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再任の黒田日銀総裁を待つ異次元緩和「後始末」の修羅場
http://diamond.jp/articles/-/159534
2018.2.13 ダイヤモンド・オンライン編集部
再任、続投が決まった日本銀行の黒田東彦総裁 Photo:Reuters/AFLO
4月で任期満了となる黒田東彦日銀総裁の「再任・続投」が固まった。新体制の最大の課題は、いつ異次元緩和政策からの「出口戦略」に踏み出し、「金融正常化」へのレールを敷くかだ。すでに “隠れ出口戦略”が始まっているが、ゴールまでには10年以上かかる「果てしない道のり」だ。続投によって、いみじくも、自らまいた問題の種を処理せざるを得なくなった黒田総裁は、どのような舵取りをしていくのか。(ダイヤモンド・オンライン特任編集委員 西井泰之)
日銀総裁としては57年ぶりの再任
市場の反応は淡々としたもの
韓国・平昌オリンピックが幕を開けた2月9日、4月8日で任期満了となる日本銀行の黒田東彦総裁の「再任・続投」が固まった。
任期の5年以上、つまり2期以上務めた日銀総裁は過去にあまりおらず、直近では1956年に就任し、61年から2期目を64年まで務めた山際正道氏が最後。それだけに、“ポスト黒田”の行方に注目が集まっていたが、蓋を開けてみればあっさりと続投が決まった形だ。
といっても、アベノミクスの“牽引役”だった黒田総裁の続投は、市場関係者の間では既に折り込み済み。そのため、反応も淡々としたものだった。
「続投は想定通り。政策の継続性を考えれば一安心」(市場関係者)
こうした反応は日銀内部も同じだ。だが、彼らの目線はその先、新体制の政策に向いている。黒田総裁が、自分のまいた“種”の後始末を、いつ、どのようにするのかという点に注目しているのだ。
1月に超長期ゾーンの
買い取り減額を決めた日銀
「政策の主導権は、すでに金融市場局などの現場に移っている。日銀のプロパーは、異次元緩和を1日でも早くやめたがっているし、実は黒田総裁もその流れに乗っていると見ていい」
日銀元政策審議委員の、こうした言葉を実感させるような出来事が、1月9日に起きた。この日、実施した金融調節で、日銀は超長期ゾーンの国債買い入れの「減額」を決めたのだ。
黒田総裁が進めた異次元緩和政策は、日銀が銀行などから大量の国債を購入して資金を供給することで、長期金利を低く抑え、企業の設備投資を後押したり、「インフレ期待」を醸成して消費を喚起したりすることによって、「デフレ脱却」を目指すものだった。
しかし、長期や超長期の金利が安定しているさなかに、しかも取引の少ない時期を狙ったかのような「減額決定」は、日銀がそうした異次元緩和政策から脱却し、金融の正常化を目指しているのではないかと映り、この先、金利が上がってしまうのではないかとの見方が広がってしまったのだ。
というのも、低金利と好景気が併存する今の市場は、市場関係者にとって居心地がいい「適温相場」。そうした中で、日銀が異次元緩和政策からの「出口」を模索するとなれば、話は変わってくる。そのため、為替市場では、円高・ドル安の流れが加速した。
「出口戦略」を意識し、前のめりになった市場の動きを受けて、黒田総裁は1月24日の会見で、「出口のタイミングや、その際の対応を検討する段階にない」と市場を牽制。2月2日には、7ヵ月ぶりに利回りを指定して国債を無制限に買い入れる「指値オペ」を実施して、長期金利を強引に抑え込んだ。
「お試しテーパリング」で
「正式な金融正常化」へ地ならし
市場が前のめりになるのも無理はない。すでに異次元緩和の“軌道修正”が図られ、「事実上の正常化」の動きは始まっているというのが、市場の受け止めだからだ。
その節目になったのは2016年9月のこと。「イールドカーブコントロール(長短金利操作)」への転換だった。
それまでに日銀は、マネタリーベースの拡大など「量」を誘導目標にしていた。それを、長期金利を加えた金利曲線を目標にする「金利」に戻したのだ。
その狙いは、市場の関心をイールドカーブコントロールに引き付けておいて、背後で徐々に国債の買い取り額を減らしていくというもの。いわば、「ステルステーパリング」、分かりやすく言えば、国債の保有残高増額を“お忍び”で縮小していくというわけだ。
イールドカーブコントロールでは、その時々の金利の動きに応じて、日銀の金融市場局の裁量で、国債をどれだけ買うかなどが判断できる。日銀の現場が「事実上、政策の主導権を取り戻した」と言われるのも、この時からだ。
実際、年間の国債保有残高増加枠の「80兆円」に対し、その後の買い入れ増加額は50兆〜60兆円にとどまり、今年1月には、日銀の資金供給量も前月比マイナスになった。
こうした流れがあったため、市場関係者は、1月の減額決定を「ステルステーパリングから、本格的な国債買い取り増額の縮小に踏み出したときの市場の反応を見ようとした、“お試し”テーパリングだったのではないか」と見る。
