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首都直下地震と南海トラフ巨大地震、要警戒レベルに…半割れケースなら想定死者数32万人
https://biz-journal.jp/2019/05/post_27855.html
2019.05.10 文=北沢栄/ジャーナリスト Business Journal 東日本大震災から8年――。地震・津波の調査・研究が深まり、全国各地で防災対策が進んできた。なかでも注目されるのが、巨大地震の30年内の発生確率が高いとされる、南海トラフと首都直下地震への対応だ。 日本世論調査協会が2月に実施した全国世論調査によると、居住地域で地震や豪雨といった自然災害に遭う恐れを感じている人は77%に上る。2年前の調査結果より15ポイントも上昇した。 危機意識が深まった背景には、昨年夏の西日本豪雨や北海道地震などの発生と共に、災害予測に関する最新調査報告が相次いで発表されたことがある。特に“要警戒”が、南海トラフ地震と首都直下地震である。マグニチュード(M)8〜9級の巨大地震となれば、おびただしい数の犠牲者が出る可能性が高まる。東日本大震災では、平安時代に起こったM8級の貞観(じょうがん)地震に伴う津波の前例が顧みられずに、被害を巨大化した。 南海トラフ巨大地震が起こる可能性は「30年内に70〜80%」(中央防災会議)とみられている。過去にM8級地震が繰り返し発生したためだ。最後に発生した昭和南海地震(M8)は1946年。その前の安政地震から92年後に発生し、それまでの100〜200年程度の周期より間隔が短くなった。過去のケースでは、何度も震源域の東西で間隔をおいて地震が連続発生している。初回から7日以内に発生する頻度は十数回に1回程度に上る。 特に被害を大きくしそうなのが「半割れケース」だ。震源域の岩盤の半分が割れて地震を起こす。中央防災会議は昨年12月の報告で、M8以上の半割れ型地震が南海トラフの東側で発生した場合、西側も連動して甚大な被害をもたらす恐れがある、と警告した(図表1)。対策を取らなければ、想定される被害は死者約32万3000人にも上るという。 中央防災会議の報告書 政府は3月、南海トラフ地震が発生する可能性が高いと判断された際に自治体や企業が取るべき防災対応の指針を公表した。巨大地震の予兆の可能性を観測すると、気象庁が「臨時情報」を出す。危険な半割れケースでは、地震がまだ発生していない半分側の地域にも1週間の避難勧告を発令する、などを求めた。 防災対応を進める和歌山県は、とりわけ津波の危険性を重視する。紀伊半島南端の串本町ではM9.1の巨大地震に襲われた場合、「最大津波高17メートル、津波高1メートル到達時間3分」と試算。防災インフラの整備に加え、来たら「逃げ切る」を強調する。 ■首都直下地震の発生確率は「30年間に70%」 東京都民、首都圏住民を直撃するM7クラスの首都直下地震。その発生確率は「30年間に70%」と中央防災会議は推定する。M7級の地震発生で、被害想定は死者が建物倒壊などで最大約1万1000人、市街地火災で約2万3000人出ると推定。停電や交通マヒ、生産停止などで経済的被害は約95兆円にも上るとみる。 中央防災会議によると、津波については東京湾内で津波高は1メートル以下と心配ないが、問題は首都中枢機能と超過密都市を襲う地震被害の深刻さだ。1923年の大正関東地震(関東大震災)ではM8.2級が襲ったが、M8クラスの地震発生は200〜400年の間隔とみられ、当面このようなタイプの巨大地震が発生する可能性は低いとする。 代わって押し出されてきた可能性は、M7クラス地震の複数回発生だ。新たに明らかになった課題を念頭に、政府全体の業務継続体制の構築や情報収集・集約、発信体制の強化に加え、建物の耐震化や火災対策などを訴える。 東日本大震災の教訓を生かした防災対策は、これからが真価を問われる。福島県が3月に公表した津波の浸水想定区域図は、最悪の事態を前提とし、浸水域は震災時より3割も拡大した。「想定外の事態」を二度と起こさないための最新のリスク情報だ。独自の想定でハザードマップを作成していた自治体は見直しを求められる。 今後の課題は、最悪リスク情報の周知徹底に加え、市民の防災意識の向上だ。東京23区は海抜ゼロメートル地帯が広がる東部をはじめ、災害後に被災者が避難生活を送る指定避難所の5割が浸水想定区域にある。 昨年7月の西日本豪雨で河川が決壊した岡山県倉敷市真備町では、決壊時に想定される浸水域を示した市の洪水ハザードが実際の浸水域とほぼ重なった。だが、51人の死亡者を出した。のちの市民への聞き取り調査で「マップを見たことがある」との回答は約3割にとどまり、市民の大半はマップを知らなかった。 行政は防災対策のレベルを引き上げ、住民は自然の暴走に一層慎重に備える必要がある。 (文=北沢栄/ジャーナリスト)
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