http://www.asyura2.com/17/hasan124/msg/434.html
Tweet |
日経平均が続伸し、バブル崩壊後の高値を上回った Photo:日刊現代/アフロ
25年ぶり高値の株価はバブルか、3つの角度で判定する
http://diamond.jp/articles/-/148553
2017.11.8 山崎 元:経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 ダイヤモンド・オンライン
■バブル崩壊後の戻り高値
11月7日(火)には、日経平均は前日比389円25銭高の2万2937円60銭(終値)と大幅高となり、バブル崩壊後の戻り高値を更新した。25年ぶりなのだという。真面目な投資家としては、株価それ自体に「勢い」があるかのような物の見方をすることは適切ではないのだが、何やら上昇に弾みがついて来たように感じるから不思議だ。少し前に悪口として言われた「官製相場」(日銀等の買い支えによって保っている相場)から、勢いで上昇する「慣性相場」に呼び名を変えたくなる。
週刊誌などのメディアでは、いよいよこれから本格的に資産価格が上昇するという「強気派」と、そろそろこれはバブルであるとする「弱気派」の、二説に分かれて何らかの論陣を張ろうとしているように見える。
再び真面目な投資家の立場に立つなら、「強気」「弱気」どちらかに自分の意見を決める必要はなく、「どちらなのか分からない」という前提で、自分にとって適当なリスク水準だと思う投資額を維持していればいい。
仮に「バブル」なのだとしても、経験則的には、その末期には株価が大きく上昇する局面が来ることが多く、早売りしてしまうと寂しくなって高値で買い戻すようなことがしばしば起こるので、当面「株価のことは、あまり気にしないで過ごす」のが良策だろう。
一方、現状が「バブルなのか?」という問い自体は、興味深い。筆者は、「株価に関しては、未だバブルではない」と思っているが、バブルになると何が起こるのかを予め考えておくことは有益だと考えている。
■株価の水準を考える
現在の日本の株価をオーソドックスに益利回り(PER・株価収益率の逆数)で見ると、今期予想基準(日本経済新聞社)で5.9%程度であり、6%を切り始めたところだ。長期債利回りがほぼ0%なので、債券利回りとの関係はほぼフェアバリュー近辺であるように見える。
形式的な分析を続けると、2017年の日本経済の名目成長率予想はおおよそ2%程度(実質で1.5%、消費者物価上昇率が0.5%。ともにThe Economist 誌、2017年11月4−10日号による)だ。益利回りにこの数字を足し込むと、8%近くになるので、株価はバブルというよりも、むしろ割安なのだと考えることもできる。
しかし、問題は、比較の基準としている債券の利回りが「物差し」として信用できるのかという点にある。
長期債(10年国債)の金利は、現在、日銀の金融政策により、ほぼゼロ近辺にコントロールされている。11月7日は、0.02%だった。債券利回りが自然に形成されるなら、例えば名目GDP成長率程度の利回りであってもおかしくないので、仮に現在の長期金利を2%だと考えて、「益利回り+名目GDP成長率−長期債利回り」は益利回りそのものの水準で高低を判断できる。
筆者は、おおよそ、上記の計算をして、5%なら割高、6%ならフェアバリュー、7%なら割安、というくらいの基準で株価を判断している。現在の株価は、若干高くなり始めたところで、未だ割高と言えるほど高い訳ではないと一応は判断できる。
ちなみに、東証一部全銘柄の予想利益ベースで益利回りが「5%」になる日経平均は、2万6878円だ。
■債券価格はバブルではないか
バブルの定義はおおよそ「長期的には維持できないほどの資産価格の高騰現象」といったところだが、日銀が価格を作っている国債はバブルではないのか。
「明白にプラス成長の経済で、長期金利ゼロは異常だろうし、長続きするまい」というのが、素朴な感想だが、現在の市場では、民間のプレーヤーが債券を売り浴びせても日銀の買いに吸収されてしまうと予想されるので、「バブル」と判断しても当面手出しはしにくい。
今のところ、「消費者物価上昇率がはっきり2%を超えるまで」こうした政策が続くと予想されているが、「2%超え」が現実となった場合に、債券市場が混乱しないのか、債券利回りがどう形成されるのかは、将来の問題だが、なかなか興味深い問題だ。日銀のサポートが外れることが分かった瞬間におそらく生じる大量の債券売りが、どうこなされることになるのだろうか。
