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NEC完全凋落、談合発覚で入札指名停止…赤字回避のため成長事業売却の「自転車操業」
http://biz-journal.jp/2017/12/post_21846.html
2017.12.31 文=編集部 Business Journal
日本電気本社ビル・NECスーパータワー(「Wikipedia」より)
ソニーが復活する。
11月1日、ソニーの株価は前日比510円(12%)高の4923円まで上昇し、2008年6月以来9年4カ月ぶりの高値を付けた。11月8日には5485円と年初来高値を更新。10年来安値(772円、12年11月15日)の7.1倍となった。ちなみに12月22日の終値は5192円だ。
10月31日に発表した18年3月期の連結営業利益の見通しは、従来予想を1300億円上回る6300億円。20年ぶりに最高益を更新するだけではなく、事前の市場予想の平均であるQUICKコンセンサスを500億円上回った。
株式市場はソニーの復活に沸き立った。
かつてエレクトロニクスは自動車とともに日本のお家芸だった。テレビを中心とする消費者向け家電製品が牽引役となったが、デジタル化が進みテレビなどの価格が急落。韓国勢の攻勢や08年に起きたリーマン・ショックに見舞われ、2000年代後半に各社は軒並み大赤字に沈んだ。
各社がテレビから撤退するなか、ソニーは自前のテレビ生産にこだわった。長年、ソニーを苦しめてきた元凶は、テレビ事業だ。薄型テレビやスマートフォンなどの不振で15年3月期まで2期連続の巨額の最終赤字を垂れ流した。一転、テレビ事業が復調し、ソニーの復活を後押しした。
ソニーは18年3月期の連結決算(米国会計基準)の売上高を前期比11.8%増の8兆5000億円、営業利益は2.2倍の6300億円、純利益は5.2倍の3800億円を見込んでいる。営業利益は20年ぶり、純利益は08年3月期以来、10年ぶりに過去最高を更新する。未定としていた年間配当は前期比5円増の25円とした。
半導体や音楽事業が当初の想定を上回るほか、為替を円安に見直したことも寄与する。半導体事業の営業損益は1500億円の黒字(前期は78億円の赤字)となる。黒字幅は従来予想より200億円拡大。スマホの背面にカメラを2つ使う「デュアルカメラ」化の流れを受け、画像センサーの販売が増加。前期は熊本地震の影響もあって赤字だったが、今期は大幅に損益が改善する。音楽事業の営業損益は940億円の黒字。従来予想より190億円拡大する。
だが、なんといっても不振の元凶だったテレビが復調するのが大きい。テレビが主力のホームエンタテインメント&サウンド事業の売上高は1兆2000億円、営業利益は760億円。従来予想より売上高は300億円、営業利益は180億円上方修正した。4Kテレビなど付加価値の高いモデルの販売が好調で、年間販売台数を従来予想の1200万台から50万台引き上げた。
テレビ事業の復調がソニーの復活をもたらしたが、変動の大きい半導体などを抱えている以上、来期(19年3月期)も成長を続けられるかどうかは不透明だ。
ソニーの18年3月期の営業利益6300億円は、日立製作所の6900億円に迫る。日立は事業の選択と集中を進め、交通やエネルギーといった海外のインフラ事業を柱に据えた。
他方、パナソニックは不振のプラズマテレビから撤退し、車載や住宅といった企業向け分野に事業をシフトした。
ソニーは個人向けが中心で、パナソニックと比べても法人シフトが遅れている。全方位のオールラウンドプレーヤーを続けるのか。業績が回復した今こそ、選択と集中を徹底できるかどうかが問われる。
■NECは虎の子の車載用リチウム事業から撤退
ソニーとは対照的に、日本電気(NEC)は沈む。
18年3月期の連結決算(国際会計基準)は、売上高にあたる売上収益は前期比5.1%増の2兆8000億円、営業利益は19.5%増の500億円、純利益は28.2%増の350億円の見込み。純利益の従来予想は300億円だった。だが内実は、保有株式の売却で増益にする“ヤリクリ決算”だ。
NECは不正の処理に追われた。計4件、談合による独占禁止法違反を認定された。うち3件で課徴金納付命令を受け、自治体からは指名停止を受けて入札に参加できない事態に陥った。
東京電力関連の1件は自主申告で処分免除となったが、消防デジタル無線機器の談合、中部電力関連(電力保安用通信機器など)の2件の談合では、計12億4065万円の課徴金を課せられた。
指名停止を受けたため、売上収益で400億円、営業利益で100億円の影響が出た。それを穴埋めするため、事業の買収・売却を進めた。
東証1部上場の電子部品メーカー、日本航空電子工業を192億円でTOB(株式公開買い付け)を実施し、1月に連結子会社にした。日本航空電子の18年3月期の売上高は前期比11.9%増の2345億円、営業利益は45.0%増の174億円、純利益は66.3%増の112億円の見込み。この分が上乗せされ、NECの業績の落ち込みを下支えした。
保有していた半導体大手ルネサスエレクトロニクスの株式売却により43億円の営業外利益を17年4〜9月期に計上した。また、電子部品を製造するNECトーキンの全株式を米国企業に売却。148億円の営業外利益を捻出した。
車載用リチウムイオン電池事業から撤退する。日産自動車と共同出資で設立したオートモーティブエナジーサプライ(AESC)を中国の投資ファンドGSRキャピタルに売却する。AESCは日産が51%、NECが49%を出資。リチウム電池市場ではパナソニックに次いで2番手。日産のEV車リーフ向けが主力で16年3月期の売り上げは366億円をあげていた。
日産はカルロス・ゴーン会長の「部品は競争原理が働く外部から調達する」方針に基づきAESCの売却を決めた。経営権を持つ日産の決定にNECは従うしかなかった。
これに伴い、AESCに心臓部の電極を供給する生産子会社NECエナジーデバイスもGSRに売却する。どちらも18年3月30日に売却。売却益はAESCが100億円、NECエナジーは60億円を見込んでいる。NECはこの利益を織り込んでいないため、利益は上振れするとみられる。
だが、GSRに売却する電極は「手塩にかけて育てた虎の子の技術」(NECの元役員)。NECは、EV(電気自動車)時代の本格的な到来を前に、成長が期待できる車載用リチウム電池を失うことになり、大きな損失だ。
株価は経営を映す鏡だ。2000年には高値3450円をつけたが、最近は200〜300円台。17年10月に10株を1株に株式併合したため、見せかけは3000円前後の株価になっているが、実態は300円。安値は11月24日の2866円。つまり286円だ。
「電々ファミリー」の長兄といわれた頃の面影は、まったくない。
(文=編集部)
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