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有機ELテレビで分かる日本のモノ作りの弱点(WEDGE)
http://www.asyura2.com/17/hasan124/msg/382.html
投稿者 赤かぶ 日時 2017 年 11 月 03 日 18:44:05: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

有機ELテレビで分かる日本のモノ作りの弱点
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/10968
2017年11月2日 多賀一晃 (生活家電.com主宰) WEDGE Infinity


 今年のIFAで、テレビの主役は2つ。1つは、技術の最先端。4K 有機ELテレビと、8Kの液晶テレビ。もう1つは、「HDR(High Dynamic Range)」と呼ばれる明るさの画質規格だ。IFAはベルリンで行われるため、入場者の多くはドイツ人。真面目な国民性だからかもしれないが、それぞれの展示ブースで目を皿の様に大きく見開いて、見入っていた。ある種の熱さが伝わってきた。

 ただし、全メーカーのブース、すべてを熱い眼差しで見ているのかというと、それは違う。やはり、開発力、ブランド力が、重要になってくる。有機ELテレビで、人だかりしていたのは、LGエレクトロニクス(以下LG)、ソニー、パナソニックの3ブース。

■LGエレクトロニクス

 現在、有機ELテレビのパネルは全てのメーカーに、LGグループのLGディスプレイから供給されている。その意味では、有機ELテレビの盟主といえる。盟主が行うことは、「認知」と「方向性」を示すことであるが、今回のLGの展示は、とても好感がもてるものであった。

     
      OLEDで海中を映し出したところ。マンタが泳ぐ

 人にモノごとを認知してもらうために必要なのは、「そのモノがもたらす新しい世界」のわかりやすい提示だ。LGがブースに設けたOLEDチューブは、人目を引いていた。チューブは4Kの有機ELパネルを、チューブ内側に貼り付けたモノ。水族館の水槽内チューブを想像してもらえればよい。水族館のチューブは、水と魚に覆われた中を通り抜けるという非日常空間を体験することができる。これを模したOLEDチューブは、もっと非日常。絵は高画質4Kなので、かなりのリアルさがある。その高画質で、水中、宇宙等といろいろ映し出す。

     
      宇宙(星雲)の描写

 特に見事なのは宇宙。闇夜、3000mの高山山頂で見る感覚。天の川さえ判然としない東京23区の夜に慣れた筆者には、全くの非日常空間と映る。かなりインパクトがある。来る人、来る人、スマホで撮影し、SNSにアップしていたのは、いかにも今時らしい様子だ。

 このチューブの体験を支えるのは、有機ELパネルが曲げられること、軽量なため壁に貼り付けやすいこと、さらに言うと、宇宙などは黒色の描写に優れるためだ。理解するには一つ一つ提示するのが分かりやすい。しかし、その効果は実感しにくい。今までにない天井まで使った展示で「こんな新しいことが出来る!」ことを示すのは重要だ。

 また壁掛け専用のモデルも展示してあった。ペットネームは「Wall Paper(壁紙)」。どんな商品でもイメージを喚起させるペットネームは重要だ。認知もし易く、新し感もでてくる。

      
Wall Paper(壁紙)の名を持つ壁掛け専用モデル。とにかく薄い。黃矢印がドルビーアトモス搭載のオーディオユニット

 さらに、LGは音質にも大きな提案をしている。それが、「ドルビーアトモス」の採用だ。映画で有名になり、耳に馴染んだ「サラウンド」。これは本来、ユーザーを取り巻くようにスピーカーを配置、それぞれから別の音を出し、その合わさった音をユーザーが聞くよう設計されている。右から左、左から右へ移動するような音には絶大な効果を発揮する。私の初体験は、コッポラ監督の「地獄の黙示録」。ヘリコプターが「ワルキューレの騎行」をBGMに縦横無尽に飛び回るシーンだ。音場再現力も上がるサラウンドはその後、オーディオシーンを席巻することになる。

 欠点は、リアル感をますためには、スピーカーを多くことが必要なことだ。NHKが8K映像を技研公開したときは、20個以上のスピーカーでサラウンドを組んでいたが、とてもでないが家に入れることはできないと思った。

 そこで考え出されたのが、ドルビーアトモス(以下DA)だ。サラウンドだと、スピーカーの位置とそこから出される音が、自然にまとまることにより、1つの音場を形成する。このため、スピーカーの数、設定位置がすごく重要になる。DAは、音に時間的なベクトルを与えることにより、音場を形成する方法だ。つまり結果から、逆算してそうなる様に音をだしてやるのだ。こうするとスピーカーが前にある場合でも、後ろから音が出たように聞こえる。もうお分かりだと思うが、極端な言い方をすると、スピーカーはテレビと違う位置にあってもいいし、スピーカーの数が少なくても用が足りる。

