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米国主導の世界的な株高は「バブルの兆候」と言えるか FRBの資産圧縮の先にあるもの
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54167
2018.01.18 安達 誠司 エコノミスト 現代ビジネス
過去のバブル局面と現在の比較
昨年終盤から世界主要国の株価指数の加速度的な上昇がみられる。日本株もその例外ではない。
ニュースなどをみると、このような世界的な株価上昇の要因は米国経済の好調にあるように思われる。特に、トランプ大統領就任後、1年をかけてようやく成立をみた米国の大型減税が、米国経済の加速度的な成長に寄与するとの「期待」が米国株価を押し上げている側面が強そうだ。
もしくは、世界を代表するような大企業が「リパトリ税」によって、海外に蓄積してきた利益を米国内に還流させ、それを配当や自社株買いなどで株主に還元させる可能性が高いとの見通しも米国の株価上昇に寄与していると思われる。
そして、この米国株の好調が主要国の株価にも波及しているようにみえる。
このようなやや上昇ピッチが早い株価について、「これは、FRBの行き過ぎた超金融緩和によるバブルではないか」という見方が台頭しつつある。そして、それは、米国同様、いや、米国以上に加速度的上昇を続ける日本株市場においても、「FRB」が「日銀」に置き換えられて同様の話が展開されるようになっている。
ここでは、まず、日米の株価がバブルか否かを考えたいと思うが、2017年初めから現時点(1月17日)までの日米の株価指数(ニューヨークダウと日経平均など)はほぼ同じ動き(相関係数で示すと0.95)なので、データが入手しやすい米国株で考えてみることにする。
株価の「ファンダメンタルズ価値」というのは株式会社の収益(及び将来の見通し)を元に算出されるというのが一般的な考え方である。従って、まず、株価がバブルか否かを考える出発点は、株価が1株あたりの利益と比較してどの程度であるかを基準に考えることである。これは、「PER(株価収益率Price Earnings Ratio)」といわれる指標で表される。
そして、現在の株価がバブルか否かは、過去のバブル局面のPERと現在のPERを比較することで判断されることが多い。
例えば、現在の日米の主要株価指数のPERは約19倍前後であるが、過去のバブル局面では、60〜70倍、高いときは100倍を超える場合もあったので、過去の局面とのPERの比較では、現在の株価はまだ「バブルではない」ということになる。
「イールドスプレッド」の長期推移をみると
一方、ノーベル経済学賞を受賞したイェール大学のロバート・シラー教授は、循環要因などの様々な「ノイズ」を統計学的に控除したPER(Cycle-adjusted PER, CAPE)を算出し、その長期データを自らのホームページ上で公表している。
これによると、2017年12月時点でのPERは、32.44倍である。そして、1881年1月から直近(2017年12月)までの長期のPERの推移をみると、2017年12月時点でのPERは、大恐慌期直前、及びITブーム期以来の、歴史的には3番目に高い「局面」にいることがわかる(図表1)。
つまり、これだけをみると、現在の米国株の水準は「バブル」といえなくもない。
だが、株式というのは、資産運用の1つの手段に過ぎず、「まじめ」な投資家は、例えば、債券の利回りと株式収益率とを比較して投資をしているはずである。
株価が上昇するとキャピタルゲインが得られることになるので、その分、投資家が要求するリスクプレミアムは低下する(株式は債券と比較してリスクが高く、株式投資の際にはその分の補償を求めるはずであり、ここではこれをリスクプレミアムと呼ぶことにする)。
そこで、株価水準をもう少しまじめに考える場合には、株式の収益率(これは、PERの逆数で算出され、「益利回り」と呼ばれる)と金利の差がどの程度なのかが、重要な尺度となる。
この指標は「イールドスプレッド」と呼ばれ、通常は、「PERの逆数−長期金利」で算出される。これが過去としてどの程度の水準かで現在の株価がバブルか否かを推察する(通常は「リスクプレミアム」の分だけ株式の益利回りの方が高いのでプラスで推移するはずである)。
