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トヨタの“異例”役員人事が映し出す「自動車業界の苦悩」
http://diamond.jp/articles/-/151741
2017.12.6 石橋留市:ジャーナリスト ダイヤモンド・オンライン
豊田章男社長の“危機感”が今回の役員人事に反映されていると言われている。写真は2017年3月期決算発表時 Photo:TOYOTA
トヨタ自動車が11月28日に発表した2018年1月1日付けの役員級人事は、自動車業界だけでなく、世間でも「異例」人事として注目を集めた。というのも、この人事をじっくり見れば、トヨタだけでなく、自動車業界が直面している現状への危機感や苦悩が透けて見えてくるからだ。(ジャーナリスト 石橋留市)
「等身大のトヨタ」を映し出す
役員人事
自動車業界の写し絵――。
トヨタ自動車が発表した2018年1月1日付けの役員級人事に透けて見えるのは、トヨタ、そして自動車業界が抱える“苦悩”に他ならない。
お友達人事、自前脱却、出戻り、女性登用――などといった言葉でメディアは誇張するが、裏を返せば、自動車業界を取り巻く急激な環境変化に対応しかねている“等身大のトヨタ”を映し出していると言える。
そんなこともあって、筆者は「トヨタがどこか面白いことになってきた」とも感じている。
現在、自動車メーカーは自動車産業史はじまって以来の大転換期を迎えている。その変化はトヨタでさえも「かつてないスピードと大きさで進行しており、一刻の猶予も許されない」と認めるほどだ。
今回の役員体制の変更と人事異動は「生きるか死ぬかの瀬戸際の戦い」(豊田章男社長)に挑むための布陣。トヨタグループの内外から専門性を持つ人材を役員として登用したのが特徴だ。
その最たる例が、高度な専門性を有する役員として新設した「フェロー」のポストに、AI(人工知能)の研究開発を担うトヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)のギル・プラット最高経営責任者(CEO)を任命したことだ。
TRIはトヨタが16年1月に米国シリコンバレーに設立した新会社。約1200億円を超える投資を行い、自動運転に不可欠なAI技術の研究開発を担っている。
今回、TRIのプラットCEOをトヨタ本体の先進技術開発カンパニーのフェローとして受け入れることで、グーグルやウーバーといった自動運転技術を巡る異業種との戦いに打って出る。
副社長の役割は増し
人数も4人から6人に
副社長の役割も増す。
社長を支える補佐役としてだけでなく、執行役としてカンパニーの長(チェアマン、プレジデント)や本部長を担当することになるからだ。
副社長は小林耕士氏、ディディエ・ルロワ氏、寺師茂樹氏、河合満氏、友山茂樹氏、吉田守孝氏の6人。今回の役員体制の変更で4人から6人に増えた。
デンソー副会長の小林氏が最高財務責任者(CFO)を兼務する副社長として復帰し、章男社長の“懐刀”として知られる友山専務役員も昇格するなど、メディアを賑わす異例の人事を含むものの、先進技術開発やコネクティッド、パワートレーンなど各カンパニーが担う今後の自動車業界を占う最重要分野で、現場の陣頭指揮を執ることになる。
専務、常務役員人事では、トヨタグループの連携強化を進める一方で、グループ外からの人材登用も進めることで、従来の慣例的な人事異動を打破しようとする狙いが見てとれる。
専務役員ではアイシン精機傘下のブレーキ大手、アドヴィックスの小木曽聡社長が2年半ぶりにトヨタに復帰。常務役員では三井住友銀行の福留朗裕常務執行役員を迎え入れ、トヨタフィナンシャルサービスの社長に就任させる。
また、豊田通商の今井斗志光執行役員も常務役員に就き、アフリカ本部長として指揮を執ることが決まった。
今回の役員級人事が映し出すのは、「電動化」「自動化」「コネクティッド」をキーワードに、自動車業界が異業種を巻き込んで突き進む大競争時代に対するトヨタの“焦り”にも似た危機感だ。