 LGは有機ELテレビ に、このドルビーアトモスを採用している。LGは、画も音も違う、設定の自由度の高いテレビを提案しているのだ。

■ソニーとパナソニック

 ソニーの有機ELテレビ:A1シリーズ、パナソニックの有機ELテレビ:EZ1000シリーズ。この2つのテレビの画質は素晴らしい。これは画質コントロール回路で、差別化を図ろうと考えている両メーカーの考えが成功したことを示している。双方とも暗部の描写は本当に美しい。

     
      展示されていた、ソニーのA1

 ソニーグループのソニーピクチャーは、アメコミ映画で有名。中でもバットマンは黒のコスチュームで夜出没する。黒の描写が適確でないと、映画としてなり立たない。パナソニックはハリウッドに研究所を持っており、いろいろな監督と理想の画質を求めている。画家も自分の表現のために、新しい色を作り出すが、映画も同じ。特にCGが当たり前になった今、撮れた画ではなく、作り込んだ画を観てもらうのに高画質テレビは欠かせないのだ。

     
      パナソニックのテレビ展示。左)液晶テレビ、右)有機ELテレビという区分け

 そして音。ソニーのアプローチはユニークだ。テレビ表面を振動させて音を出すのだ。そうすると画像が振動しマズイのではと考える人もいるかもしれない。それが大丈夫なのだ。通常は音を出すのはスピーカーを用いる。コーン紙という特殊な紙を振動させ音を出すのだ。この時、音量は音を伝搬する空気の体積で決まる。つまり「スピーカーの振動する面積×振動幅」だ。この基本は、テレビ画面をスピーカーとして使う場合も同様。しかし、スピーカーの何倍もの面積がある。つまり、ごくごく小さな振動幅で済むというわけだ。人間の眼で捕らえられないレベルなのだ。ソニーのA1シリーズは凝ったことに、画面を2分割駆動させている。喋る人の位置に合わせて振動する位置を変える。

 実はこの原理は、かなり前から知られている。IFAでも中国メーカーのブースで展示されていたくらいだ。しかしソニーが使うまで、テレビで使われることはほとんどなかった。ブラウン管も、液晶テレビも、表面がガラスだからだと思われる。振動させにくいし、音も硬い。有機ELパネルの場合、表面は樹脂。有機ELパネルは、液晶パネルに比べ、工夫できる余地が多い。

 ソニーがユニークなら、パナソニックはオーソドックス。小型のスピーカーが目立たないように仕込まれている。ポイントは『テクニクス・チューン』。テクニクスはパナソニックのオーディオブランド。2016年からベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と技術提携。ベルリン・フィルのライブ中継、「デジタル・コンサート・ホール」のサポートを行っている。今年の「デジタル・コンサート・ホール」は4K、HDRの映像配信が話題だが、世界で1、2を争うこの楽団の配信の音サポートはテクニクスの役割。実際、平面スピーカーとは思えない音だ。

■日本メーカーの有機ELテレビの位置づけ

 2000年以降、液晶テレビの普及に伴い、いろいろな開発投資を行った日本メーカーのテレビ事業部は赤字を出すようになる。要因の1つに市場価格のそれまでにない下落があげられる。昭和の時代、21インチ以上は1インチ1万円と言われて、それなりに安定していた。それが、今の時代、最先端の4K液晶テレビが、限定販売であるが5万円台で売りに出される時代だ。

 価格下落の要因は幾つかあるが、大きな理由として「デジタル化」がある。例えば、4Kの液晶パネル。4Kの解像度を満たしたパネルは、日本で作ろうが、中国で作ろうが品質差はあまりない。しかしテレビでは画質差が出てくる。それは画質コントロールだ。冒頭、HDRという規格名を上げさせてもらったが、実は、HDRを採用した場合、今のテレビでは、全ての色再現はできない。それほど色数が多いのだ。このため、どの範囲を、どの様にカバーするのかなどでメーカー差が出て来る。同じ戦闘機を用意しても、パイロットの違いが戦闘能力に差になるのと同じだ。

 しかし4K液晶テレビはすでに値が崩れている。ここで根を張りなおすのは、HDR導入があるとは言え大変なことだ。このため日本メーカーは、こぞって有機ELテレビの値を、適正価格に留めようとする方向に出ている。「ブランド」+「性能」=「プレミアム」と位置づけ、高く売ろうという考えだ。

 確かに、画質はLGよりいいし、筆者の眼から見ると「欲しい。」と思う。しかし、仕事仲間は「どこが今までのテレビと違うのかわからない」と言う。画質にこだわりの少ない彼に言わせると、「LGの方が新しい」という。確かに、薄いし、壁掛けだし、おまけにDA搭載だ。

■日本プレミアムは、高く買ってもらい続けることができるか?

