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ようやくわかった。アベノミクスとは「社会主義化」のことだった 「官営」株価バブルが進む中で見えたこと
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53509
2017.11.23 宿輪 純一 博士(経済学)・帝京大学経済学部教授 慶應義塾大学経済学部非常勤講師 現代ビジネス
アベノミクスという経済政策を俯瞰的に分析してみると、一つの“性質”が見えてくる。良い悪いの問題ではなく、自由主義、資本主義というよりは、「社会主義」的政策であるという事だ。
それも、産業との関係が、政府(当局)が株式を保有し、関係強化する方向である。これはフランス型や中国型の国有企業とは違った形態である。
もちろん、経済成長、景気が第一の目的であることは言うまでもないが、最近の安倍政権の政策が、以前の自民党政権のものよりも社会主義化しているのは間違いない。
進む「生産手段の公有」
筆者の前回の記事(「株価バブル後最高値!いま知っておきたい日本株の『新しい構造』」11月7日公開)に詳しく書いたが、アベノミクスにおける量的・質的金融緩和によって、日本経済は「株式」中心の金融に変貌した。
日本銀行は毎年80兆円の国債を買い入れてきた。新発債(つまり財政赤字)は40兆円で、残りは年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)、年金共済などの公的年金や銀行等市場から買い上げた。
合計で資産規模が約200兆円になる公的年金は、運用比率を変更し、ざっくり言って株式と債券が半分ずつ、また国内・海外の比率も半分ずつになっている。積み立てている年金も、その割合で株式が買われることになる。
現在は公的年金の日本株式の保有は40兆円弱とみられる。公的部門の株式の大量購入は、事実上の公的介入であり、このことは市場機能を低下させている。
さらにこれも前回の原稿にも書いたが、日本銀行が株式を毎年約六兆円購入している。実質的に中央銀行が企業の信用リスクを取っているのである。このような中央銀行は少なくとも世界の先進国にはない。
さすがに、個別企業の株式を購入すると、その企業の信用リスクが、ストレートに日本銀行の信用に跳ね返るため、上場投資信託 (ETF:インデックス)で購入している。残高は20兆円を超えた。これも株式市場の買い支えになっている。
大株主が企業経営を判断しないことの意味
繰り返しの指摘になるが、このインデックス(平均)で大量に株式を購入する手法は海外の投資家に頗る評判が悪い。要は個別の企業の経営を見ない、つまりガバナンスを重視しないということなのである。大株主がこれでは経営者が経営努力をしなくなる。
これこそが、アベノミクスによる社会主義化を問題にするときの焦点なのである。今はなきソ連において、社会主義が競争原理を押しつぶしていったのと同じようなメカニズムが危惧されるからである。
GPIF(保有額1位)と日銀(同3位)といった公的マネーが、日本の上場企業の“実質的”に大株主としてなっている。筆頭株主にもなっている場合も多い。公的マネーによる企業・産業所有が進んでいるのである。
奇しくも、共産主義の中国の公的マネーも上海市場で持ち株が増えており、中国政府による株式保有が膨らみ、過去最高を更新した。共産党大会を前に、金融市場の安定を演出しようと買い支えに動いた結果でもある。社会主義から資本主義に向かう中国と、資本主義から社会主義化しつつある日本が、同じような形態をとったことになる。
ちなみに、西側先進国で、公的な株式運用で有名なノルウェー政府年金基金(SWF)は、ノルウェー財務省の管轄下ではあるが、自国および世界各国の株式を保有し、運用を目的として機関投資家として議決権行使、つまり発言をしている。
一方、日本の日本銀行などの公的マネーは“現在は”「沈黙する株主」である。株主としての経営に対しての発言がないことが、企業ガバナンスに問題を生じさせると先に指摘したが、それではこれまで機関投資家としての経験がない日銀やGPIFにそれが可能なのだろうか。経営への発言には、十分な注意が必要なのである。
