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平均寿命1位は杉並区、ではワーストは…?寿命と収入の不都合な真実 東京23区「健康格差」地帯を歩く
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53589
2017.12.04 週刊現代 :現代ビジネス
本来、医療は誰にとっても平等であるべきだ。しかし現実は違う。カネがある人は手厚い医療を受け長生きし、低所得者はカネも時間もないから病院に行くことすらしない。残酷な「健康格差」の実態に迫る。
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「健康なんて気にしてないよ」
荒川区・町屋駅前の雑踏を抜け荒川自然公園へ向かう。狭い通りには多くの商業施設が固まり、いかにも下町的な雰囲気を醸し出している。
公園のベンチに集う3人の男性に声をかけた。毛玉の浮いたセーターに使い古したキャップを被った男性(70代)が、声高に話し始めた。
「健康なんて気にしてないよ。会社員時代は、健康診断も受けていたけど、いまは年に一度、区がやっている無料の健診を受けるくらい。
食事はアパートの近くのスーパーで売れ残りの弁当を買っている。半額になるから値段は一つ200円ほど。まとめて買って冷蔵庫に入れておいて、それを食いながら焼酎を飲むのが楽しみだね」
当然のことだが、人にはそれぞれ事情があり、職業、経済力に恵まれている人、そうでない人が厳然として存在する。扶養し、扶養される家族構成もさまざまだ。
この「差」が人の健康をも左右する――。
「健康格差」がいま日本でどんどん拡大している。この問題は、NHKスペシャルでも取り上げられ、大きな反響を呼んだ。
番組を手がけたNHK放送総局大型企画開発センターディレクターの神原一光氏が言う。
「バブル崩壊後の『失われた20年』からどうすれば脱却できるかをテーマに、これまでさまざまな現場を取材してきましたが、今回ほど空恐ろしく感じたことはありません。
スタジオでは健康問題は社会が解決すべきか、それとも個人で解決するべきか、白熱した議論になりました」
東京大学大学院医学系研究科・公共健康医学専攻准教授の近藤尚己氏が解説する。
「健康格差というのは、住んでいる場所、所得、学歴、働き方、世帯構成など社会的な違いによる健康状態の差のことです。
社会的に不利な立場の人たちのほうが不健康な傾向があります。ただ、それは本人の努力だけで決まるものではなく、社会や周りの環境に大きく左右されます。だから『社会が対応すべき』という価値判断があるわけです」
WHO(世界保健機関)は、「健康格差」を生み出す要因として所得、地域、雇用形態、家族構成の4つを挙げている。なかでも特に健康と関係が深いのが「所得」だ。
東京23区ごとの平均寿命をみると、その傾向が如実に表れている。男性の平均寿命トップは杉並区の81.9歳で、ワーストは荒川区の77.8歳。
末ページの東京23区平均寿命マップをみると「西高東低」になっているのがわかる。杉並区、世田谷区、目黒区など西側は平均寿命が高く、荒川区、台東区、足立区など東側の区は低くなっている。
23区ごとの平均年収をみてみる。平均寿命が短い区は、平均収入ランキングでも下位に位置していた。残酷なようだが「十分な医療を受けられるカネ持ちは長生きし、貧乏人は早死にする」ということになる。
平均寿命が一番低い荒川区は年収で23区中20位である。荒川区に住む50代男性の話。職業はバスのドライバーで、2人の子どもはすでに成人し、現在は夫婦で都営住宅に住んでいるという。
「私の収入が300万円、不動産会社で事務のパートをしている妻の収入が100万円くらい。正直、健康のことを考えるのは怖いですね。もし大きな病気をして、働けなくなったらと考えると不安でたまりません。
