http://www.asyura2.com/17/jisin22/msg/363.html
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1月5日11:02の緊急地震速報誤報の不可思議さ
この誤報とされた緊急地震速報の内容は
気象庁のサイトの「緊急地震速報(警報)発表状況」
http://www.data.jma.go.jp/svd/eew/data/nc/pub_hist/2018/01/20180105110227/content/content_out.html
で見ることができます。これによると、提供時刻:11時02分46.4秒、地震波検知からの経過時間(秒):19.4、震源要素の北緯35.9、東経140.8、深さ30km、マグニチュード6.4であり、予測震度は次の通り:
震度5強程度 茨城県南部
震度5弱から5強程度 千葉県北東部
震度5弱程度 茨城県北部
震度4から5弱程度 千葉県北西部
震度4程度 千葉県南部、東京都23区、埼玉県南部、栃木県南部、埼玉県北部、神奈川県東部、栃木県北部、群馬県南部、福島県浜通り、福島県中通り
震度3から4程度 東京都多摩東部
この誤報の原因が「ほぼ同時に発生したほぼ同規模の異なる2つの地震をコンピューターが1つの地震と判断して処理してしまった」からだということです。
この時の「高感度版 100トレース連続波形画像」
http://www.hinet.bosai.go.jp/mtrace/?tm=2018010511&pv=1H&eq=&LANG=ja
を見ると、確かに一つの地震波であるようにも見えます。しかし、震源決定のシステムを考えるとシステムバグとするにはかなり無理があると思います。
この二つの地震とは次のものです。
https://typhoon.yahoo.co.jp/weather/jp/earthquake/20180105110232.html
発生時刻 2018年1月5日 11時02分ごろ
震源地 茨城県沖
緯度 北緯36.0度
経度 東経140.8度
深さ 40km
マグニチュード 4.4
https://typhoon.yahoo.co.jp/weather/jp/earthquake/20180105110227.html
発生時刻 2018年1月5日 11時02分ごろ
震源地 富山県西部
緯度 北緯36.9度
経度 東経137.0度
深さ 20km
マグニチュード 3.9
確かに、発生時刻は両方とも11時02分ごろです。しかし、正確にはかなり異なるのです。
気象庁の「2018年01月05日の震源リスト」
http://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/daily_map/20180105.html
から、該当部分と共にその前後1件ずつを追加して、4件以下にコピーします。
年 月 日 時 分 秒 緯度 経度 深さ(km) M 震央地名
2018 1 5 11:01 38.3 36°44.6'N 140°34.0'E 9 0.4 茨城県北部
2018 1 5 11:02 22.9 36°52.2'N 136°58.8'E 14 4.0 富山県西部
2018 1 5 11:02 25.5 35°53.7'N 140°53.4'E 41 4.5 茨城県沖
2018 1 5 11:06 48.6 36°52.6'N 136°58.3'E 11 1.1 富山県西部
真ん中の2件が誤報の原因とされる2件です。時刻は次のようになっています。、
富山県西部:11時02分、22秒9
茨城県沖 :11時02分、25秒5
よって、時間差は2秒6、つまり、2.6秒あったことになります。このぐらいの時間差で地震が発生することはよくあります。例えば、同じ「2018年01月05日の震源リスト」の00:00から10:00までを見ても、次のように5例も見つかります。
*0.8秒差
2018 1 5 00:34 20.3 36°32.3'N 139°55.1'E 117 0.7 栃木県南部
2018 1 5 00:34 21.1 39°31.8'N 140°24.4'E 9 - 秋田県内陸南部
*1.7秒差
2018 1 5 00:36 23.6 32°26.9'N 130°32.9'E 9 0.7 熊本県天草・芦北地方
2018 1 5 00:36 25.3 36° 6.9'N 139°50.7'E 51 0.8 茨城県南部
*2.4秒差
2018 1 5 02:58 23.4 32°42.0'N 130°42.7'E 12 0.5 熊本県熊本地方
2018 1 5 02:58 25.8 36°47.1'N 140°10.5'E 116 1.2 栃木県南部
*0.4秒差
2018 1 5 07:55 32.7 32°44.5'N 130°46.4'E 10 0.4 熊本県熊本地方
2018 1 5 07:55 33.1 36°51.0'N 140°33.2'E 9 0.6 茨城県北部
*0.4秒差
2018 1 5 09:17 0.0 36°39.6'N 139°19.7'E 9 0.1 群馬県北部
2018 1 5 09:17 0.4 31°50.1'N 130°18.6'E 6 0.1 鹿児島県薩摩地方
上の5例はどれもマグニチュードが小さいものでしたから、緊急地震速報の対象にならなかったのでしょうが、単にある程度大きな地震が2秒程度の差で発生しているときに緊急地震速報が誤報になるとは思えません。
なぜなら、必ず震源地を決めて緊急地震速報は出されているからです。震源地を決めているということは、地震波の方角を、地震計毎に決めていることを意味します。実際のシステムでどうやって方角を判定しているのか、自分は知りませんが、基本的には、地震計毎に鉛直方向、東西方向、南北方向の3軸で揺れを計測しているため、地震計毎に地震波の方角を計算できるのです。
1月5日11:02の誤報は、震源地を北緯35.9、東経140.8と判定していました。この地点はほぼ同時に起こった地震の一方である
震源地 茨城県沖
緯度 北緯36.0度
経度 東経140.8度
とほぼ同じですから、茨城県沖です。