 基本的に、買替え需要以外で、ユーザーがお金を出してくれるパターンは4つだ。

1)新しい世界を提示する「新製品」。例えば、VR機器などだ。全く違う世界、体験に人を誘う。これは市場全体が対象になるし、買い換え時期などは考えなくてもよい。

2)「高品質品(プレミアム品)」。今回の日本の有機ELテレビはこれに当たる。ユーザーは、その品質を欲していた人。マニア、ファンと呼ばれる人が対象になる。価格にもよるが、多くて全体の10%以下のシェアが一般的だ。

3)次は「セレクト品」。セレクトショップが販売しているモノと考えればいい。こちらは流行を敏感に捕らえる人が対象となる。流行に乗った商品はバカ売れとなるが、セレクトショップは、流行の先端にいてこそのセレクトであり、売り切り御免の世界。ライフスタイルを大切にする人もここに含まれる。こちらも、多くて全体の10%以下のシェアが一般的。

4)最後は「高級品」。「ブランド」が最も威力を発揮する分野であるが、そうなるまでには、伝説的な後日定番となる製品を出す必要がある。また品質がいいことも必要だが、「欠点がない」商品であることが重要だ。技術的にスゴくても、その技術を常識的なやり方で使えない限り「高級品」とならない場合が多い。例えば電子レンジ。マイクロ波を使うためアルミホイルが使えないなどの欠点を有する。これは知らされない限り分からない。知らなくても使える=欠点がないということは、新しいモノに目移りせずに済むと言うことで、長期に使える。少々高くても、お得ということにもなる。お金持ちは全体の5%以下と少ないが、最も固定化率が高い層だとも言える。

 今、日本メーカーの有機ELテレビは(2)。ソニー、パナソニック共に販売も好調だと聞く。が、この9月シャープは、8Kテレビを発表し、マニアの興味はそちらに移行しつつあるのも事実。そうなると売れなくなる。値を下げる。と言う負のサイクルが出てくる可能性は否めない。

 デジタル化された黒モノ家電は(1)(2)双方が組み合わされると、値崩れせず、支持される。「新しい体験」と「技術に支えられた高品質」が需要を支えるのだ。しかし現実は、かなり意識しないとそのレベルに達することはできない。

■新しい世界へ進むためには「眼を持った人」が必要では?

 「テレビの分野で新しいことはできないのか?」というと、私はそうは思わない。が、人間、今の延長線上で考えるのが常で、なかなか新しいことに気づきにくいのは事実だ。

 新しい世界を創出した製品にソニーの「ウォークマン」が上げられる。再生のみの携帯型デッキに、ヘッドフォンを組み合わせた、今では標準のオーディオ機器だ。しかし、当時有識者はこれを面白いとは思わなかった。「録音ができない半端モノ」のような言い方をしていたはずだ(私は、そう記憶している)。 しかし、世間的に見るとラジカセを路上に置き、みんなで踊るような竹の子族が出ているような時代。「どこでも音楽!」というニーズは、若者を中心に世界を席巻、造語である「WALKMAN」が、英国の権威ある辞書 ウェブスターに採用された程だ。

 しかし考えて欲しい。当時ラジカセを路上で使い、踊る文化があることは全メーカーが知っていたのに、音楽を外に持ち出す「ウォークマン」を発想できたのが、ソニーだけだった。それはソニーに「眼を持った人」がいたからだ。また、そのアイディアを検討する余裕が社内にあったからだ。

 日本の商品は確かに高品質だし、高性能だ。ミクロ的な見方をすると新しいことに挑戦もしている。しかしLGのような「有機EL」をトコトン活かしたものではなく、「平面テレビ」の誰でも予想される進化をしているだけであるとも言える。もしLGが壁掛け以上のアイディアを出してきたら、品質リファインだけでプレミアム維持は厳しい。

 メーカー創業者は、自分の欲しいモノ、必要に思えるモノが世の中にないから、作ろうと思ったわけで「眼を持った人」だったわけだ。しかし、今の世、特に大メーカーは、自分の組織を維持すること、計画通りのモノを作り利益を上げることに集中しようとしている。しかも計画通りのモノは、自らが考えたモノではなく、借りてきたアイディアであることも多い。

 今回、今の時点で「品質に優れ、いいな」と思える日本メーカーだが、「新しいな、いいな」と思えるLGのポテンシャルは高い。品質向上に依然大きな投資をしている日本だが、技術はこなれてくると、品質差は薄まる性質を持つ。そうなった時、ユーザーはプレミアムとして日本メーカーにお金を払ってくれるだろうか?



 

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