でも健康のために運動したり、定期的に病院に行く『ゆとり』もない。毎日仕事をこなして、生活するだけで精一杯です。将来の健康より、目の前の生活のほうが大事ですから」
この男性のストレス解消の手段がアルコールだ。安酒は手放せないという。
「バスの運転中、渋滞でお客さんから怒鳴りつけるようにクレームを言われたり、運賃の小銭を投げるように渡されたりすると、本当に頭にきますよ。
でもこっちは謝るしかない。だから、そんな日はどうしてもむしゃくしゃして酒の量が増えますね。安い発泡酒やチューハイを買ってよく家で飲んでいます」
安い炭水化物ばかり食べる
荒川区が行った平成22年度特定健康診査では、肝機能に異常(疑いを含む)がみられた男性は34%にのぼった。
飲酒が引き起こす病気といえばがんである。23区のがんの死亡率(男性)を見るとワースト1は台東区で、次が北区、墨田区、荒川区となっている。
台東区のがんの割合で特に多いのが肺がんだ。「平成24年広報たいとう」によると、台東区の喫煙率は男性が43.4%と、東京都の平均31%を大きく超えている。喫煙もがんに大きく影響する。
ちなみに、がんワースト3位の墨田区は、「健康に関する区民アンケート調査('14年)」の結果、区民男性の約半数が一日に2合以上の酒を飲んでいることが判明。これは厚労省が定める適正飲酒量(一日1合)を大きく超えている。
食事と健康の関係も切っても切れない。健康格差が顕著に現れるのが「食生活」だ。
『東京23区 健康格差』の著者で、地域問題を研究するジャーナリストの岡島慎二氏が言う。
「所得が低い人ほど安くて満腹感を得られやすい炭水化物を好む傾向があります。そのため糖尿病など生活習慣病のリスクが常時つきまといます。
『カネ持ちは贅沢三昧で不健康』というイメージは誤りです。生活に余裕がある高所得者は、バランスのよい食事をこころがけ、無農薬やオーガニックなど食材にもカネをかける人が多く、健康への意識が高い」
実際、平均寿命が短い地域は、野菜の摂取量も少ない。足立区の一日あたりの野菜摂取量220gは、東京の平均299gと比べても少ない。日本一寿命が長い長野県は379gなので、その差は歴然だ。
同区にある竹ノ塚駅前のスーパーを訪ねた。夕方になると、仕事帰りと思われる中高年の男性がスーパーに入っていく。野菜や果物ではなく、惣菜やおにぎり、カップラーメンなどを買っていく人が目についた。
スーパーから出てきた男性(60代)に話を聞いた。
「野菜は、あんまり食べないね。だって高いじゃない。特にいまは台風の影響で、値段が高くて買えないよ。
それに、一人暮らしだから料理を作るのも面倒だしね。弁当やお惣菜を買って帰って食べたほうが楽でしょ。区の健診?案内は来ているけど、受けたことはない。理由?忙しいし、面倒だから」
細かいことは気にしない。そんな気質の人がこの町には多い。だが、健診を受けず、偏った食生活を続けると、生活習慣病のリスクは当然高くなる。
足立区の糖尿病患者数は23区最多の約3万5000人。区民19人のうち1人が患っている計算になる(平成24年あだち広報より)。
足立区に住む、前出とは別の非正規労働者の男性(60代)は、40歳で糖尿病と診断されたという。
「50歳を超えたころから、身体に不調が現れてきて、一時は失明寸前まで悪化しました。いまはステージ4〜5くらい。若いころは極真空手をやっていたので、健康には自信があったんだけど……。やっぱり酒と食生活が原因だと思う。
いまは医者から食事指導されているから、野菜も食べるけど、以前は牛丼やコンビニ弁当など、糖質の高いものばかり食べていた」
足立区としても積極的に対策を打っている。過去には区内の飲食店で野菜の豊富なメニューを頼むと、会計から50円引きするという取り組みを実施。
これは野菜不足の足立区民に少しでも野菜を食べてもらおうと、区と飲食店が協力して実現したものだ。区民に少しでも健康に関心を持ってもらおうと、区も必死だ。
