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日本が財政破綻しないのは政府の借金が円建てだから
http://diamond.jp/articles/-/148113
2017.11.3 塚崎公義:久留米大学商学部教授 ダイヤモンド・オンライン
安倍晋三首相は、消費税増税分の一部を歳出に回すと言っている。財政破綻を避けるためには増税分を赤字削減に使うべきだとする論者も多いが、久留米大学の塚崎公義教授は「財政は破綻しない」と論じる。
10月22日に投開票が行われた衆議院選挙で、消費税増税派の与党が圧勝した。とはいえ、安倍首相は、増税分の一部を少子化対策などの歳出により多く回すとしており、巨額の財政赤字と債務残高を懸念し、早急に緊縮財政を進めないと財政が破綻しかねない、と考えている人も多い。
しかし筆者は、財政は破綻しないと考えている。前回の拙稿「消費増税分を歳出に回しても日本の財政が破綻しない理由」では、投資家の行動を考えれば政府が資金調達に困ることはなく、財政は破綻しないと述べた。
今回は、少し観点を変えて、政府の視点から財政が破綻する可能性が極めて小さいことを示そう。
外貨建てであれば
対外債務は危険だが
もしも日本が経常収支赤字国で、政府が外国から借金としてドルを借りているのだとしたら、大変に危険である。
海外の債権者としては、日本政府がドル建て債務を返済できるのか否か不安を感じているので、債務残高が増加するにつれて「もう貸さない。返してほしい」と言ってくる可能性が増すからだ。
国内の投資家が円建て国債を買う場合には、「円建て資産の中で国債より安全な物がないので仕方なく国債を買う」かもしれないが、海外の貸し手にとって、日本政府は「その他大勢の1人」なのだから、資金を引き揚げることが容易なのだ。
問題は、ここからである。
日本政府が外貨建て債務を返済するには、円をドルに替えなければならない。最初の返済時はドルが安く買えるので問題ないとしても、それに伴ってドルが値上がりし、次の返済の負担が重くなる。それを見た海外の債権者は一層不安になり、返済を求めたくなるであろう。
国内の資産家も、「海外の貸し手からの返済要請が相次げば、ドル高になるだろうから、今のうちにドルを買おう」と考えるかもしれない。そうなると、無限にドル高が続いて、政府は返済不能に陥りかねないのだ。
過去に国家財政が破綻した事例の多くは、こうしたものであった。幸い、日本政府の借金は円建てであり、こうした状況は考え難い。単に「過去に財政破綻した国よりも債務残高のGDP比が高いから、日本政府も破綻するだろう」などと考えてはいけないのである。
そもそも、日銀に紙幣を印刷させて借金を全額返済するという選択肢があるので、実際に政府が破産する可能性はゼロである。それをもって「財政は絶対に破綻しない」のであるが、これは禁じ手であるため、本稿では考慮しないことにする。「日銀に永久無利息国債を引き受けさせる」という選択肢も、同様に禁じ手であるため考慮しない。
ちなみに、「日銀が永久無利息国債を引き受けると、政府の借金は実質ゼロになる」という論者が散見されるが、日銀が引き受け代金として政府に渡す日銀券が財政支出として世の中に出回れば、やはり超インフレを招きかねない。そうでなくとも、日銀券は日銀の負債であり、それが政府の財政支出として世の中に出回ることで、「政府と日銀の連結決算」の借金は減らないことになる。
「親会社が子会社から借金をしただけで、簡単に親会社の借金問題が解決する」ほど世の中は甘くないのであって、政府の借金だけを見ていては、事態を見誤るのである。
数千年後には
すべて解決するはず
「たかが数兆円の増税が実施できないような国で、1000兆円もの借金をどうやって返すのか。将来の財政破綻は明らかだ」「財政赤字は、将来世代に借金を負わせる世代間不公平だ」と考える人も多いだろう。しかし、懸念は不要だ。
