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日銀が出口戦略に転換できない本当の理由
http://blog.livedoor.jp/columnistseiji/archives/51732437.html
2017年11月02日 小笠原誠治の経済ニュースゼミ
日銀の黒田総裁は、今回の記者会見で、物価上昇率が2%の目標に達しない状況で出口戦略を考えるのは本末転倒だと言いました。
今から約5年前、何が何でもデフレ脱却(=物価のマイルドな上昇)が先決だとの安倍総理の強い意志に基づいて日銀は物価目標値を掲げて今日までやってきた訳ですが…
笛吹けど踊らず!
つまり、マイルドなインフレは起きておらず、その意味では緩和策を続けるのも一応筋は通っているかに見えるのですが、その一方で、日本は今や人手不足が問題になるほどで、そして需給ギャップも既に解消しているのです。
景気はこんなによくなったと安倍総理も選挙戦でどれだけ自慢していたことか!
しかし、政策金利はマイナス0.1%、そして長期金利はほぼゼロ%に誘導するという超緩和策は依然として続くのです。
何故、このような超緩和策を継続する必要があるのでしょうか?
巷では、出口戦略を議論しようとしても政治の圧力があって、それができないのだという解説があるほどです。
つまり、日銀は泥沼にはまったようなものだ、と。
泥沼というよりも、底なし沼、或いは蟻地獄といった方が分かりやすいかもしれません。
では、政治家は何故超緩和策を止めるなと圧力をかけるのでしょうか?
円高に転じてしまうから?
株価が下落する恐れがあるから?
そうしたことも大きな理由だと思いますが、もう一つ大きな理由があるのです。
グラフをご覧ください。
こんなに恐ろしい事実を示したグラフがあるかと言いたいほど!
全然怖くない?
でも、グラフの意味することをよく考えてみて下さい。
過去17年間、政府が毎年度支払っている利払費がどのように推移したかを示しています。
そして、併せて公債(国債)残高の推移も示しています。
バブルが弾け始めたと言われた1991年度の利払費は10兆円を超していたことが分かります。
そのときの国債残高は200兆円弱。
そして、ご承知のようにその後も国債残高は年とともに上昇している様子が窺えます。
一方、利払費の方は、8年間ほど横ばいの水準で推移していたものの、その後ガクンと減少するのです。
金利が大きく低下したからです。もっと正確に言えば、国債残高の増加のペースよりも金利の低下のペースが早いからそうなるのです。
でも、その利払費もその後は、少しずつ増加しています。
但し、利払費の増加のペースは国債残高の増加のペースほどではありません。
過去16年で、国債残高は4倍以上に増えているのに利払費はむしろ減っているのです。
仮に金利が間ずっと変わらなければ利払費も4倍以上になっていたでしょう。つまり年間40兆円以上に。
それが今現在では9兆円ほどで済んでいるのです。
ということはですよ、仮に今金利がかつてほどの水準にあったとしたら、利払費だけで後、30兆円以上も財源を探し出す必要があり…そして、それは殆ど無理だから利払のために更に国債を発行するという自転車操業が始まっていて、国債の残高は今の規模を遥かに上回る水準になっていたと想像できます。
私は何を言いたいか?
要するに、日銀が金融政策の正常化に乗り出して、金利を上昇を容認するならば、利払費が増大して政府は予算を編成するのが非常に困難になるということなのです。
教育の無償化?
バカ言っちゃいけないと言われるほどで、様々な予算がバサバサと切られてしまう事態になってしまうでしょう。
要するに、金利が上がると、安倍総理が好きなばら撒きができなくなってしまう。そして、ばら撒きができなくなると、支持率も下がる、と。
逆に言うと、今の政策を続けると、将来の世代が大変な目に遭うということなのです。
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