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米国の長短金利差の縮小は景気後退を予言?
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171201-00199531-shikiho-bus_all
会社四季報オンライン 12/1(金) 14:31配信
米国株の好調が続いている。多少の割高感はあるものの、背景となっている米国経済と企業業績の堅調さが持続する限り、実体を伴った株価上昇と言ってよい。したがって、焦点となるのは「米国経済の堅調さはまだ続くのか」ということだろう。この点についても、現時点で目立ったリスク要因は見当たらないが、米国の金利動向からやや警戒すべきシグナルが浮上している。
金利の動向は、景気変動の大きな方向性を占ううえで恐らく最良の指標の一つであろう。下の図は、米国の長短金利差(10年国債利回り-2年国債利回り)を図示したものである。グレーで塗り分けた部分がリセッション(景気後退)の時期にあたる。
図を見るとわかるように、長短金利差が急縮小してマイナス圏にまで突入した後に必ずリセッションが起きている。したがって、長短金利差はかなり信頼性の高いリセッションの先行指標となっていることが伺える。ITバブルの崩壊による2001年の景気後退も、リーマンショックを挟んだ経済危機(2007年末〜2009年央)も、それに先駆けて起きていた長短金利差の急縮小によって見事に予言されていたわけだ。
ちなみに、長短金利差は、(1)政策金利の引き上げが続く、(2)インフレ率低下や景気後退の予想などで長期金利が大きく低下する、といった要因で縮小をする。たとえば、現在のようにインフレ期待が鎮静化したままの状況で、FRBが利上げを継続していくと、長短金利差は着実に縮小していくことが見込まれる。
それでは、現時点の状況を見てみよう。11月27日時点で、この長短金利差は0.58%となっている。マイナス圏に突入するにはまだ距離があるが、方向性としては急速に縮小が進んでいるように見える。これは、何を示唆しているのか。二つの見方が可能だろう。
一つ目は、今すぐにではないにしても、遠からぬ将来に米経済がリセッションに陥る可能性を、金利市場が少しずつ織り込み始めているという見方だ。たとえば、2005年春ごろに長短金利差がほぼ今の水準にまで急速に縮小したが、その約2年後にはサブプライムローン・バブルが崩壊し、やがてリーマンショックへと向かっていった。同じようなことが再現するとすれば、米経済の現在の好調さもそれほど先は長くはないと見ることができよう。
もう一つの見方は、ちょうど1990年代後半のように、長短金利差の縮小が何段階かに分かれて進行し、その後に漸くリセッションに陥るというものだ。その場合、長短金利差がいったん急縮小した後も、数年間は株価の高騰が続く可能性があることになる。実際、1990年代に長短金利差が現在の水準にまで縮小したのは1994年末のことだが、その後5年以上にわたって株価上昇が続いた。
二つの見方のうち、どちらが有力だろうか。個人的には、後者の見方の方が現時点では説得力を持っているように感じられる。現在の株式市場の状況は、株価の割高さが意識されながらも、また様々な地政学リスクが発現しながらも、大きなイノベーション(当時はインターネット、今はAIやIoT)への期待と低金利環境の恩恵から株価が上昇を続けた1990年代後半に非常によく似ている。
ただ、「歴史は繰り返す」といっても、それは忠実に再現されることを意味しない。マクロ経済の先行きを映す鏡である金利市場の動向には、今しばらく注視が必要だろう。
田渕 直也(たぶち・なおや)/1985年、一橋大学経済学部卒業。日本長期信用銀行(現新生銀行)で主にデリバティブのトレーディング、ポートフォリオマネジメントに従事。UFJパートナーズ投信(現三菱UFJ投信)債券運用部チーフファンドマネージャーとして、社債やストラクチャード・プロダクトへの投資運用体制を構築。『カラー図解でわかる金融工学「超」入門』、『投資と金融にまつわる12の致命的な誤解について』など著書多数。現在、ミリタス・フィナンシャル・コンサルティング代表。
※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
田渕 直也
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