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EV化に逆走!?マツダが理想のエンジン車開発にこだわる理由
http://diamond.jp/articles/-/146389
2017.10.20 佃 義夫:佃モビリティ総研代表 ダイヤモンド・オンライン
マツダの新開発ガソリンエンジン
「SKYACTIV-X」
10月「体育の日」の連休明けにマツダの次世代技術試乗取材会に参加してきた。場所は、山口県美祢市のマツダ自動車試験場(かつての美祢サーキット)でマツダが画期的な「HCCI(予混合圧縮着火)」という燃焼方式で新開発ガソリンエンジン「SKYACTIV-X」を搭載した試作車を試乗体験してきたのだ。
マツダは、8月に2030年を見据えた技術開発の長期ビジョン「サスティナブルZoom-Zoom宣言2030」で、この次世代エンジン・次世代プラットフォームを発表しており、内燃機関(エンジン)をマツダ独自に進化させて市場に問うことにしている。
マツダは、内燃機関を排除してEV(電気自動車)へ移行という「時代の流れ」に対して、「内燃機関の目標として火力発電による発電がなくなるまでEVは不要といえるレベルを目指す」(人見光夫常務)というスタンスをとっている。火力発電の電気でEVを走らせるよりも、エネルギー効率の高いエンジン車を目指すというわけだ。
その意味で新開発SKYACTIV-Xはディーゼルエンジンとガソリンエンジンの燃焼理論を融合し圧縮着火を実現。量産のメドをつけたのは世界初となる。「HCCI」燃焼方式は、独ダイムラーがコンセプト車を発表したことがあるが、まだ世界のどこのメーカーも量産化を実現できていないのだ。
マツダは、2019年にこのSKYACTIV-Xの2.0リットルガソリンエンジンを搭載し、「人間中心の発想」をコンセプトとする「第二世代SKYACTIVビークル・アーキテクチャー」を組み合わせて、グローバル市場に投入する計画だ。
これに先立って今回、9月のドイツ・フランクフルトのマツダ・モーター・ヨーロッパ(MMI)のデザイン・研究開発拠点でのXプロトタイプの試乗取材会を皮切りに、10月上旬は日本で開催。
それ以降は、グローバル主要各地での展開を予定し「EV大転換」という最近の風潮に対して、「進化した画期的なエンジン」をアピールしていくことにしている。
その一方で、マツダは電動化についてもトヨタとのEV共同開発を進めており、次世代技術導入プランでもこの内燃機関のXエンジン搭載車と並行して2019年にEVを市場投入する計画だ。
「グローバルで国や地域ごとの環境規制に応じ、多様なマルチソリューションで対応していくが、走る歓びを体現でき環境対応も同等な内燃機関の存在感を高めていきたい」(小飼雅道社長)と内燃機関の進化にこだわるマツダの道を強調する。
「ミスターエンジン」と呼ばれる
人見光夫常務執行役員
マツダで「ミスターエンジン」と呼ばれるのが人見光夫常務執行役員だ。筆者は、試乗会前夜に人見氏とじっくり話をする機会を得た。また、当日の試乗直前には、この「次世代ガソリンエンジンSKYACTIV-X」について、直々に熱のこもったプレゼンを聞いた。
「ミスターエンジン」との異名をとるだけに、「内燃機関の進化」に並々ならぬ意欲と執念を感じさせる内容だった。
それが「リーンバーン(希薄燃焼)→圧縮着火」、「圧縮着火実現のためのブレークスルー=SPCCI(スパークプラグによる点火を制御因子とした圧縮着火)」の採用に繋がる。
極めて薄い混合気を圧縮着火させるため、この2.0リットルエンジンの圧縮比は16と高いものとなった(ちなみにSKYACTIV-Dの2.2リットルディーゼルエンジンの圧縮比は14である)。
これにより、現行のGエンジンより燃費を20〜30%改善し、トルクも全域で10%以上、最大で30%の向上を実現することができるという。