株式と一蓮托生の日本経済へ
GPIF等の年金は国民の資産であるが、運用のコントロールは公的に行われている。つまり、民間の資金であるが、実質的な公的なマネーとなっている。
“株式”が民間でも、公的にも経済のエンジンとなってきた。いいかえれば、日本経済全体が株価と一蓮托生となっているのである。これはこのエンジンが回っている内はいいのだか、エンジンが止まる、あるいは逆回転すると危険なシステムである。
「バブル」の判断は難しいが、一つの指標が借金で資産に投資しているかどうかということがある。たとえば個人で借金して、その資金で株を買っているということである。今回は個人も企業もその傾向は低く、逆にカネ余り現象となっている。
しかし、公的部門(政府)が多額の借金をしている。つまり、直接にその資金が株式に向かったわけではないが、間接的に、政府の「借金」が作った株高ということができる。そういった面で「バブル」なのである。
労働者の味方、自民党政権
安倍政権の社会主義的行動は、株式市場を通した「企業公有」以外にも広くみられる。近年の日本政府は、春闘での経営者側への働きかけを始めとして、「賃上げ」を積極的に促している。特に安倍政権になってからこの動きが目立つ。来年の春闘でも、3%の賃上げをした企業に税制の面で優遇する方針だ。
ただこれは、日本だけではなく世界的な傾向ではある。実は、米国の中央銀行にあたる連邦準備制度理事会のイエレン議長は、もちろん経済学博士であるが、その専門は金融ではなく、なんと労働経済学である。そして、最近、最も注目している指標は賃金上昇率である。
以前の自民党のイメージは、経営者の利害の代弁者で、労働者の賃金の上昇を抑える側であった。一方、それに対し、社会主義的な政党がメーデーなどを主催し、春闘でも賃上げを要求していた。
いまは逆に、保守を標榜する政権が、春闘の賃上げの後押しを行っているのである。また、社会主義では「労働に応じた分配」という平等が実現されている社会を目指す。これも「働き方改革」に通じるものがある。
マクロ経済学的に考えても景気浮揚効果が期待できる。日本が伝統的に使ってきたインフラへの公共投資は、現在、労働力が不足しているために、効き目が薄くなっている。むしろ、日本の経済成長の6割を占める家計の収入が増えることを起点にした方が、効き目があると判断できる。
財政再建に逆行する大きな政府
安倍政権は発足当初、消費税引き上げによる財政再建を政策に挙げていた。しかし、最近、財政赤字の改善に使う予算を、気前よく幼稚園等の無償化や大学教育の支援など、社会的に手厚い支援を推進することに回してしまった。終戦直後、かつての英国労働党が打ち出した「ゆりかごから墓場まで」といった政策に近くなってきている。
米国との比較では、安倍政権は、トランプ政権や、歴代の共和党政権のような位置付けで小さな政府を目指すものと考えていた。が、まったく逆で米国の民主党の様に大きな政府を目指しているようである。
もっとも、その政策を行うには、政府の借金が持続可能か問題になってくる。ちなみに、現在、金融庁が「金融行政方針」を発表し、すべての地方銀行が生き残ることはないとして、金融機関に「持続可能性」による選別を求めている。しかし、そう言っている政府自身の持続可能性はどうなのであろうか。
経済学者マルクスが言っていたのは私有財産制をとると資本が集中したところに独占が生じてしまうので、私有財産制と利潤の追求をやめ、個人や企業にではなく、国や地方公共団体・協同組合などに生産手段を公有(社会的所有)させることであった。
社会主義経済においては、工場・生産用機械などは全て国が管理し、国全体の経済活動を政府が管理する。国民は全員、国営企業で働き、給料を国が国民に平等に分配することにより、貧富の差、つまり格差を無くしていくものである。
逆にこれだけ社会主義的な経済政策を取れば、左派政党はお株を奪われた形になり、弱体化するのも分かる。今後も、アベノミクスはより社会主義的な政策を進めるのであろうか。
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