極端なケースを考えてみよう。一人っ子と一人っ子が結婚して一人っ子を産む。数千年後には日本人が1人になる。その子は個人金融資産1800兆円を相続する。政府から「借金を返すので1000兆円の税を払え」と言われるが、全く問題ない。残った800兆円で豊かに人生を終えるからだ。
「国債は、子孫に借金を返済させるので世代間不公平である」と言われる。その限りでは正しいが、少し広い視野で見ると、全く異なる景色が見えるのである。遺産のことまで考えれば世代間不公平など存在せず、遺産が相続できる子どもと、できない子どもの「世代内不公平」だけが存在するのだ。
要するに、日本政府は今後数千年間に渡って一切増税をしなくても、破綻しないというわけだ。
とはいえ、さすがの筆者も数千年間に渡って財政赤字を放置していいとは考えていない。遠くない時期に緊縮財政を採用すべきだと考える。それは、財政赤字には問題があるからだ。
財務省のホームページに掲載されている財政赤字の問題点は、利払い費の増加で政策の自由度が減少する(社会保障などの予算が不足する)、金利上昇による経済への悪影響、世代間の不公平拡大、といったところだ。だが、利払い費が増大したら、その分だけ借金をすればいいのだし、政府の借金が増えても市場金利が上がらないのは過去の日本経済が実証済みだし、世代間不公平が深刻でないことは上記の通りだ。
問題はそうした点ではなく、「消費などの低迷リスク」である。人々が「将来は財政赤字が深刻化して年金がもらえないだろうから、今のうちから倹約しておこう」と考えて消費を手控えることなのだ。これは既に生じているかもしれない。そうなると景気が悪化するので、政府が景気対策を採る必要が出てきて、財政赤字が一層拡大する、といった悪循環に陥る可能性もあるのである。
遠い将来のことまで考えるならば、「インフレリスク」にも留意が必要である。いつの日か、人々が「政府は破産し、日銀券は紙くずになるだろうから、今のうちに現物資産に換えておこう」と考えるかもしれず、そうなれば超インフレになってしまうかもしれない。
今は、たまたま景気がいいので労働力不足であるが、増税により景気が悪化すれば再び失業に悩まされ、失業対策の公共投資が必要になるかもしれない。しかし20年後には、少子高齢化による労働力不足が深刻化し、「多少、景気が悪化しても失業問題は深刻化しない」という経済になっているかもしれない。そうであれば、その時には思い切り増税すればいい。
もしかすると、労働力不足による賃金上昇でインフレになり、それを防ぐために緊縮財政が用いられるようになるかもしれない。となれば、増税がインフレ対策と財政再建の“一石二鳥”となるかもしれないのである。
財政破綻の噂によって
政府が健全化する可能性
遠い将来においては、「日本政府が破産する」と多くの投資家が信じて国債を売却し、国債価格が大幅に下落することもあり得よう。そうなれば、政府は高い金利を提示しないと借り換え国債が発行できないので利払い負担が増し、それが一層政府破産の思惑を強め、国債価格が文字通り暴落するかもしれない。しかし、それでも日本政府は破産しない。
日本政府が破産するとなれば、猛烈なドル買いが発生して1ドルが数百円になる。日本政府は外貨準備として巨額のドルを持っているので、それを高値で売却し、暴落している国債を買い戻せばいい。そうすれば、一気に発行済み国債の多くを買い戻すことができ、暴落の翌日には「無借金」になっている可能性すらある。
つまり、「日本政府が破産すると皆が信じて国債と円を売れば売るほど、ポジションが改善していく」という不思議な立場に、今の日本政府は立っているのである。外貨建て債務を抱える政府が「破産する」との噂で実際に破産してしまうのとは、正反対なのである。
このあたりについては、拙ブログに「国債暴落シミュレーション」という下手なシミュレーション小説を載せてあるので、ご笑覧いただければ幸いである(笑)。
(久留米大学商学部教授 塚崎公義)
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