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大塚家具、資金ショートの懸念…現場知らない久美子社長、退職者続出で販売力低下
http://biz-journal.jp/2018/02/post_22225.html
2018.02.05 文=松崎隆司/経済ジャーナリスト Business Journal
大塚家具の大塚久美子社長(写真:東洋経済/アフロ)
大塚家具が断崖絶壁に立たされている。11月6日に発表された2017年度の第3四半期決算では2期連続の営業赤字で、通期見通しは43億円の赤字の見通しとなったが、その後の10〜12月期でも売上高の減少に歯止めがかからず、2月8日に発表が予定されている12月期の通期決算は、さらに厳しい状況が予想されている。
大塚家具は、第3四半期決算発表の11月6日までに4つの銀行と結んでいた43億円のコミットメントラインを解除して、新たに別の金融機関との間に10億円のコミットメントラインを締結した。9月末の現預金は20億円だが、「運転資金だけで毎月約5億円もの資金が赤字で流出している」(大塚家具関係者)。
これだけで9月末以降、決算期末の12月末までに3カ月で15億円が減少している計算になる。さらに、株主への配当は現在一株40円が予定されており、3月の総会で承認されれば、総額で約7億5000万円もの配当に充てる資金が必要となってくる。
11月6日には会議室大手のティーケーピーと資本業務提携を行い、10億円の資金を調達したが、これだけなら短期間で資金ショートしてしまう恐れがある。
「16年12月期末の55億円に比べれば半分ぐらいになっていますが、17年9月末の第3四半期決算を見ると27億円の投資有価証券を所有しています。かなり前に優良企業などの株を取得していますし、相応の含み益があり、これを一部売却すれば、まだ今期の決算は乗り越えることができると思います」(東京商工リサーチ情報部)
とはいえ、状況は予断を許さない。大塚家具がホームページ上で公表している18年1月度の月次情報によると、店舗売上高が17年1月と比べて83.1%の水準にとどまり、過去最大の大赤字となる17年12月期よりもさらに厳しい出だしとなっている。
ここで問題となるのは、株主配当。現金が不足しているなかでの株主配当は、今の大塚家具を経営する上では、まさにアキレス腱。経営者の立場から考えれば無配にしたいところだ。15年3月に、大塚久美子社長が父親の大塚勝久氏との激しい経営権争いで勝利した際に株主に約束した3年間1株80円という配当方針も、最終年度となる17年12月期には創業以来最大の赤字が2期続いて1株40円へと大幅に引き下げたこともある。
しかし、久美子社長は16年4月、大塚家具の大株主であり、久美子社長が支配している資産管理会社が社債の返済をめぐる勝久氏との裁判で負け、資産管理会社の189万株を担保に銀行から金を借り、17億円を支払っている。
これまで資産管理会社は大塚家具からの配当を元本や金利の返済に回すことができたが、配当がなくなれば弁済原資に困ることになる。大塚家具の広報担当者は「現段階で40円配当を中止する予定はない」と言うが、「株主配当まで有価証券の売却でねん出すると、大塚家具の“へそくり”がなくなってしまう恐れがある」(東京商工リサーチ情報部)という。
■売り上げが下げ止まらず2期連続赤字へ
大塚家具は、1969年に埼玉県春日部市の東武伊勢崎線春日部駅東口(春日部ショールームとは反対側)に桐箪笥販売店「大塚家具センター」として創業した。
桐ダンスの名工だった父親が販売で苦労しているのを目の当たりにした勝久氏が、「どうすれば職人の技術を評価してもらえるような販売ができるのか」を試行錯誤して、お客との対面販売のなかで商品の良さを伝えていく販売方法に到達、そこから創業したのが大塚家具センターだった。
その後、93年には会員制を導入して「実売価格表示・値引き販売」を行い、これが評判になった。その後は顧客本位のサービスが評価され、“高級家具の大塚家具”というブランドを確立した。
しかし、デフレが続くなかで経営が低迷。その後、社長に就任したのが娘の久美子氏だった。
久美子社長は合理化を行い短期間で経営を立て直したが、その後、経営方針をめぐって勝久氏と対立、2014年7月に社長を解任された。ところが、15年1月には再び久美子氏が社長に復権。父と娘の本当の闘いが、ここから始まった。
久美子社長は「脱同族経営」「コーポレートガバナンスの強化」を掲げ、社外取締役を積極的に起用するなど時代に合った新しい経営を提唱。さらに、中期経営計画には17年度の売上高594億円、営業利益19億円、当期利益14億円という目標を掲げて、15年度から3年間の配当予想が14年度の40円から80円と2倍に拡大する見通しを明らかにした。そして、15年3月の定時株主総会で勝久氏を排し、経営の実権を握った。
その後、「大感謝祭」などの大規模なセールを繰り返し、なんとか売り上げを伸ばしたが、たび重なる値引き戦略のなかで顧客の関心が薄れ、16年に入ると売り上げが大幅に減少し46億円の営業赤字に転落した。17年に入っても大幅な売り上げ減少が止まらない状況が続き、2期連続での赤字になる見通しとなっている。
ちなみに、この2年間で売り上げが前年同月を上回ったのは、16年4月の102.1%(その前年は前年同月比82.5%)、17年3月の100.5%(同88.2%)、17年6月の104.8%(同61.9%)、17年7月の100.5%(同91.1%)だけだ。売り上げが下げ止まらないのが現状だ。
■「久美子社長は現場を知らない」
それはなぜなのか。
「久美子社長は現場を知らない。だから、指示は場当たり的で現場のオペレーションがメチャクチャになってしまった。これでは売れるものも売れない」
元社員はこう語る。そのため、社員が次々に退職し店舗の販売力が低下した。一方で、在庫負担は拡大した。
「ポルトローナ・フラウのような海外の高級家具は月の仕入れの量が決まっていて長期契約を結んでいる。商品が売れないので在庫が積み上がっていっている。一方で、リユースで集まった商品は売れないようなものばかり。これをどう処理するのかが大きな問題。修理の要員はリユースに取られ、従来のユーザー向けのアフターケアやサービスも十分に対応できていない」(前出の元社員)
そんななかでの運転資金の不足は死活問題といえよう。
「商品を売却した代金などが入ってきていますから、みなさんが想像されているほど現金が不足しているということはありません。さらに借り入れでもコミットメントラインは10億円になりましたが、金融機関からは融資確約書をいただいていて、だいたい40億円ぐらいの借り入れができる体制になっています」(大塚家具広報担当者)
しかし、「雨の日に傘を取り上げ、晴れの日に傘を貸す」のが銀行。大塚家具の思惑通りに融資を受けられるとは考えにくい。
赤字を続けるなかで、大塚家具の株主資本は16年12月期第三四半期の240億円から17年12月期第三四半期は168億円まで減少している。減少しているといっても168億円の株主資本があり、「これまで無借金経営を続けた大塚家具が、仮に多少銀行借り入れをしたからといってたいした問題ではない」(同)と説明する。
しかし、大塚家具は無借金企業だといわれているが、実はバランスシートに出てきていない事実上の負債が隠されている。それがオペレーティング・リース取引だ。これは、数年間にわたって支払う賃貸費用などのことだ。主に家賃だが、このなかで解約不能なものにかかる未経過リース料が16年12月期でなんと118億円もあるというのだ。
いずれにせよ、売り上げ減少に歯止めをかけ、リースによる賃料を圧縮して赤字を脱却するためには、大切な資金を配当で流出させるのではなく、収益構造を変えるための大規模リストラなど身を切る再建策が求められる。久美子社長は大きな決断を迫られている。
(文=松崎隆司/経済ジャーナリスト)
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