そして、新体制発足後、日銀は「市場の反応を見ながら、その時々で出口戦略を強く否定したり、時に強引に長期金利を抑え込んだりしながら、『正式な正常化』に踏み出すための“地ならし”を1年ぐらいかけて行う」(前日銀政策委員の木内登英・野村総研エグゼクティブエコノミスト)と予想する。
極めて厳しい道のりの
出口戦略のシナリオは6段階
とはいえ、「出口戦略」の道のりは極めて険しく、「そんなに早い時期にはできないのではないか」との認識は、日銀も市場関係者も共通している。
それでは、日銀が模索する「出口戦略」とは、一体どういうものなのか。具体的に見ていこう。
一足先に踏み出した米FRBのやり方をもとに検討されているのは、(1)テーパリング(国債保有残高増額の減額)から始まり、(2)長期金利の利上げ開始、そして(3)バランスシート上の国債残高は維持させるものの、新たに国債を保有するのではなく、満期償還を迎えた国債を再投資に回す形に切り替えていく。
その上で、(4)マイナス金利を解消して、(5)短期金利の利上げを開始、(6)国債の再投資は停止して、満期償還落ちで国債残高を縮小させながら、バランスシートの縮小を図る──というシナリオと見られる。
最終的には、日銀のバランスシートを量的緩和が始まる以前の水準に戻し、「コール市場を舞台にした日銀の政策金利決定の復活」がゴールだ。
とはいえ、こうしたシナリオをいつ頃、どの段階まで持って行けるのかについては、全く見通せていない。
テーパリングからゴールまで
少なくても10年はかかる見通し
金木利公・三井住友信託銀行主席研究員は、当面は「ステルステーパリング」を続けながら、「イールドカーブコントロールの修正を手始めに、正常化が模索されるのではないか」と予想する。
その手法は、現在、「0%程度」に誘導している長期金利を、まずは「0.1〜0.2%」にし、様子を見ながらさらにコンマ1%ずつ小刻みに上げていくものと見られている。修正の時期は、早くても2018年後半以降との見方が多い。
だが、米国株式の急落を受けて、FRBが利上げペースを抑え、円高・ドル安が進むような状況になれば、長期金利の利上げ時期は来年以降にずれそうだ。
しかも、「この段階では、日銀はまだ出口戦略とは認めず、金融緩和の“微調整”という名目にする可能性が高い」(金木研究員)
テーパリングを終えて、短期金利の利上げといった「本格的な正常化」に入る時期となると、数年はかかるだろう。
バランスシートの縮小となると、さらに難しくなってくる。長期金利や、国債を大量に持つ地銀などの経営に対する影響を考えると、保有国債の売却は容易ではなく、満期になるまで持ち続けて償還によって減少させていくしか手はない。
バランスシートの縮小を始めて、国債残高や日銀準備預金残高が、量的緩和以前の水準に戻るのには、さらに少なくとも5〜7年はかかる。つまり、出口戦略のゴールまでには、少なくても10年以上はかかる見通しだ。
修羅場は「利上げ」局面以降
自らまいた問題の種を処理できるか
とはいえ、これはあくまでも順調に進んだ場合の話。出口に向かう過程で、何事もなくゴールを迎えるのは容易ではない。
例えば、国債の買い取り減額の過程で、マネタリーベースが縮小すれば、為替は円高に向かう可能性が高いし、長期金利も日銀がもくろむように“管理”できるかどうか疑わしい。
米国など、海外の長期金利上昇圧力の高まりや、日本の財政健全化が進まず、日本国債が格下げされるような事態になれば、国債が急落(金利が急騰)、イールドカーブコントロールが行き詰まってしまう可能性がある。そうなれば、財政は利払いの負担増から、ますます危機的状況になる。
さらに、コール市場が機能していない段階で、短期金利を上げようとすれば、銀行などの日銀準備預金に対する金利(付利)を引き上げることになり、その金利負担が日銀の収益を圧迫する。保有国債などの運用利回りとの利ザヤが、縮小してしまうからだ。
また、低金利を維持するために、額面以上の価格で購入してきた国債の償却負担も日銀の収益を圧迫する。結局、利上げを急げば、「逆ザヤ」になりかねず、収益悪化から国庫への納付金が出せなくなったり、日銀が「債務超過」となったりした時には、政治問題化する可能性が高い。
万が一、そうした事態に陥り、政府が日銀に税金を投入して資本増強を図ろうとしたとして、果たして国民の支持を得られるのかどうか。逆に、政治が国民の批判を恐れて、あいまいな処理で収めようとすれば、海外の投資家は、円や国債の「日本売り」に走りかねない。
そうした事態を避けようと、日銀が利上げすべき局面でも利上げできないという状況になれば、インフレが止まらなくなり国民生活は大きな打撃を受けるだろう。
そもそも黒田総裁が進めた異次元緩和は、2年で物価2%の達成を目指すための“非常措置”として導入されたもの。だが、一向に目標を達成できず、ずるずると長期間に渡って続いてきた。
続投が決まったことで、いみじくも黒田総裁は、自らまいた種を自らの手で処理しなければならなくなった。ただ、その道のりは、行くも地獄退くも地獄の“修羅場”なだけに、簡単に出口にまで導くことができるとは思えない。今こそ、黒田総裁の真の手腕が問われていると言える。
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