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たんぽぽ舎メールより転載
天正地震(1586年)で「若狭の国の長浜」が大津波で
| 壊滅したとの記述
| 若狭とは福井県のことで若狭湾は原発が林立している
| 古文書が知らせるナゾの大地震…原発「攻防戦」の最前線に
| 警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識 その206
└──── 島村英紀(地震学者)
◎ 昔の地震についての古文書をめぐって、原発再稼働の「攻防戦」が火花を散
らしている。
発端はポルトガルから来た宣教師ルイス・フロイスの「フロイス日本史」のあ
いまいな記述だった。フロイスは信長や秀吉とも面識があった名士で、この「日
本史」は戦国時代を研究する貴重な資料になっている。
天正地震(1586年)の項目で「若狭の国の長浜」が大津波で壊滅したとの記述
がある。若狭とは福井県のことで、若狭湾は原発が林立しているところだ。だが、
長浜という町はない。このため、この記述がずっとナゾのままになってきた。
その本には「長浜という城の城下で大地が割れ、家屋の半ばと多数の人が呑み
込まれた。若狭の国には海に沿って、やはり長浜と称する別の大きい町があった。
揺れ動いた後、海が荒れ立ち、高い山にも似た大波が町に襲いかかり、ほぼ痕跡
をとどめないまでに破壊した」とある。
琵琶湖に面している「長浜」(現滋賀県)は液状化現象で大きな損害を被った
ことが分かっている。だが、「別の大きい長浜」はなにかの書き間違いだろうか
と思われている。
◎ 東大地震研が編纂した「新収日本地震史料」には「長浜は高浜の誤りであろ
うか」とある。「フロイス日本史」はアルファベットで書かれているので「長浜」
と「高浜」は僅かな違いなのだ。しかも印刷技術が発明される前。元になる本も
マカオで作られた手書きの写本だった。写し間違いがあっても不思議ではない。
高浜には原発がある。原子力発電所を若狭湾沿いに多数展開している関西電力
にとっては、高浜が大津波に襲われたかどうかは重要な関心事である。将来も大
津波に襲われる可能性が出てくるからだ。
最近、関西電力は「琵琶湖岸の長浜に津波が来た」という別の古文書を探し出
したと言い始めた。つまり、フロイスの「若狭に大津波」というのは間違いだろ
うというのである。
◎ だが、そもそも琵琶湖には大津波というほどの津波は来ない。また、この古
文書はかなり怪しいものだ。古文書は伝聞が多く、あてにならないものも多い。
500年近くも前の当時は戦国時代の末期で、まだ豊臣秀吉が東日本を支配する前だ
った。
天正地震は日本史上、もっともナゾが多い巨大な地震である。被害は、現在の
福井県、石川県、愛知県、岐阜県、富山県、滋賀県、京都府、奈良県、三重県に
広く及んだ。それだけではなく、津波が日本海岸の若狭湾と太平洋岸の三河湾の
双方を襲って多くの溺死者を出したという記録がある。本州の両岸を襲ったとい
うのは異例だ。
また、はるか離れた宮城県南三陸町にも「畿内、東海、東山、北陸大地震の後
に津波来襲」という記録がある。
◎ あまりに大きな被害。それゆえ、一つの地震ではなくて複数の地震が相前後
して起きたのではないかという疑いもある。
戦国時代に起きた大地震。それが現代の原発の「攻防戦」の最前線になってい
るのである。
(島村英紀さんのHP http://shima3.fc2web.com/
「島村英紀が書いた『夕刊フジ』のコラム」より2017年7月14日の記事)
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