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狂乱のビットコインが抱える「構造的リスク」 『アフター・ビットコイン』著者の警鐘
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53721
2017.12.11 中島 真志 麗澤大学経済学部教授 現代ビジネス
12月に入り、ビットコインの価格が1BTC=2万ドルや1BTC=200万円まで暴騰したことで、にわかに「ビットコインはバブルか否か?」という論争が起きている。「問題はバブルか否かではなく、いつはじけるかだ」とする論調もある。
「バブルかバブルでないかは、破裂してみなければ分からない」とはよく言われることであり、ここでビットコインの現価格がバブルであるかどうかを断言することはできない。本稿では、ビットコインの仕組みを支える技術的な側面も踏まえて、様々な角度から考察してみたい。
「ビットコイン・バブル説」三つの根拠
ビットコイン・バブル説の第一の根拠は、ビットコインの価格上昇のペースがあまりにも急激であることだ。ドル建てでみると、ビットコインの価格は2017年初めには1,000ドル程度であったが、ここにきて1万7000ドルに達する価格がついている。
つまり、1年足らずの間に17倍近く値上がりしたことになる。2016年初めには400ドル程度であったので、2年間では40倍以上の値上がりである。
2017年12月8日夕方時点のビットコイン価格推移をもとに作成
こうした急激な価格の上昇は、他の金融資産でもなかなか見られるものではなく、行き過ぎた価格の上昇を疑わせる根拠となっている。
第二の根拠が、こうした値上がりやそれによって利益を手にした人の話を聞いて、「ビットコインは儲かるらしい」という「シロウト筋」がビットコイン市場に参入してきていることである。つまり、「よく知らない人が買っている」相場になっているのだ。
こうした「にわかビットコイン投資家」の中には、ビットコインの仕組みについての十分な知識も持たず、値動きだけをみて市場に参加している人もいるようだ。そして、中には株式投資の経験もないままに、値動きの荒いビットコイン相場に参画しているというあぶなっかしい例も目立つ。
株式市場では、「素人が株式投資に乗り出してきた時が相場のピークであり、バブル崩壊の前兆である」という有名な格言がある。
第三には、「仮想通貨に投資しないと損だ」と言わんばかりの風潮が広がっていることだ。ビットコインでウン千万円を儲けたとか、「億り人(おくりびと)」(仮想通貨投資により1億円以上の資産を得た人のこと)が誕生したという話が飛び交い、「こんなに儲かるものをどうしてやらないのか」といったムードが蔓延してきている。
思えば、1990年前後の株式バブルのときにも、「株式投資でウン千万円儲けた」といった話が飛び交い、「道端に札束が落ちているのに、どうして拾わないのか(どうして株式投資をやらないのか)」と言われたものだった。そういう話を聞いてから、のこのこと相場に入って行った人が相当に痛い目にあったことは言うまでもない。
いったん値上がりが見込まれると、そこに参加することが合理的とみなされるようになる。そして実際に利益を手にする人が現れると、そのことが人々の射幸心をさらにあおる。というのが、バブルが拡大していく典型的なプロセスである。このあたりで、一度立ち止まって、冷静になってみた方がよいかもしれない。
チューリップ・バブルとの比較
ビットコイン・バブルの可能性を語るときに、よく引き合いに出されるのが、17世紀のオランダで発生した「チューリップ・バブル」である。これは、「世界最古のバブル」とも呼ばれており、チューリップ球根の価格が、本来の価格(数百円程度)から乖離して異常に高騰した事件を指す。
オランダ東インド会社の商人がトルコから持ち返ったチューリップが、異国情緒にあふれる珍しい花として珍重され、その球根1個に、当時のオランダ人の平均年収の5倍以上、家が1軒買えるほどの値段がついた。
このバブルは、1634年から値上がりが始まり、価格が徐々に上昇していった。そして1637年に入ってから価格の上昇が一段と急激なものになったあと、突然に何の前触れもなく価格が暴落して終了している。つまり、バブルが続いたのは、3年間という短い期間にすぎない。価格暴落には、特別な理由はなかったものとされている。
ビットコイン・バブルがこのチューリップ・バブルと同じように展開すると仮定してみよう。2年前からのビットコインの価格上昇をバブル期ととらえると、このバブルが続くのは、せいぜいあと1年程度ということになる。この通りの展開になるという確証はないが、いずれにしても注意が必要な時期が来ているとの見方は十分に可能である。
「今回はバブルじゃない」と言われ出したら…
ここで、バブルという現象の特徴についてみてみることとしよう。
一つは、「バブルは、毎回違う顔でやってくる」ということである。ある時には不動産バブルであったり、株式バブルであったり、次は国債バブルであったり、さらには美術品バブルであったりする。1回バブルを経た資産は、しばらくは警戒されてバブルにはなりにくく、目先を変えて別の資産でバブルがやってくるという傾向がある。
ビットコインを始めとする仮想通貨については、これまでバブルの洗礼を受けていない。このため、こうした警戒感が働きにくく、バブルのニューカマー(新参者)になる可能性がある。
二つ目に、専門家らしい人が値上がりを正当化するような理論を理路整然と唱え出したときが、特に危ないということである。つまり、「今回はこれまでとは違う(This time is different)」という、もっともらしい説が出てきたときが最も危ういのだ。
日本のバブル期にも、「東京の国際金融都市説」が地価上昇を正当化する理論として唱えられた。これは、「東京はこれから国際金融都市になっていくため、外資系の金融機関が大挙して進出してくる」「そのためには大量の超高層ビルが必要になり、地価はさらに上がるはずである」という理論であった。