人事異動は1年に1回という悠長なことを言っていては、勝ち負けどころか即死する。まさに「待ったなしの状況」がトヨタの背中を押す。
トヨタに迫る危機感
EVシフトや異業種との連携にも対応
トヨタに迫る危機感は各事業領域の現状からも推察できる。
例えば、出遅れ感が指摘されるEV(電気自動車)シフト。
筆者はHV(ハイブリッド車)を生み出したトヨタが技術的に遅れているとは思わない。ただ、フォルクスワーゲン(VW)を始めとする欧米メーカーは数値目標を明確に示し、それを大々的に報道するメディアの力と相まって、トヨタの情報量が相対的に少なくなった結果、トヨタは出遅れているとの印象を与えてしまった側面があるとも感じている。
それゆえ、11月27日に報道陣を対象に電動化技術に関する説明会を開いたのは、この出遅れ印象を払拭するためと見ることもできる。
説明会ではパワートレーンカンパニーの安部静生常務理事が「電動化のコア技術はモーター、電池、PCU(パワーコントロールユニット)。この技術があればさまざまな電動車両を開発することができる」と説明。その上で「今後の電動化でも優位性を保てる」と強調したのは象徴的だった。
トヨタが電動化に対して手をこまねいているわけではない。
リチウムイオン電池よりもエネルギー密度が高い全固体電池の開発も進めており、東京モーターショーでは2020年代前半に同電池を搭載するEVを発売すると公表している。
マツダとデンソーとはEV開発を進める新会社を設立し、スズキとはインド市場におけるEV投入について協力関係を構築する覚書を締結。VWが2025年までに世界販売の4分の1にあたる約300万台をEVにすると発表したほどの数的インパクトはないが、着々と、そして確実に車両電動化を進めている。
ちなみに副社長で先進技術開発カンパニーのプレジデントを担う寺師氏は、トヨタ、マツダ、デンソーが設立した新会社「EVシー・エー・スピリット」の社長職を務める。
自動運転技術やコネクティッド領域では異業種連携を加速させている。
半導体大手のエヌビディアやルネサスエレクトロニクス、ライドシェア大手のウーバーテクノロジーズ、配車アプリ大手のグラブなどとタッグを組むのは、異業種の参入という脅威にさらされ「海図なき戦いが始まっている」(豊田章男社長)からに他ならない。
水深や浅瀬、航路標識などが描かれていない“白紙の海図”だからこそ、異業種を脅威として敵対するのではなく、自ら協力関係を作ることで進むべき航路を切り開いていくのだろう。
SNSを見れば驚く
章男社長の懐刀である友山氏
つながる領域を担うコネクティッドカンパニーは、章男社長の懐刀である友山氏がイニシアティブを取る。
長年、章男社長の部下として仕えてきただけに、今回の昇格人事に斜に構えた見方をするメディアもあるが、一方で、大企業の役員とは到底思えない行動に筆者は高い関心を寄せている。
友山氏のSNS、機会があればぜひ見てほしい。例えばFacebook。毎日とは言わないが数日おきに更新しており、その内容には毎回驚かされる。
国内外の出張から本社執務室での様子、モータースポーツ観戦、週末のロードバイク、愛車の「スープラ」、はたまた名古屋・伏見地下街での飲み会に至るまで、役員のスケジュールをここまで公開していのかと逆に心配になるほどバラエティに富んでいるからだ。
トヨタの役員という立場上、悪く捉えれば情報公開にも度が過ぎると言えるが、逆にコネクティッド、「つながる」を担当しているからこそ、自ら積極的に関与し、そのメリット、デメリットを体感しているとも言える。
こうした異例の人を副社長に昇格させること自体、トヨタが何だか面白いことになってきたと感じないこともない。
それでもトヨタが直面する業界課題は凄まじく大きく、その変化スピードも早い。だからこそ、トヨタグループはもとより、今後は対峙する異業種とも連携を強めながら海図づくりを進めていくことになる。
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