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仮想通貨、金融機関職員の個人取引に潜むコンプライアンス問題
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/02/post-9506.php
2018年2月9日(金)08時17分 ロイター
2月6日、大手金融機関は仮想通貨取引との関わりが深まるに従い、従業員による不正な仮想通貨取引への対処という厄介な課題に直面している。写真は2017年12月撮影(2018年 ロイター/Dado Ruvic)
大手金融機関は仮想通貨取引との関わりが深まるに従い、従業員による不正な仮想通貨取引への対処という厄介な課題に直面している。仮想通貨は匿名性が高いため、従業員が個人の口座を使ってインサイダー取引など不正行為を行うと把握が難しいからだ。
主だった金融機関は最近まで仮想通貨の根幹となるブロックチェーン技術には投資しても、仮想通貨からはおおむね距離を置いてきた。
しかし仮想通貨は急激な値上がりが投資家の関心をあおり、ゴールドマン・サックスなど一部の銀行が清算業務への参入を検討、CBOEグローバル・マーケッツとCMEグループは仮想通貨の代表格であるビットコインの先物の取引を開始した。
法律専門家や金融機関の元従業員によると、仮想通貨取引は金融機関の主要事業の一角に食い込むにつれて、コンプライアンス(法令順守)部門の監視が厳しくなっている。
法律事務所エバーシェッズ・サザーランドのパートナーのグレゴリー・カウフマン氏は「インサイダー取引やフロントランニング(先回り取引)のリスクは切迫しており、企業から仮想通貨のコンプライアンスについて支援を求められている」と話す。「仮想通貨には疑似匿名性があるので、『できるよ。見つかりゃしないさ』と思うのだろう」と従業員の気持ちを推察した。
法律専門家などによると、仮想通貨やブロックチェーン関連のプロジェクトに携わっていたり、あるいは単に仮想通貨に投資したいと思った従業員が不正な取引を行えば問題になる。
金融機関の従業員は一般的に、利益相反を引き起こす恐れのある証券の取引を行う前に、許可を取るよう義務付けられている。金融機関はブローカーから従業員の個人口座についてリポートを提出させ、資産の保有状況を監視している。
しかし仮想通貨には暗号化技術が使われており、こうした監視は難しい。仮想通貨の取引を実行する取引所は相互のつながりに一貫性がなく、取引の追跡が困難だ。ブロックチェーン関連の作業に関わっている従業員が問題のある仮想通貨を保有することはあり得るという。
これまでのところ銀行で仮想通貨のインサイダー取引事件は発覚していない。しかし仮想通貨は大手金融機関が関連事業の拡大を発表するたびに価格が急伸しており、リスクは高まっている。
JPモルガン・チェースは昨年5月に仮想通貨Zキャッシュの技術を利用すると発表したが、広報担当者によると仮想通貨に関連する利益相反を防ぐ具体的な社内規則は設けていない。コンプライアンス部門は既存のインサイダー取引規則を適用する方針だという。
ゴールドマン、サンタンデール銀行、ウェルズ・ファーゴ、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)、スタンダード・チャータードもJPモルガンと同じ方針を採っている。一方、関係筋によると、シティグループとモルガン・スタンレーは従業員に行動規範を守るよう求めるとともに、仮想通貨への投資の扱いについて検討を続けているという。
仮想通貨は世界的な規制当局が存在せず、金融機関が独自の規則を設けるのが難しい。米商品先物取引委員会(CFTC)はビットコインをコモディティーとみなしているが、米証券取引委員会(SEC)は一部の仮想通貨は証券だろうとしており、当局の間でも見解が割れている。
ローエンスタイン・サンドラーのパートナーのベン・コジン氏は「多くの企業にとって一番簡単なのは従業員が個人で仮想通貨を取引するのを禁止することだ」と述べた。実際、ノルデア銀行は今月末から従業員による仮想通貨取引を禁止する。
(Anna Irrera記者)
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