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ユニクロ柳井氏、社長交代撤回で生涯現役か…国内不振深刻で事業モデル転換へ
http://biz-journal.jp/2018/01/post_21959.html
2018.01.12 文=編集部 Business Journal
ユニクロ店舗(撮影=編集部)
ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は、70歳となる1年後をメドに社長のポストを譲り、会長に専念する意向を示した。新社長は外部から招くのではなく執行役員など内部から選ぶという。
昨年10月、日本経済新聞のインタビューで明らかにした。1924年2月7日生まれだから、今年2月で69歳。あと1年で社長をリタイアすることになる。はたして、そんなことができるのだろうか。
柳井氏の社長引退宣言は今回が初めてではない。かねて「65歳で社長を引退」と公言していた。ところが、65歳を目前にした2013年10月、引退宣言を撤回した。
13年8月期の売上高が1兆円を突破し、日本のアパレル業界で初の1兆円企業になった。そして、新たに売り上げ5兆円の目標を掲げたが、この目標を達成するための“力仕事”ができる後継者が育っていないことから、65歳引退をあっさり引っ込めたのだ。
だが、この朝令暮改に驚いた経済人はいなかった。皆、“生涯現役を続けるだろう”と見ているからだ。今回の「70歳で社長交代」についても、1年後には撤回するのではないかという冷めた見方が大方を占めている。売上高5兆円の大目標は、まだ半分にも達していないからだ。
ファストリの17年8月期の連結決算(国際会計基準)は、売上高にあたる売上収益は前期比4.2%増の1兆8619億円、営業利益は38.6%増の1764億円、純利益は2.5倍の1192億円と増収増益だった。値上げして安さの魅力が失われたことで客離れを起こしたが、ようやく業績は立ち直り、純利益は2期ぶりに過去最高を更新した。
海外のユニクロ事業が業績をけん引した。海外の売上収益は7081億円で前期比8.1%増え、営業利益は731億円で同95.4%増加した。海外事業の営業利益が全体に占める割合は29.4%から41.4%に上昇した。東南アジアやオセアニアではTシャツやポロシャツなど現地のニーズに素早く即応した商品が好調だった。中国は赤字店舗がなくなり、苦戦していた米国も赤字が半減した。中国に関して柳井氏は「赤字店舗を撲滅した」と述べた。店舗の経費コントロールを徹底したことが奏功した。
一方、国内のユニクロ事業は振るわなかった。売上収益は8107億円と1.4%の微増にとどまった。営業利益は959億円で6.4%の減益だった。国内事業の営業利益が全体に占める割合は80.5%から54.3%へと大きく低下した。
18年8月期の売上収益は10.1%増の2兆500億円、営業利益は13.4%増の2000億円を見込んでいる。海外のユニクロ事業の売上収益が初めて国内を上回り、営業利益も国内に肉薄すると見ている。さらに、引き続き東南アジア・オセアニア地区が業績を押し上げるとしている。
だが、柳井氏が掲げる「売上高5兆円」は、はるかに先だ。その目標を達成するには低迷する国内の建て直しが急務である。
■情報製造小売業にビズネスモデルを転換
柳井氏は昨年10月12日の決算発表の席上、次のようにビジネスモデルの転換を表明した。
「商品を企画、製造するだけではなく、情報を商品化する情報製造小売業を目指す。本格的なグローバル化、デジタル化は世界各地で同時に始まり、あらゆる産業に影響を与えている。今後は業界のボーダーが消滅していくと考えている。我々はアップルやグーグル、アマゾン、中国アリババ集団やテンセントなど世界中のグローバル企業と協力していく。こうした企業は競合相手であると同時に協力者だ」
2度目のビジネスモデルの転換といえる。かつてアパレル業界では、百貨店や専門店がアパレルメーカーから仕入れた商品を販売してきた。ところがファストリはSPA(製造小売業)を標榜した。商品の企画・開発から調達・生産・流通・広報・店舗運営・販売まで一貫して自前で行うビジネスモデルだ。SPAの成功でユニクロは全国ブランドになった。
柳井氏は再度、ビジネスモデルを転換するという。SPAに情報という新たな要素を加え「情報製造小売業(ISPA)」という新しい形態につくり替える。使いこなせていなかった顧客情報をうまく活用できれば、「売れない商品をつくらずに済む。在庫処分の値引きセールも必要なくなる」というわけだ。消費者が欲しい商品を選んでから、初めて工場を動かすビジネスモデルである。
「新しい酒は、新しい革袋に盛れ」ということわざがある。ISPAという新しい革袋には、新しい人材が絶対に必要だ。柳井氏が70歳までに社長の椅子を若い人に譲るという発言の裏には、切羽詰まった事情が隠されている。
柳井氏の長男の一男氏は米投資銀行ゴールドマン・サックス、二男の康治氏は三菱商事で武者修行した後、ファストリに入社し、いずれも現在、執行役員を務めている。柳井氏は2人の子どもに関しては「大株主として経営の監視役になる」ことを想定してきた。
柳井氏は「世襲は絶対にない」と発言したが、翻すことは十分にあり得る。とはいっても、柳井氏は「血の継承より、会社の成長」に最大限の価値に置いている。後継者は、会社を成長させる“力仕事”ができることが絶対条件だ。
SPAにビジネスモデルを転換したとき、旭硝子などを経て入社した玉恁ウ一氏(ローソン顧問)を後継社長に抜擢した。だが、3年後の05年、業績が足踏みしたため、玉恷≠解任した。玉恷≠ヘ安定志向で、柳井氏が頭に描いていた社長像とは相容れなかったといわれている。
柳井氏が社長に復帰し、その後、ファストリは世界のファストファッションの強豪の一角を占めるまでに成長した。
ISPA時代を率いる経営者として、デジタル化で成果を挙げた若手の執行役員の起用を想定しているのではないかと指摘されている。果たして、2兆円の売り上げを2.5倍の5兆円に引き上げる、文字通りの“力仕事”ができる人材が社内で見つかるのか。1年後、柳井氏の社長続投宣言を聞く可能性もある。
(文=編集部)
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