「付き合う人」も関係する
一方で健康保険料を滞納し、病院に行けないケースもある。23区の国民健康保険料収納率をみると足立区はもっとも低く81.1%となっている。
足立区内で開業医を営む医師は、区民の内情をこう明かす。
「金銭的に非常に困っていて、継続的に薬をとりに来ることができない人がいます。
その人たちはどうしても治療が途切れてしまうので、症状は悪化してしまいます。
いちばん大変なのは、非正規雇用者で、生活保護を受けられない、ギリギリのラインの方たち。生活保護を受けられれば、医療費が無料になるのですが、ある程度収入があるから、それもできない。
そういう人はよほどつらくならないと、病院に来ません。非正規雇用者の場合、仕事を休むと収入が無くなり、生活が成り立たなくなるからです。たまたま無料の区の健診を受けてみたら、糖尿病がかなり進んでいたという人も散見されます」
糖尿病と並び、健康格差が顕著に表れるのが、「歯」の健康だ。足立区では小学生(中学年)の虫歯率が28.4%とワーストの数字だった。次に江戸川区、葛飾区と続く。
都内23区では義務教育段階の子どもの医療費は無償なので、おカネの問題ではない。
とはいえ、世帯年収300万円以下の世帯では、親が仕事に追われ、どうしても子どもの食事がおざなりになってしまい、結果、子どもの虫歯や肥満が増えるという研究データもある。親世代の収入格差は子どもの健康にも大きな影響を及ぼす。
収入が高いと寿命も延びる可能性が高いことは、前述したとおり。ところが、年収トップの港区の平均寿命をみると9位に甘んじている。国民健康保険料収納率も足立区に次ぐ、ワースト2位だ。
港区のタワーマンションに住む、会社経営者の男性はこう語る。
「超カネ持ちが平均年収を押し上げているわけで、すべての人の年収が高いわけではない。区内の格差は、他の区より大きいと思う。富裕層は高級ジムに通ったり、健康への投資を惜しまないけど、そうでない区民もいる」
23区で平均寿命がもっとも長い杉並区。阿佐ケ谷駅の近くで洋服店を経営している男性(60代)に話を聞いた。ロマンスグレーの豊かな髪をオールバックにしている。体型もスマートだ。
「食事は妻がスーパーで買ってきたものを自宅で調理します。いたって普通ですよ。
たまに新宿のデパートでやっている物産展に行き、変わった食材を買ってきたりもします。私は店をしているので昼食はあまり食べません。その代わり朝食はゆっくりと時間をかけて食べています。
夕食はお酒を飲みながら、近くの料理屋で済ますことが多いかな。若いころはよく飲みましたが、最近は最初の一杯だけビールで、あとは洋酒を飲みながら長時間グラスを遊ばせるのが好きですね」
毎年、区が行う無料健診はもちろん、定期的に馴染みのクリニックでも健康診断を受けている。さらに奥さんもかなり健康への意識が高いという。
「家内は健康食品を集めるのが趣味で、私もシジミとか牡蠣エキスのサプリをよく飲まされます。筋トレやダイエット用品などにもとても詳しい。効果のあるなしは別として健康オタクですよ」
千葉大学予防医学センター教授の近藤克則氏は「健康格差は、周りの環境とも密接に関係している」と語る。
「健康意識が高い地域に住めば『自分も気をつけよう』と、自然とそちらに引っ張られる。逆に周りの健康意識が低いと『まあ、いいや』と流されてしまう。
たとえば皇居の周りをランニングしている人に混じって走れば違和感はないのですが、ランニングしている人がいない地域で走り始めたら『なんだアイツ』となる。付き合う人を含めた社会環境なども健康格差を生む要因となっています」
自分ではなく社会が寿命を決める――それが正しいとは言わないが、この二つは切っても切り離せない関係にある。
「週刊現代」2017年12月2日号より
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