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ビットコイン先物取引が始まったことの重要な意味
http://diamond.jp/articles/-/153817
2017.12.21 野口悠紀雄:早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問 ダイヤモンド・オンライン
ビットコインの先物取引が一般の取引所で開始された。これによって、多くの情報が得られるようになった。
これまで、「ビットコイン価格はバブルだから、大暴落の可能性がある」という意見がある半面で、「最近、大きく値上がりした傾向が、将来も続くだろう」との見方もあった。
このどちらがより確かかについて、判断する材料がほとんどなかったのだが、先物価格が形成されたことによって、ある種の見通しができるようになった。
また、先物を利用して、リスクが低く利回りが高い資産を作れるようになったことの意味も大きい。
機関投資家が参入して、
マーケットが広がる
12月10日にシカゴ・オプション取引所(CBOE)が、ビットコインの先物取引を始めたのに続き、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)も日本時間18日午前8時に開始した。
CMEはCBOEに比べてはるかに大きな市場であるため、同取引所のビットコイン先物は大きな注目を集めている。
これまでも仮想通貨取引所では先物取引が可能だった。
ただし、アメリカ政府の監督下にある大規模な先物市場で先物が可能になったことは、ビットコイン取引にとって非常に大きな変化であり、意義が大きい。
ビットコインの取引に興味がある人は、先物価格の推移に注意を払うとよいだろう。
一般に、先物取引の導入は、売り買い両面で取引を拡大する。
まず、買う場合に買いやすくなる。購入代金を全額持っていなくても、証拠金だけで買えるからだ。
ビットコインの場合は、さらに、機関投資家が市場に参入しやすくなるということがある。
機関投資家は、リスクの大きな商品に投資することが許されておらず、信頼のおける金融商品や取引所での運用を求められている。これまでは、直接にビットコインに投資するのは難しかったと考えられる。しかし、先物であれば、投資できる。
さらに、ビットコインを実際に保有すると、ハッカーのアタックによって損害を受ける危険があるが、先物であれば、その問題がない。ビットコインに興味があるが攻撃からの安全策が面倒だと考えていた投資家が、投資するようになる可能性もある。
また、売る場合にも売りやすくなる。
これまでは、ビットコインを保有している人しか売ることができなかった。ところが先物なら、保有していなくとも売れる。
この意味は非常に大きい。
これまでは弱気の見通しが価格に反映されなかったが、それが反映されるようになったからだ。
これまでのビットコイン相場は、強気の見通しだけが反映される偏ったものだったと考えることができる。それが、バランスのとれたものになる。
このように、売り買いどちらにもマーケットが広がる。
こうして、ビットコインの取引が、一部のマニアの取引ではなくなり、機関投資家などの専門家の判断が入る取引に成長する。
投機が強まるより、
価格を落ち着かせる効果が大きい
先物取引が可能になると、売り買いで可能性が広がるため、投機の機会が拡大し、価格変動が拡大するという見方がある。
しかしそうではなく、多くの専門的知識が入ってくることによって、根拠のない噂や推測で価格が変動することがなくなる(ボラティリティが低下する)という意見もある。多分、こちらの意見のほうが正しいだろう。
このことは、とくにビットコインの場合に当てはまる。
先物価格には、ビットコインに関する規制や新技術の開発が、大きな影響を与える。また、分岐がどうなるかによっても影響を受ける。こうした情報は、個人投資家よりも機関投資家のほうが多く持っている。
確度の高い情報が反映されることによって、より適切な価格が形成されることになるだろう。
先物価格から読み取れる
3つのこと
CBOEの初日の取引では、買いが殺到して、しばしば取引が中断した。しかし、現在では、取引は落ち着いている。
先物価格は変動しているが、CBOEでもCMEでも、3ヵ月物の先物価格が現物価格より2%程度高い水準になっている(このことを「スプレッドが2%ある」という)。
これから、つぎの諸点を読み取ることができる。
1.価格が近い将来に暴落することはなさそうだ。
2.ただし、過去数ヵ月のように暴騰することもないだろう。
ビットコインの価格が、今年になってから急上昇した。しかし、価格上昇のペースは、今後は鈍る可能性が高い。
3.ビットコインを価値の保存手段として使えることが分かった。
なぜこのように考えられるかを、以下に説明しよう。
先物価格は
どのように解釈できるか?
