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わが社は大丈夫か!? 神戸製鋼の取引先「パニック」の一部始終 あの製品も、この部品も…
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53334
2017.11.02 週刊現代 :現代ビジネス
神戸製鋼でさえ、自社製品が最終的にどこでどう使われているかをすべては把握していない。ならば、自分たちで徹底的に調べるしかない……。不安と不信に駆られた企業の「パニック劇」一部始終。
■追加調査、追加調査、追加……
日立製作所の経営陣に衝撃が走ったのは、いまから約1ヵ月前の9月14日のことだった。
この日、取引先の神戸製鋼所からある一報がもたらされた。
「御社に納入した製品の一部で、データ改竄したものがございました……」
神戸製鋼がアルミ製品などでデータ改竄をしたことを公にしたのは10月8日だが、実は取引先各社には、それ以前の9月から随時報告がなされていたのである。
一報を受けた日立製作所では慌てて、データ改竄されたものがどの製品に使われたかを調査すると決定したのだが、これが地獄のような調査の日々の始まりとなった。
同社では納入した資材については納入時期などに応じて品番をつけているが、その品番から目星をつけながら一つ一つ照合していくのは骨の折れる地道な作業。
ひとまず当該部品が鉄道車両に使用されていたことを突き止めて電鉄会社にその旨を連絡した時には、すでに調査開始から約1週間が経過していた。
さらに調べていくなかで、日立と神戸製鋼の取引は本社の調達部門が一括してやっているわけではなく、子会社や孫会社のなかにも個別に神戸製鋼と取り引きしているところがあるとわかってきた。
当然、そうしたグループ会社の取引もすべてしらみつぶしに調査することが必要となり、調査対象は否応なく拡大していった。
「それだけではありません。神戸製鋼の当初の説明では、2016年9月〜今年8月に出荷した分について不適切製品があったということだったのに、記者会見で10年前からやっていたと突然言い出した。
われわれとしては'16年9月以前に納入された分も追加で調査せざるを得なくなった」と、日立社員は内情を語る。
神戸製鋼の不正問題はそのあとも拡大を続け、アルミや銅だけではなく、鉄鋼製品でも不正が発覚。
さらに神戸製鋼本体のみならず、グループ会社にも不正が蔓延していたことが明るみに出る中で、どこまで問題が広がっていくのかも見通せなくなっていった。不正は数十年前から行われていたとの報道も出てきた。
「全貌が見えない限り、こちらの調査も際限なく続く」(前出・日立社員)
突然降ってわいた神戸製鋼ショックをめぐって、いま日本中の有名企業、名門企業の経営陣が頭を抱え出している。
神戸製鋼はこれ以上嘘をついていないのか、うちの製品はほんとうに大丈夫なのか……。
そんな不安と不信が一気に膨れ上がり、取引先各社で大慌ての大パニック劇が巻き起こっているのである。
三菱電機社員も言う。
「とにかくもう調査が大変なことになっています。神戸製鋼から納入しているのはアルミなどの素材で広い製品に使われている可能性があるため、すべての事業について、どこに使われているかを調査しています。
しかし、うちは事業本部だけでも10あり、それぞれにまたいくつも枝分かれする事業部署があるので、調査対象があまりに膨大です。
それに、うちは調達部門が東京本社の管理部門だけではなく、全国各地の製造拠点それぞれに調達部門がある。加えて仲介業者から納入されている分もあるので、その複雑多岐な調達経路をすべて洗い出さなければいけなくなった。
われわれに製品を納入している部品メーカーが神戸製鋼の不正製品を使っている可能性もあるが、契約によってはわれわれにその情報が降りてこないものもある。調査は難航しています」
■必要なデータが来ない!