しかし、専門家(らしき人)がこうした説を唱えた頃が、実は地価のピークであり、その後は10年以上にわたって下落の一途を辿ったのは周知のとおりである。
ビットコインについては、「これまでにない斬新な仕組みによって、世界を変える通貨になるのだ」(これは、まさにThis time is differentとの見方である)として、「2020年までには1BTC=25万ドル(約2600万円)」を目指すといった超強気の予測が飛び交っており、当時の状況によく似ているように感じられる。
それでも「騰がる」と言われる理由
ビットコインの値上がり期待を形成しているのが、@ビットコインの発行上限とAリワードの半減期による供給減少という2つの要因である。
まず@に関して、ビットコインは、最終的な発行上限が2,100万BTCと定められている。発行上限が設定されている理由は、「ビットコインをインフレに強い通貨にするため」であるとされている。
しかし、このことは、逆にビットコインがモノなどの価値に対して強くなる(通貨が値上がりする)、「デフレになりやすい」という性格をもたらしている。
2017年11月末の時点で、すでにビットコインの発行上限のうち80%にあたる1,671万BTCが発行済みとなっている。つまり、今後発行されるビットコインは全体の20%しかないのである。
しかも、この「残り20%のビットコイン」は、2140年頃までに120年以上をかけてゆっくりと発行されていくことになっている(ビットコインの発行メカニズムを含めた詳しい解説は拙著をご覧いただきたい)。
Aは、ビットコインの取引を承認する手続きである「マイニング」(採掘)に対する「リワード」(報酬)が、4年ごとに2分の1に減らされていくことである。これは「リワードの半減期」と呼ばれる。
ビットコインにおいて、リワードの付与は唯一のコインの新規発行手段となっている。つまり、今後、ビットコインの新規発行量は、4年ごとに半分に減っていくことが既定路線となっているのである。
要するに、将来的にビットコイン供給量は必ず減少していくことが定められている。その一方で、ビットコインへの需要が高まれば、需要と供給の関係によって、価格はどう考えても上昇するしかない。
こうした見方が広がるにつれ、将来の値上がりを見越して「買い」を入れる人が増える。その一方で、すでにビットコインを保有している人は誰も「売り」を行わない。こうした構造が今まさに生じていることによって、価格が一方的に上昇を続けているのである。
ただし、どの段階の半減期までが現在の価格に織り込まれているのかは、誰にも分からない。また、ビットコインには株式における投資指標(PER、PBRなど)のようなものがないため、割安か割高かを判断できる基準もまったくない。
こうしたビットコインの「先高観」により、ビットコインは、本来の目的であったはずの「交換手段のための通貨」としては使われなくなっており、もっぱら「投資用の資産」となっている。
マイニング業者「撤退」のリスク
上記のようなリワードの半減期は、マイニング(取引の承認)を行っている「マイニング業者」に対して深刻な影響を及ぼす可能性がある。これは、ビットコインの取引そのものが継続できるか否かにかかわる重大な問題といえる。
マイニングに対するリワードは、初期には1ブロック(ひとまとまりの取引データ)ごとに50BTCとなっていたが、現在は12.5BTCにまで減らされている。今後も4年ごとに6.25BTC、3.125BTC、1.5625BTCと報酬が半減することになっている。つまり、マイニング業者の得る収入はどんどん減っていくことになる(その間に、ビットコインの価格が倍々ゲームで必ず上がっていかない限り)。
マイニングには、かなりのコンピュータ資源を必要とし、計算のために大量の電力を使わなければならない。期待されるリワードの額がマイニングのコストを下回って、採算が赤字になった場合には、誰もわざわざコストをかけてマイニングを行わなくなるだろう。
どこかの時点でマイニング業者が大量に撤退してしまえば、ビットコインのシステムを維持していくこと自体が困難になる。こうした懸念が示されていることにも、注意が必要である。
知らない人ほど楽観的、詳しい人ほど悲観的
ビットコイン相場の先行きについては、ビットコインの仕組みをよく知らない人ほど楽観的である一方で、中身に詳しい人ほど警戒しているという傾向が強い。
たとえば後者の代表として、バブルの研究者として有名なノーベル賞学者のロバート・シラー教授(イェール大学)は、「『根拠なき熱狂』の最も典型的な例がビットコインだ」として警鐘を鳴らしている。また、JPモルガン・チェースのCEOであるジェイミー・ダイモン氏は、「ビットコインは、チューリップ・バブルよりひどく、良い終わり方はしないだろう」と予想している。
2017年の春先まで、世界のビットコインの9割以上を買いあさっていたのは、実は中国人であった。これは、中国元を外貨に換えることを制限する「資本規制」をかいくぐるという脱法目的のために使われていたものである。そのことに気がついた中国政府は、2017年9月に国内の仮想通貨取引所の全面閉鎖という強硬措置をとり、事実上、中国人の仮想通貨市場参加が難しくなった。
これに代わって、夏場からビットコインを買いまくっているのが日本人である。現在、ビットコイン市場全体の5〜6割が日本の取引所を通じて取引されている。中国の周回遅れでやってきた日本人が「ビットコインのお祭り騒ぎ」を行っているような状況だ。このため、日本人投資家の秋口からの買い値は6,000〜9,000ドル台とかなり高めであり、いわば「高値掴み」を行っている状態にある。
「永遠に上がり続ける資産は存在しない」ことは誰もが知る事実である。そろそろ「ブームには必ず終わりが来る」ということを思い返しておくべき時期が来ているのではないか。
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