仮に債券市場がバブルであるとしても、例えば、金融機関は、リスクを取らない有価証券運用では利益を出すことができず、法人向けの融資は貸出先が乏しく、アパートローンやカードローンに対して金融庁のチェックが入るような状況では、徐々に資金の行き先が追い詰められている。
債券バブルが維持され続けると、資金は株式市場に向かうことになるのが自然だ。
株式に投資する立場では、「債券市場のバブル状態」がいつまでどのように維持されるのかを注意深く見ていなければならない。
株式関係者の間では、例えば、「主婦なども含めて、素人が大挙して株を買うようになったら天井だ」というような、いささか主婦に失礼な言い草がある。
相場が天井圏にある時に起こりやすい現象を予め列挙しておいて、該当する現象が起きたらバブル崩壊を警戒するというのも時には役に立つアプローチだ。
■定性的バブル判断
バブルの時期に特徴的な現象をいつくか挙げてみよう。
(1)信用の急拡大
(2)リスクを過小評価させる仕掛けの登場
(3)高い資産価格を正当化する珍説の登場
(4)IPOブームの到来
(5)素人投資家の大量参加
といったところだろうか。
バブルは、経済全体としては、「過剰な借金で投資が膨らむことによって起こる」。例えば、局地的には、バブル期を超えるローン残高に積み上がったアパートローンを伴う貸家の建設などには、「バブル」を感じる。十分な需要が見込めないにもかかわらず、業者による頼りない家賃保証のようなものを信じた過剰な投資がある。
一方、株式市場は、今のところ借金・レバレッジを伴う投資が急増している兆候はない。
経済全体としては、銀行貸出残高が対前年比+3%(9月)と幾分レベルを上げているが、信用の急拡大を示唆するような状況ではない。
1980年代のバブル期でいうと、日本の土地は値下がりしないという「土地神話」、株式で運用しても利回りを保証する「特金・ファントラの握り(利回り保証)」といったリスクを過小評価させる仕掛けがあったし、2008年のリーマンショックに至った世界的なバブルでは「証券化」の技術の過信によって不動産ローンのリスクが過小評価された。
現在の日本の状況はどうかというと、債券と株式に日銀による買い支えが入るので、本来あるリスクに比して、債券価格は「下がらない(下げられない!)」、株式には「下がりにくいだろう」というニュアンスの、リスクの過小評価が起こっているように見える。
これらは日銀の政策として明白に行われているものなので、実際に行われている事柄以上の過大な効果が期待されている訳ではなさそうだが、市場の参加者がリスクを過小評価する契機ではあるので、多少の警戒はしておきたい。バブル判定に対して、+1ポイント入れておくべきだろう。
1980年代の日本のバブル期に株価を正当化するために登場した「Qレシオ」のような珍説はまだ登場していない。
仮に、近い将来、先に「高い」と考えた2万7000円近いレベルまで日経平均が上昇した場合、「日経平均は5万円でも高くない」といった勇ましい目標を正当化する新説が登場するにちがいない。
日本の企業の場合、ガバナンス改革と称している路線の延長線上で、自社株買いや配当を増やすことによって、株価を上昇させる余地が残っているように見える。これは、経済成長や企業価値の上昇とは別の効果だが、一定の有効性を持つはずだ。ただし、このリターンは一過性のもので、永続するものではないはずだ。こうした現象が起きた時に、「日本の株式は新時代に入った」とする何らかの新説が出てくるかもしれない。
IPOブームは未だ起きていないが、ベンチャービジネスに関わる人及び、証券界は、そろそろ仕掛けの準備に入るべき時期なのかもしれない。
また、「素人投資家の大量参加」という古典的な基準は、現時点では、全く満たされていないと見ていいだろう。
総合的に見て、現在の株価及び経済は「バブル」には至っていないように思われる。ただし、今後、バブルに向かうとすると、ここで挙げたような現象がポツリポツリと現れてくることになるだろう。
楽しみでもあり、怖くもある。
(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民124掲示板 次へ 前へ
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民124掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。