人見氏は、2015年に「答えは必ずある――逆境をはね返したマツダの発想力」(ダイヤモンド社)という著書を上梓している。マツダ入社以来、エンジン開発・パワートレーン開発に心血を注いできた人物で、著書に書いてあるようにマツダが厳しい業績下で開発資金、開発人材も限られた中で高効率・低燃費のSKYACTIVエンジンを実現させたのだ。さらにこの基本原理を突き詰めて「内燃機関の理想形」と言われる「Xエンジン」に到達させたリーダーである。
人見氏は、それだけに「地球の課題認識」としてエンジン車の実用燃費改善ターゲットをEVに置き、「SKYACTIVエンジン車で実用燃費を10%程度改善すれば、平均的発電方法で共有された電気を使うEVにCO2で追いつく。火力発電で最もCO2発生量の少ないLNG発電で供給された電力で動くEVにも、30%改善で追いつく」と、最近のEV転換の過熱化に対してWELL-TO-WHEEL(燃料採掘から車両走行まで)の観点から「EVはまやかしで、要らない」とまで言い切る。
「逆境をはね返したマツダの発想力」には、人見氏のような観点も必要なのだ。
“マツダの凄み”を体感した
試乗取材の感想
さて、かつての美祢サーキットだった美祢試験場での試乗取材の感想だが、確かにマツダの「内燃機関の進化」へのこだわりと執念を感じとった。まさしく“マツダの凄み”を体感したのだ。
現地での試乗取材会は、人見氏をはじめ、一連のプレゼンテーションの後、現行のSKYACTIV-G搭載車を試乗した後、SKYACTIV-Xの試作車を走行させるという流れだった。いずれも左ハンドルの欧州仕様で、筆者が試乗したのはマニュアルミッション車だった。
現行のSKYACTIV-G搭載車で走行した後、直ちにXプロトタイプに試乗すると、感覚は明らかに違った。
約7kmの走行コースであり、市街地での低速から郊外のワインディングロードでの中速、高速道を想定した100km走行をするという流れだが、まず1速で軽やかな発進加速を見せる。2速でもコースへの連絡路で20〜30km程度の走行となっても粘るエンジン特性を感じた。中回転域からアクセルを踏み込んでも滑らかで力強い。
「クルマと人の理想」を突き詰めた
「人馬一体」構造を体感
一方、この新開発エンジンを搭載したプラットフォームは、「SKYACTIVアーキテクチャー」として「クルマと人の理想」を突き詰めたものとし、人が歩行する際、骨盤と上体を逆方向に動かして頭部を安定させながらバランスを取るように、走行する車体(バネ上)の動きを連続的で滑らかにすることを目的にしたものだという。
確かに、運転席に座ると体が包み込まれた感じである。18インチタイヤを履いたことでスポーティかつ、がっしりした走りかと思ったら、むしろ優しく、それでいて、しっかりと加速してくれる。
新開発エンジンとプラットフォームの組み合せで、マツダの「人馬一体」構想を体感した次第である。
2019年にこのプロトタイプは、次期アクセラとしてグローバル市場に投入する計画だ。
もう一つ、注目されるのがエンジンモデルにあった小型モーターである。減速時のみエネルギー回生し、チャージした電気はアイドリングストップのエンジン再起動やモーターによる動力補助に使うとの説明を受けた。
これはいわゆる「マイルドハイブリッド」であり、プロトタイプ試乗で同乗の開発者と話したら「このエンジンにもモーターはついているが、使えない状態にあり、今後このエンジンの味付けも含めて市販車はマイルドハイブリッドになる」との説明だった。
マツダの次世代技術導入プランでも、2019年にはSKYACTIV-X投入とともに、マイルドハイブリッド車にバッテリーEV投入が計画されている。つまり、マツダは内燃機関のみにこだわるのではなく、マイルドハイブリッドとの組み合わせで対応していくことになるということだろう。
「EV大転換」というかけ声だけに惑わされず、愚直に「内燃機関の進化」を図りつつ、「電動化との連動」にも対応する。それがマツダのマルチソリューションということなのである。
(佃モビリティ総研代表 佃 義夫)
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