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AIに企業が抱く大きな誤解
http://biz-journal.jp/2017/11/post_21451.html
2017.11.23 文=村澤典知/インテグレート執行役員、itgコンサルティング 執行役員 Business Journal
■「AI元年」の到来
2017年も残すところあと1カ月ほどになり、今年の総復習や来年の予測をするような雑誌記事やウェブコンテンツが増え始めた。ファッションやお笑い芸人の世界ほどではないが、マーケティング業界もトレンド性が強く、一過性で終わるものも少なくない。スマホ元年、インバウンド元年、オムニチャネル元年、ドローン元年、VR元年のように毎年新しい手法が話題に上る。
その流れでいえば、17年の筆頭は「AI元年」だろう。日用品から生活家電まで揃うECサービス「ロハコ」の「マナミさん」のように、ECサイト上で受け付けたユーザーの質問にチャット形式で自動返信するウェブ接客や、スーツブランド「P.S.FA」のようにお客様それぞれに最適な商品を提案して来店率を向上させるパーソナライズDM、中古車販売「IDOM」のように実店舗にカメラを設置し、来店者の属性や行動を解析して店舗レイアウトを最適化するなど、マーケティング領域でのAIの活用は急速に進んでいる。
しかしながら、張り切ってAIを導入したものの、期待していたようなビジネス上の成果を生み出せずに苦労している企業も多い。これはAIの本来的な特性を考えると当然だろう。AIは導入した瞬間に成果が出るような魔法の杖ではない。子どもが栄養をとって成長するように、AIも関連するデータを食べさせる(データを収集する)ことで学習を進め、成長していく代物だ。大量のデータを食べ、咀嚼(分析・解釈)するためには結構な時間がかかるのだ。
また、AIを導入している企業が、本当にお金を投じる価値があるのか真偽を確かめながらスモール・スタートをしていることの影響も大きい。さらには、マーケティングの世界によくある、「うちの会社はAIを導入して何かできないのか?」といった経営層からの鶴の一声によって、「手段が目的化」した状態で開始してしまっていることも強く影響しているだろう。本来であれば、AI=「課題解決の手段」であり、AIを活用する目的=「自社の課題認識」があるはずだ。しかし実態としては、そこが抜け落ちた状態でAIにできることをリスト化し、そこから何か解決できる問題がないか探し出すといった本末転倒の循環に陥っている。
■AI化しやすいもの、しにくいもの
このようなAIとの関わり方は、各企業にとってムダな投資になるだけでなく、AIというシーズを社会全体で育てていく上でも悪影響をもたらしかねない。AIは1956年のダートマス会議で誕生して以来、これまで第一次ブーム(1956年〜1974年)、第二次ブーム(1980年〜1987年)を経て、数年前からディープラーニング(深層学習)の進展による未曽有の第三次ブームを迎えている。今度こそ三度目の正直となってほしいが、今回も囲碁AI「AlphaGo」が世界最強とされる囲碁棋士の柯潔(カ・ケツ)から勝利を奪ったことなどから、AIやその立役者であるディープラーニングに対して期待過剰の状態となりつつあり、一過性のブームとなるリスクもある。
とはいえ、われわれはAIを短期的なブームではなく、長期的なメガトレンドの1つとして向き合うことが求められている。それには、AI化しやすいもの、しにくいものを理解することが必要だ。例えば、現段階で今後AI化しやすいものの特徴としては以下のようなものが想定される。
・客観的な論理(方程式など)で解が導出できる
・反復性が高い、パターン化しやすい
・AI学習のためのデータを大量に入手できる
一方、どんなに進化の早いAIでも構造的に対応しにくい領域がある。マーケティングに関して言えば、「文脈理解」と「需要創造」だ。イノベーションの大家であるクリステンセン教授が著書『ジョブ理論』でも言っているとおり、データで把握できることには限界がある。
イノベーションにつながる顧客インサイトを特定するには、顧客行動データの背後にある理由(Why)や、データには現れてこない周辺環境や感情などの文脈を読み取った上でより深く多面的に顧客を理解することが欠かせない。AIは、「単語」や「短文」レベルでの理解に関してはチャットbotのように実用可能なレベルにまで成長しているが、「長文」や「文脈」、言葉化されていない「行間」を理解することは非常に難しい。
また、AIは一定のゲーム・ルールに従って正解を導く「最適化」については得意だが、そもそもの需要を最大化させるために、ゲーム・ルールをチェンジするようなことはできない。例えば、世の中に「ゆるキャラ」が多数登場した後に、どういった特徴を持つキャラだったら人気が出そうかといったことは推計できても、ゆるキャラがほとんど存在しない(=データが少ない)時に、「くまモン」のようなキャラクターを論理的に創造することはできない。限られたデータから非連続な新しいアイデアを生成し、需要創造することは人間だからこそできる強みなのだ。
■AIとのつき合い方、向き合い方
今後AIのブームが今の勢いを保ち続けるかはわからないが、深刻な人材不足に直面する日本にとっては、AI活用による人材の生産性向上は喫緊の課題だろう。そうなると企業による導入や活用については、一時的な減速はあっても逆走することはない。
ただし、AIを導入していく上で留意すべき点はある。得意な仕事でもそのままパーツとして導入してうまくいくわけではない。自社のビジネスモデルや業務プロセスの特性に応じて、どこまでをAIの業務範囲とし、どこまでを人間がやるかといった業務範囲を明確にすることや、AIと人間の協業業務のすり合わせがポイントになる。自社のビジネスモデルの特徴を顧みずにに他社と同様の分業をしたままでは、十分な成果は期待できない。このあたりの自社ならではのAI活用の勝ちパターンを見つけた企業が、今後大きな競争優位性を得ることになるだろう。
AIへの過剰な期待論とともに、AIに人間の仕事が奪われるといった「脅威論」がある。だがそれは人間が「走って移動する」行為に対して、馬や電車と競って脅威を感じるようなものだ。足の速さでは馬に勝てないかもしれないが、電車などの移動手段の発達によって人間にもたらされたメリットは存分にある。大切なことは、AIの力をあくまでも手段として最大限活用し、任せられる業務は代替させつつ、新たに生まれた余剰の時間を使って人間にしかできない創造的な業務にシフトすることだ。
つまり、これからのマーケターには、データに表出していない文脈を察知し、誰も気づいていない顧客インサイトを理解することや、そのインサイトをベースに非連続なアイデアを創出し、関係者を巻き込みながら実行する、といったことが求められていくのである。
(文=村澤典知/インテグレート執行役員、itgコンサルティング 執行役員)
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