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実感なきアベノミクス景気の正体を映す「二つのグラフ」 株価は上がっている。ところが…
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54089
2018.01.09 町田 徹 経済ジャーナリスト 現代ビジネス
「実感のない好景気」が今年も続く
「実感が乏しい」と言われるアベノミクス景気だが、2018年は厳しさを増しながらも、数字の上では好景気が続くことになりそうだ。その“歴史的成長”を支える要因は三つ。米中向けを中心とした好調な輸出、消費増税前の駆け込み需要、2020年に迫った東京オリンピック・パラリンピック需要である。
だが、手放しで喜ぶのは早計だ。三つの要因による底上げ効果が薄れる可能性が高い2019年10月以降の景気動向は、日本経済の落とし穴になり得る。
米欧が相次いで金融政策の正常化(引き締め)を本格化しており、堅調な輸出がいつまで続くかは不透明だ。また、ひとたび消費増税が実施されれば、駆け込み需要で先食いされた形の消費や投資が冷え込み、景気の足を引っ張ることになるだろう。
さらに、五輪需要はあくまで2020夏までの一過性のもので、その後に厳しい不況が到来するリスクを指摘せざるを得ない。
株価はもはや経済の実態を反映していない
それでも、街やメディアは驚くほど楽観ムードに満ちている。それを後押しするかのように、今年最初の明るい話題をふりまいたのが、内外の株式相場だ。米国の株式市場では、ニューヨーク・ダウ(工業株30種平均)が1月5日まで4日連続上昇し、3日連続で過去最高値を更新した。
同日公表された2017年12月分の米雇用統計は、就業者数と時間当たり賃金の伸びが大方の予想よりも低い水準にとどまり、本来ならば失望売りが出てもおかしくない局面だったが、実際には、FRB(米連邦準備理事会)の利上げペースが緩やかになるだろうと歓迎する向きの方が多かったようだ。
昨年まで6年連続の上昇相場で地合いが良いところに、ニューヨーク・ダウなど海外株高という援護射撃が加わったことで東京株式市場もおおいに沸き、日経平均株価は年明け最初の取引となる4日の大発会から2日連続で、26年ぶりの高値水準を更新した。
「戌笑う」という株式相場の格言があり、戌年は上昇相場になるといわれる。実際、第二次世界大戦後に今日まで5回あった戌年のうち4回で相場が上昇したことから、「早くも戌年相場の本領が発揮された」と満面の笑みを浮かべる関係者も多かった。
確かに以前ならば、この株高を見て「今年は景気も良いようだ」と晴れやかな気分に浸れた。長いこと「株式相場は実態経済を映す鏡だ」と言われてきたことも事実だ。しかし、現実を直視するなら、日本経済と株式相場の関係はすっかり様変わりしてしまったと言うほかない。相場で儲けた一部の投資家の消費が活発になったところで、日本経済が成長することはないのだ。
そのことを端的に示しているのが、ここに掲載したグラフだ。
下段のローソク足チャートからわかるように、日経平均株価は2012年から2017年までの6年間にわたって急騰して2.7倍に達した。平均上昇率は45%増である。ところが、その間の実質GDPの伸び率(上段)は単純平均でわずか1.25%増に過ぎない。
株価と実質GDPの伸びが乖離した原因の詳細な分析は、本稿では割愛したい。重要なのは、好業績への期待から株価が上がり、企業がそれに見合う収益を上げてきたにもかかわらず、利益が内部留保に回され、設備投資や従業員の賃金(個人消費と表裏一体)に向けられず、株高が経済成長につながらなかった――そんな状況が、グラフから感覚的に理解できることだ。
「実感なき経済成長」はさらに実感が薄れる
そこで注目したいのが、計量経済モデルなどを使って景気を予測する専門家(エコノミスト)たちの見通しだ。その平均的な見方をつかむには、老舗シンクタンクである日本経済研究センターが42人(機関)の民間エコノミストを対象に調べた「ESPフォーキャスト調査」が便利である。
それによると、実質GDPの成長率は、今年3月末までの2017年度が1.8%、以後、2018年度が1.2%、2019年度が0.75%になるという予測結果が出ている。前述のグラフを併せて考えると、前後2年を含むこの5年間で、2017年度の1.8%は最高の伸び率を記録することになりそうだ。別の見方をすれば、2018年度以降は成長が減速することになる。
ただし政府・与党は、来年度以降のGDP成長率の減少を「景気後退」と認めない可能性がある。というのも、2013年度(2.6%)から2014年度(マイナス0.3%)への減速局面を景気後退と認めず、日本経済は2017年9月まで58か月間連続の拡大局面にあり、1965年10月から57か月続いた「いざなぎ景気」を超える戦後2番目の長さの景気拡大を実現したと主張し続けてきた経緯があるからだ。
毎年2ケタを超える高成長を実現したいざなぎ景気と異なり、好調時でも1%前後しか成長しなかった「実感なき経済成長」は、我々庶民にとって、来年度以降さらにその実感が薄れていく可能性がある。
実質賃金が依然として伸びない状況が続けば、予測上のプラス成長は維持されるとはいえ、前年度比3割強の減速となる2018年度、同4割弱の減速となる2019年度は、いずれもマイナス成長並みの体感温度になってもまったく不思議はない。
2018年以降のリスクとは
年初にあたって、今後想定される状況を整理しておきたい。
まず、FRBや欧州中央銀行(ECB)がリーマンショック後に導入、長らく維持を続けてきた異例の金融緩和を本格的に正常化させるのに伴い、2017年度の日本経済の成長を支えた輸出が徐々に力強さを失うとみられることだ。個人消費については、経営者が思い切った賃上げに踏み込まない限り、2018年度も本格的な回復は見込めないだろう。
次いで2019年度は、消費増税を見据えた駆け込み需要が、(増税の実施される)同年10月を境にして投資と消費の足を引っ張る側に回ることだ。駆け込み消費が内需の押し上げ要因になるのは、2019年9月末までである。
税率を5%から8%に引き上げた2014年4月の消費増税が、すでに述べたように2013年度(GDP成長率2.6%)から2014年度(同マイナス0.3%)への経済減速の主因になったことを考えれば、それに匹敵する、あるいはそれ以上の激震が来てもおかしくないことは容易に想像できるだろう。
そして最後に、消費増税後も内需を下支えするであろう東京オリンピック・パラリンピックが2020年9月に閉幕する。このことが経済成長に与える影響は甚大だ。
根本的な成長戦略がそろそろ必要
もちろん、こうした見通しが予想外の要因で上下に大きく振れる可能性は否定できない。上振れ要因としては、リーマンショック前後のような新興国の台頭や人工知能(AI)、モノのインターネット(IoT)などのイノベーションが考えられる。
一方、下振れ要因としては、中国バブル崩壊の影響の長期化や一帯一路政策をめぐる経済摩擦の高まりに伴い、中国景気が予想を上回り悪化する可能性が考えられる。また、開発途上国からの資金逃避などにより起こる急激な円高、北朝鮮や中東問題など国際関係の緊張や軍事衝突、金融引き締めに伴う米欧経済の急速な悪化なども考えられるだろう。
景気の循環も大きな問題だが、さらに大きな問題は、政府や企業が成長率そのものの低下に有効な対策を打ってこなかったことだ。
移民や外国人労働者の受け入れをタブー視したり、予算規模が2兆円弱しかない少子化対策が人口減少の歯止めになるかのような幻想を振りまくのをやめ、本格的に人口減少を食い止める施策など抜本的な成長戦略が必要なことをそろそろ自覚し、行動を起こしてもよいのではないだろうか。
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