神戸製鋼から不正製品が納入された先は、自動車、電機、航空など約500社。こうした取引先には神戸製鋼が直々に連絡し、改竄前の生データを提供したり、取引先から求められる技術的見解を示すなどして「安全確認」を急いでいるが、追い付いていないのが実情である。
ホンダ社員は言う。
「うちでは9月末に神戸製鋼から連絡があり、調べると自動車のボンネットやドアに当該のアルミが使われていることがわかりました。
しかし、安全確認に必要なデータが1年以内のものしかわかっておらず、それ以前のものについても神戸製鋼に確認しているのですが、まだ先方からデータが出てこない。
アルミ以外に不正があった製品のデータも、いまだ入手できていない。いち早くうちの開発部門と生産部門が安全性を検証したいのですが、部分的なデータしかないので判断しようがない」
安全確認について、神戸製鋼は自分たちが納品している素材そのものの検証はするが、取引先がそのアルミや鉄を使って作った自動車、家電などの製品についてはあくまでも各社任せ。
そのため、問題発覚以降、神戸製鋼には500社に及ぶ企業から一斉に問い合わせやデータ提供依頼が殺到し、限られた人員で対応をさばききれなくなっている。
ホンダ社員が続ける。
「結局、在庫のアルミについてはすべて自分たちでスペックを計測し直して、合格したものだけを切り出して使っています。本来であれば必要のない手間だが、自分たちでやらざるを得ない」
実はこのように安全確認に走り回っているのは神戸製鋼の取引先だけではない。直接の仕入れ先ではない企業でも安全確認を余儀なくされているところに、「神戸製鋼ショック」の根深さがある。
たとえば、キリンHD社員は次のように言う。
「われわれは直接取引があるわけではありませんが、報道で不正を知った時、頭を抱えました。われわれが販売しているビールや清涼飲料の缶などにはアルミが使われているので、もしその強度に問題があるとしたら一大事になりかねないからです。
すぐに納品してもらっているすべての製缶メーカーに確認を取りました。ひとまず、今回の製品については影響がないという回答をもらって、胸をなでおろしたところです」
■どこまでも拡散
JALの場合は、神戸製鋼のデータ改竄について知ったのは10月8日の報道。神戸製鋼と直接の取引はないが、問題の素材がJALも運行する米ボーイングの航空機に使用されているとわかり、急遽対応を迫られた。
「われわれエアラインはあくまで航空機の『ユーザー』の立場なので、このような時はメーカーに問い合わせをするしかない。今回は報道を把握した後、米ボーイング社へさっそく問い合わせをしました。
ボーイング社内ではまさに技術評価を行っているところで、その時点では『安全性へ影響はない』ということで安心しましたが……」(JAL社員)
神戸製鋼の不正製品はまず500社にばら撒かれ、次に500社それぞれの取引先へ、またその取引先の取引先へ……と、まるで「倍々ゲーム」のように拡散している。
しかも、不正がなされたのはアルミ、銅、鉄鋼といった幅広い産業で使用される「素材」。そのため、業種業界を広く横断して不正品が広がり、多くの企業に動揺をもたらす形となっている。大手部品メーカー幹部も言う。
「神戸製鋼はサプライチェーンの『最上流』にいる会社。だから、その1社の不正がすべての川下の会社に影響を及ぼしてしまう。
実際、いまは日本全国でユーザー、メーカー、さらにその下請け企業すべてにわたって、神戸製鋼の製品があるのかないのか、サプライチェーン網すべてで情報が飛び交っている。
それぞれの会社では調達部門や製造部門が山のような設計図や納品書をしらみつぶしに読み込んでは、川上、川下の取引先と情報交換を繰り返している」
ただでさえ対応が後手に回っている神戸製鋼に、直接の取引先ではない企業にまで不正があった旨の連絡をする余裕はない。そのため、自主的にリスク回避をしなければならず、「独自調査」を始める企業まで出てきている。
たとえば、コマツ。
「われわれが調査をすることを決めたのは、神戸製鋼が改竄を発表した10月8日以降からです。多くの産業に使われている素材だけにうちの製品にも使われている可能性があるだろうと、一点一点、チェックを始めました。神戸製鋼から直接連絡があったわけではない。
東日本大震災時には取引先企業が被災して部品供給がストップしたことがありましたから、今回もわれわれとしては一次下請けだけでなく、二次、三次と多岐にわたって調達部門が調査をすることを決めました。建機には何万点も部品がありますが、とにかく慎重に調べていくしかない」(コマツ社員)
■誰が賠償してくれるのか
横浜ゴム社員も言う。
「私達が本格的な調査を始めたのは、10月13日に神戸製鋼が線材の改竄を発表してからです。線材はタイヤの骨格に使われるのでうちにも関係がありそうだと、部品を供給してもらうサプライヤーさんに問い合わせをするなどしています。
この日は日本経済新聞に『改ざん材料を使っている主な企業』ということでうちの名前も出たのですが、『寝耳に水だ』と大騒ぎになったほどです」
鉄筋などの影響が指摘され始めている建設業界にあっても、大成建設の山内隆司会長は本誌の取材に、「影響がどこまで広がるのか予断を許さない。これから調査をしていくことになると思います」と語った。
目下、神戸製鋼は10月末を目途に安全性について検証結果を公表する予定だが、検証で問題があるとわかれば今度は「賠償問題」が吹き荒れることになる。
すでにJR西日本は新幹線の台車部品に問題のアルミ材が使用されていたとして、合計148個を交換することを決定したが、実はこの「賠償」を求めている相手は神戸製鋼ではない。
JR西日本社員が言う。
「われわれはこの責任を車両の製造メーカーに問うことにしています。安全上問題はないとはいえ、契約で求めている仕様を満たさない部品を使ったという点で、これを製造したメーカー、つまり日本車輌製造と日立製作所に瑕疵があると判断しています。この瑕疵担保として正規品の提供を求めていくことになる」
つまり、「不良品を売った責任がある」というわけだが、今後はこうした責任の所在をめぐった企業間の「暗闘」が頻発することが必至である。
「JR西日本のケースで言えば、JRから賠償を求められた日立などが今度は神戸製鋼に賠償を求める形になるでしょうが、神戸製鋼がその製品は『安全だった』と主張して、すべての支払いには応じない可能性もある。
それに、これからは調査に要したコストを請求する会社も出てくるでしょう。神戸製鋼から連絡が来たわけでもないのに自主的に調査した会社の場合、その費用は請求できるのかどうか。そうした請求書のつけ回し先をめぐって、激しいせめぎ合いが展開されていくことになる」(大手証券アナリスト)
この混乱はしばらく続きそうである。
「週刊現代」2017年11月4日号より
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