この「イールドスプレッド」の長期推移をみると(図表2)、前述のバブル局面では、ゼロ近傍かマイナスになることが多かったことがわかる。
イールドスプレッドがマイナスということは、債券の利回りとの対比でそれほど大きなリターン(企業業績に裏づけされた)を要求しない(無理やり解釈すすれば、「株価自体が既に上昇しているのでそのキャピタルゲインで十分だと投資家が考えている」ということになろうか)ことを意味する。
直近時点のイールドスプレッドは0.71%だが、過去と比較すると、それほど低いというわけでもない。すなわち、現在の株価水準は、必ずしもバブルとは言い難いということになる。だが、バブルではないからといって、それが今後の株価上昇の持続を補償しているわけではない。
そこで、視点を変えて、株価の調整(すなわち株価の急落)の可能性を考えてみる。株価の調整は突然やってきて、その幅も大きい。当たり前だが、その間、企業の収益環境(株価のファンダメンタルズ)は株価ほど激変しないため、この場合の株価調整は前述のPERの大幅低下によってもたらされることになる。
マネタリーベースの動きはどうか
次に、現在の局面に比較的類似した大きな金融危機の後の回復局面におけるPERの大幅調整の際に何が起こったのかを考えてみる。
ここで取り上げる事例は1936年から1937年にかけてである。当時は、FRBが大恐慌時に実施した量的緩和政策を段階的に解除していくという「出口政策」の局面であった。
当時のマネタリーベース残高の推移をみると、1936年から1937年初めにかけて、一進一退ながらトレンドが横ばいに推移し(今で言うと「テーパリング」)、その後1937年半ばにかけて、マネタリーベース残高は減少に転じた。
この局面における前述のシラー教授算出のPER(CAPER)の推移をマネタリーベース残高と同時に示したのが図表3である。
この表をみると、PERは、1936年の「テーパリング」の局面(マネタリーベース残高のトレンドは横ばい)には、まだ上昇を続けていた(同然、PERの上昇と同時に株価も加速度的に上昇していた)。当時は景気回復がより顕著になり、インフレ率も本格的に上昇し始めていた。
このような米国経済の回復を受け、FRBは1937年から大恐慌期に積み上がったマネタリーベースの削減を本格的に始めた(いわゆる「出口政策」)。すると、約1ヵ月程度のタイムラグで、PERは急低下し始めた。当然だが、それにともなって、株価も急落した。株価の急落は、米国経済を再びデフレに陥れることになった(「1937年大不況」といわれる)。
一方、現在のマネタリーベースとPER(CAPER)の関係をみてみると、1936年末の状況に似ていなくもない(図表4)。
また、2015年半ばから2016年にかけて、マネタリーベースはやや減少したが、そのときにはPERも低下しており、株価もさえなかった。2017年の株価上昇は、2017年に入ってFRBが再び、マネタリーベースを、テーパリングを開始した水準程度まで増加させたことがきっかけになっている可能性は否定できない。
以上より、2018年の米国、および米国に連動する主要国株価の動向を考える際には、株価水準がバブルか否かを考えてもあまり意味がない。
FRBが本格的に資産圧縮に動き出し、マネタリーベースが本格的に減少局面に入ってきた場合には、とりあえず、その後の株価調整の可能性を意識しておいた方がよいかもしれない。
ただし、現在の米国経済を支えているのは、ドル安による輸出増と製造業の復活(生産増)、底堅く推移する住宅投資、ローン増と資産効果(株式・不動産価格上昇)に裏打ちされた消費の堅調であり、いずれも、FRBの金融政策に依存するところが大きい。
株価の調整は米国経済にとっては死活問題であるし、特に今年は中間選挙の年でもあり、景気動向は選挙の結果を左右しかねない。
したがって、もし、FRBによる資産圧縮によってマネタリーベースが減少し、それに伴って株価調整が実現した場合、その後のFRBの金融政策にも影響を与えるかもしれない。
そうすると、目先のマネタリーベース減少による株価調整は、その後のマネタリーベース増加と株価上昇につながると期待することも可能になる。
だが、その辺については、読者の判断に任せたい。
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