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トヨタが攻勢をかける新戦略の課題は「脱・技術優先主義」だ
http://diamond.jp/articles/-/155667
2018.1.16 桃田健史:ジャーナリスト ダイヤモンド・オンライン
CES2018、米フォードのブースは技術展示より「雰囲気」重視? Photo by Kenji Momota
新ビジネス領域見えず
一気に落ち着いたCES
「あのぉ〜、この会場内の雰囲気って、どういうことなんですかね?」
毎年1月の恒例イベント、米ラスベガスでのCES(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー)を初取材した知り合いの日本人自動車ジャーナリストと会場内でバッタリ会った時、彼はそう聞いてきた。
それに対して筆者は「残念でしたね。もう『後の祭り』ですよ」と答えると、彼は「なるほど、そのひと言ですべて理解できました」と笑顔になった。
日本では、世界最大級の家電ITショーと称されることが多いCES。2000年代中頃までは、自動車関連の出展はカーオーディオやカーナビなどのアフターマーケット向けが主流だった。
それが、スマートフォンの登場で『スマホと車載器、さらにクラウドとの連携(コネクテッドカー)』を皮切りに、米半導体大手のエヌビディアと独アウディが仕掛けた『自動運転コンセプト』を契機に、2010年代に入ると欧米日韓の自動車メーカーがこぞってCESに出展。会場の正面入り口の左側にあるノースホール内は、まるでモーターショーのような雰囲気になっていった。
昨年12月、トヨタとEVバッテリー協業を発表したパナソニックは小型EV向けの電動ユニットを世界初出展 Photo by Kenji Momota
日系メーカーは昨年から、トヨタ・日産・ホンダのビック3がCES揃い踏み。一方で、CESをマーケティング戦略の主要舞台として活用してきたアウディは、日系ビック3と入れ替わるように昨年で撤退している。
アウディを追って参加した独フォルクスワーゲングループもすでに撤退。ダイムラーはメルセデスベンツとスマートでの出展を今年も続けたが、技術展示はほとんどなく、プレゼンブースでは冒険家によるトークショーを行うなど、『モノ中心ではなく、人中心のモビリティ社会』といった啓蒙活動(=マーケティング)に転じた。
毎年CESを取材してきた私からすると、今年のCESは、京都八坂神社の祇園祭が語源とされる『後の祭り』に見えた。
自動車分野以外では、近年のCESでブームとなった、3Dプリンター、ウェアラブル、ドローン、VR・ARといった分野にも『後の祭り』な雰囲気が強く、CES全体として『ネタ薄』だった。
矢継ぎ早の攻勢
次世代自動車産業の主役を狙うトヨタ
こうした『後の祭り』の中で、大きな注目を集めたのが、トヨタが世界初発表した、モビリティサービス専用EVの『e-Paletteコンセプト』だ。全長4800mm×全幅2000mm×全高2250mmの大きなボックス状の車体で、前後にそれぞれ4輪、合計8輪のEVだ。
トヨタブースでの一般向けプレゼンは大きな注目を浴びた Photo by Kenji Momota
このPaletteとは、絵画で用いるパレットを意味し、トヨタとしては部品を共用化するためのEVプラットフォームを想定している。
EVの部品共用については、トヨタは昨年9月にデンソー、マツダと共同で設立したEV開発企業のEV C.A.スピリットがある。一部メディアでは昨年末に、スズキ、スバル、ダイハツ、日野などトヨタとの関係が深い企業が今後、この新会社に参画する可能性があると報じた。
また、昨年11月の東京モーターショーでは、トヨタが次世代商用車の『LCV(ライト・コマーシャル・ヴィークル)コンセプト』を発表。トヨタは昨年からカンパニー制となり、CV(コマーシャル・ヴィークル)カンパニーとして、トヨタブース内に初めてトヨタ車体の展示を行うにあたり登場したコンセプトモデルだった。同車は中型ミニバンをベースに、オフィス、カーゴ、またパラリンピックのアスリート用向け移動車といったバリエーションを備えていた。
こうした一連の流れを見てみると、『e-Palette コンセプト』は決して、唐突に登場した感じはない。
また、自動車産業が今後、製造・販売業からデータサービス業へと転じていく可能性が高い中、『e-Palette コンセプト』では、一昨年にトヨタが発表したモビリティサービスプラットフォーム(MSPF)の概念をしっかりと継承している。今回は概念のみならず、自動運転の車両制御開発キットをMSPF上で情報共有するためのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェイス)化し、トヨタ主導のエコシステムの構築を目指す。
トヨタグループとして『人・街・社会』が
しっかり見えているかどうか
今回の発表でも、豊田章男社長は最近の記者会見での常套句となった「100年に一度の大変化の時代」において、トヨタは常に挑戦者で居続けることを強調した。
その言葉通り、この1年間だけでも、トヨタおよびトヨタグループ主要企業で、EV、自動運転、コネクテッドカー、さらにMaaS(Mobility as a Service、カーシェア等の“モビリティのサービス化”を指す)に関する具体的な動きを表明した。
デンソーはMaaS関連の米企業などを買収し、一気にMaaSシフトの様相 Photo by Kenji Momota
トヨタのIT戦略の要であるデンソーはCES2018の出展に合わせるように、シリコンバレーのMaaS関連ベンチャーのActiveScale社を買収している。
こうした中、筆者が感じる、トヨタおよびトヨタグループの「100年に一度の大変化の時代」に対する最も大きな課題がある。
それは、テクノロジーオリエンテッド(技術優先の考え方)からの脱却だ。
EV、自動運転、コネクテッドカーという、次世代モビリティの主要3分野は、あくまでもバックエンドの技術であり、実際にサービスを受ける顧客に対しては、縁の下の力持ちであり続けるべきだ。
自動車産業は百十余年前の草創期以来、クルマ中心(=技術中心)を売り物として成立してきた。次の100年に向けてMaaSという概念をトヨタに根付かせるのならば、ソフトウエアやAI開発者レベルからディーラーの現場営業マンに至るまで、「人・街・社会」のより良いあり方を第一としたモビリティ概念を持つべきだ。
そうなれば当然、大量生産・大量販売型のいわゆる『n数商売』は成立しなくなる可能性が高い。
トヨタ幹部におかれては、『n数商売』とMaaSを、トヨタお得意の『すり合わせ』で調整するのではなく、『n数商売』のワーストシナリオをしっかり描いた上で、「人・街・社会」と今後、トヨタがどのように接するべきなのかの議論を社内で深める活動を、より一層進めていただきたい。
CES2018の現場で、そう強く思った。
(ジャーナリスト 桃田健史)
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