先物価格は、将来価格の単純な予測値ではない。しかし、つぎのような解釈ができる。
まず、ビットコインを保有している人の立場で考えてみると、将来、暴落する危険があるので、それに対して備えをしておきたい。
ただし、現物をいま売るのは、将来、値上がりして利益が得られるかもしれないなどの理由で、ためらわれる。そこで、保有額の一部について、先物で売っておく。現在の先物価格は現物価格より高いので、これによって利益を確定できる。
もし多くの人が暴落を予想しているのであれば、現在より高い価格で買ってくれることはないだろう。だから、近い将来に暴落することは多分ないだろう。
つぎに、ビットコイン投資に興味がある人の立場で考えてみると、仮に価格が将来高くなってしまうと、手が出なくなるおそれがある。
ただし、いますぐ買うのはさまざまな理由(手持ち資金がない、規制がある等)で、困難だ。そこで先物で買っておく。先物価格は現物価格より数パーセント高いだけなので、これによって、現在より数パーセント高い価格で、将来確実にビットコインを手に入れることができる。
もし多くの人が暴騰を予測しているのであれば、このような安い先物価格で買うことはできないだろう。だから、近い将来、暴騰することは多分ないだろう。
このように、多くの人が暴落もせず、暴騰もしないと予想しているから、現在のような先物価格で取引が成立しているのである。
これまでは、仮に多くの人が暴落を予想していたとしても、積極的な行動でその予想を示すことはできず、ただビットコインを買わないだけのことだった。
したがって、暴落予想が市場価格に直接影響することはなかった。しかし、先物取引で現物を持っていなくても売れるようになったので、暴落の予想が市場価格に反映されるようになったわけである。
逆に、これまでは、仮に暴騰を予想していたとしても、手持ち資金や規制等の制約によって、実際にその予想を示すことができない投資家がいた。 したがって、暴騰予想は、市場価格に完全には反映されなかったわけである。しかし先物取引ができるようになって、その予想も反映されるようになった。
ただし、いまは先物取引が始まったばかりだ。判断するには、まだ時期が早いとも言える。時間が経つにつれて、より正確な判断ができるようになるだろう。
価値保存手段として
使えるようになった
以上で述べたのは、「あまり大きな変化が予測されていないから、現実の金融取引には大きな影響を与えないだろう」ということではない。
大変重要な意味がある。
それは、つぎのようなことだ。
ビットコインを先物で売っておけば、価値を確定できる。
例えば、3ヵ月先の先物価格が現物価格より2%高ければ、いまビットコインを購入して3ヵ月先の先物で売ることによって、確実に2%の利益を得ることができる。
ビットコインを保有し続ければ、それ以上の利益を得ることができるかもしれないが、それはリスクを伴う。上で述べたのは、「リスクなしに2%」ということだ。
アメリカのS&P500種株価指数の裁定取引では、先物・現物のスプレッドは1%を大きく下回っている。したがって、ビットコインのスプレッドがそれを上回っていることには、大きな意味がある。
CBOEの初日の取引では、3ヵ月物のスプレッドは12%程度だった。
これはかなり大きいものであり、他資産との裁定が成立していないことを示すと解釈され、ビットコイン現物への資金流入が示唆される状態だった。その状態は解消されたが、それでも2%程度のスプレッドは有意と言える。
また、現在のところ先物は、、CMEでの6ヵ月物までしかないので、それを超える期間については価値の確定はできない。ただ、6ヵ月であっても、それができることの意味は大きい。
6ヵ月後に現金化して再びビットコインを購入し、また6ヵ月の先物売りを繰り返すことによって、利回りがほぼ確実な資産を作ることができるからだ(ただし、6ヵ月先でスプレッドが先物高である保証はないから、確実にこうできるわけではない)。
これまで、ビットコインは送金手段としては優れた性質を持つと考えられていた。しかし、ビットコイン価格の上昇に伴って送金手数料も上昇し、その特性は失われた。
しかし、価値の保存手段として使えるようになったわけだ。
金融の専門家の判断からしても、資産として認定されたと言える。金融のメインストリームは、もはやビットコインを無視できなくなった。ポートフォリオの一部として考えざるを得ない。
これによって、後述のように、ETF(上場投資信託)などができる。
ただし、つぎの諸点に注意が必要だ。
(1)以上で述べたのは、「ビットコインを先物で売っておけば価格が確定できるから、利回りを確定できる」ということである。ビットコインの現物を保有したままであれば、依然として大きな値下がりリスクに直面していることに違いはない。
(2)資産としての価値が生じるのは、あくまでも、先物価格が現物価格より高い場合のことだ。現在のところそうなっているが、将来もそうであり続けるかどうかは分からない。
「ビットコインETF」への動きも
金融政策にも影響及ぼす可能性
ビットコインの先物が上場されたことで、「ビットコインETF」への動きが進むことも考えられる。
ビットコインETFは、アメリカで申請されていたが、今年3月に証券取引委員会(SEC)が却下している。
その理由は、「投資家を保護する仕組みがないこと」「市場操作を防止する対策が十分でないこと」などだった。
しかし、アメリカ連邦政府の監督下にある取引所に先物が上場されたので、条件が変化したとも考えられる。
ビットコインETFが実現すれば、ビットコインは、メインストリームの金融取引にさらに影響を及ぼすことになるだろう。
それは、ひいては、金融当局による金融政策にも影響を及ぼすようになる可能性がある。
例えば日本の場合、金融緩和政策がいつまでも続いて円の価値が止めどもなく失われるとの不安を持つ人が、円をビットコインに変える可能性が開かれるからだ。
もちろん、これまでも、そうしたことは可能だった。しかし、ビットコイン価格の変動はあまりに大きく、ビットコインへの投資は危険なものだった。先物やETFによって、そうした問題がかなりの程度まで取り除かれる可能性がある。
(早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問 野口悠紀雄)
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