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銀行を追い詰めた敵役、「平成不況の象徴」が金融庁から消える
http://diamond.jp/articles/-/154211
2018.1.4 週刊ダイヤモンド編集部
2018年はどんな年になるのか。週刊ダイヤモンド 2017年12/30・18年1/6新年合併特大号「総予測」特集から、注目記事を抜粋してお届けする。
金融機関の監督官庁を務める金融庁の検査局が姿を消す Photo by Takahisa Suzuki
平成30年という節目の年となる2018年に、よくも悪くも平成の象徴だった組織が姿を消すことになる。銀行など金融機関の監督官庁を務める金融庁の検査局だ。
といっても、金融関係者のほかにピンとくる人はそう多くないだろう。ただ、銀行員の活躍を描いた13年放送の人気テレビドラマ「半沢直樹」を見た人には、こう言えば分かってもらえるかもしれない。おねえ口調の強烈な敵役として登場した、「黒崎駿一検査官」が所属していた組織のことだ。
「平成不況」とも呼ばれるバブル崩壊後の「失われた10年」の間、銀行は貸借対照表(BS)上の「貸出金」の中に、返済の見通しが立たない不良債権を大量に“隠し”持っていた。処理するには損益計算書(PL)で巨額の損失を計上せざるを得なかったからだ。
しかし、銀行が“膿”を出さなかった結果、日本経済はずるずると不信感と不況を引きずった。
そこで、平成不況退治の使命を背負って銀行の元へ立ち入り検査に入ったのが、検査局の検査官だった。BS上の「貸出金」について資産査定を行い、不良債権をあぶり出して処理を迫る。かつての銀行にとって、そんな検査官たちは恐怖の対象でしかなかった。
しかし、金融庁は18年に大型の組織再編を行うと発表。下図のように、検査局を解体して廃止することを決めたのだ。背景には、不良債権問題の収束がある。
銀行が不良債権の処理を先延ばしにしたのは、銀行が課せられている自己資本比率規制の影響が大きい。下図のように、銀行の自己資本比率は、分子に質の高い資本、分母にリスクアセットと呼ばれる融資の貸し倒れリスクなどを反映した資産を置くが、地方銀行に多い国内基準行には4%以上の値が求められる。
ところが、当時は不良債権を一気に処理すると、それによって生じる損失が巨額過ぎて分子の自己資本を取り崩す必要があり、最低水準を割り込みかねなかった。そのため分母を減らそうと、貸し剥がしや貸し渋りが横行した。
その後、国が銀行に対して公的資金を注入して自己資本を厚くし、検査官が立ち入り検査で処理を迫ることで、2000年代半ばにようやく不良債権問題と決別できた。
上表下を見ればそのことが一目瞭然だ。国内基準行の地銀を対象に、連結自己資本比率のランキングを作成。ベスト5とワースト5を並べ、不良債権問題が真っ盛りだった02年3月期と、17年3月期を比較してみた。
すると、左側にあるかつてワースト5だった地銀は最低水準の4%すれすれというところも多く、5行中4行が合併などに追い込まれて姿を消してしまったことが見て取れる。
一方、右側にある現在のランキングに目を向けると、自己資本比率の水準が底上げされたことが分かる。この間には、規制強化によって自己資本比率の算出方法が厳格化されたにもかかわらずだ。
不良債権と自己資本比率が結び付いた銀行のBS問題は終わりを告げ、それに伴って検査局の任務にも幕が下りたというわけだ。
“軟着陸”を狙って
行政処分発表日の争奪戦
「金融処分庁」から「金融育成庁」へ──。検査局廃止の背景には、麻生太郎・金融担当大臣と森信親・金融庁長官が打ち出してきた、そんなスローガンもある。
金融庁は、旧大蔵省が銀行とずぶずぶの関係に陥って汚職接待問題を招いた反省が発足の出発点であり、銀行に対して厳格な姿勢を貫いてきた。その結果、不良債権退治の副作用として、銀行がリスクを取って融資をしなくなったという批判は根強い。
さらに銀行を保守的にさせたのが、金融機関の内部管理体制の不備を指摘する行政処分のオンパレードだ。不良債権問題が収束を見せると、次の仕事とばかりに連発し始めたのだ。
当時を知る金融庁幹部は、「あのときは本当にすごくて、1週間で3件の行政処分を下したこともある」と振り返る。また、「行政処分をソフトランディング(軟着陸)させたい担当者が、処分の発表日をめぐってゴールデンウイークの合間の日程を取り合っていた」という状況ですらあったという。
しかし、BS問題が収束した今、「金融機関の処分よりも育成を優先する時代」(麻生大臣)ということで、「金融処分庁」を象徴する存在でもあった検査局の廃止につながったというわけだ。
ただ、銀行側には「そのうち処分庁への揺り戻しが起こる」(第二地銀幹部)という不信感も強い。
また、銀行業界は“突然死”を招くBS問題こそ乗り切ったものの、銀行を“衰弱死”に追いやるPL問題という新たな苦悩を抱えている。
そして、金融庁は「BSがきれいでも稼げない」という地銀の中でも、深刻度が高い地銀に対して、立ち入り検査を始めた。
不良債権をあぶり出す金融庁の任務にはいったん幕が下りたが、検査局がなくなっても、新たなかたちでの検査の仕事は今後も続く見通しだ。
(週刊ダイヤモンド編集部 鈴木崇久)
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