ここで、重要なのは、茨城県沖にしても、富山県西部にしても、震度を観測した地震計は相当数あるということです。それぞれの地震の元記事へのリンクが上にありますから、元記事を見てください。茨城県沖は震度1から3を観測した地域名が50以上、富山県西部であっても18あります。これだけの数の観測点で地震波を捉えることが出来ているために、震源地をかなり正確に求めることが出来るわけです。
茨城県沖の地震波を捉えた地震計は、ほぼ全て東方向から地震波が来たと判断したはずです。それに対し、富山県西部の地震波を観測した地震計の内、能登半島に位置しているものは南東方向から、富山県に位置しているものは北西方向からと判断したでしょう。
仮に、茨城県沖で本当にM6以上地震が起こったとすると、能登半島にある地震計は
https://hailstorm.c.yimg.jp/iwiz-weather/earthquake/1515118020/310081_00000_0000_yhrg03g-4-20180105110227.jpg?t=1515118081
を見て分かるように、ほぼ南東方向からの地震波を観測することになります。最大震度である震度3を計測しているのは能登半島の地震計ですから、この意味で、1月5日の誤報は自然に起こったものであったということが出来ます。
しかし、それでも問題があるのです。それは震源深さとマグニチュードの判定の問題です。能登半島の地震計は震度3を、茨城県沿岸部の地震計も震度3を記録していました。P波は速くても秒速7km程度はかかります。能登半島の根元と茨城県沖ではおよそ400キロ程度は離れていますから、震源深さが0kmであったとすると、400÷7=57となり、50秒以上の時間差があることになります。しかし、緊急地震速報は地震後数秒で出されます。
数秒で緊急地震速報を出したということは、ほぼ同時に地震波を計測して、そのデータから震源地を茨城県沖と決めたということになります。茨城県沖から茨城県沿岸部の地震計と富山県西部の地震計がほぼ同時刻に地震波を計測するためには、震源深さが相当に深い必要があります。たとえば、地球の中心は6000キロ程度の深さですが、この深さで起こった地震であれば、地表にある地震計は原則同時刻に地震波を計測します。ところが、震源深さは30キロと判定されているのです。30キロの深さでは、茨城県沖と富山県西部との間の距離である約400キロがそのままです。つまり、茨城県沿岸部の地震計から見た震源までの距離が数十キロであったときに、富山県西部の地震計から見た茨城県沖の震源までの距離は400キロ程度にはなってしまうのです。つまり、富山県西部にある地震計の観測データは、もし茨城県沖という震源を仮定したならば、とても茨城県沿岸部にある地震計とは同時刻に地震波を観測しているはずがないのです。富山県西部は、茨城県沖から400キロ程度離れているため、茨城県沖が震源であると判定した段階で、富山県西部で観測したデータは茨城県沖の地震のものではないと判断されなければならなかったのです。
しかし、それがされていませんでした。なぜなら、マグニチュードの判定がM6.4となっていたからです。
今回の誤報の「緊急地震速報の詳細」
http://www.data.jma.go.jp/svd/eew/data/nc/pub_hist/2018/01/20180105110227/content/content_out.html
からそのデータを引用します。
データの並びは、提供時刻、地震波検知からの経過時間(秒)、北緯、東経、深さ、マグニチュード、予測震度の順です。
(*以下引用開始:)
地震波
検知時刻 11時02分27.0秒 — — — — — —
1 11時02分32.0秒 5.0 36.9 136.8 10km 3.9 最大震度3程度以上
2 11時02分32.3秒 5.3 36.9 137.0 10km 4.3 最大震度3程度以上
3 11時02分37.1秒 10.1 36.9 137.0 10km 4.3 最大震度3程度以上
4 11時02分46.4秒 19.4 35.9 140.8 30km 6.4 ※1
5 11時02分54.9秒 27.9 35.9 140.8 30km 6.4 ※1
6 11時02分57.1秒 30.1 35.9 140.8 30km 6.4 ※1
7 11時03分10.9秒 43.9 35.9 140.8 30km 5.9 ※2
8 11時03分30.0秒 63.0 35.9 140.8 30km 5.9 ※2
9 11時03分41.6秒 74.6 35.9 140.8 30km 5.9 ※2
(*以上引用終わり)
M6.4と計算するためには、震源地近くの地表で観測されたP波の揺れが相当に大きいことか、またはP波の揺れがあまり大きくなくとも相当に離れた観測点でそれが観測される必要があるのです。今回は、最終的に確定した震度が3でしたから、茨城県沖周辺の狭い地域で大きなP波の揺れを観測したわけではなく、茨城県沿岸部と富山県西部の400キロ程度離れた2地域で弱いP波の揺れを観測して、それからM6以上の大きな地震を推定したことになります。
しかし、この二つのこと、つまり、震源深さとマグニチュードの推定は互いに矛盾してしまうのです。震源深さを30キロとした段階で茨城県沿岸部の地震計と富山県西部の地震計は震源地からの距離差が400キロ程度あったことになりますし、マグニチュードを6.4と判定した段階で、茨城県沿岸部の地震計と富山県西部の地震計は震源地からほぼ等距離にあったということになるからです。
仮に、今回の誤報がシステムのバグによるものであったとすると、相当に速報性を重視して、ほんの数個の地震計のデータから計算していることになります。しかし、仮にそうであったとしても、その数個の地震計のそれぞれで地震波の方角が計算されていたはずで、茨城県沿岸部の地震計と富山県西部の地震計では、震源位置の深さが異なるものになっていたはずですから、やはり、不合理であると思います。
2018年01月07日16時55分 武田信弘
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