それぞれ 120 年から 100 年程前に作成されてお り,当時の船が破壊される強震動 の波を最大震度階としている.後 者は前者をより簡潔にしてあり, 表の説明の表現は古いままだが, 両者共日本では使われている 7). 表 1.1 のルドルフの震度階表に は階級 10 に該当するものが 222 回の内 7 回の記録があり,注目す べき事と文献 8)に記されている. すなわち,建造物の船舶を地震 の縦波が破壊する事は 100 年以上 前から把握されていた事である. しかし現在までその波の正体は正 確には観測できていない. 表 1.1 ルドルフの海震度階級表(1898 年)7) 表 1.2 シーベルグの海震度階級表(1923 年)7) 1.衝撃的鉛直地震動によるとみられる事例について 2 図 1.5 波源域の推定図 15)(波速推定測線を加筆) ☆:震央, A:野島断層, B:須磨断層 図 1.3 兵庫県南部地震時の旅客船の位置図 13) 図 1.4 あさぎり丸とクイーンダイヤモンド号の位置
一部である.配管の破断事例は建築物での補強金具の破断程度に相当する. 1.1.2 兵庫県南部地震での海震 兵庫県南部地震(M7.3,1995)が発生した 5.46AM の時間帯はフェリー等の旅客船にはラッシ ュアワーの時間帯で,震央がある明石海峡付近から神戸港の周辺は各接岸港に向かう船で混雑し ていた.その時の明石海峡付近の旅客船の位置図 13)が図 1.3 で,その中で重要な証言が得られた あさぎり丸(千 t 級)とクイーンダイヤモンド号(9 千 t 級)の詳しい位置図が図 1.4 である.この 2 隻のフェリーの船長の証言には 2 度衝撃を受けた事と 2 度目の衝撃が前の物より大きい事が語ら れている 14).これは非常に重要な証言なので関連する情報を探すと次の様な事がわかった. あさぎり丸の船長の証言では,最初の衝撃で一瞬操船困難になり,何とかエンジンを止めて点 検を指示し,機関部と一等航海士からの報告を受けて,再びエンジンの回転を上げようとした時 に,船底に潜水艦とぶつかったかと思った事が語られている 14).同じように震央近傍で海震に遭 遇し 2 度の衝撃を経験した証言は、1964 年に福島県沖で海上保安庁水路部の測量船明洋の当時の 船長佐藤孫七氏の証言がある 8).船底に突き上げショックを受けた後,機関を止め浸水点検後, 始動航行時に再びショックを受けている.すなわち違う地震でも震央付近では同じように,似た 点検時間をおいて 2 度目の衝撃を受けている.この時間間隔がどの位であったかを推定できる手 掛かりになる証言がクイーンダイヤモンド号の船長の次のような証言から見つかった. クイーンダイヤモンド号の船長の証言では,上空に青白いせん光を見て突き上げられて,大き な波に翻弄された瞬間,海面で船底をたたくウオーターハンマーより数倍激しい衝撃におそわれ たと語られている 14).当時の天候は風がなく海面は穏やかで 9 千 t 級の大型船を翻弄さす波は何 図 1.1 は伊豆半島東方沖地震(M6.7,1980) の余震をハイドロホンで茂木清夫先生が観測 した時の波形の例である 9).多くの余震で観 測した波形は A 浅発型,B 中間深さ型,C 深 発型に 3 分類してある.海震の波形の観測例 は少なく,図 1.1 の B,C の波形から目読で卓 越周波数は 60〜70Hz を得た.このような周 波数帯の現象は通常の地震計では計測されず 記録も残らない. 図 1.2 はジブラルタル沖地震(M8.0,1969) でタンカー(32,500t)の船殻補強材が座屈し, 航海機器が全損する被害が生じた時の写真の 明石海峡付近 播磨灘 3 かと考えると,地震により海岸近くで起こされた表面波が伝わり船を揺らした事が考えられる. この発想から当時の津波の研究資料が見つかり,周辺の検潮所に第 1 波をもたらす波源域を推定 した図が図 1.5 である 15).この図の泉北と東二見のデータから平均波速(約 700m/分)が求まり, 図 1.4 の離岸距離(約 2km)から地震の主震動の後約 3 分(2/0.7≒3)で 2 度目の強烈な衝撃を受け た事が推定できた.この時間間隔はあさぎり丸や測量船明洋での点検時間の後とする時間とも整 合している.(本章での重要な引用証言の全文は文献 6)の補足資料に収録しています.) 図 1.3 の他にも大阪湾内には漁船が出ていて,その中には衝撃を 2 度受けたものがあると文献 16)は伝えている. この 2 度目の衝撃は最初の衝撃が広い範囲で共通的に伝えられている事に対 し,明石海峡付近や神戸港周辺の他のフェリーからの体験記録からは見当たらない 17).この状況 は 2 度目に生じる強烈な衝撃は局所的に疎らに生じている可能性を示唆している.また,図 1.3 の左下部に記されているフェリーおおさか(震央距離約 23km)はシャンデリア 2 基が落下する被 害を受けている 17).これはかなり離れた場所でも強烈な鉛直波動が出ている事を表している.(海 震による損壊事例は前述の文献 6)の補足資料にある年表に記載しています.ご参照下さい.) 1.1.3 海震の特徴的な事柄のまとめ これまでの海震の事象から得られた特徴を整理すると次の通りである. 1. 地震発生時に到達する P 波に較べ,海震の波は船を破壊する破壊力を持つことがある 2,6). 2. 海震の震度階級表は 100 年以上前に作られている 2,6). 3. 海震の疎密波が船舶を損壊さすことは船舶工学では常識である 1-6). 4. 海震の卓越周波数は 60〜70Hz 程度が観測された例がある 9,6). 5. この周波数帯は従来の地震計では観測されないし,正確な観測はまだできていない 6). 6. 海震は余震時ごとに何度も発生している 2,6). 7. 海震の 2 度目の強烈で衝撃的な波は,局所的にいくつかの場所や離れた所でも生じる 3,6). 8. 海震の強烈で衝撃的な波は,本震の 3 分後頃に生じる場合がある 2,3,6). 1.2 最近の主な地震での鉛直波動によるとみられる被災事例 1.2.1 兵庫県南部地震 (1)引張破壊の事例 [1] 跳び石現象 衝撃的鉛直地震動による被害の代表例の一つは跳び石現象である.図 1.6 は須磨浦公園内の敦 盛塚の頭部が抜け落ちている状況である 18).図 1.7 は長田区内の屋敷の大型灯籠の笠石が塀を跳 び越え駐車場の乗用車を壊している写真である 19).この写真は跳び石現象を如実に伝えるもので 大変貴重である.屋敷の母屋は崩落し住民の方は亡くなられている.また、須磨区離宮西町の霊 園では墓石の主柱が境界塀を越 えて飛んでいたという霊園管理 者の証言も伝えられている 18). 物体の飛翔現象については多 数の証言があるが 14),主震動の 直後に前方のトラックが飛び跳 ねていたという目撃証言は,強 力な波動現象の時間差の観点か ら注目される 14).
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